※脱字がありましたので再投稿です。
その頃、我瑠磨ビルでは…
「総長…戻ってきてくださいよ…俺はここですぜ…」
猪狩は依然ぐるぐる巻きの状態でバイクごと床に横たえられている。
ザッザッザッザッザッ…
「!!」
その時、遠くから大勢の足音がする。
ギギギギギ…
程なくしてビルの扉が開き足音の主達が猪狩の前に現れる。
「あ、”終わっ”(ジエンド)ったな…」
思わず一言漏らす猪狩。
彼の前に現れたのは汰威超組、赤灯会両組織の組長並びに幹部、組員達、そして彼等の関係者達だった。
この中には天音、翔、美音もいる。
「私がアンタの女とか有り得ないんだけどー!?
何度も告る度に振られたの忘れた訳!?」
「ロボットの下に付くとは人間の恥さらしが!!」
「ロックマンの兄貴達に盾突くたあ太ぇ奴だなオイ!!」
天音を始めとしてこの場の一同が猪狩に罵詈雑言を浴びせるがそれを制するように馬場が前に出る。
そして静かながらも怒りのこもった口調で言い始める。
「猪狩…前々からゲスなところがあるとは思ってたが今回は流石に幻滅したぜ…
あん時の氷藤並のクズに落ちぶれやがってよ…」
ス…
馬場は猪狩に近付くと懐から何かを出した。
それは鈍い光を放つナイフだった。
「…刺せよ!!”覚悟”は決まったからよ!!さあ一思いにブスッと行けよ!!」
「………」
グッグッグッグッグッ…
怒鳴る猪狩を余所に馬場はナイフの刃を猪狩を縛る糸に押し当ててのこぎりのように往復させ始める。
「”嬲り殺し”かよ…いいぜそれでもよぉ!!”仇”は総長が取ってくれるからよぉ!!」
「…中々切れねぇな…」
「は…?」
馬場の放った一言に猪狩は呆気にとられる。
「馬場、恐らくその糸の弱点は熱ですよ」
そこで美音が馬場に糸の事を教える。
ロックマンが特殊武器で猪狩等を拘束したという情報はこの場の一同で共有済みであり、
実際にシルキーガ事件に巻き込まれた美音はこの糸が事件当時に自分達を拘束した糸と同質のものと推察したのである。
「感謝します、お嬢!」
そう言って馬場はライターで猪狩を縛る糸を焼き切る。
「何のつもりだ、”お情け”でもかけたのか!?」
思わず問いかける猪狩に馬場は応える。
「これは決闘だろ!?縛られてる奴を一方的に刺したんじゃ意味ねーだろうが…
それに…お前じゃあるまいしな!」
更に馬場はこの馬場はこの場の一同に向き直り高らかに言い放つ。
「汰威超・赤灯両家の皆々様…これは俺、馬場丁司とこの猪狩進との決闘に付き
何人たりとも手出し無用でお願い申す!
汰威超はハザードベアのケツ持ち、赤灯はマッドボアーズのケツ持ち…
故にこれは子供の喧嘩!
子供の喧嘩に親が出るというみっともねぇ真似をしようとするモンはこん中にはいねぇでしょう!?」
馬場は不敵な笑みを浮かべながらこの場の一同を見渡す。
「案ずるでない、馬場…元よりそのつもりよ」
「俺も同じだ。…猪狩、腹括れや」
志熊が快諾し、赤井もそれに続きつつ猪狩に言い放つ。
「それでは男馬場丁司、この決闘にてケジメ取って参ります!」
馬場は一礼すると猪狩に向き直る。
「猪狩…テメーは今回色々卑怯な真似してきたけどよ…
俺は卑怯な手は使わずその上で徹底的に叩きのめしてやるよ…
そんなに俺に勝ちたいか?そんなに俺が妬ましいのか?
だったらその気持ちを全部俺にぶつけて見やがれ!!」
馬場の怒号に猪狩も怒号で返す。
「ケッ、どこまでもムカつく野郎だぜ…
本当はテメーの相手は総長がする事になってたんだがテメーとやり合えるこの状況は逆に有難いぐらいだぜ…!
待ってたぜ、この”瞬間”(トキ)をよ…!!」
猪狩は本心では他の誰かではなく自分で馬場を倒したかった。
そしてこれも同じく猪狩の本心であるが彼はロックマンに頼りたかった。
何故なら熊害の件で自分が利用しようとしていたウィーゼランは自分の手に余る危険な存在だと思い知ったからである。
このままだと彼の一線を超えた悪事に加担させられる未来が自身に訪れると察した猪狩は
ウィーゼランと理由こそ違えど翔を見逃したのである。
当然これは本人も認めない深層心理である。
ともあれ猪狩とウィーゼランのどちらか一方でも翔を「危険視」していた場合翔は無事では済まなかっただろう。
そして馬場と猪狩は互いに向かって駆け出した…
一方剣と劾はウィーゼランの高速戦闘に翻弄されていた。
「速い…!速過ぎる…!!」
「しかもこの環境は…色々とまずいぞ…!」
現在剣と劾のいる場所は木々の生い茂る公園を横断する都道413号線上で、すぐ近くに歩道橋もある。
ウィーゼランはその圧倒的脚力を活かし木々の枝や幹、歩道橋の側面、信号機などを足場に跳ね回り縦横無尽に攻撃を仕掛けてくる。
その有様は鏡から鏡に乱反射する光や壁から壁に跳ね返る弾丸のようである。
「ここは正にオレの絶対領域ッス!!この勝負貰ったッスよ~!」
ウィーゼランはボルテージを上げていき剣と劾に飛び蹴りやフラッシャーブレードの斬撃を喰らわせていく。
「…そこだ!!」バシュッ!!
劾がウィーゼランの動きを予測した上でバスターを放つも…
「だから当たらないッス~!!」
圧倒的スピードのウィーゼランを捕らえるに至らない。
「俺もいるぞ!!」
剣がロックブレードで斬りかかるもフラッシャーブレードで阻まれる。
力では剣が上回っていたのでこの互いの刃の押し合いでは剣が押し始めるがそれも一瞬。
ウィーゼランがバックステップをする事で剣は前のめりになり一瞬体制を崩す。
それ以降もウィーゼランは地の利を生かしヒット&アウェイで剣と劾を追い詰めていく。
そして…
「さあ時間も押してるッス、そろそろ終わらせるッスよ…フラッシャーブロウ!!」
ブンッ!
ウィーゼランが腕を振るうと前腕部の光の刃が分離して飛来し剣を襲う。
「危ない!!」
ザンッ!!
咄嗟に回避を試みるも飛んできた光の刃は剣のスーツに深い裂傷を刻む。
「神崎ーっ!!」
劾の絶叫が響き渡る。
剣のスーツは内部メカが露出した他、傷の辺りがスパークしており煙も噴いている。
更にはスーツの機能が麻痺して重いロックブレードを持てなくなって落としてしまう。
「止めっス…!」
この状態の剣に襲い掛かるウィーゼラン。
「く…間に合うか…!?」
バスターを構える劾。
その時だった。
ガキン!!
ウィーゼランと剣の間に何者かが割って入ってウィーゼランの攻撃を食い止めたのだ。
言うまでもなくその人物は高機動型ロックスーツを身に纏った玲だった。
玲はナイフ形態のロックナイフ・ガンでウィーゼランのフラッシャーブレードを受け止めており、互いの刃の接触面が火花を散らしている。
その直後両者は反動で弾かれ離れた位置に着地する。
「「沖藍!!」」
「間一髪だったね…バトンタッチだよ、桜井、神崎!」
剣と劾に一声掛けると玲は改めてウィーゼランと対峙する。
「何スか!?もう一人のロックマンッスか!?」
「その通りよ。そういうアンタは猪狩に利用されてるデルタナンバーズだね?」
ウィーゼランの問いかけに玲は応えては問い返す。
「おう、オレこそがデルタナンバーズの一角にしてマッドウィーゼルズ総長、
スプリント・ウィーゼランッス!!
それと…猪狩はこの時代に来たオレに良くしてくれた可愛い舎弟…あいつはそんな奴じゃないッスよ!!」
「見捨てておいて…よく言うぜ…」
ウィーゼランの言葉を受け剣が声を絞り出すように言う。
「あれはお前等との戦いでの流れ弾からアイツ等を守る為に仕方のなかった事っスよ…!
それにこの代々木公園ではこれから”本命の決闘”が待っているッスからね…!」
「本命だって?」
今度は劾がウィーゼランに問う。
「オウ、オレは元々ここで猪狩や罪の無い人間をいじめるドクズ…馬場丁司を決闘でシメる事になってるんスわ…」
「馬場が…ドクズ!?」
玲の問いかけにウィーゼランは憎々し気に語る。
「何でも奴は猪狩の女を横取りしたり罪のない人間に対して殴られ屋の強要、
クソしてる映像をネットに流す、画鋲椅子と画鋲シューズの強要、
殺人犯の加害者家族やロリコンを名乗らせる…とかいうクズの中のクズみたいッス…
そんな輩このオレが許す訳には行かないッスよ!!」
「「「あ…」」」
剣、劾、玲は何かを察した。
最初に口を開いたのは玲だった。
「アンタにその事を吹き込んだ猪狩はね…自分の私怨の為に嘘八百を並べてアンタを利用しようとしてる大・馬・鹿だから!!!
いえ、猪狩だけじゃない…何がしたいのか分からないけどアンタ達デルタナンバーズに
人間の悪い面だけ教えては攻撃させているデルタも同じだから!!
アンタも含めたデルタナンバーズがこれ以上悪事を働くのは私達ロックマンが許さないんだからね!!!」
「……」
玲のあまりの剣幕に現在は自分が叱責の対象になっていない劾が思わずたじろぐ。
しかしウィーゼランは全く気圧される事なくフラッシャーブレードを出現させた両腕を構え玲に言い放つ。
「御託はいいからさっさと掛かって来るッス!デルタまでバカにしやがって、頭に来たッスよ~っ!!」
「必ず…止めてみせる…!」
玲も負けじとロックナイフ・ガンを構える。
そして両者の間で展開される超高速戦闘。
樹上で、広場で、競技場で、池の上で、赤とクルミ色の2つの烈風が吹き荒れ互いがぶつかり合う時には青い火花が散る。
この光景に剣と劾は思わず見とれそうになる。
「は、速いッス…!!このオレと互角以上!?」
「(す、凄い…相手の動きや地形、状況がすぐに把握できる…!
これも…このスーツの力…?」
スピードでウィーゼランに匹敵あるいは凌駕するだけでなく、現在玲は
自分と相手の位置関係や周囲に何があるか、何が起こっているかなどを瞬時に把握して
その都度最適解を導き出す事が可能となっている…即ち頭の回転が速くなっているのである。
この為より的確にウィーゼランに攻撃を当てる事も可能となっており
近接戦闘時はロックナイフ・ガンをナイフ形態にしてそれなりのダメージを与えていき、
遠距離戦闘時では銃形態にして狙撃して1発の威力は低くても確実にウィーゼランを削っていく。
「いや~面白いッス!!人間相手じゃ全っ然張り合い無かったッスからね~!
オレはこういうのを求めてたんスわ!!」
しかしウィーゼランも負けじと玲に食らいつきその都度反撃を見舞う。
そんなある時だった。
「そこッス!」
「甘い!!」
ザンッ!!
迫り来るウィーゼランの右腕を玲が斬り上げて切断した。
切断された腕は宙を舞いフラッシャーブレードが消失する。
「やってくれたッスね~!なら…残った腕の攻撃力を両腕分にするまでッス!!」
ブゥン…
ウィーゼランの左腕のフラッシャーブレードが幅、長さ共に増大し輝きも増した。
本人が先程言ったように両腕に使う分のエネルギーを左腕に集中させたのだ。
「へえ、面白いじゃない…」
今のフラッシャーブレードが現すかのような殺気を向けられながらも
玲は一筋の汗を流しつつ笑みを浮かべていた…
その頃我瑠磨ビルでも死闘が繰り広げられていた。
「オラァ!!」「ブヒィ!!」
ゴッ!ガッ!
「これが高校生の戦いなのか?」
「同じ歳の頃の俺より強いかもしれんな…」
馬場と猪狩の決闘にこの場の一同は息を呑む。
本来の実力差もあり次第に押されていく猪狩だったがしぶとく食らいつき
ある時感極まって思いの丈をぶちまけ始める。
「クソババア…!俺は!!ずっと…テメーが…”羨ましかった”!!
顔も勉強も敵わねぇ!!
唯一自慢のケンカでも勝った事は無ぇ!!
”悪人”(ワル)にしか手を出さねぇ俺が”一般人”(パンピー)に避けられてんのに
”一般人”にも手を出すテメーはハブられる事が無ぇ!!
そんで…遂に天音ちゃんもテメーのもんになっちまいやがった!!」
怒号と共に放たれる猪狩の拳をいなし続ける馬場だったがとうとう顔面に1発喰らってしまう。
しかし食らった箇所は額であり馬場は耐えきっていた。
そして自身の額を捕らえた猪狩の腕に手を添えると馬場は先程の猪狩の言葉に応え始める。
「お前が俺に嫉妬してんのは前々から知ってたよ…
だから俺の悪評流した事は百歩譲って大目に見てやるよ…
だがなあ!!!」「ブヒ!!」
ズダァン!!
馬場が猪狩に一本背負いを決めた。
即座に馬場は猪狩に馬乗りになって拳を固める。
「俺の仲間に手ぇ出した事は…絶対ぇ許せねぇんだよ…!!
これは蜂塚(はちづか)の分!!」
ゴッ!!「ブヒ!」
馬場の渾身の拳が猪狩の顔面に炸裂する。
「これは棘輪(とげわ)の分!」ガッ!!「ブヒ!」
病院送りにされた舎弟の名前を叫びつつ馬場の殴打は尚も続く。
「これは楼戸(ろうど)の分!」ドッ!!「ブヒ!」
「これは土坊(どぼう)の分!」ベキッ!「ブヒ!」
「これは蛇民賀(じゃみんが)の分!」バキッ!「ブヒ!」
「これは暮屋(くらしや)の分!」ズドッ!「ブヒ!」
「これは願母(がんぼ)の分!」ガン!「ブヒ!」
「これは梵日(ぼんび)の分!」ドカッ!「ブヒ!」
「そしてこれは…初代(熊害)の分だぁっ!!」ドゴッ!!!
「(”重い”…そして…”熱い”…ぜ…)」
ガクッ…
文字通り顔面がボコボコになった猪狩は遂に意識を手放した。
「押忍!!」
馬場はこの場の一同に向かって一礼する。
玲とウィーゼランの死闘にも終局が迫っていた。
二人の戦闘は代々木公園の身に留まらず明治神宮にまでなだれ込んでいた。
そんな中玲がふとウィーゼランに尋ねる。
「ねえ、どうしてデルタは人間を色眼鏡で見たり、アンタ達をけしかけようとしているの?」
その口調には敵意とは異なる強い意志が宿っている。
「それはデルタが世の中から悪を排除し幸せな世界を実現させる為っス。
オレ達レプリロイドはその目的の為に人間の敵として送り込まれたんスわ」
「…!?待って、おかしくない?レプリロイドが人間の敵?普通逆じゃない!?」
ウィーゼランの答に玲は違和感を抱く。
「ま、オレは不良ッスからそんな任務なんかにゃ興味がないし…不良の世界で天下取る道を選んだんスけどね」
ウィーゼランの返答に対し玲は憤りを露わにする。
「アンタが従えていたチームの人達、みんな怯えてたよ…
どうせ力で無理矢理脅してたんでしょ!?」
「それは…」
思い当たる節があるウィーゼランは言葉に詰まる。
「いい!?力による解決は時と場合によっては必要かもしれないけど、
それだけじゃ人の上に立つ資格なんて無いんだからね!!」
玲の言葉はデルタにも向けられた言葉である。
事実汰威超組も仁義外れな輩には暴力を行使する反面地域の人々を恐怖で支配しているという事は無く
志熊、強、幹部達も舎弟達からの人望は厚い。
その傘下にいる馬場も同じで自分がちょっかいを出した生徒に飲食物を奢ったり
なにか困っている生徒がいたら面倒を見たりといった行動も見られ
いじめなど以ての外であった為に周囲から疎外される事はなかったのだ。
「ゴチャゴチャうるさいッス!!結局最後には力が物を言うッス~!!」
しかしウィーゼランはムキになって玲に迫る。
「馬鹿…!」
そんなウィーゼランを玲は迎え撃つ。
互いのボルテージは極限まで高まった時、両者は明治神宮の鳥居の上の両端に立ち、睨み合う。
「これで…決める!!」
「かかって来るッス!!」
ダッ!!
暫しの静寂の後互いが互いに向かって駆け出し、交差する時それぞれの刃を振るう。
スタッ!
その後玲とウィーゼランは先程とは互いに入れ替わった位置に着地する。
「何…ス…か…当たった…筈なのに…全く…手応えが…!?」
ウィーゼランは玲を確かに斬り付けていたと思い込んでいたが
その瞬間は影を切るかのように全く手応えが無かったことに違和感を感じていた。
次の瞬間…
ブシュッ!!
「な…に…」
ウィーゼランのボディに深い裂傷が入る。
玲はフラッシャーブレードが振るわれるギリギリの瞬間まで引き付けてから最小限の動きで回避し、すかさず反撃したのだ。
傷は動力炉に達し勝敗は決した。
「オレの…負けッス…赤い…ロックマン…」
そう言い残しうなだれて崩れ落ちるウィーゼランのボディを玲が駆け寄って受け止めた。
「博士、デルタナンバーズの撃破、完了しました。今からボディを送ります」
玲はシェリーに通信を入れ、ウィーゼランのボディを転送させる。
「ご苦労様、レイ。彼も修理しなきゃね」
シェリーが感謝を伝える。
「博士、ロックスーツを駄目にしちゃって…ごめん」
劾と共に玲の位置に自分達を転送させていた剣が謝罪する。
「そんな事よりツルギ君自身が無事で本当に良かったわ!」
涙ながらに安堵するシェリー。
「これより帰投します」
劾が通信を入れた直後、玲が続いて
「私は寄る所があるので多少遅れます」
と一言断る。
そして剣と劾は帰投し、玲は「寄る所」へと向かう。
玲が向かったのは我瑠磨ビル。
「う…うう…」
決闘が終わって暫く経った後猪狩が目を覚ます。
「目ぇ覚めたか?お前の『総長』はロックマンに負けたらしいぜ」
「そうか…(何でだよ…何で俺は”安心”してんだよ…!?)」
冷静にウィーゼランが負けた事実を猪狩に告げる馬場。
猪狩であるが上記の心理故内心では安堵しつつ頷く。
猪狩は暫しの沈黙の後覚悟を決める。
「俺のことは”好きに”しても構わねぇ…だけどよ…俺の舎弟達は”見逃し”(リリースっ)てくれねぇか…アイツ等は…
至らねぇ俺が”巻き込ん”じまっただけなんだ…」
「テメーうちの舎弟を病院送りにしといて自分の舎弟は見逃せ…だ!?
そりゃ虫が良すぎんじゃねーのか!?」
「ううう…」
凄む馬場に対し猪狩は絶望しかけるが…
「何て言うと思ったか!?お前じゃあるまいし!」
先程自身が言った事を否定するとこの場の一同に向き直る。
「両家の皆々様、この度の一連の騒動は飽くまで謎のロボットが引き起こしたもの!!
それ故に被害者でもあるこの男には出来る限り寛大な処遇をお願い致しやす!」
深々と頭を下げる馬場。
彼に異を唱える者は誰もいない。
「な、なんだよ、”お情け”でも掛けて”マウント”取る気かよぉ!?」
惨めな想いをした猪狩は思わず馬場に問う。
「勘違いするな、お前との因縁を謎のロボットの横槍で終わらせたくねぇだけだ」
馬場は冷静な口調で応じる。
「クソババア…どこまでもムカつく野郎だぜ…!」
「猪狩の兄貴…!!…!?」
悪態をつく猪狩に対し翔は一瞬拳を固めるがすぐにハッとする。
「これじゃあ…認めるしかねぇじゃねーかよ…テメーが…”一握り”だってよぉ…ブヒィ…」
猪狩は冒頭のように嗚咽する。
「一握り?何のことやら…」
馬場が呆れていると猪狩は赤井に向き直る。
「親父…この度は醜い嫉妬心に駆られてやらかしをしてしまい、謝罪の言葉も見つかりません…今まで…お世話になりやした…」
猪狩は赤井に別れの挨拶をするが…
「嫉妬…結構な事じゃねぇか…」「親父?」
赤井の思わぬ一言に猪狩は唖然とする。
「誰かを羨む気持ちは己を向上させる原動力になる。
嫉妬心が無けりゃ進歩も向上も何も無ぇままだ…
あちらさんの馬場くん程の漢を見返すのは容易じゃあねぇ、
だからお前は今回のロボットの存在を『近道』だと思ったんだろうな…
それで道を踏み外しちまいそうになったんだな…
俺はお前のひたむきさをよく知っている、
そのひたむきさで正しい道へと突き進んでいけば馬場くんを見返す程の漢になれるだろうがそれには道標が必要だ…
だからよ、これからも親として子供のお前を正しく導かせちゃくれねぇか?」
「オ゛ヤ゛ジィィィイ~~~~~~~!!!!!!!!!
ブヒィ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」
号泣し縋りつく猪狩を赤井は優しく受け止める。
「ウ…ウウ…ハッ!!ビ、ビベバン…ウビノアニピバズビバベンデジダ!!」
「フフ…構いませんよ」
この光景に感動して泣きかける翔だったが側に美音がいる事に気付き、滑舌が悪くなりながら謝罪し美音は微笑みながら返答する。
「どうやら、私の出番は無かったみたいだね…」
この一連の流れを物陰から見ていた玲は帰投した。
その直後。
「だけどよぉ、損害を与えた分は自分で償って貰うぜ?」「へ?」
ニッコリとほほ笑む赤井。
一方で猪狩を除く路上で捕縛されていたマッドウィーゼルズ構成員達は汰威超組並びに赤灯会の構成員達が手分けして救助した。
その際両組織はロックマンに恩義があるという事もありマッドウィーゼルズ構成員達はこってり絞られたという。
後日…
新宿区二丁目。
「先輩!終わりやした!!」
「そうか、じゃあ次の配送行こう、な!」ジュルリ…
ゾクッ!
猪狩は「マッドウィーゼルズ事件」で実害を受けた熊害の会社「シシマル運送」で
損害を与えた分だけ働く事となっていた。
肉体労働は猪狩には苦では無かったが苦しかったのは社員たちの自分への視線やスキンシップ。
そう、このシシマル運送の社員は全員熊害と同じ道の人であり、雰囲気も熊害に似ているのだ。
「赤井の旦那に免じて今回はこれで勘弁してやるけどよぉ、次は無ぇぜ!!
『自分を売る』つもりがあんならまたやらかしてもいいけどな、ガハハハハハ!!!」
「ハ、ハヒ…」
早々に職場復帰した熊害から圧を掛けられる猪狩はイノシシというより最早借りて来た猫のようである。
「この間の外道並に上玉じゃねぇか…へへへ…」
「一時しかいねぇのが勿体ねぇぜ…!」
「この辺がセクシー…エロい!」
図らずも「モテ期」が到来した猪狩だったが当の本人はと言うと…
「(男にモテても…嬉しくねぇ~っ!!!!!!!!!)」
内心絶叫しつつも猪狩はこの件で己を磨く事を固く誓ったのであった…
渋谷区のショッピングモールでは…
「馬場…!」
劾と馬場がばったり会った。
「桜井じゃねぇか、この間カツアゲした金だけどよ…」
申し訳無さそうに言う馬場に劾は僅かに期待する。
「この金でチーム全員の退院とロックマン勝利の祝賀会を開催する事にしたぜ、お前も来いよ!」
因みに参加者には劾の知り合いも多く、更に劾自身がロックマンである為悪い気がしなかった。
「ハハ、何だよそれ…」
苦笑いを浮かべながらも劾は快諾し祝賀会の日時と場所の情報を共有する。
檜町公園では…
「博士、ウィーゼランとの戦いで改めて気になったんですが…デルタは最初から人間に危害を加えるつもりはなくて…
何かがきっかけで人間を攻撃するようになったんですよね?」
気分転換に玲とシェリーが出かけており、その際玲が尋ねる。
「そうね、それこそ最初は赤ちゃんみたいに無知な分無垢で、
学習を経て様々な知識、それから常識を身に着けていったわ。
善悪の区別もつき私への愛情を示すようになって…」
応えるシェリーは幸せだった頃を振り返りながら言う。
「そんなある時、デルタに『異変』が発生した、と…」
真剣な眼差しで玲が言う。
シェリーは過去を振り返りながら最もその原因と思われる出来事を口にし始める。
「それはタイムマシンの実験の時だったわ…
デルタの乗った実験機にエラーが発生して予定した時間より遅く戻ってきたのだけど、
その時のデルタはまるで絶望しているかのような顔をしていたの。
本人に聞いても『ボディの過負荷』の一点張りで
それ以降デルタは徐々に普通に振る舞うようになっていって、
私もそこまで大事と捕らえなかったのだけど…今ではそれしか考えられないわね…」
「タイムマシンの…実験の…事故…」
玲はデルタがそこで途轍もなくおぞましいものを見てしまった事を察し、戦慄する。
シェリーの記憶の中の事故当時のデルタの顔はまるでこの世の終わりかのような深い深い絶望を現していた。
デルタを狂わせた「何か」は、現時点ではデルタのみぞ知る。
続く