8月初頭、偽ロックマンが現れた事とは別に東京都内では2つの異常な事態が発生し始めていた。
1つは都内の各地の河川で川の流れを勢いよくかき分け超高速で突き進む物体が視認され始めた事である。
これに対し巷ではUMA説が流れ始める。
「隅田川に現れたからスミッシーだ!」
「神田川に出たからカンダッシーだろ」
「渋谷川で見たぞ!だからシブヤッシーだ!」
目撃情報の数は隅田川が一番多かった為「UMA」の呼称は一まず「スミッシー」で落ち着いた。
もう1つは港区で危険ドラッグの服用者が8月に入ってから度々現れるようになったのだ。
8月2日、氷藤が友人らと道を歩いていると、彼等の眼前に明らかに目がイっている男が爆走しながら現れた。
男は手に箒を持っており、箒で地面を左右に勢いよく掃きながら
「お出かけですかぁ~、しぇしぇしぇのしぇ~!!!」
と奇声を上げながら氷藤らに箒で殴り掛かってきたのだ。
「何だあっ!?」
男は凶暴かつ怪力だったが相手が複数だったので敢え無く取り押さえられた。
「こいつ、目がイってるぞ!?」
「ここ港区を仕切る荒波組(あらなみぐみ)じゃヤクはご法度だったはず…
って事は喪亡悪堕無(モナークダム)の仕業か!?」
「ホント裏社会に詳しいなお前…」
氷藤が自身の憶測を口にする。
喪亡悪堕無とは港区で活動する商業系半グレであり、巣蹴縷沌に負けず劣らず欲深い集団である。
そして氷藤の憶測は当たっていた。
7月末、喪亡悪堕無は荒波組と抗争になり、同組織に勝利したのだ。
金の力で勢力を拡大してきた事が喪亡悪堕無に勝利をもたらしたのである。
「ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ!!!!これで今日から港区は名実共に俺達のシマなのさん!!」
地に倒れ伏す荒波組組長、真古井(まこい)を見下ろし高笑いをするのは背こそ五里石や熊害に匹敵するものの細身の体型で
頭頂部が左右に分かれもみあげの先端と三つ編みにした後ろ髪の先端が渦巻いている髪型で眉の内側と顎鬚の先端も渦巻いており、口は世に対する不平不満を表すかのように突き出ている男…
喪亡悪堕無のボス、芦戸辰海(あしどたつみ)である。
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彼は氷藤の蛙陰減瑠弥流復活の話を速攻で嘘だと切り捨てた男と同一人物である。
タチの悪い事に彼は実業家としての表の顔を持っている他、腐った警察とも繋がっているのだ。
その時、真古井が声を振り絞って言う。
「お前ら…タダで済むと思うなよ…ウチの友好組織には…」
言いかける真古井の側頭部に何者かが放った鎖分銅が直撃し、気絶させる。
攻撃の主はもみあげを長く伸ばし後ろ髪が8束に分かれている髪型が特徴の美女だった。
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彼女は女性ながら喪亡悪堕無のナンバー2の座に就く保田理香(やすだりか)である。
「負け惜しみとは何とも見苦しいではないか!!アッハッハッハッハ!!!」
高笑いをする保田。
「これで目の上のタンコブが消えた…これまで長かったなあ、理香…」
「はい、これに満足せず周辺の区も傘下に加えていこうじゃなイカ…」
「一緒にヤクとかチャカとかばら撒くのさん!」
互いに見つめ合い目に涙を浮かべながら言葉を交わす芦戸と保田。
そんな二人を喪亡悪堕無の一般構成員も涙ながらに見守る。
「俺達の苦労はこの日の為にあったんだ…」
「あんなに苦しんできたんだ、報われてもいいよなぁ…ウンウン」
これを境に喪亡悪堕無は新たなヤクのルートを開拓していく。
8月1日、汰威超組に1本の電話が入る。
電話の相手は荒波組若頭、陣部(じんべ)だった。
志熊自らそれに応対する。
「荒波組の若頭か…その口調から見るに只事ではないようだが…」
「はい…ウチのシマで喪亡悪堕無の連中とヤクを巡った抗争になりやして…
面目ねぇですが負けちまいやした…
オヤジも殆どの組員も入院中…
連中の勢力は日々拡大し最早ウチらの手には負えやせん…
そこでお願いもうしやす…どうか…ウチの組の仇を取って頂けねぇでしょうか…!!」
「荒波組の頼みとなれば断れんな、なら喜んで引き受けよう」
陣部の頼みを志熊は快諾し、その後幹部や構成員にこの事態を伝える。
「そりゃ許せませんぜ!!」
「俺もあの組には世話になってるからな…!」
「奴等の事だから放っておいても渋谷区にも塁が及んじまう…その前に先手を打ちやしょう!!」
汰威超組の構成員達は打倒喪亡悪堕無に意気込む。
その時一人の恰幅のいい男が名乗り出る。
「親っさん、この件ワテに任せて貰えまへんでしょうか?」
「蟹江か…」
名乗り出たのは幹部の蟹江泡作(かにえほうさく)である。
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彼は闇金をシノギにしており、戦闘では強アルカリのシャボン玉を放つバブルガンと切れ味抜群の枝切り鋏を用いる。
「ヤクを買う客は借金をこさえてでも買う客はごまんとおりますねん。
その債権を全てワテが買い取ってそれを喪亡悪堕無から取り立てればごっつ儲かりまっせ」
「悪い話ではないな…いいだろう、この件はお前に任せよう」
「毎度~!!」
かくして喪亡悪堕無の件は蟹江が担うこととなった。
8月8日、偽ロックマン事件が収束すると共に冒頭で述べた2つの異常な事態はより顕著に発生するようになる。
そんな中、氷藤はほんの一瞬ながら渋谷川を突き進む「スミッシー」を目にした。
しかも詳細な姿こそ見えなかったがその外観からしてロボットである事も分かった。
「!!」
氷藤は慌ててスマホのシャッターを切ったが時すでに遅し。
撮られた写真はもうじき消える激流の跡が映っているに過ぎなかった。
彼は自分の信頼の無さを自覚している為、こうなったらやる事は1つである。
「大変だ、またロボットが現れやがったぞ!!スミッシーもこいつで間違いない!!場所は渋谷川だが…とんでもねぇ速さだ!」
氷藤は剣のアカウントに連絡を入れる。
「(氷藤か、この様子だと嘘じゃないな…)分かった、すぐ向かう!」
剣はすぐ承諾し、出撃の前に劾達にも一報入れる。
「デルタナンバーズだね、僕も行くよ!」
「私も行く!しかし、うすうす感じてたけどやっぱスミッシーはデルタナンバーズだったんだね…」
「俺も行きやしょう!まさかとは思うが最近のヤク問題と関係あったら許しませんぜ!!」
それぞれ別の場所にいた劾達は全員出撃を決意。
余談ではあるが翔の所属する赤灯会でもヤクはご法度である。
ともあれロックスーツを起動した剣達4人は、2台新たに製造され4台となったロックチェイサーで現場へと向かう。
モニターを注視するシェリーとこまめに連絡を取りつつ、ロックマン達はスミッシーこと新たなデルタナンバーズを追跡し
最終的に首都高が架かる地点で劾が川から顔を出す「何か」を目にした。
「間違いない、デルタナンバーズだ…!」
劾の眼前に佇む「それ」は外観からしてこれまでのデルタナンバーズの特徴と一致しており
色はピンクが基調であり、全体的にドレスを纏ったキャバ嬢のような外観ながら頭部と胸部のアーマーの並びに
背中から生える推進装置と思しきパーツの形状は金魚を連想させる。
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「皆、いたぞ…」
この時ロックマン達は散開しており、その為劾は他の3人に連絡しようとしたが…
「あー、ロックマンがいるー!こんにちはー!」
金魚型レプリロイドが劾を視認し、声を掛けてきたのだ。
「気づかれたか…!」
身構える劾だったが金魚型レプリロイドのリアクションは彼の想定とはまるで異なっていた。
「別にそう構える事ないよー、わたし、あなた達と戦う気はこれっぽっちも無いん
だから」
「…えーと、君はデルタナンバーズなんだよね…?」
呆気に取られ一瞬沈黙する劾だったが落ち着きを取り戻すと眼前のレプリロイドに尋ねる。
「そうだよー、わたしはストリーム・レオゴルド。任務の視察でここに来てるんだけど、それは建前。
デルタの任務なんか本当はぜぇーんぜん興味ないんだ」
全く戦意を感じられずそれどころか友好的とさえ言えるレオゴルドの物言いに劾はたじろぐも質問を続けようとする。
「それで、任務ってどういう…」
そんな中他のロックマン3人が劾の元へ駆けつける。
「そいつが今回のデルタナンバーズだな!?」
「何を話し込んでいるの?」
「どうしたんですかい、青兄貴!?」
剣、玲、翔が怪訝な顔をして劾に問う。
劾は3人に向き直ると一言言う。
「聞いてくれ、彼女、ストリーム・レオゴルドは僕達に敵意もないしデルタの任務を遂行する気もないみたいだ」
「あ、他のロックマンもいるー!デルタから聞いた通り本当に4人いるんだねー。
この青いロックマンの言う通り、わたしは戦う気も任務の為に暴れる気も全然無いよー」
レオゴルドは剣達に対しても友好的に振る舞う。
「…前に戦ったウィーゼランもデルタには忠実じゃなかったけど…私達と戦う気もないなんて…」
玲もレオゴルドの物言いに当惑する。
「俺はこの渡世を渡り歩いてきて、無害を装う糞野郎は目を見りゃ分かるようになりやしたが、
こいつからはそれがちっとも感じられやせん。
何というかこれには人間もレプリロイドも無ぇんですね」
翔がつぶやく。
事実翔は無害を装う外道を何人も目にしてきてその都度見抜いていたが、
やはり眼前のレオゴルドからは敵意や悪意が感じられない。
「さてどうしたものか…」
剣も頭を悩ませる。
レオゴルドを放置すればデルタが無理矢理彼女に任務を遂行させる可能性も捨てきれず氷藤のように一般人に不安を煽る恐れもある。
かと言って問答無用でレオゴルドを撃破する程非情になりきれない。
劾達は元よりデルタ並びにデルタナンバーズの存在そのものを否定しているわけではなく、こちらに敵対しないのは望んでもいない事だからである。
こうした理由でロックマン達がレオゴルドの処遇について悩んでいると…
「ねえ、立ち話もなんだから泳がない?とっても楽しいよー?」
ガシッ!
レオゴルドが一番近くにいた劾の手を掴んだ。
「…え…?」
次の瞬間…
ドババババババババババババババババ!!!!!!!!!
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
レオゴルドが劾の手を掴んだ状態で再度超高速で泳ぎ始めたのだ。
「桜井!」
思わず玲が叫ぶ。
「追うぞ!」
剣が指示する。
「青兄貴ーっ!!(ん、桜井?)」
翔は慌てながらも初めて聞く青いロックマンの本名に既視感を覚える。
そして3人のロックマンはロックチェイサーで川を超高速で突き進む劾とレオゴルドを追う。
劾は劾であまりの速さの為絶叫マシーンを超える恐怖を感じていた。
レオゴルドを振りほどこうにも思いの外彼女の握力が強くて振りほどけない。
そしてこの光景は一般人の目に止まる。
「あれは…青いロックマン!!もしかしてスミッシーに攫われているのか?」
「路上には白と赤と黒のロックマンがいるぞ!4人になったというのは本当なんだな…!」
「これはシャッターチャンスだ!…ああ!遅かった!速すぎる…!!」
「わあっ、水が…!!」
珍しい光景に目を奪われる人が多かったが近づきすぎた者はレオゴルドが放つ強烈
な水しぶきを喰らってしまう。
「まずい…どこまで行くんだ!!」
「海に出たらどうしよう…!」
「最悪狙撃するか…!?」
剣、玲、翔が思考を巡らせつつ追跡していると、人気のない場所でレオゴルドは止まった。
「ゼェ…ゼェ…」
「ごめーん、ちょっとはしゃぎすぎちゃったー」
青い顔でぐったりしている劾の周辺をレオゴルドが周回している。
「レオゴルド!アンタの出した水しぶきを被った人もいるし、青いロックマンも怖がってるし…こういう事しちゃダメでしょ!彼はこう見えてビビりなんだから」
追いついた玲がレオゴルドを叱る。
「ごめんなさーい…」
レオゴルドはしょげる。
「そりゃないよー…僕は大丈夫だから」
未だに恐怖が残っている劾が玲に向き直って言う。
「一時はどうなるかと思いやした…」
翔が胸を撫でおろす。
「…で、その任務とかいうのは何なんだ?」
剣は改めてレオゴルドに問う。
するとレオゴルドは気まずそうに答える。
「…東京港の…破壊だよー…」
「「「「!!!!!!」」」」
ロックマン達は戦慄するが、レオゴルドは改めて自身が任務を遂行する事を否定する。
「さっきも言ったけど、わたしはそんな事をする気もないし、むしろ嫌だよ!
わたし、人間と人間の暮らしに興味があるから…」
レオゴルドは悲しげながら強い意志を込めて告げる。
「レオゴルド…」
劾は改めてレオゴルドがデルタに反目している事を実感する。
他3人も同様である。
そしてロックマン達がレオゴルドの処遇について話し合い始め、この話し合いを基地にも繋ぐ。
「何?スミッシーが水中用レプリロイド?人間に興味ある?
俺もそいつに興味があるぜ!」
「魚原の兄貴!」
話し合いの中で、基地に来ていた赤灯会幹部、魚原飛雄が食いついた。
「今から向かうからよ、待ってな!」「押忍!」
魚原は劾達の元へと向かう。
その間、劾達はまずレオゴルドと「任務」に関する話をする。
「東京港の破壊の手段について教えてくれないかい?」
「1つは、わたしの武装、『ストリームフリッパー』で海に渦を発生させるの。
この装備はわたしが尾鰭から出した水流の向きを変えられるんだよー。こうやってね」
レオゴルドは扇子のような道具を出現させ、尾鰭のテールスラスターから水流を発生させるとストリームフリッパーを振るう。
すると水流の向きが変わり渦を生成する。
「「「「ああああああああああああああああああああああああああああああ」」」」
今度は4人のロックマン全員が巻き込まれる。
「…フラッシャー・ブロウ!」
激流に流されながらも玲がロックナイフ・ガンからウィーゼランの特殊武器、フラッシャー・ブロウを放つ。
その結果青白い光の刃が波を引き裂き、渦の中心のレオゴルドが露になる。
「ストリングバインダー!」
玲はすかさず波が再び合流する前にストリングバインダーでレオゴルドを拘束し、
その結果渦は消滅する。
「やーめーなーさーい!」
「ごめんなさーい…」
玲は叱りつつもレオゴルドの糸を切っていき、レオゴルドは先ほどよりもしょげる。
「確かに凄いパワーだ」
「こんなのを東京湾でやられたら不味いことになるぞ」
「でもアンタはそれを実行しねぇ、と…」
劾と剣はレオゴルドの渦の強烈さを評価し、翔はレオゴルドに問い質す。
「そうだよー、わたしはやらないよー。
でも任務を遂行するのはわたしだけじゃないんだよー」
「今までのデルタナンバーズみたいに手下のロボットもいるのか?」
剣が問う。
「そうだよー、わたし達デルタナンバーズとデルタが従えているロボットは
『メカニロイド』と言って意志は無いんだよー。
弱いけど沢山いるのが『デルタアタッカーズ』と言って強いけど1体しかいないのが『デルタストーマーズ』って言うんだよー。
その中の2体はプログラムで体がないから他の機械を操らなきゃならないんだってー」
「デルタストーマーズ…か…」
剣達はこれまでの戦いを振り返り思い当たる存在がいる事を思い出す。
レオゴルドは続けて説明する。
「デルタナンバーズは全部で9体いて、それぞれ1体ずつデルタストーマーズを従えていて、
デルタは2体従えているよー。
わたしのデルタストーマーズは『デスラジク』と言って凄く大きくて武装も強くて
とっても頑丈なんだよー。
もしわたしが任務を遂行しなければデルタはデスラジクだけでも任務に行かせると思うから、その時はわたしが止めるよー」
「これまでのデルタストーマーズは皆一筋縄じゃいかなかった。
だからその時は俺も協力させてくれないか?」
剣がレオゴルドに協力を申し出る。
「僕も協力するよ」「私も。一緒にデスラジクと戦いましょう」
「そんなヤバい奴を食い止めるのは人数が多いに越したことは無ぇ」
劾、玲、翔もそれに続く。
「大歓迎だよー!」
レオゴルドは喜びを露にして快諾する。
「君は本当に人間の事が好きなんだね、デルタナンバーズなのにも関わらず」
レオゴルドの様子を見た劾は親しげに言う。
「あなた達も人間の事が好きなんだねー、レプリロイドなのにも関わらず」
「「「「????」」」」
ロックマン達はレオゴルドの言った事に違和感を覚えるが、それに気づいた劾が真相を口にする。
「僕達は、人間なんだけど…」
「えー、レプリロイドだと思ってたー」
驚くレオゴルドに劾が続けて説明する。
「このロックスーツはシェリー博士が開発したパワードスーツなんだ。
ロックマンも本名じゃないんだよ」
「どれどれ、ほんとだー、柔らかーい」
「うわっ」
レオゴルドは劾の頬や玲の尻を触り始めて慌てさせる。
そして翔の股を触ろうとした時…
サッ!
「それ以上いけない」
玲が手を伸ばしレオゴルドの手を遮った。
「ごめーん、それじゃあ名前は何ていうの?青いロックマン、白いロックマン、赤いロックマン、黒いロックマンじゃ呼びづらいでしょ」
「………」コクッ
劾、剣、玲は互いの顔を見合わせ暫し沈黙した後頷いた。
いつかは明かす、もしくはバレる事だしこのまま自分達の素性だけ翔に隠すのは水臭いという想いからこの場で本名を名乗ることを決断したのだ。
「僕は桜井劾っていうんだ」
「俺は神崎剣だ」
「私は沖藍玲っていうの」
「!!!!!…ゲホン、俺は鷹山翔ってんだ」
衝撃を受けた翔は咳払いした後に名乗る。
そして翔は劾達に向き直る。
「青兄貴、桜井って事はあの桜井刑事(デカ)の息子さんじゃあありやせんか?」
「そうだけど…」
「道理で親父さん譲りのガタイの良さな訳だ…」
翔の問いに劾が答えると次に翔は玲に問う。
「赤姉貴、沖藍って事は汰威超組の初代親分のお孫さんで、沖藍竜太さんの娘さんって事ですかい!?」
「…そうだよ、この事は絶!対!お父さんと伯父さん、志熊組長に言っちゃダメだからねー」
「わ、分かりやした…!」
玲の返答に翔は戦慄しながら応じる。
続けて翔は神崎に問いかける。
「白兄貴の名前だけは渡世じゃあ聞きやせんね…」
「そりゃそうだ、俺の親父は堅気だからな。だが乃梓公園でお前を止めたのは俺だ」
「あー、そういや確かに顔が一致しますぜ!!!」
その後翔は余りの情報量の多さにしどろもどろしていたが、暫くすると
両手を膝に当てて深く礼をする。
「…改めて、宜しくお願いしやす!桜井の兄貴!神崎の兄貴!沖藍の姉貴!」
「ハハ…」
劾が少々困り気に笑っていると川の向こうから声がする。
「おーい、待たせたなーっ!!」
ババババババババ…
川の向こうから現れたのは水上バイクに乗り髪を後ろにまとめ魚のような顔をした劾より背が高い長身痩躯の男だった。
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「魚原の兄貴!」
翔の言葉の通り彼が魚原だったのだ。
「紹介するぜ、この人は魚原飛雄、俺の兄貴分の1人だ。
魚原の兄貴、彼女はストリーム・レオゴルドですぜ」
翔は魚原とレオゴルドにそれぞれの紹介をする。
「ショウのお兄さん?似てないねー。レプリロイドのわたしが言うのもなんだけど」
「「(そういや神崎は両親のどっちにも似てなかったな…)」」
「?」
劾と玲は剣の両親を見かけた過去を思い出し、彼をチラリと見る。
レオゴルドの言葉を魚原が否定する。
「違ぇよ。俺達ヤクザは組長を親と同様に慕って縄張りを守る集団で、
組長が親と同じなら同じ組の組員は兄弟同然ってわけよ」
「「(そういや神崎は両親のどっちにも似てなかったな…)」」
「?」
劾と玲は剣の両親を見かけた過去を思い出し、彼をチラリと見る。
その時魚原がレオゴルドに一言。
「しっかし本当に人間に敵意が無ぇんだなぁ」
レオゴルドはデルタへの憤りを織り交ぜて答える。
「デルタはね、人間はこの間の巣蹴縷沌とか喪亡悪堕無みたいな欲張りな種族で
自分の欲を満たす為なら平気で悪さをしたり環境を壊したりする奴ばっかりだって言うんだよー。
明日は喪亡悪堕無が輸入した『危険ドラッグ』が東京港に沢山届く日だから、
これを機に東京港を破壊して欲張りな人間を懲らしめてしまえって」
「嬢ちゃんの所の親分は何考えてやがるんだ、人間の皆が皆巣蹴縷沌や喪亡悪堕無みてぇな連中な訳無ぇのによぉ」
魚原もデルタに憤慨する。
「わたしは十分分かっているつもりだったし、ロックマン達を見てもっと良く分かったよー。
だからもしもの事があったらデルタから人間の街を守るよー」
レオゴルドは改めて自身の決意を口にする。
「人間の街好きかい?」
「うん、大好きだよー!」
魚原の問いにレオゴルドはにこやかに答える。
「よっしゃ、ここは俺が川から見える人間の世界を案内してやろうじゃねぇか!
付いてきな!」
魚原がレオゴルドに人間の世界の案内役を買って出る。
「おっと、変に目立つと良く無ぇからこれを使いやしょう」
翔が数体のサテライトアイを出現させ、自分達の周りに配置し、ある程度離れた場所からは見えないようにする。
こうしてロックマンの内玲と翔は水上バイクの後部座席に乗り、
劾と剣はレオゴルドに掴まりながら川を下り始める。
「この小さい三又槍みたいな道具は髪の毛を解かす為の道具なのー?名前は何て言うのー?」
レオゴルドが川底に落ちていたフォークを拾い上げ興味津々に言う。
「ㇵッハッハ、そいつはフォークって言って食事に使うもんだ」
魚原が笑顔で答える。
暫くすると今度は川原に捨てられた本の山があるのを目にする。
「この本は何なのー?」
見るとそれらの本はいかがわしい内容の本だった。
「それ以上いけない」
剣がレオゴルドの目を塞ぐ。
「全くけしからん、こんな本は若者の教育に良く無ぇな!俺達大人がキッチリ回収しねぇとな!」
キリっとした表情で魚原が言う。
その後本の山は魚原にキッチリ回収された。
「このオシャレな袋はなーに?」
次にレオゴルドは川底からカッコいいパッケージの袋を拾い上げる。
「それは…危険ドラッグだ。この薬を使うと一時気持ちよくなるが結果として
身も心もボロボロになっちまう。
喪亡悪堕無みてぇな悪い人間はこいつ等を売って金を儲けているのさ」
魚原が顔を曇らせて言う。
「アンタはさっきから川に落ちてるゴミに興味持ってるけど、
川にゴミが落ちてるのは本来いけない事なんだよ。
他の生き物が迷惑するし時には人間の健康にも悪い事が起こるんだからね」
「そーなんだー…」
玲が加えて説明するが、廃棄されたゴミは違う時代や文化のものが見れば
その文化を知る資料となってしまう為レオゴルドが興味を持つのは無理もなかった。
暫く進むと一行は遠巻きに芦戸が映る看板を目にする。
「あ、芦戸辰海だー」
思わずレオゴルドが一言。
「へー、芦戸辰海って未来にまで名を残してるんだー」
劾が感心しているとレオゴルドは爆弾発言を放つ。
「そりゃそうだよ、芦戸辰海は喪亡悪堕無のボスなんだからー」
「えええええー!?」
劾は目を丸くして驚嘆するが、他の者は冷静だった。
「前々から怪しいとは思ってたが、やはりクロか…!」
魚原が顔を顰める。
「私も直感的に怪しいとは思っていたけどね…」
玲も芦戸を疑っていた。
「こういう大物が裏で何かやってるのはよくある話だしな」
剣が呆れた顔で言う。
「裏の世界の情報でも芦戸が何かやってるってのがちいっとばかしありやしたが、
これで裏が取れやしたね!」
翔の表情と声には怒りと喜びが同時に込められていた。
やがて海に出ると魚原は潜水用の装備を纏いレオゴルドと海に潜る。
そしてある生き物を目にした後再び海上に顔を出した魚原がその生き物の説明をする。
「これはナマコっつってな、こう見えて結構美味ぇんだ。俺のシノギの1つはこいつらを獲る事さ」
「『美味い』とかシノギとかいうのはよく分かんないけど変てこな生き物だねー」
レオゴルドはにこやかに応じる。
そして日も暮れ解散の時となった。
「今日は本当に楽しかったよー、皆ありがとうねー」
レオゴルドが劾達に礼を言う。
劾は笑顔で返す。
「僕も楽しかったよ、川や海から普段住んでる街を見る事は新鮮だったからね」
するとレオゴルドは寂しそうに言う。
「わたしは逆に水の中からしか見れないよー…
いつか日の光あびながら人間の世界で歩いて走ってみたいなー…
ガイにとって街って楽しい?」
劾はこの問いに肯定する。
「楽しいよ。街にはヒカリアとか博物館とかスカイツリーとか色々あるからね。」
「本当ー?こんな話聞くと、余計壊したくなくなっちゃったよー」
レオゴルドはより一層人間の街に惹かれる。
最後にレオゴルドはこの場の一同に翌日に関しての事を話す。
「明日は任務の為に東京港に行くけど、わたしは参加するフリだけするよー。
もしデスラジクが出撃してきたら…その時は宜しくねー…」
そう言い残すとレオゴルドは転送の光に包まれ、この場から姿を消した。
その後、基地にて。
「レオゴルド…本当に貴方達に…人間に…敵意が無かったのね…」
劾達からの報告を聞いて嬉しそうな、そして安堵したような表情を浮かべるシェリー。
「はい、彼女は今までのデルタナンバーズ達とは全く違いました」
劾の口調も嬉々としたものである。
「私も、レオゴルドに人間の街の事を案内したくなっちゃいました」
玲の口調も劾と同じく嬉々としたものである。
「あれが演技だとはとても思えやせん」
翔もレオゴルドと対面して希望を見出しているようである。
「しかし喜んでばかりもいられないな。デスラジクの事も勿論あるが問題はデルタだ。
レオゴルドが命令に従わない場合何らかの方法で無理矢理従わせる事も考えられるぞ」
剣は真剣な表情で言う。
「そうね…デルタが自分の仲間に、子供のような存在にそんな非情な真似をするとは考えたくないけど…その時は…」
「「「「………」」」」
不安気なシェリーの言葉に対して覚悟を決めるロックマンの変身者達。
「明日だけど、レオゴルドの任務が本当に東京港で実行されるとは限らないから
まずは基地に集合してもしデスラジクか…レオゴルドが現れたら
基地からの転送で出撃、という流れで行きましょう」
「「はい!」」
「ああ」
「ヘイ!」
信じたい、けれど信じきれない…
そんな歯痒さを抱え劾達は明日の決戦に臨む。
一方、デルタのアジトにて。
「レオゴルド、君はこの一日何をしていたんだい?君がいたのは任務と何も関係ない地域ばかりじゃないか」
レオゴルドに問いかけるのはパーマのかかった銀髪で端正な顔立ちで背は剣程、
そして一見ロックスーツを纏った人間のように見える青年型レプリロイド。
彼こそが一連の事件の首謀者のデルタである。
http://zeroi.stars.ne.jp/delta.png
「もちろん下調べだよー、東京港破壊は大掛かりな任務だからもっと色々調べた方がいいって思ってねー」
レオゴルドは応える。
それにデルタは冷めた口調で返し、次いで指示を出す。
「まあそういう事にしておいてあげるよ。
明日は予定通り、デスラジクと共に東京港を壊滅させるんだよ。
最後に一言、任務は遊びじゃないからね、いいね?」
「分かってますー」
レオゴルドは真面目とは言い難い口調で返しながら部屋を後にする。
その時6本のアームを生やした虫型レプリロイドがデルタに尋ねる。
「デルタ、レオゴルドノ裏切リハアリエルカ?」
デルタは応え、冷酷な口調で指示する。
「有り得るね。もし彼女が裏切ったらその時は手筈通りに頼むよ」
「了解」
虫型レプリロイドは機械的な口調で応じる。
8月9日。
基地内にてロックマン達がシェリーと共にモニターを見ながら待機をしている。
ちなみに今回は魚原はこの場にいない。
すると程なくして、時は来た。
東京港にて、突如巨大な空間の歪みが発生し、中から背面と側面、後方が砲身で覆われたクジラ型の超巨大メカニロイド、デスラジクが姿を現したのだ。
http://zeroi.stars.ne.jp/ds7.png
「博士!」
「分かってるわ!」
シェリーが端末を操作し、ロックマン達を東京港へ転送する。
一方東京港では…
「ホゲー!」
大音量の咆哮を上げながらデスラジクがミサイルを貨物船に向けて放つ。
「バンザイ!バンザイ!」
ミサイルは魚「ダツ」を模した形状をしており、独自の音声を流しながらその尖った先端でコンテナに突き刺さる。
このミサイルはデルタアタッカーズのダーツミサイルである。
ダーツミサイルは時間差で起爆し、コンテナを炎上させる。
その光景を出撃してきたロックマン達が目にする。
「まずいぞ、今の特殊武器には水の武器なんて…」
剣が歯噛みしていると、突如貨物船の横から炎上するコンテナ目掛けて波が覆いかぶさり、炎を沈下させた。
さらに貨物船は後方から発生した大波に押されて船着き場にたどり着き、船員が脱出していく。
「ホゲ!?」
さらにデスラジクは突如周囲に発生した波の力で明後日の方向を向き、更には東京港から遠ざけられる。
「「「「レオゴルドだ…!」」」」
喜び安堵するロックマン達。
デスラジクを目にした一般人達は…
「デカい!いくら何でもデカすぎだろ!」「こんなの無理ゲーじゃん…」
デスラジクの威容にただただ恐れおののく。
芦戸は保田と共に車の中からデスラジク並びにそれに戦慄する人々を見ている。
「ボス、私達も逃げようじゃないか!」
保田が促すも、芦戸はそれを拒否。
「それでもロックマンなら…ロックマンなら何とかしてくれるのさん…」
現時点で喪亡悪堕無は蟹江率いる汰威超組の度重なる奇襲でことごとく粛清されており、
今や残っているのは芦戸と保田のみである。
そこで芦戸はとある賭けに出る事にしたのだ。
その頃ロックマン達は…
「どうしよう?レオゴルドだけに任せるかい?こうも陸地から遠いとなると…」
劾が頭を悩ませる。
「いや、被害を最小限に食い止めるには人数は多いほうがいい。
俺は一度レディバイドのデルタストーマーズと戦った事があるがロックスーツは水中だとジャンプ力が上がるんだ。それを利用すれば…」
「ジャンプして射撃を繰り返す…持久戦になりそうだね」
剣の提案に玲は覚悟を決める。
「ただでさえあんなにデカいのに…こりゃ骨ですぜ」
翔が頭を抱えた時だった。
ババババババババババババ…
「おーい、来たぞー!」
「「「「魚原(さん)(の兄貴)!!!」」」」
彼方より水上バイクに乗った魚原が現れた。
「これを使いな!こいつは3人乗りだから2人はその板に乗れ!」
魚原の水上バイクは2枚の水上スキー板に繋がれており、車体からは取っ手付きのワイヤーが伸びている。
「しかし生身では危険すぎますよ!」
劾の言葉に魚原は力強く応える。
「五里石の兄貴や猪狩の件もある、その恩に報いるにゃあ俺も命懸けるぜ!」
翔は賛同しつつもとある対策を用意する。
「俺達ヤクザ者は仁義の為にゃ命懸けんのは当然の事…
しかし本当に危険なんでこれを使いやしょう!」
翔が何体ものサテライトアイを出現させ、それらは魚原を囲むように空中に静止する。
そして各々が点となりその点が結ぶ面が半透明…と言うには透明度の高い
カクカクした形状のバリアを生成する。
「恩に着るぜ、翔」
魚原は笑顔で礼を言う。
「行くぞ!」「ええ!」
かくして水上バイクの後部座席には玲と翔が乗り、水上スキー板には劾と剣が乗る。
そして魚原の駆る水上バイクは凄まじい速度でデスラジクに急接近。
ドン!ドン!「バンザイ!バンザイ!」
デスラジクから放たれる砲弾、光弾、そしてダーツミサイル。
それらをロックマン達はある時は躱し、ある時は壊し、ある時は打ち返しながらデスラジクに反撃していく。
ある程度デスラジクの側面の砲身が破壊され、安全地帯が出来てきた時、レオゴルドが海面から顔を出した。
「「「「「レオゴルド!!!」」」」」
一日ぶりの再会に一同は歓喜する。
「ロックマン!それにトビオも!来てくれたんだー!!」
レオゴルドの口調も嬉々としている。
「外からは見えないけどデスラジクには下の部分に魚雷の発射口があるからわたしはそれを処理するよー。ロックマン達はそれ以外をお願いねー」
そう言い残し、レオゴルドは再度海に潜る。
「ああ、任せてくれ!」
劾はそう言って戦闘を再開する。
「しかし改めて考えるとこいつはデカい。横ならいざ知らず背中の武装を処理するのはしんどいぞ…」
海面から見るデスラジクの背面は見上げる高さにあり波の揺れの中では狙いを定め辛い。
剣がそう考えている時だった。
ズドン!
デスラジクの額の砲身からワイヤー繋がれた巨大な銛が放たれた。
剣は身をひねって回避したが、間髪入れずある事を思いついて実行した。
ダッ!
何と剣は二段ジャンプで銛に飛び乗ったのだ。
剣が掴まったまま銛は本体へと吸い寄せられていき、剣が背面に降り立つ事を許してしまう。
それから暫くして…
バシュッ!
デスラジクの背面の砲身の1つから放たれた「弾」が翔に当たる。
しかし直撃ではなかった。
その「弾」は釣り針のような形状をしており、やはりワイヤーで繋がっている。
そしてその釣り針は翔のロックスーツに引っかかっており、戻る際に翔を「釣り上げて」しまった。
「どわっ!」
一瞬驚く翔だったがそれも一瞬。
翔はホバリングを駆使してデスラジクの背面に降り立った。
「「ここなら攻撃し放題だぜ!!」」
剣と翔は猛攻を搔い潜り次から次へとデスラジクの背面の武装を破壊していく。
一方で海中ではデスラジクのボディ下部の発射口から放たれた魚雷をレオゴルドが押し返し、
それらの魚雷は放たれた発射口へと「返却」されていく。
暫く経ってデスラジクの背面、側面、後方、下部の武装が全て破壊された時だった。
デスラジクが口を大きく開けて静止した。
「(…まずいよー!)」
レオゴルドは即座に水流でデスラジクを方向転換させる。
すると…
「ホゲーッ!!!!!!!!!!!!!」
デスラジクの放った超強力な破壊音波で海がモーゼの如く割れたのだ。
「「「!!!!!」」」
その威力に海面に残った劾、玲、魚原は戦慄する。
「鷹山、俺に考えがある。ついて来い!」
「へい!」
剣は翔と共に海に飛び込み、海中でレオゴルドに作戦の提案をする。
ロックスーツは顔が露出した部分でも不可視のバリアで覆われており、
水中で窒息することもなければ水中で会話する事も可能で水中で発せられた声を聴くことも出来るのだ。
「奴の武装…見た限りじゃもうアレ(口)しかないだろう」
「そうだよー?」
剣の問いをレオゴルドが疑問符を浮かべながら肯定する。
「そこで俺があの破壊音波が放たれる瞬間、奴の口から侵入して内部から破壊する」
「いくら何でも危険だよー!」
「とんでもねぇ大博打ですぜ!」
剣の言葉を聞いた翔とレオゴルドは却下しようとするも剣は構わず続ける。
「そこで、だ。俺の全身を鷹山のサテライトアイで守りながらレオゴルドの水流で勢いをつける…というのが作戦だ」
「確かに…凄い威力になりそうだねー」
「それでも危険ですが、あのデカブツを完全に沈めるにはそれしか無ぇでしょう。
腹括りやした!」
デスラジクのボディを破壊し尽くすのはレオゴルドでも困難である。
故に覚悟を決めた剣と翔を見たレオゴルドも作戦決行を決意。
そしてデスラジクが再度口を開けた時…
「今だ!」
「行くよー!」
ギュルルルルルルルルル!!!!!!!
レオゴルドの放った水の竜巻が剣を巻き込みデスラジクの口に放たれる。
剣の周囲は既にサテライトアイで構成されたバリアで覆われているがそれは背面のみ。
サテライトアイのバリアは言わば「盾」であり、バリア越しに他の攻撃を放とうとすればその攻撃も阻まれてしまうのだ。
故にバリアで覆われた状態で他の攻撃をするにはバリアを背面か側面に配置するしかないのだ。
しかしロックブレードもそれ自体が頑丈なので大した問題ではない。
「はああああああああ!!!!!!!!!」
「ホゲエエエエエエエエエエ!!!」
剣はロックブレードの先端を前方に構えた体制を維持して竜巻に乗ってデスラジクの内部に侵入し、超高速の回転斬りでデスラジクの全身をズタズタにした。
その後剣はデスラジクの後部から竜巻に乗って勢いよく飛び出した。
当然彼自身は無事である。
その時新たな問題が発覚。
ボロボロになったデスラジクのボディからオイルが漏れだしたのだ。
「まずいぞ、折角守った海が…そうだ!」
「桜井!?」
次に劾が海に飛び込みレオゴルドに作戦を説明する。
「まずいことになった、このままじゃデスラジクから漏れ出たオイルで海が汚れてしまう。
そこで思いついたんだけど、レオゴルド…君の渦でオイルを1か所に集めて欲しいんだ」
「それでどうするのー?」
レオゴルドの問いに劾は応える。
「1か所に集まったオイルをロックバスターで焼却する。海の中からの射撃になるけどやるしかない」
「わかった、行くよー!」
レオゴルドはデスラジクを巻き込むように渦を生成する。
それも最大出力で、しかも最小範囲で。
その結果先ほど剣が乗った竜巻よりも更に巨大な水の竜巻が発生し、
デスラジクのボディごと押し上げていく。
その光景は圧巻の一言。
劾は海の中から慎重に狙いを定め、それをチャージショットで撃ち抜く。
バシュッ!!
ドォォォォォォォォォォン!!!!
バスターの熱が水とオイルの竜巻に着火し大爆発を起こし、デスラジクのボディは爆ぜた。
「汚ぇ花火だ…」
翔が一言呟く。
暫くしてロックマン達は陸地に戻り、近くに寄ってきたレオゴルド達と勝利の喜びを分かち合う。
「有難うレオゴルド、君のおかげで勝てたよ。
それで僕から提案があるんだけど…シェリー博士の所に来ないかい?」
劾はレオゴルドに提案する。
「実は僕達が今まで戦ってきたデルタナンバーズ達は修理中なんだ。
戦闘力の無いミニボディとなって彼等が復活した時には彼等に歩み寄ったり、
人間の街を案内することも考えているよ。
君もどうだい?」
「本当ー?いいのー?」
レオゴルドは目を輝かせる。
「私も歓迎するよ!」
玲も笑顔で言う。
「人間とレプリロイド…ひいてはデルタとの懸け橋になってくれ」
剣が頼む。
「俺からも頼むぜ!」
「くうう、めでてえなぁ…」
翔と魚原もレオゴルドを歓迎する気満々であった。
その時…
「う…ぐ…」
「レオゴルド!?」
突如レオゴルドは全身をスパークさせ、苦しみだした。
そして機械音声も入り混じったような声を絞り出して言う。
「に…逃ゲテ…ガイ…自爆…」
レオゴルドはそう言い残し、劾達と距離を取った。
その直後…
ドォォオォォォォォン!!!!!!!!
レオゴルドは自爆し彼女のボディが、人間とレプリロイドを繋ぐ期待が、音を立てて砕け散った。
「レオ…ゴルド…」
劾は悲しみ、無力感、そしてデルタへの怒りに苛まれ茫然自失となる。
その時この場に芦戸と保田が現れた。
芦戸は手をすり合わせ劾に擦り寄る。
「いや~ロックマンさん達!今回も見事なご活躍でしたね~!」
芦戸の目には先程劾がこの事件の実行犯たるレオゴルドを撃破したように見えたのだ。
そしてそんなロックマン達に取り入ろうという魂胆である。
更に芦戸は事もあろうにレオゴルドを馬鹿にし始める。
「今回のロボットも東京港を襲撃するだなんてとんだ外道でしたねぇ。
毎度のことながら機械の分際で人間様に盾突くとはいい度胸してますよ。
まあガラクタが海に還って万々歳って奴ですかねぇ!
ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ!!!!」
これは正に地雷を踏み、逆鱗に触れる行為。
劾はワナワナと震え始める。
「桜井、堪えて…!」
玲が耳打ちする。
芦戸はさらに続ける。
「さて申し遅れましたが私(わたくし)実業家の芦戸辰海と申します。
今回うかがったのはビジネスの話がありましてですねぇ」
媚びへつらう口調の芦戸。
彼の話を聞いているとしばらくして翔が嬉々とした声で芦戸の提案を聞き入れる。
「いいですね!、詳しい話はあちらの倉庫で聞きましょう!さあ付いて来て下さい!
!」
そう言って翔は倉庫の裏に芦戸と保田を誘う。
「はい、お供致しますぅ~!」
「鷹や…」
剣が声を掛けようとすると翔は振り返りウインクをする。
その時の表情は悪魔のように見えたという。
「(まずいな…)」
最悪の事態を想定し、剣は翔を尾行する。
一方で魚原は何も言わず別の進行方向へと歩いていくが行先は翔と同じ倉庫である。
翔が角を曲がり、芦戸がそれに続くが芦戸が翔を目にする事はなかった。
「あれ?黒いロックマンさーん?」
周囲を見渡しながら呼びかける芦戸だったが、突如上から何者かに襲撃される。
「ひいっ!?」
襲撃したのは後ろで高い足場から専用の獲物の双方向に刃の付いた長刀を振り下ろしながら飛び降りた魚原だった。
「な、なな、何なのさん君は…私を誰だと思っているのさん!?」
アタフタした口調と身振り手振りの芦戸。
そんな彼に魚原はドスの利いた口調で言う。
「シラを切っても無駄だ、ある有力な情報筋でテメーが喪亡悪堕無のボスだってこたあ分かってんだ!!」
「そ、そんなの私を陥れようとする者の出まかせなのさん!」
慌てた素振りで必死で否定する芦戸を魚原は更に追及する。
「その証拠に素人は避けられねぇ俺の不意打ちをテメーは躱した!
今のテメーだって姿勢に隙は無ぇし目も泳いで無ぇし呼吸も乱れて無ぇ!!
それはテメーが手練れだって事だよなあ!」
「大人しく白状しやがれ、腐れ外道がよ!」
横からロックスーツを解除した翔が鬼の形相で現れる。
殺意全開の彼等を前にシラを切り続けるのは無理と判断した芦戸はついに白状する。
「バレちゃ仕方がない…そう、俺が喪亡悪堕無のボスなのさん!」
「認めやがったか…デルタはよぅ…人間全体を悪く見てやがんだ…
テメーみてーな外道がいるから人間全体のイメージが下がるんじゃあ!!!」
魚原は静かに切り出してから怒号を響かせる。
すると芦戸は何食わぬ顔で応える。
「デルタ…ああ、そう言えばこの間偽ロックマン事件の時に名乗ってたな…
ともあれデルタもお前等も我々を誤解しているのさん…
この世界は苦しみに満ちている…我々は苦しむ弱者を救っているだけなのさん…
弱者共は救われ我々は儲かる…だからウィンウィンなのさん!!」
これに対し魚原は怒りと呆れの籠った声で呟く。
「何だこいつ、悪魔か?」
翔もそれに続く。
「クソでけぇ害虫ですぜ」
これを聞いた芦戸は顔を顰め二人に問う。
「お前等こそ俺を色眼鏡で見てるのさん…俺が何の苦労もせずに今の地位と名声を築いたとでも…?」
「ハァ!?」
「何だあ!?遺言だったら聞いてやろうじゃねえか…」
翔と魚原は怒りをセーブしつつ敢えて芦戸の話を聞くことに。
「俺の親父は働きもせず毎日酒に溺れ家族にも暴力を振るう最低な奴だった…
親父が借金残して出て行ってからお袋は働き詰めによるストレスで死んだのさん…
頼れる親戚もいなかった俺は施設に入ったがそこでの生活も碌なもんじゃなかった…
あらゆる理不尽に屈しない為には俺は裏の世界に入るしかなかったのさん…!」
保田も続く。
「私の母親はAV女優だった…父親は誰かは分からない。
周りにこの事がバレてからは女共からは軽蔑され男共からは嫌らしい目で見られる日々…
挙句母は若い頃の自分に似てきた私にAV女優を継がせようとしてきやがった…!
だから私は逃げ出すように裏の世界に入ったんだ」
芦戸が付け加えて言う。
「俺達だけじゃない、喪亡悪堕無の構成員は加害者家族だの同性愛者だの発達障害だの顔面の奇形だので
まともな人生を送れなかった奴等ばかり…
俺達の活動は糞みたいな生い立ちから理不尽に奪われた自分達のこれまでの人生の幸福を補填する為でもあるのさん!」
「「………」」
しばし沈黙する翔と魚原。
先に翔が口を開いた。
「不幸自慢かよ、なら俺も負けてないぜ。
俺を生んだババアは夜職の女だった。
俺はババアと客の誰かの間に望まれずに生まれたガキさ。
ババアとしょっちゅう変わるその彼氏は毎日のようにストレス発散の為に俺を虐待してきてよ…
まともなもんは食えねぇ、まともなもんも着れねぇ、そんな俺を周りの奴等は野良犬や野良猫と同列に扱ってきた…!」
魚原も続く。
「俺はガキの頃同じ園の奴とトラブル起こしてな…
向こうが悪いのに俺の親は俺を海に捨てやがった…
一時野生化して海の生き物で飢えをしのいだが、餓死しかけた回数なんざ覚えちゃいねぇ…!」
それを聞いた芦戸は二人を煽る。
「なんだ、お前等も『こっち側』の人間じゃないさん」
「「オヤジが導いてくれた…」」
声を揃えて言う翔と魚原。
「『誰から』、『どう』生まれるかは自分じゃ選べねぇのは仕方がねぇ…
だけどよ、いくら『悲しい過去』があるからってそんなの免罪符にゃなりゃしねぇよ…
『悲しい過去』がある俺達だからこそテメー等みてぇな連中は止めなけりゃならねぇ…
オヤジのように導いてくれる存在がテメー等に現れなかった事『だけ』は同情してやるぜ…!」
怒りと悲しみを込めて言う魚原。
そして翔は怒り全開の雄叫びを上げる。
「それによ、これは自分(テメー)の親分裏切って俺達を…人間の街を守って散っていった友達(ダチ)の…弔い合戦じゃーっ!!!!!」
「面白い、返り討ちにしてやるのさん!!」
「心行くまでやらないか」
臨戦態勢となった翔と魚原を芦戸と保田は迎え撃たんとする。
芦戸の戦闘力は獅子雄と互角で魚原は鉄弟と互角であり、この為かなりの接戦となる。
芦戸の主な攻撃手段は瓶に入った硫酸をかけるアシッドアタックだがその腕の長さとスイングの強烈さから攻撃範囲はかなりのものである。
魚原の獲物は両端が刃になっている長刀だが中央部の連結を解除して二刀流に移行する事も可能である。
魚原は芦戸の動きを見極めながらどうしても酸を避けきれない時は幅広の刃でガードするが戦闘が進むにつれて酸のしぶきがかすって火傷も負い始める。
「こんなの…痛くもなんともねぇよ!!!」
ズバッ!!
魚原が長刀で芦戸を斬りつける。
「チイッ!!」
芦戸も魚原の剣技の軌道を見極めようとするが急所を外すのが精いっぱいである。
一方で翔と保田の戦いでは翔が劣勢だった。
「あっはっはっはっは!!さっきまでの勢いが感じられないじゃないか!!」
「グ…ガ…」
保田の振り回す鎖分銅は軌道が読みにくく、加えて保田の見た目からは想像できない程一撃が重い。
ロックスーツを起動させれば保田を秒殺する事は出来るものの翔は剣達の言いつけを守っていたのだ。
そしてある時…
ゴッ!
翔の側頭部に保田の鎖分銅の先端がクリーンヒット。
「シ…」
一瞬翔は白目を剥く。
しかし直後カっと目を見開き、奇声を上げた。
「シシボノバ…ゴンナンジャ…ナガッダドーーーーーーッ!!!!!!!!!!!」
ガシッ!
「え?」
翔は鎖分銅の鎖を掴み、そのまま勢いよく腕を振るい鎖分銅を持っていた保田の体を壁に叩きつけた。
「う…」
その衝撃はかなりのもので保田は体勢を崩してしまう。
その隙を見逃さず翔はマウントポジションを取って保田を殴打し始める。
「ジネジネジネジネジネーッ!!!!!!!!!!」
ガッ!ゴッ!!ドカッ!!
「あ…う…」
その勢いは剣と出会った時に半グレを殴りつけている時のそれを遥かに凌ぐものである。
その時だった。
「やめろぉーっ!!!!!!!!!」ドッ!
「グガ!?」
これまで魚原と戦っていた芦戸が翔と保田の間に割って入り保田を抱えて翔の前に立ちふさがる。
「理香は他の誰よりも長く…俺を支えてくれたのさん…
そんな理香が死ぬのだけは…絶対に許さないのさん…!」
既に満身創痍で酸も尽きた芦戸が保田を守りながら戦おうとする。
そこに魚原が現れた。
「今のテメーに余所見してる余裕ねーだろうがよぉ…
クズ同士の絆か?虫唾が走らぁ!!そんなに一緒にいたかったら纏めてあの世に送ってやるよ!!」
今の状況は実質2対1で保田を守りながら戦うのは無理がある。
「それでも構わないのさん…理香がいないのなら…何億円何兆円手に入れようが…
全世界の王になろうが…他の地球の全女性からモテようが…何も意味がないからなのさん…!」
「むしろテメーの存在自体に意味がねぇよ…うおおおおお!!!」
そう言って長刀から斬撃を繰り出そうとする魚原。
「そこまでや!!!」
どこからか声がした。
「あんた等は…」
魚原と翔が声のした方に振り向くとそこには蟹江と彼が率いる大勢の汰威超組構成員がいた。
「魚原はん、あんたともあろう男がこの男をいてこまそうとしとんのはこの男が喪亡悪堕無のボスと知っとるからやろ?」
蟹江が問う。
「ああ、そうだ。流石汰威超組の情報網だな」
翔を落ち着かせながら魚原が肯定する。
蟹江はレオゴルド、そしてシェリー等が知る未来の情報に頼らず自力で僅かな糸口を辿って芦戸の正体を掴んだのだ。
「なら話は早い。この男と女のガラをウチらに譲ってくれへんか?
知っとると思うが喪亡悪堕無は元々ウチらの獲物さかい、その二人が最後やで」
「…そう言えば…荒波組の件があったな…いいだろう」
汰威超組が喪亡悪堕無を狙っているという裏世界に出回っている情報を思い出した魚原は、蟹江の提案を呑む。
そして蟹江は芦戸と保田に近づき、貼りつくような笑顔で言う。
「あんさんら、助かったという訳ちゃうで。
あんさん等にはこれまで債務者達がヤクでこさえた借金を代わりに返して貰うさかい。
債務者の債権はワテが買い取って今の債務はあんさん等にあるで」
「(これがこの男のやり方…借金を『取り立てるべき奴』から取り立てるという…
俺がその標的になるとはな…)」
蟹江の噂を聞いていた芦戸は息を吞む。
「ワテの利息はトゴ…10日で5割や。せやからあんさん等の今の借金を合計すると…810364364円やで。
まぁ稼げるところはワテが紹介したる…ベーリング海や。そこでのカニ漁はごっつ稼げるで。
既にワテ等が捕らえた喪亡悪堕無の連中も全員そこにおるさかい、あんさん等で最後や」
「ベーリング…海…!」
蟹江の説明に芦戸は戦慄する。
ベーリングカニ漁とは極寒の海域、ベーリング海で執り行うカニ獲りである。
一攫千金のチャンスである反面、死と隣り合わせである。
「………」
「構わないのさん、理香が死なずに済むのなら…」
暫しの沈黙の跡、芦戸は今を生き述べる選択をした。
「ほな、ぼちぼち現場に行きまっせーっ!!」
「「「「「ヘイ!!!!」」」」」
蟹江は芦戸を連行していき、程なくして何台もの車の走行音が響き渡りそれはこちらから遠ざかっていく。
「(どうやら俺の出番は無かったようだな…)」
物陰から見ていた剣は劾達の元へと向かう。
「嵐が…過ぎ去りやしたね…」
「ああ、それじゃあ青いロックマン達の所に戻るか」
翔と魚原も劾達の元へと向かう。
「レオ…ゴルド…」
劾はストリームフリッパーの破片を握りしめ、嗚咽していた。
「酷すぎるよ、せっかく友達に、仲間になったと…思った…のに…」
玲も涙を浮かべ劾に寄り添う。
「桜井の兄貴、沖藍の姉貴…!俺も…悲しくて…堪りませんぜ!ウオオオオオオオン!!!!!」
「辛ぇよな、辛ぇよな…!畜生ォ!」
劾と玲の様子を見た翔と魚原も釣られて泣き出す。
剣は悲しみを堪えつつこれまでの事をシェリーに報告する。
「そんな…まさか…デルタがこんな非情な手段に打って出るなんて…」
シェリーもショックと悲しみを隠し切れずにいる。
「しかしこれでレプリロイド達と分かり合う道が完全に途絶えた訳ではない。
…博士、今までのデルタナンバーズの修理はどこまで進んでいる?」
「明日には終わるわ…」
剣の問いにシェリーが応える。
後日、巷では「東京港襲撃事件」解決にはロックマンだけでなくスミッシーも関与したという噂で持ちきりになった。
事実剣のアカウントでも「スミッシーが協力してくれたのかもしれない」と剣がコメントしている。
この結果一般人は実名も姿も知らない「スミッシー」を讃えた。
「スミッシーはあのロボットだろ…?まさか…な…」
氷藤はスミッシーことレオゴルドがロックマン達を助けたのではないかと思い始めるも確信には至らない。
またデスラジクが放ったダーツミサイルで本来届く筈だった大量の危険ドラッグは跡形もなく消し飛んだ。
喪亡悪堕無壊滅もあり、史実での大量の危険ドラッグが日本中に回りそれに伴い数々の抗争が勃発する事態は回避された。
芦戸が喪亡悪堕無のボスだったという報せは裏世界のみならず表社会にも流れ、
芦戸自身は名目上は「失踪」扱いとなった。
ベーリング海では…
「兄ちゃんよく働くなぁー、そんなに金が欲しいのか?」
何度も命の危機に陥っても懸命に働く芦戸に他の債務者が問いかける。
「俺達は…これが全て終わったら…結婚するのさん…」
芦戸は応える。
「私もボスに…辰海さんに報いる為に働こうじゃないか!」
保田も倒れ伏している時に芦戸の言葉を聞いていた為、彼の行為と想いに応えようとしている。
このように盛大に死亡フラグを建築した芦戸だったが、これが回収されることはなく
結果として翔を大いに驚かせる事になるのだがそれは遠い将来の話である。
続く
更新が遅れに遅れて遅れまくりました。
芦戸ですがモチーフはアシッド・シーフォースです。
名前はバグ大キャラで硫酸を戦闘に使う芦澤(あしざわ)と敵幹部の一人辰巳(たつみ※こちらは苗字)から取りました。
彼女がいるのは岩本先生ネタです。
その彼女のモチーフはホタリーカーです。
モチーフが大型キャラにも関わらず彼女の大きさは普通です。
外見はホタリーカーの他に岩本先生の漫画に出てきたシーフォースの恋人を意識していますが、顔つきは別のキャラを意識しています。
ラストで芦戸が改心するのは未来への伏線であり、ヒントは芦戸の苗字と保田の顔つきです。
蟹江ですがモチーフはクラブロスで、顔つきは達磨にちなんでおりこれは岩本先生ネタです。
彼は元々次回シェルコーンに制裁されるクズキャラの1人として考えたのですが新たにキャラが生えてきた為
今回の登場に変更し、役回りも変わっております。
借金を取り立てるべき相手から取り立てる、というのはバグ大ネタです。
魚原のモチーフはウオフライですが顔立ちはエグゼのマサを意識しております。
その為か性格もマサ寄りになった気がします。
彼が乗る水上バイクに乗りながらデスラジクと戦うのはDASH2ネタです。
今回遂にデルタが出ましたが挿絵の背景は彼の抱える恐怖と絶望、疑心暗鬼を現しています。
デスラジクですが名前の由来はデスログマーとデスエベンジと同じで大きさも似たようなものです。
頭部の銛は捕鯨砲が元ネタであるためか、全体的な外観もホゲールに近くなりました。
今作の中ボスの階級名は「デルタストーマーズ」で軽いネタバレですがコアトルスに配属されたデルタストーマーズだけは「ステージ」が異なるためスぺボス扱いとなります。
また残りのデルタストーマーズ内2体は奇をてらった変わり種です。
レオゴルドですが人間に興味を持つが故の危うさもさり気なく入れました。
このレオゴルド回は「軽油流出阻止」から「デスラジクとの戦闘」に変更になり、デスラジク撃破に至るまでド派手な合体技を2回続けて放っております。
「スミッシー」は水生の未確認生物の呼称あるあるですが流星2でもありましたね。
今回もロックマン内外から様々なネタを入れました。
次回はシェルコーン回です。
【喪亡悪堕無のボス、芦戸辰海】
これはもう見るからにシーフォースだろうと思いました。
語尾の「さん」も「酸(acid)」から来ていそうですね。
>>「今回のロボットも東京港を襲撃するだなんてとんだ外道でしたねぇ。
毎度のことながら機械の分際で人間様に盾突くとはいい度胸してますよ。
まあガラクタが海に還って万々歳って奴ですかねぇ!
ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ!!!!」
度重なる事件のこともあるので、“レオゴルドの件の直後でなければ”このセリフもああまでは劾や翔や魚原を怒らせなかっただろうと思います。
>>「一緒にヤクとかチャカとかばら撒くのさん!」
>>「この世界は苦しみに満ちている…我々は苦しむ弱者を救っているだけなのさん…
弱者共は救われ我々は儲かる…だからウィンウィンなのさん!!」
>>本来届く筈だった大量の危険ドラッグ
>>史実での大量の危険ドラッグが日本中に回りそれに伴い数々の抗争が勃発する事態
これはもう相当なことをやらかそうとしていた、あるいは相当な事態の引き金になってしまうところだった様ですね。
【保田理香】
最初読んだときはホタリーカーのことをすっかり忘れていて
「イカっぽいけど色合い・パーツ的にX5のクラーケンでもゼロ4のクラーケンでもないな…?」とか「クラゲールが近い気がするけど色が違う…」とか思ってしまいました。
荒波組のシマを侵略するイカ娘といったところですね。
使う武器もトゲ付きの鎖分銅というえげつなさ…
彼女の母親も、理香を自分同様の“女優”の道に進ませようとするという、汚い星一徹とも言うべき行為に出ていますが…
もしかすると過去の自分の選択は間違ってないと思いたい気持ちもあったのかもしれません。
【荒波組組長、真古井】
この「荒波組」というのはタイダル・マッコイーンの「タイダル(タイダルウェーブ=津波)」から来ていそうですね。
【蟹江泡作】
真古井率いる荒波組…に絡む件を引き受けるクラブロス、もとい蟹江。
原作(ゲーム)だとマッコイーンステージのBGMがクラブロスステージのアレンジとなっていたのを彷彿とさせます。
カニのような男が芦戸と理香をカニ漁に送り出すというのは面白いです。
いや、芦戸が負わされたとんでもない数字の…二重の意味でとんでもない数字の借金を思うと笑っている場合ではない気もします(汗)
【魚原飛雄】
どことなくシャークマンのオペレーターを思い出す雰囲気だな…?
と思っていたら、あとがきを読んで納得しました。
マサというよりシャークマンの話になりますが、鷹岬先生の漫画版において、その場のノリで「『エグゼ1』の事件を解決した立役者」を騙ったガッツマンをボコボコにしていたのを思い出しますね。
悲しき過去を抱えた、芦戸や理香と“同じ側”でありつつもだからこそ芦戸たちを止めに行く姿勢は、ヤクザの世界に身を置きつつも心の中に捨ててはいけない物をきちんと持っていることが覗えます。
【レオゴルドに人間の世界を案内する】
河原に落ちていた本…はレオゴルドが見ても意味が分からないのではという気もしますが、あまり大っぴらに見せるものでもないからこうした方が良いでしょう。
【翔】
レオゴルドに街を案内する場面では目隠し役として、デスラジク戦ではバリア役、また連携攻撃の一部として、サテライトアイが大いに役立っています。
かなりの活躍ぶりですが懸念は装着者たる翔…
どこかでキレて何かしでかした際にはこの性能が脅威になることも考えられますが果たして…
とはいうものの、芦戸たちに詰め寄る場面ではちゃんとロックスーツを脱いでいるあたり、今のところやらかす危険性は薄そうではあります。
【劾の父親】
「あの」桜井刑事…と翔から言われているあたり、ヤクザ達の間でも名を馳せていそうです。
【VSデスラジク】
デスログマーやアリゲイツステージの移動要塞、あるいはデスエベンジを彷彿とさせる戦艦じみた大型メカ。
クジラが湾に迷い込むニュースはたまに聞きますが、こんなクジラが出たら大混乱でしょう。
>>「ホゲー!」
大音量の咆哮を上げながらデスラジクがミサイルを貨物船に向けて放つ。
元ネタかは分かりませんが、実写版「こち亀(香取慎吾主演版)」をちょっと思い出してしまいました。
ダーツミサイルはモチーフがモチーフだけにかなり危険そうに思えます。実際のダツも照明に反応して飛び出し、人に突き刺さる事故が報告されていたりしますしね。
ロックマン達とデスラジクの戦闘では魚原の水上バイクを使わせてもらう展開となり、これはウィーゼラン回とはちょっと趣向を変えたライドチェイサー面とも言えそうです。
ゲームだったら「X7」のように3Dパートになりそうですね。
そして海を割るほどの出力で放たれる破壊音波…
レオゴルドが急いで方向転換させたことで事なきを得ましたが、もし市街地へ直撃していたらとんでもない被害が出ていたのではないでしょうか。
撃破の決め手となったのは剣・翔・レオゴルドの“合体技”ですが、ここまでされても行動不能になりこそすれ撃沈まで至らないあたり、(大きさのせいもあるとは思いますが)相当な耐久性といえます。
【危険ドラッグ】
地の文でサラッと語られた“史実”というのが気になるところです。
シェリー博士初登場時のイラストがド◯えもん的な背景となっていましたが、もしかするとツルギ異聞世界そのものにドラ◯もん的な事態が起きているのでしょうか?
魚原の登場時にレオゴルドが「明日は喪亡悪堕無が輸入した『危険ドラッグ』が東京港に沢山届く日だから」と言っていましたが、
デルタ側がそれを知っていたのも現代で情報を掴んだからではなく“元々知っていた”からだったりして…
レスが少々遅れました。感想ありがとうございます!
>喪亡悪堕無のボス、芦戸辰海
彼の語尾の由来は仰る通りです。
>>「今回のロボットも東京港を襲撃するだなんてとんだ外道でしたねぇ。
毎度のことながら機械の分際で人間様に盾突くとはいい度胸してますよ。
まあガラクタが海に還って万々歳って奴ですかねぇ!
ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ!!!!」
更に芦戸の正体が事前に分かっていたのも怒りを増大させた要素とも言えるでしょう。
>>「一緒にヤクとかチャカとかばら撒くのさん!」
>>「この世界は苦しみに満ちている…我々は苦しむ弱者を救っているだけなのさん…
弱者共は救われ我々は儲かる…だからウィンウィンなのさん!!」
>>本来届く筈だった大量の危険ドラッグ
>>史実での大量の危険ドラッグが日本中に回りそれに伴い数々の抗争が勃発する事態
ダーツミサイルでヤクがオシャカになりましたがそれが無ければ表社会でも裏社会でも無用な血が流れ、多くの人が不幸になっていた筈です。
>保田理香
彼女の服装の上下はホタリーカーの透明な部分の上と下を元にデザインしました。
髪型や語尾が示すように裏モチーフにイカ娘も含まれます。
理香母(後から思いついたのですが名前は保田理音(りおん)、由来はX1及びX5のホタリオン)は
良くも悪くも自分の職業に誇りとプライドを持っているのですがそれを押し付ける、ましてや実の娘にというのはとてもとても褒められたものじゃないでしょう。
昨今あの界隈の女優でもテレビに出たり歌手デビューしたり結婚・出産したり…と昔に比べれば風当たりは弱くなった感もあるものの
結婚式を控えた一般女性が自分の着る予定だったウエディングドレスの広告にその業界の人が使われて
「こんな汚い女が来たドレスなんて着たくねー!(要約)」と言って物議を醸し出した件も記憶に新しく
やはりマイナスイメージは付きまとうものかもしれません…
>荒波組組長、真古井
組の名前は仰る通りです。
当初は水のステージや水生生物モチーフボスの新キャラにする予定もありましたが
最終的に原作キャラを流用する形になりました。
>蟹江泡作
X5初プレイ当初はマッコイーンステージのBGMがクラブロスステージのそれをアレンジしたものなのは「工夫がない」と思ったのですが
考え様によってはネタとして有りかもしれませんね。
彼の悪人への制裁は彼自身のモチーフに因んでカニ漁、という事です。
借金の額の由来は…お察しください。
>魚原飛雄
柄が悪い反面仁義外れは許さないという点では言われてみれば漫画版シャークマンに近いですね。
彼を含めたヤクザはそのままだと闇堕ちしても仕方のない人生を送ってきたものの組に入って任侠魂を叩き込まれた者が多いです。
>レオゴルドに人間の世界を案内する
今思えばこれは後の理香の過去の伏線かもしれません。
>翔
サテライトアイの機能は多彩で、これを使いこなす翔は大いに活躍していますがやはり使い方を間違えると脅威になります。
翔がこれを悪用したり、感情に流されて対人に使ったりしないのは組の言いつけが行き届いている他
剣達を慕っていたり、悪用するのは人の道に外れていると認識しているからというのもあります。
>劾の父親
これは今後の回への伏線であり普段は温厚なものの悪人に対しては容赦がない人物として登場します。
>VSデスラジク
デスラジクは今作のオリ中ボスでもダントツに大きく、作中にもあるように見る者を絶望させ、混乱させます。
>>「ホゲー!」
大音量の咆哮を上げながらデスラジクがミサイルを貨物船に向けて放つ。
デスラジクの鳴き声の元ネタはド直球に「捕鯨」です。
ダツの危険性は「バグ大」で知りましたがサメやピラニアとは異なる怖さがありますね。
ダーツミサイルは刺さるだけでなく爆発・炎上するというおまけ付きです。
デスラジクとの戦闘で魚原の水上バイクが使われたのは後書きではDASH2ネタとありましたがこれは誤植でDASH1ネタです。
その為ゲームにするとロックマン5のオクトーパーOA戦よりもDASH1のバルコンゲレード戦に近いものになるでしょう。
破壊音波の威力及び合体技でも撃破し切れない耐久性は巨体故のものでありゲーム本編の巨大キャラもパワーと攻撃範囲に優れており耐久力が高い、もしくは無敵の部分が多い事に因んでおります。
>危険ドラッグ
これはシェリーが来たことで歴史が変わった事の1つという事です。
シルキーガ回でも御間の護衛に扮した汰威超組構成員が「暴漢に扮した同組構成員」から御間を救出する振りをする筈が
「シルキーガ及びキャタピロン」から御間を救出する振りをする、というように変わりましたが
今回の方が大きい歴史改変と言えるでしょう。
執筆お疲れ様です。
レオゴルドは人間に敵意がなく、これまでのデルタナンバーズと違う展開が新鮮でした。
遠くから見ている人たちには敵に襲われているように見えて、すぐに人々に理解されるのは難しい
ように思いました。
デスラジク戦で、生身で出撃しようとする魚原は熱い男で、元ネタのマサを彷彿とさせます。
そして剣の覚悟と、翔のサテライトアイのコンビが見事に決まりましたね。
破壊後のオイルの処理の連携も見事で、描写に迫力がありました。
その後、レオゴルドは破壊され、人間とレプリの架け橋になる道が途絶え、痛ましい展開でした。
そして、その状況を知らないとはいえ、その後の芦戸の発言は、
逆鱗に触れる、耐え難いもので、反論していいところだ、と思いましたが、
反論したらまた厄介なことになりそうですね。
その後は芦戸と保田の経緯が明らかになり、裏の世界に入るのが仕方がないと思うほどの
過酷な道を歩んでいました。
芦戸の元ネタはシーフォースで、岩本先生ネタも合わさっているのがよいですね。
共に歩んできた保田への想いは強く、一途な感じがしました。
今回で今年最後のコメントになりますが、今年も作品やコメントなど、本当にお世話になりました。
それでは来年もよろしくお願いします。
感想ありがとうございます!
レオゴルドが人間に友好的なのは原作準拠です。
しかしこれまでの事件を鑑みて第三者から見ればそれは中々理解されないという描写を今回入れました。
魚原ですが外見のみならず性格も裏モチーフの要素が反映された感じですね。
モチーフのウオフライは卑怯者ですので対照的とも言えるでしょう。
デスラジクは見た目通りかなりしぶといので破壊し切るにはこれぐらいやらねば…という事で合体技に次ぐ合体技という流れになりました。
レオゴルドの最期も原作準拠ですが僕も書いていて悲しくなりました。
芦戸の失言もある意味では仕方が無いとも言え、ここで反論すればやはり面倒な事になると思われます。
そこでロックスーツを解除した翔と魚原が汚れ役を買って出た、という訳です。
芦戸と保田の「悲しい過去」は実はある漫画を意識したものですがその漫画に限らず
悪役が裏の世界に入ったきっかけに悲しい過去があるのはあらゆる作品に見られることでロックマンでもちらほら見られますね。
ホタリーカーモチーフのキャラが恋人として出てくるのは完全に岩本先生ネタです。
ラストで唐突に改心する流れを見せる芦戸と保田ですがこれは未来への伏線です。
さて次回の進捗ですが本日挿絵を全て描き終えました。
文章ですがまだ試行錯誤中ですので時間は掛かると思います。
努力はしますが果たして書納めになるやら書初めになるやら…
それではこちらこそ今年はお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。