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ロックマンツルギ異聞第9話「憤怒」

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8月12日、基地内にて。
「!?ここはどこでぃ!!俺は確かデルタの旦那に…ってうぉぉぉぉぉい!!!
小さくなってやがらぁ!」
ミニ・レプリとして復活したシェルコーンの雄叫びが基地内に響き渡る。

「起動成功ね」
そんな彼をシェリー並びにロックマンの変身者達は笑顔で迎え入れる。
「さては俺を小さくして情報を吐かせたり痛めつけようって魂胆だな!?
そうは行かねぇぞ!!この俺の魂はシールド同様の鉄壁でぃ!!」
シェルコーンは起動時の他のミニ・レプリと同様の反応を示すも…
「シェルコーン、彼等はそんな事はしないぞ」
「ジュラファイグの言う通りだぁぁ!!こいつらは一度敵対した俺達を受け入れてくれたんだぁァァ!!」
「この方達のおかげで人間の新たな面もデルタさんの偏見も知ることができましたのよ」
「それにデルタは裏切ってもいないお前を捨てたんスよ!
オレ達は訳の分からない事をしたり人間への偏見で間違いを繰り返すデルタよりも
こいつ等の側に付く事に決めたっス!」
自らと同じ目線でジュラファイグ、レディバイド、シルキーガ、ウィーゼランが窘める。
「てめぇ等!人間なんかに、それもロックマンなんかに絆されやがってぇえ!!
この俺が目を覚まさせてやらぁ!!」
ドシュッ!
シェルコーンは他のミニ・レプリ達に銛を突き立てようとするが…
ポヨン!
シェルコーンのミニボディの銛は金属製でなく軟質樹脂製であり彼等のボディに接触するなりグニャリと曲がるのみであった…
「つ、突うずるっ込めない…だとぉ!」
ショックを受けるもシェルコーンはムキになってその銛でミニ・レプリ達を攻撃する。
当然手応えは無い。
諦めモードに入ったシェルコーンはぶっきらぼうに言い放つ。
「煮るなり焼くなり好きにしろぃ!!」
「イモガイは煮ても焼いても食えないがな…」
剣が冷静にツッコミを入れる。

数分後。
「これが残りのデルタナンバーズとデルタストーマーズですわ」
シルキーガがペンで紙の上に残りのデルタナンバーズ及びデルタストーマーズを描いていく。
その速さと正確さは人間には成せぬものであった。
「流石レプリロイド」
「これが本当のAI生成…かな?」
その様子に玲と劾が目を見張る。
そしてシルキーガが自身が描いたものを順に紹介していく。
「このヒュオーガ・マンモックスさんは冷気を操りパワーがありますわ」
最初に紹介したのはがっちりした体型のマンモス型レプリロイド。
「マンモックスさんのデルタストーマーズは『プロトドミネイトバイザーSP』。
レプリロイドやメカニロイドだけでなく生物も自在に操れるバイザー、
『プロトドミネイトバイザー』の中で一番完成度の高い物ですわ。
原理は人間も含めた動物の思考と運動に使われる電気に干渉する事ですの。
これ自身に戦闘能力はありませんわ」
次に描かれたのは一見何の変哲もないバイザーである。
「という事はデルタがこれを使って『悪のロックマン』を送り込んでくる可能性もあるんじゃ…」
劾が身構える。
「そいつは超えてはいけない一線だが、有り得ない話じゃないな」
そう言う剣の表情も険しい。
彼等の懸念は後々、的中してしまう事となる…

次にシルキーガは翼竜型レプリロイドの説明をする。
「ゲイルツァー・コアトルスさんは優れた飛行能力を持つ他に風の技を使いますわ」
続いてハシビロコウのようなメカニロイドの説明に進む。
「彼のデルタストーマーズのメガフライヤーも高速飛行を得意としている他に翼の周囲にビームブレードを纏いますわ」

最後にシルキーガが描いたのは背中から6本のアームを生やしゲジゲジのようなレプリロイド。
「最後はデルタさんの側近のリモートロン・グレッゲージですわ。
彼に関してはデルタさんの側近という事だけ分かっていて能力も何を考えているのかも分かりませんの。
彼のデルタストーマーズはデルタウイルスというコンピュータウイルスで勿論それ自体に戦闘能力はありませんわ」
「有難うシルキーガ、助かるわ」
シェリーが礼を言う。

「皆手ごわそうだね…ところでシェルコーンも加わった事だし今度のミニ・レプリ達の案内は明日の上野動物園でどう?
その日はうちの両親の結婚記念日のデートで私も付いて行く予定だし、
例の『ギュスタービー』の公開日でもあるから丁度いいと思って」
因みにギュスタービーとは突然変異で体が白く巨大になったワニの事であり、
嘘ニュース事件の時にその死が噓ニュースで報道された。
「いいね、僕も『ギュスタービー』、見たいと思ってたんだ」
「俺もだ、それじゃあ明日は上野動物園で…」
劾と剣が賛同する中…
「か、神崎の兄貴、桜井の兄貴、沖藍の姉貴…!!お、オデも上野動物園にイギバブガ…ベベ、ベチュゴブドブビザゼべイダダギバズべ!!」
翔が顔を真っ赤にしてしどろもどろな様子で別行動する事を伝える。
その原因は数分前に遡る。

汰威超組の事務所にて。
志熊が組員達に翌日の事について伝えている。
「明日は上野動物園で竜太夫妻のデートの日でもあり、ギュスタービーが公開される日でもある。
ここで一つ懸念すべきことがある。
それは動物愛『誤』系半グレ『武射眼』(ヴィーガン)が何かをしでかす可能性があるという事だ。
この情報は裏社会のみならず警察(サツ)も嗅ぎつけておるから我々は竜太夫妻周辺にのみ気を配れば良い。
奴等が少しでも妙な動きをすればなるべく周囲に気づかれず速やかに始末せよ。
堅気の皆さんに威圧感を与えん為、夫妻の近くでは威圧感の無い容貌の者が警護に当たるように」
そこで美音が志熊に提案をする。
「お父様、自然に溶け込める丁度いい案があります」
「ほう?」
その後美音は翔に連絡を入れた、という事である。

その後基地内にいたロックマン変身者達は残りの敵への警戒と明日への期待を胸に解散したのだが、ジュラファイグが違和感に気づく。
「む、レディバイドとウィーゼランはどこに行った!?」

その頃道を歩いている玲はある時バッグの中で何かが動く感触を覚える。
「今何か動いたような…」
この違和感の正体に気づくのは、その直後の事だった。
「ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」
突如としてレディバイドが怒りの咆哮を上げて勢いよく玲のバッグから飛び出しどこかへと走っていく。
向かった先は路地裏。
その原因はレディバイドも含めたレプリロイド故の聴覚で遠くから聞こえる
「強引に迫る男」と「嫌がる女性」の声を聞き取った、というもの。
「ちょっと、待ってったらー!」
玲が追いかけていくとやがて二人は現場に到着した。
「ネネ、良いだろ?」「ちょ、やめてってばぁ~」
車の中からレディバイドの聞き取った男女の声がする。
「やめろおおおお!!!!!!!嫌がっているだろうがああああああああ!!!!!」
レディバイドは怒号を響かせる。
「え、人?」
車の中から声の主が彼の怒号に反応し声がした方に振り向く。
そこには両手を後ろに隠した玲が立っていた。
「れ、レイ!?」「沖藍さん!?」
声の主は車の中でイチャつく留美とその彼氏、藤藁(ふじわら)だった。
そんな彼等に玲は後ろに回した手でレディバイドを押さえながら気まずそうに言う。
「な、何か『虫の知らせ』がすると思ったら、気のせいだったみたいだね~
それじゃ、邪魔者はここで失礼するから…ごゆっくり~!」
玲はレディバイドを伴ってそそくさと退散した。
「だから屋外はやめようって言ったじゃん~」
「おかしい、僕の完璧なシミュレーションではこの時間ではここには人は来ないはずだったのに…」
挙動不審な玲に困惑しつつ留美と藤藁は場所を変えた。

「どういうつもりだあああああああ!!レイィ!!?」
「あれはね、嫌がっているんじゃないの!あの二人は付き合ってるんだから!!」
問いかけるレディバイドに玲が説明する。
「付き合ってる…だァあ!?」
「男と女がお互いに好きで一緒にいるっていう事だよ。
そんな中割って入る方が却って失礼なんだからね!」
赤面しながら説明する玲。

一方で翔にも同じような事が起こっていた。
「こっちっス、ショウ!!」
「ちょ、何だいきなり!!」
同じように遠くから聞こえる声を聞きつけたウィーゼランが突如翔のバッグから飛び出しどこかへと向かっていく。
ウィーゼランが聞きつけたのは凄む口調の複数の男と怖気づく男の声だった。
現場で翔達が目にしたのは親父狩りの光景だった。
「こ、この金がないと生活できないんだ…頼む!!」
「知るか、俺達も金がねーんだよ!!」
「慈善事業だと思って寄付しろ!!ギャハハハハハハ!!!!!!」
「…ちょいと陰に隠れてな…」
翔はウィーゼランに一言言った後、親父狩りをしている半グレ達の前に立つ。
「おう、今テメー等がやってんのは親父狩りって奴かい!?」
「ハ、見りゃ分かんだろクソガキ!」
半グレの一人が翔を威圧するも勿論翔は動じない。
「テメー等もいつか親父になるが…その時に…いや、たった今!
『もっと若い奴』に!狩られても文句は無ぇだろうなあ!!??」
翔の恫喝に当然の如く半グレ達は逆上する。
「んだと舐めんじゃねぇぞクソガキぃ!!」
「分際って奴を分からせてやるぞ!!」
襲い来る半グレ達に翔は応戦する。
「他人は良くて自分は駄目ってか!?とんだダブスダダバアゴラ!!」
「な、何だこのガキ、感じが…ボギャ!!」
暴走モードに入った翔の強烈な一撃が半グレに炸裂する。
それからは一方的に翔のターンとなっていく。
「ゴラグゾジジー!!モードクズッニババヤスギッゾー!!
ガイゴガビヅヨーナガダダビジデヤドッガー!!?コドローガビ!!ローガビ!!ローガビィィィィ!!!!」
ドゴッ!!バキッ!!ズドッ!!!!
ふとその時翔は我に返った。
「ああ、またやっちまった…」
翔の足元には失禁した半グレが伸びており、親父狩りの被害に遭った中年男性もいつの間にか逃げていた。
「おう、出てきていいぞ」
翔はウィーゼランに声を掛ける。
「いやぁ、オレが元の大きさだったら直接始末していた所っスからスッキリしたっス!」
自身を褒めるウィーゼランに対して翔は遠慮がちに応じる。
「いやいや俺なんてまだまだよ。こうやって頭に血が上ると言葉が乱れちまってよぉ…
本当に粋な男ってぇのはそんなんじゃあねぇよ」
「粋な男っスか?」
「まぁ俺の口から語るより本物を見た方が早いかもな」

その後玲と翔はそれぞれシェリーに連絡を入れる。
「「という事で一晩レディバイド(ウィーゼラン)を一晩預かっていいですか(い)?」」
「人間を知る丁度いい機械かもしれないし、構わないわよ」
シェリーは快諾した。

その晩沖藍家にて…
「いい、付き合うっていうのは互いが互いに尊重する事で…」
玲がレディバイドにネットや自身の所持する本などを介して恋愛に関する説明をする。
赤灯会事務所にて…
「ハァ…ハァ…男の道は…辛く…苦しい…」
「我々極道は忠義を尽くすのが本筋ではあるが、我等はかつて付いていく男を間違えた事があってな…」
「親分に忠誠を誓うか己の信念を貫き通すか…男ってえのは重大な決断に迫られる時があるのさ」
火纏、五里石、魚原等がウィーゼランに男の生き様を語る。

そんな一方、柴又にて。
志熊の情報の通り武射眼は何かを目論んでいる。
ボスはギュスタービーの死の嘘ニュースを聞いてブチ切れた柄の悪い男である。
ちなみに嘘ニュース事件の時はたまたま嘘ニュースが流れる圏内にいた。
彼はデルタナンバーズの誰かと話している。
「俺達は身勝手で傲慢な人間共に対する動物の怒りの代弁者って奴よ」
「ブルァハハハ!!!!にぃん間の中にもぉ!話の分かる奴がぁ、いたもんだなぁ!!」
声の主は豪快に笑い声を響かせ、作戦の説明する。
それも作戦実行日は翌日であり場所はやはり上野動物園である。
「そいつは面白ぇ!!自分達の都合で動物の自由を奪い晒し者にする人間に分からせる事が出来る上に我々の夢も叶うってもんよ!
…人間と動物の主従関係を逆転させた新たな帝国を気付くのが我々の長年の夢だ!!」
「そういう事にきょォうるるょくを惜しまないのがァ、わァれわれデェルタナァンバーズだァ」
武射眼とは柴又で活動する動物愛誤系半グレである。
彼等は動物愛護の精神をはき違えており毛皮製品や革製品、食肉産業に携わる者に悪質な嫌がらせをしたり
ハトや犬猫に餌を与えて却って殺処分の件数を増やしたり糞害を発生させるなどといった行為を働いている。
その上獅子雄や巣蹴縷沌並みに神出鬼没であり中々警察やヤクザに捕まらない。
そんな彼等が今、デルタナンバーズと手を結んだのだ。

そして来る8月13日。
上野動物園にて。
「これがギュスタービーか、実際に見るとデカいな…」
「作り物じゃないなんて信じられないわね」
通常のワニの2~3倍はありそうなギュスタービーを沖藍夫妻が手を繋ぎながらまじまじと見つめる。
彼等の距離は誰が見ても分かるほど近い。
「成程ォ!これが『夫婦』って奴なんだなァ!!」
「シッ、声が大きい!…まぁうちの両親は特に仲のいい方なんだけどね…」
バッグの中のレディバイドに玲が苦笑しながら言う。

「これがオレのモチーフとなった動物か、オレと同じで首が長いな」
「ここにいるのは他にはウィーゼランのモチーフのイタチとメガフライヤーのモチーフのハシビロコウぐらいかな。
後は種類とか生きていた時代の違いとかでいないんだ」
本物のキリンを見るジュラファイグに劾が説明する。

「ここには私のモチーフはいないんですの?」「イモガイって奴ぁいないんかい?」
シルキーガとシェルコーンの問いに剣が答える。
「イモガイは水族館に、カイコガは他の動物園の『昆虫館』という施設にいるかもな」

「このゴリラもかなりの大きさですね、それとどことなく貴方の組の構成員の一人に似ています」
美音が眼前の3mはあろうかという突然変異で巨大化したゴリラ「エイプ郎」を見ながら翔に言う。
美音が言うのは五里石の事であるが厳密に言うとエイプ郎が五里石に似ているのではなく五里石がゴリラに似ているだけなのだが。
当の翔はと言うと完全に緊張し呂律も回らない。
「へ、ヘイ、ソーデヅベ…(美音さんとデート美音さんとデート美音さんとデート…!!)」
「ショウ、ガチガチっスね…」
バッグの中からウィーゼランがからかい気味に言う。

一方で汰威超組の構成員達は武射眼の動向を伺っている。
志熊の言った通り厳つい者は遠く離れた地点にいてそうでない者は沖藍夫妻を肉眼で捉えられる地点にいる。
そして上空。
「ギュスタービーにエイプ郎…格闘家として是非とも戦ってみたいものだねェ…」
ヘリコプター内で何者かが汰威超組と共に沖藍夫妻の様子並びに武射眼の動きに目を光らせている。
彼は汰威超組の協力者であり、はるか上空にいるという事はそれだけ見た目が厳つい事を物語っている。
そんな中。
「ウホッ!!」
突然エイプ郎が玲目掛けて糞を投げたのである。
「キャッ!」
横っ飛びで玲が回避するものの転倒する。
「あー危なかった…」
埃をはたき落としながら立ち上がる玲だったが違和感に気づく。
「あれ、レディバイドは…」
鞄の中にレディバイドが見当たらない。
当のレディバイドであるがこの日はギュスタービー公開日という事でテレビカメラが来ており
その周辺でテレビに映ろうと人だかりが出来ていた。
「ごめん、落とし物しちゃって…係の人に連絡してくる!」
「ああ、分かった!」
玲は両親に伝えた後憔悴した様子でロックマン変身者達に連絡。
「よし分かった、一緒に探そう」
「それは大変だ、僕も手伝おう」
「俺も手伝いますぜ!」
この一連の動きを察知した汰威超組構成員が美音に接触するも玲を介して
手出し不要と言い渡され怪訝な顔をしながらもこれまでの行動に戻る。
ミニ・レプリ達も捜索に当たったが今のレディバイドと同じ目線になった為見つけるにはそう時間が掛からなかった。
その頃レディバイドは…
「うう…バッテリーがぁ!持たねぇえ!お、俺は、ここ…だァ…!」
バッテリーが切れかかっているレディバイドは何を思ったのか
指を指すポーズでうつ伏せで倒れていた。
「こんな所で…止まるんじゃねぇっス!」
そんな彼を見つけたのはウィーゼランだった。
「バカ…本当に…本当に心配したんだから!!」
安堵から大粒の涙を流しレディバイドを抱きしめる玲。
この時レディバイドの全身は玲の胸に押し当てられている。
「最悪の事態は免れたようだな…」
剣も一息つく。
「良かった…本当に良かった…あれ、どうしたんですかい、桜井の兄貴?」
翔も安堵すると同時に劾に尋ねる。
「いや、何でもない…本当に良かったね…」
劾は何故か赤面しつつレディバイドの無事を喜んだ。

「これでも人間はクズと思えるっスか?」
ウィーゼランがシェルコーンに尋ねる。
「レイがクズじゃねぇのは良くわかった」
ぶっきらぼうに返すシェルコーン。
「クズは人間の中でもとりわけ酷い方の事を言いますのよ。貴方もそのうち分かるはずですわ」
「ああ、デルタは『クズ=人間』だ、とオレ達に洗脳していただけなんだ」
「そういうもんかぃ」
シルキーガとジュラファイグもウィーゼランに続きシェルコーンは頷く。

そんな中その人間の中でも格段に酷い集団が今まさに悪事を働こうとしていた。
上野動物園から離れた場所でデルタナンバーズの1体と共に園内の様子を観察している両腕に鉤手甲を着けておりどこか昭和の香りがする男が指示を出す。
「ククク…十分集まって来たな…丁度いい頃合いだ、作戦開始!!」
この男こそ武射眼のボス、輝裂 虎鉄(きざき こてつ)である。
http://zeroi.stars.ne.jp/kizaki.png
輝裂の号令に伴いその場にいたデルタナンバーズが武射眼を伴って上野動物園内にワープした。
その直後、2つの異変が同時に起きる。
一つ目は「ホッキョクグマとアザラシの海」エリアを中心に突如建物が氷漬けになっていき
一瞬にして氷の要塞と化した事である。
そしてもう1つ。
園内の動物の眼前に紫のバイザーが現れ、バイザーが動物の目に密着すると
自動的にバイザーが動物に合ったサイズになり同時に動物の体にあらゆる武装が現れたのだ。
デルタアタッカーズ「プロトドミネイトバイザー」と融合した「アームドアニマル」誕生の瞬間である。
更にはそのアームドアニマルが檻から脱出し始めていく。
「うわあああああ!!武装した動物が園内を練り歩いてる!!!!!!!」
園内が大パニックになる中拡声器と一般人のスマホから輝裂の声が流れ始める。
これはグレッゲージの能力によるものである。
「傲慢で愚かな人間共…我々は武射眼。
動物の怒りの代弁者よ。
この度とある『協力者』の力を借りてこの園を占拠した。
これよりこの園は動物が人間を支配する治外法権『人間園』とする!!
食われたくなければ檻の中へ避難せよ。
これからは貴様等が飼育され観察される対象…飯は残飯よ。
文句がある奴は自分が動物の餌になって貰う!!!!
さあ早速檻に入れ!!食われたくなければな!!!!ウハハハハハハハハ!!!!!!」

これを受け志熊は…
「武射眼の連中め、まさかデルタナンバーズと手を組むとはな…」
歯噛みした後剣のアカウントに連絡し、その後構成員等に指示を出す。
「いいか、ロックマン達が来るまで時間を稼げ。
沖藍夫妻は勿論堅気の皆さんも出来る限り守るのだ!」

一方ロックマン変身者達は…
「ウ…ウソだろ… こ…こんな事が… こ…こんな事が許されていいのか…!?」
目の前で起こっている事に愕然とする劾。
「許されていい訳ないでしょ!しかし凄い人込み…身を隠す場所が…」
玲が憤りつつも現状の混雑具合に困惑する。
「ん、鷹山からメッセージが来たぞ」
剣が劾と玲に伝える。
「兄貴達、姉貴!今からサテライトアイを送りやす!その時になったら変身してくだせえ!」
メッセージの内容は以上のとおりである。
一方で翔は汰威超組並びに赤灯会にロックマンである事を隠していない為、
美音の呼びかけで汰威超組構成員達が自然な動きで自身を囲むや否やロックスーツを起動。
そしてそのままサテライトアイを剣達の元へ飛ばす。

この間、他の汰威超組構成員達は園内の至る所で一般人の避難を誘導しており
場合によっては自身も含め敢えて檻の中に誘導するなどアームドアニマルとの戦いは原則的に消極的だった。
だが例外もいた。
バラララララララ…
パニックが起こる園内の上空からヘリコプターのプロペラ音が響いていたが
それが次第に大きくなりその発生源たるヘリコプターも地上から見える大きさが大きくなっていき最終的に着陸した。
バン!
ヘリコプターの中から操縦室に樺口ほどではないがどうやって入っていたのかと言わんばかりの凄まじい巨体の男が出てきた。
http://zeroi.stars.ne.jp/kiba.png
「あ、あれはデーモン黄場!デーモン黄場じゃないか!」
観衆の中から声がする。
彼はデーモン黄場、本名は黄場 泥衛門(きば でいえもん)。
汰威超組が資金提供をしている地下格闘団体の社長兼選手でアジア人離れした強さから「黄色い悪魔」という異名を、
そして常人離れした体格と強さから「怪獣を超えた怪獣」という異名を持つ。
「フン!」
ドグシャ!!!!
デーモン黄場は登場するや否やヘリコプターを軽々と持ち上げその状態でジャーマンスープレックスを決めた。
「ヘリコプターにジャーマンスープレックスだあっ!!」
観衆から漏れ出る驚愕の声。

そんな裏社会の知名度に加え自らの力を誇示する行為に対し武射眼が黙っている筈もなくアームドアニマルに攻撃指令を出す。
「プギィィィ!!!!」
最初にデーモン黄場に突っ込んできたのはこども動物園から脱走したメスの豚だった。
「なめるなっ!メスブタぁ!!」
ドゴォ!!
「プギ!!」
デーモン黄場の拳を喰らい豚は呆気なくダウン。
「前座ってのが気に喰わねぇ…こいつら全員俺が片付けてやるぜ!」
その後もデーモン黄場は襲い来るアームドアニマルを返り討ちにしながら
あらゆる猿が公開されているコーナー、通称「猿空間」に到達。
腕にドリルを着けたマンドリルや棒を持った子連れのハヌマンラングールを難なく撃退すると彼の前に巨大な影が立ちふさがる。
「ウホッ!」
エイプ郎である。
「丁度いい、お前とは一度遊んでみたいと思っていた所なんだ」
ボッ!
デーモン黄場が拳を振るうも…
パァン!
それはエイプ郎によってガードされた。
ボッ!
反撃と言わんばかりに今度はエイプ郎が拳を振るう。
パァン!
しかし先程とは逆にデーモン黄場がそれをガードする。
ボボボボボボボボボボボボ!!!!!!!
パンパンパンパンパンパンパンパン!!!!!!
「あ、あれは『ボボパン』!互いに互角な、しかも極めて強い者同士の拳の応酬で初めて奏でられる音!!」
観衆の1人の氷藤が驚嘆する。
「ボボパン」を聴ける事自体珍しいが3mのゴリラで武装しているエイプ郎と生身の人間がそれを発している事が驚きなのである。
両者の戦いは白熱するが徐々にエイプ郎が押されていき遂にはダウン。
「人類を無礼(なめ)るな!!」
地に倒れ伏すエイプ郎を見下ろし勢い付くデーモン黄場。
しかし彼の天下もいつまでも続かない。
更に巨大な存在が彼に迫っていた…

一方劾、剣、玲はサテライトアイで身を隠した状態でロックスーツを起動し、翔と共に
極めて危険な状況では対応しつつも「ホッキョクグマとアザラシの海」を目指していた。
ロックマン達が事前に聞いた情報を元にアームドアニマルのバイザーを破壊すると
アームドアニマルはその武装も消滅し元の姿に戻っていく。
勿論動物には危険な種類も多い為元に戻った後でもストリングバインダーで拘束しておくのも忘れない。
「現れたなロックマン…コモド・ドラゴンを放てっ!!」
輝裂の指令と共に何匹ものコモドドラゴンがロックマン達に襲い来るもこれまで同様返り討ちにしていく。

一方輝裂はグレッゲージの能力で園内のあらゆる地点での映像を見れるようになったスマホを見ながらある事に気づく。
「沖藍竜太!沖藍竜太じゃねぇか!!こりゃ丁度いい、奴を潰せば俺の名にもハクが付くってもんよ…」
竜太を目にした輝裂は何やら悪だくみをする。

その頃デーモン黄場は…
「さあ次はどいつだ!!…ん、お前は…」「ぐわあああああ…」
勝ち誇るデーモン黄場の前に現れたのはギュスタービーだった。
それも他のアームドアニマルの武装が四肢の1本のみ、背中のみ、頭部のみである事に対しギュスタービーはほぼ全身を武装している。
その外観は全部背面と前肢に砲門を備え後部背面から尾にかけて刃物のような棘を生やし
四肢の地面に接する面にはキャタピラが付いているという威圧感溢れるものである。
http://zeroi.stars.ne.jp/ds9.png
そう、ギュスタービーはプロトドミネイトバイザーSPと融合しデルタストーマーズとなったのである。
「とことん付いてる…な!!」
ガッ!
ギュスタービーとも戦ってみたいと思っていたデーモン黄場は相対するや否や装甲に覆われていないギュスタービーの鼻っ柱を思いっきり殴る。
しかし全く手応えが無かった。
「流石にビクともしないな…だったら…」
デーモン黄場は即座に後ろに回り込みギュスタービーの尻尾を掴みジャイアントスイングを繰り出そうとするも…
「お、重過ぎる…!!」
装甲が加わる前からギュスタービーの体重は通常のワニの何倍もあった為、
ギュスタービーが力を込めずともデーモン黄場の力でも投げる事が出来なかった…
その直後…
グググ…
「えっ!?」
ギュスタービーが尾の先を上げデーモン黄場の体が宙を浮く。
ブンッ!
「なにっ!?」
続いてギュスタービーの尾の先端が激しく振るわれデーモン黄場は飛んで行った。
ドゴッ!!
「はうっ」
壁に激突したデーモン黄場は受け身を取るもその衝撃はかなりのもの。
左腕に強烈な違和感を覚えたデーモン黄場はその正体を悟ると情けない声を漏らす。
「あっ、一発で折れたッ」
それ以降も最早戦いになるレベルではなかった。
デーモン黄場はギュスタービーにかすり傷一つつけられず逆にギュスタービーの僅かな挙動でデーモン黄場が大ダメージを受ける。
「ウワアアアアアオ!!!!!!」
とうとうデーモン黄場はヤケクソになってまだ動く方の腕で「グルグルパンチ」を繰り出すも
これまで同様全く通じないどころかギュスタービーが振り返る際の接触で派手に吹っ飛ぶ始末。
「やはり獣の前では人間は弱き者なんだ…悔しいだろうが仕方がないんだ…」
観衆の顔色からは希望が消えていき、マネキンのような無機質なものになっていく。
キュラキュラキュラキュラキュラキュラ…ゴオッ!!
ギュスタービーがデーモン黄場目掛けて猛ダッシュを繰り出した時だった。
その巨体がデーモン黄場を吹っ飛ばそうとした時、颯爽と青い影が割って入り
デーモン黄場を抱きかかえて横っ飛びで回避したのだ。
観衆はその正体を見てこれまでの絶望から一転、一気に歓声を沸かせる。
「来た!」「ロックマン来た!」「これで勝つる!!」
テンションが高まるあまり言い間違いをする者も。

「ギュスタービー…君は僕が止める!!」
「ぐわああああ!!!」
ドウッ!ドウッ!
劾と対峙するや否やギュスタービーは背中と前肢の砲門から砲撃を放つ。
「(やはり僕達相手だと本気を出すのか…)」
思えばギュスタービーの、ワニの最大の武器である顎を持ってすれば曲がりなりにも生身の人間であるデーモン黄場の体などいとも簡単に嚙み砕けるだろう。
そんな事を思案しつつ応戦する劾だったが…
ある時ギュスタービーが攻撃の手を止め苦しそうな声を絞り出し始めた。
「ぐわ…ぐわあぐわ…ぐわぐわ…」
「何だ、何か言ってるのか?」
その様子を見た劾はロックコマンダーにセットされたスマホを操作し以前シェリーからインストールさせてもらった特殊アプリ「ジュウリンガル」を起動させる。
すると画面にはこのような文字が現れた。
「こ、殺してくれ…」
「何だと!?」
劾が思わず問うとギュスタービーの鳴き声に伴い更に文字が表示されていく。
「ぐわわ…ぐわわわわ…ぐーわー…ぐわぐわぐわ…
(俺は生まれつきこの白く巨大な体で他のワニから差別を受けてきた…
故郷にいた時はいつも孤独だった…
だがここの飼育員の奴等は他の動物と変わらない愛情を俺に注いでくれている…
今あの妙な奴等の所為で俺の体は意志と関係なく動くんだ…
さっきのデカい人間を痛めつけたのも決して俺の意志ではない…
これ以上飼育員の奴等の想いを踏みにじるのは耐えられない…
一思いに止めを刺してくれ…
少しでも気を緩めたら再びお前を襲ってしまう…
さあ、俺が動きを止めている間に…やってくれ!!)」
「そうか…」
劾は一言頷くと腰の特殊武器チップスロットにシェルコーンの特殊武器「インパクトハープーン」の武器チップをスロットインする。
そしてエネルギーをチャージして腕の先端からワイヤーフレームが発生した後実体化した銛が現れる。
この武器は酸を放つ性能は無く貫通能力を集約させているのが特徴である。
ズドッ!!
強烈な一撃がギュスタービーのバイザーに直撃する。
観衆は以前の嘘ニュースが本当になったと一瞬思ったが…

シュウウウウウ…

劾が破壊したのはプロトドミネイトバイザーSPのみだった。
その結果ギュスタービーの武装は消失し元の姿へ戻っていく。
次に劾はこれまで同様ストリングバインダーでギュスタービーを拘束しようとするも…
「ぐわ…ぐわああぐわ…ぐわ…ぐわ…ぐわ…(まあ待ってくれ。その前に礼をさせてくれ)」
そう言ってギュスタービーはホッキョクグマとアザラシの海へと猛ダッシュで駆けて行った…
「礼…あの方向は、まさか…!」
劾はギュスタービーを追う。

時は少々遡り沖藍夫妻がいる地点の上空にて。
「クワアアアアア!!!」
ヒュー…ガシッ!
「キャッ!!」
上空よりオオワシのアームドアニマルが急降下し優子を掴んだ。
バサバサバサバサバサッ!!
「貴方ああーっ!!」
オオワシはそのまま優子を連れ去りホッキョクグマとアザラシの海へと飛んでいく。
「優子さん!」
「クウウ、我々が付いていながら…!」
竜太と汰威超組構成員達はそれを追う。

「お母さん…!!」
遠目にこの瞬間を目撃した玲は血相を変えて同じくホッキョクグマとアザラシの海に向かう。

「あのご婦人は確か…こいつぁ臭ぇ!ゲロ以下の臭いがプンプンするぜ!!」
翔もこれを目撃しており何かを感じ取りホッキョクグマとアザラシの海へ。

竜太が到着するとそこにはホッキョクグマとセイウチのアームドアニマルが立ちはだかる。
「ボファーッ!!」
「ガァーッ!!」
迫りくる武装した2頭の巨大な猛獣。
一般人なら絶望的な状況であるが…

「邪魔を…するな!!」
竜太は常に2頭の間の位置をキープし続けアームドアニマル達を同士討ちに持ち込む。
結果バイザーが壊れ2頭は元に戻り気絶した。
竜太が奥に進むとそこには輝裂を始めとした武射眼が待ち構えていた。
その上空にはオオワシに掴まっている優子が宙ぶらりんになっている。
ちなみに檻の中には避難した一般人達が怯えながらこの状況を見守っている。

「優子さん!」
愕然とする竜太に輝裂は勝ち誇って言う。
「沖藍竜太…奥さんの命が惜しかったら抵抗すんなよ…!?」
周囲の武射眼構成員達もニヤついてそれを見ている。

「貴方、私に構う事はないわ…!」
「そんな事出来る訳…」
卑劣な輝裂達に歯噛みする竜太だったが、突如状況が一変する。
突如オオワシのバイザーが砕け散り元の姿に戻ると糸で拘束され、
優子が空中を浮遊してゆっくりと竜太の近くに移動していき地上に降り立ったのである。

「なんだあっ!?」
突然の出来事に戸惑う輝裂達だったがその直後鬼の形相の竜太を見て戦慄する。
周囲の汰威超組構成員達も同様に怒りに燃えている。

「マ…マ…マンモーックス!!!!!」
鼻水を垂らしながら輝裂が叫ぶと同時だった。

ドォォォォォォォォン!!!!!!

上から巨大な何かが降ってきて竜太達の眼前の地面に衝突した。
その重量故に地面は震撼し落下地点を中心に亀裂を走らせる。
現れたのは白と青を基調としたボディカラーで氷の牙を生やし
がっちりした体型で手足は円筒形で重厚、身の丈はギガプライアーに及ばないものの
常人の2倍はあろうかというマンモスのようなレプリロイドだった。
http://zeroi.stars.ne.jp/dn7.png

「人間にぃしてはやるようだがァ…こォォのワシ相手でェは…どうゥかなァア…!?」
「くっ…!」
レプリロイドが竜太に迫り覚悟を決める竜太だったが…

「フラッシャー・ブロウ!」
ザンッ!!
突然背後から切り裂かれ、レプリロイドは振り向く。
「アンタの相手はこの私だよ!」
そこには玲がいた。
確かに斬撃が決まった筈であるがレプリロイドはかすり傷がついた程度の様子である。
「来ィィたなァァあ!!!ルルルロォックマァァンンンンン!!!!」
レプリロイドはその独特な口調で敵意を露にする。

「ヒュオーガ・マンモックスだね?」
シルキーガの絵を思い出しながら玲が尋ねる。
「いぃかにもォ、ワシはヒュゥウオーゥゥガ・マンモックスゥだァ!!!」
レプリロイド、もといマンモックスの口調に引きながらも玲は怒りを交えて問い質す。
「動物を操って、悪党なんかと手を組んで…何のつもりなの!?」
するとマンモックスは反論する。
「悪党だァ?とォんでもなァいィ!!武射眼の奴等はァ、ワシの同志よォ!!
にィんげんはクゥズばかりだと聞いておったがァ、輝裂のよォうなまともな奴等もいるるゥって事をォ…
デェルルタが教えてくれてなァア、ワシはそォんな輝裂達のォ…ちィクァらになぁってるるんだァ!!」
これを玲は真っ向から否定する。
「武射眼がマトモ!?アンタ騙されてるよ!武射眼は人間の中でもクズの中のクズなんだからね!!!」
このやり取りが行われている間、輝裂達はこの場からそそくさと去ろうとしていた。
これに対し竜太は…
「お前達、優子さんを頼む」
汰威超組構成員達が沖藍夫妻と共に檻に避難しようとする中彼等に一声かける。
「俺には…やるべき事があるからな…!!」
「へ、ヘイ!!」
汰威超組構成員達その気迫に押され優子と共に檻に入り、竜太は輝裂達を追い始める。

「どォの道ィ、貴様るる等ァとは戦わねばならんン!行くぞォ!!」
マンモックスは臨戦態勢になると腕の袖口のような部分から冷気が噴射され拳の部分部分に氷のハンマーが形成された。
「フロスティナックルゥゥゥゥ!!!!!」
ドォン!!
マンモックスが勢いよく「氷のハンマー」を振り下ろす。
ドゴォッ!!
玲は咄嗟に回避するも大地を震撼させ地割れを発生させるその威力に目を剥く。
それは翔も同様だった。
マンモックスの攻撃の威力を目にした翔はサテライトアイのバリアを一般人達がいる檻の方に全振りしてこの場に姿を現したのだ。
というのもサテライトアイを一度に出現させる数及び翔が操作できる数には限度があるのである。
「ムゥゥ、もォうひとるるりぃいたのかァ!!」
「堅気の皆さんを守る為にゃ俺の防御は二の次よ!」
敢えて防御力と透明化を犠牲にした翔が啖呵を切る。
「さっきは有難うね、鷹山!」
「当然の事をしたまででさあ!!」
翔に礼を言う玲。
やはり先程の優子の救出は翔によるものだったのだ。
「小童共がァ、まとめて蹴散らしてくるるれェるわァ!!」
2対1の状況になってもマンモックスはその闘志を却って燃え上がらせるのだった…

その頃剣は…
「これで…終わりだ!ストリングバインダー!!」
この時点で汰威超組構成員や警察官などによる一般人の檻への誘導はあらかた完了しており
アームドアニマルの標的は必然的にデーモン黄場から剣へとシフトしていた。
そこで剣は自身の下にアームドアニマルが集合すると跳躍し彼等を纏めてストリングバインダーで拘束して一網打尽にしたのだ。
「今行くぞ…!」
剣もホッキョクグマとアザラシの海へと進む。

ホッキョクグマとアザラシの海では…
「く…中々ダメージが通らない…」
「何せこの図体ですからねぇ…」
玲と翔はマンモックスに中々ダメージを与えられないでいた。
一方マンモックスも玲と翔に決定打を中々与えられない。
「ちょこまかと動くなるるらァ、動きを遅ォくしてやァるるまでよォ!!」
ブシューッ!!
マンモックスのボディの穴と言う穴から強烈な冷気が発せられる。
「か、体が…」
「凍って…!」
身体の至る所が凍り付き始める玲と翔。
おまけに玲風の風圧もかなりのもので踏ん張っていないと押し返されてしまう。
「サンブラスター!!」
距離を詰めてくるマンモックスに翔が反撃する。
すると氷のハンマーが水蒸気を大量に発生させ融解しマンモックスの腕にも多少のダメージを与える。
「ストリングバインダー!!」
そこへ玲がストリングバインダーでマンモックスを拘束するも信じ難いことが起こる。
「こんな糸でェ、ワシを捕らえたつもるるりィかァ!!」
ブチブチブチブチブチッ!!
マンモックスはストリングバインダーの糸を強引に引きちぎったのである。
この糸は熱だけでなく余程の力でも切れるのであった。
「フゥン!!!」
その直後マンモックスは糸を掴んだ手を振り回し玲は剣玉の玉の如く振り回され壁に激突した。
「ウ…!」
全身に衝撃を受け地面に落下する玲。
一方で翔はこの水蒸気を隠れ蓑にしてマンモックスを死角から狙おうとするが…
「バァルルレバレだァ!!!」
ドォン!
「うお!!」
マンモックスが足を踏み鳴らすと地震が発生し翔が体制を崩す。
「止めだァ!!」
翔を踏みつぶそうとするマンモックスだったがその間に玲が割って入って翔を抱えて脱出した。
「沖藍の姉貴!体は大丈夫ですかい!」
「これぐらい…ハァ…ハァ…何ともないよ…!!こんな痛み…博士の痛みに比べれば…!」
翔の問いに応える玲の息は上がっている。
「ブルルァハハハハ!!!!さっきまでのォ威勢はどォうしたア!!」
マンモックスは笑いながら再度袖口から冷気を放ち次は氷の棍棒を形成する。
「くるるらえェエ!!!」
ゴオッ!!
二人目掛けて振るわれる余りに長大な氷の棍棒。
ズバシュッ!!
そこに剣が割って入ってチャージセイバーで迎え撃つ。
結果両方の技の威力が殺されるが剣は後方に吹っ飛んだのに対しマンモックスは片腕がのけぞる程度だった。
剣はきれいに着地し、マンモックスの実力を認める。
「成程、流石のパワーだな」

「「神崎(の兄貴)!!」」
剣の到着で状況の好転を喜ぶ玲と翔。
「神崎、こいつは防御力もかなりのものだよ!!」
「まぁそうだろうな…」
玲の助言を聞いた剣は玲、翔と共にマンモックスに向き直る。
「なぁん人来てもォ!同じ事だァ!!纏めて掛かって来ォい!!!」
「なら行かせて貰うぜ…」
剣はマンモックスの冷風に抗い強引に距離を詰めるとインパクトハープーンを繰り出す。
ズドッ!!
「ムゥゥゥゥ…!!」
今までで一番手応えがありマンモックスのボディの装甲を貫通し内部メカを露出させるに至るがやはり決定打にならず却って気を張らせる結果となる。
「一度当てたかるるらァってェ、良い気になるでないぞォオ!!!」
マンモックスは状況に合わせフロスティナックルの形状をグローブ状にしたり盾状にしたりしてロックマン達を翻弄する。
それだけでない。
鼻先の尖った部分に氷を纏いその状態で鼻を操る事で「剣術」も使ってくるのだ。
「単なる単細胞の力任せじゃないって訳だな…!」
以降も技と技の応酬が続く。
基本は玲と翔が注意を引きつけ剣がインパクトハープーンを当てる流れだが
一発では致命にならないため戦いは持久戦になっていった…

その頃バリアの向こうでは…
「ち、畜生ォ、またやられた!!」
道端には武射眼構成員達が死屍累々と転がっている。
必死に逃げる構成員達だったがやがて竜太に追いつかれてはワンパンで沈んでいくのだ。
最終的に輝裂は普段ならない筈の氷の壁に追いやられた。
「こうなったら…俺も腹を括るぜぇ!!この巣蹴縷沌に造らせた『シャイニングクロー』の餌食にしてやらあ!!」
輝裂の鉤手甲の爪の部分が発光する。
この鉤爪は熱を帯びており切り傷と火傷を同時にもたらす事ができるのだ。
「オラァ!!」
ブンッ!!
輝裂が勢いよく鉤爪を振りかぶるが難なく躱される。
竜太は今まで幾度も自分より遥かにリーチの長い相手に勝利を収めており
己と身長の変わらない今の輝裂のリーチは過去の敵でも経験済みなのである。
その流れが繰り返される内に輝裂は感極まって己の哀しい過去を語り出す。
「俺は人間が嫌いで…動物が好きだった…
動物を己の欲望に利用し殺す他の人間共と違ってな…
彼女にするのも動物だった…お上の連中はそれを理解せず俺を何度も『マドンナ』から引き剝がしやがった…!!
俺は許せねぇんだ!!傲慢な人間が動物を弄ぶ人間社会がよぉ!!」
「知るか」
竜太はそれを一言で切り捨てる。
「俺の!!」ドゴッ!「ウコ!」
「家族に!!」バゴッ!「チャヌ!!」
「手を出すなぁっ!!」バキッ!!!「プコロォッ!!!」
竜太の怒りの拳が次々と炸裂し輝裂は壁に叩きつけられる。

その頃ロックマン達は…
「しぶとい…奴だな…」
「猪口才(ちょこざい)なァ…奴等だァ!!」
マンモックスのボディには剣が開けた穴が数か所あったがロックマン達も消耗している。
その時だった。
「ぐわあああああああああああ!!!!!!!」
ドォン!!
遠方より現れたギュスタービーがマンモックスに伸し掛かったのである。
下敷きになるマンモックス。
しかし…
「これしきの重量でェ…ワシを潰せるると思ったかァ!!フゥン!!!」
ブンッ!!
ズダァン!!
「ぐわああああ…」
マンモックスは両腕でギュスタービーを持ち上げ放り投げた。
「「「ギュ、ギュスタービー!!」」」
玲、翔、そして後からやって来た劾が思わず叫ぶが剣は冷静だった。
「スパークスマッシュ!!」
ズバシュ!!
ギュスタービーを放り投げた直後のマンモックスをすかさず剣がスパークスマッシュで動きを封じた。
「「「今だ!!!」」」
ズドドドドドドドドドドドド!!!!
劾、玲、翔はそれぞれの武器にインパクトハープーンの武器チップをスロットインし
それぞれがマンモックスのボディに空いた穴目掛けて攻撃を繰り出す。
すると無数の銛がまるでハンマーで叩かれる釘のようにマンモックスのボディに刺さっていき…
「畜生ォーッ!!!!!!」
ドォォォォン!!!!
マンモックスのボディは爆ぜた。
この時剣はマンモックスのCPUを基地に転送した。

一方で竜太は…
「まだ!まだだ!!!!」
ドカッ!!バキッ!!
失神した輝裂を尚も殴り続ける竜太だったが…
「そこまでにしときな」
それを止める一つの影が。
声の主は劾より背が高い屈強な男である。
http://zeroi.stars.ne.jp/hiroki.png
「桜井の旦那!!」
竜太がその名を呼ぶ。
男は桜井 宏樹(さくらい ひろき)。
動物園に調査に来ていた刑事であり、劾の父でもある。
普段温厚であるが悪党には容赦しない事で有名であり
互いに全く違う立場の妻を娶った事や共通の敵に対しやむを得ず共闘した事もあり
竜太とは奇妙な友情で結ばれている。
「お前さんはもう堅気だ。殺しなんかしちゃあ娘さんも悲しむだろう…
それにな、この男はこれまでやった事がやった事だ…俺の口利きで『鎌暗(かまくら)刑務所』送りにしてやるよ」
「鎌暗刑務所…あの現代のアルカトラズと言われる治外法権の…」
宏樹の言葉に竜太は反応する。
「確かに…あそこは死ぬより辛いだろうからな…」
そして竜太は息を呑む。
「さあ、嫁さんの元に行ってやんな。こいつの身柄は俺が預かるからよ」
「旦那には適わねぇな…恩に着るぜ!」
竜太は宏樹に礼を言うと優子達の元に向かう。

そして…

「優子さん、帰って来たぞ…」
「貴方!信じていたわ!!」
強く抱き合う沖藍夫妻。
「良かった…本当に良かった…!」
汰威超組構成員達も感涙である。

そこに深い安堵から思わず玲が駆け寄る。
「お怪我は、大丈夫ですか…?」
敢えて他人のように振る舞う玲だったがその時不測の事態が。
ポロッ!
「あっ…!」
マンモックスとの戦いでロックコマンダーのスマホ設置部分が損傷しスマホが滑り落ちたのだ。
結果玲のロックスーツは消失する。
「玲!!玲じゃないか!!何で…何でこんな危険なことに首を突っ込んでいたんだ!!」
衝撃を受けた竜太は思わず玲に問い質す。
「この戦いはね、外道に身を落としそうな子を止めるための戦いなの。
お父さん、いつも言ってたよね…外道になりそうな奴はその前に止めてやれって…」
「だからって…ロックマンは他に3人もいるんだし…」
言い返す竜太の目を真っすぐ見据え玲は答える。
「その子は親を悲しませていて…親が好きな私はそれを許せなくて…
だから私もその子を止める力になりたいの!ロックマンをやらせて!!」
「………」
暫し沈黙する竜太。
その後竜太は少しずつ声を絞り出すように言う。
「俺はお前が心の底から大事だ…だが同時に俺にとって都合のいい人形ではない一人の人間でもある…
だから、生きて帰るのなら…お前の意思を尊重しよう…」
次に竜太は他のロックマンに向き直る。
「君達はもしかしたら…」
竜太の問いかけに応じ劾達はロックスーツを解除し正体を明かす。
「稲舟高校の桜井劾です」
「同じく、神崎剣です」
「俺は赤灯会見習いの鷹山翔でさあ」

「いい友達を持ったわね、玲、彼等を大切にね」
「うん!」
優子の言葉に玲は頷く。

「玲の事を宜しく頼むぞ。玲が信じる君達を…俺も信じる」
「「「はい(ヘイ)!!」」」
竜太の言葉に劾達は力強く応える。
この後デーモン黄場が病院に運ばれ檻へと避難した一般人は檻の外の安全な場所に移動させられ、怪我をした動物は手当てを受け、それ以外は元の檻に戻す事でこの武装動物事件は終結した。

その後基地内にて…
「君達の正体が分かった事でワシも一肌脱ごうではないか」
そう言って志熊は国会議事堂占拠事件の時のように今度は劾、剣、玲の偽者を紹介した。
彼等はロックマン変身者がロックスーツを起動中の時の代役である。
「いやいや、巣蹴縷沌とは段違いですよ…!」
知り合いでも区別し難い偽者達に劾は驚愕する。
「名乗るに名乗れなくてごめんなさい、貴征おじさん」
謝る玲に志熊は笑顔で返す。
「お前が只の守られる側ではなくなったのが嬉しいやら寂しいやら…」
一方で研究室ではマンモックスのミニボディを製造している途中のシェリーが室内に姿を現した剣に労いの言葉をかける。
「お疲れ様、ツルギく…」
シェリーの言葉を遮り、剣はシェリーを背後から抱きしめた。
「ちょ、ツルギくん…!」
突然の行動に戸惑うシェリーだったが何故か拒絶する気になれない自身に驚く。
「ㇵッ!俺は…何を…」
剣も先程の自身の行為に驚いている。
そんな中シェリーが剣に尋ねる。
「ツルギくん、何で…泣いているの…?」
「泣いている…?…!!本当だ、何故涙なんか…」
剣は自身の涙の理由も分からず当惑する。
「あわわわ…やっぱりだ…やっぱりだ…」
その様子を陰から翔が見ていた…

後日鎌暗刑務所では…
「覚えていろよ…いつか釈放されたら…」
復讐心を燃やす輝裂に芦戸と似たような背格好の男が近づいてくる。
http://zeroi.stars.ne.jp/sadomi.png
彼の名は佐渡看 守(さどみ まもる)。
サディスティックな性格のこの刑務所の看守であり現行法ではとても考えられない責め苦を囚人達に行う。
「粋のいいのが入ってきたなぁ…だけど…いつまで続くかな?」
そして佐渡看は主に鎌を用いてありとあらゆる苦痛を輝裂に与える。
「はうっ!!」
「クククク…外道の血はビタミン、ミネラル、タンパク質、そして塩分が含まれている完全食だァ…」
残忍極まりない笑みを浮かべ佐渡看は拷問で出来た輝裂の体の傷の傷口から血をすする。
「う わ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ」
逃げ場のない、そして希望のない輝裂の絶叫が刑務所内に木霊するのであった…

続く

流星のD-REX=ZZX(管理人)
作成: 2026/05/17 (日) 13:33:31
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1
流星のD-REX=ZZX(管理人) 2026/05/17 (日) 14:03:00

やっっっっっっっっと更新できました。
今回は以前言ったひたすらタフな回です。
タフ以外のネタも色々入れましたが。

今回のマンモックスの任務には「レプリロイドは半グレとも手を組むし動物も利用する非道な集団だ」というイメージを植え付けるデルタの作戦によるものです。
エイプ郎のモチーフはX7の雑魚「エイプロイド(ストンコングステージにいそうなのに何故かカラスティングステージに出てくる敵)」です。
彼は飽くまでエイプロイドと同じく多少耐久性のある雑魚です。
身長が約3mあるのもタフネタです。

ギュスタービーの元ネタは岩本先生のカメリーオ回、アリゲイツステージの他
実在した巨大人食いワニ「ギュスターヴ」と「白鯨」のモビーディックです。
これは猿渡先生が白鯨を漫画化した事にも因んでいます。
大きさは本文にもあるように通常のワニの2~3倍でありアリゲイツステージ同等のトンデモサイズという訳ではありません。
今作のオリ中ボスで奇をてらった変わり種がいるといいましたがギュスタービーもその1体で
もう1体はデルタウイルスに感染したこの時代の何かです。
また前回、前々回と水生生物モチーフのオリ中ボスが続きましたが今回のギュスタービーと以前のアクアムーンで
今作のオリ中ボスは水生生物モチーフが4体もいるという事になってしまいました。
しかしこれはオクトパルドステージやボーンメカにも似たようなことが言えますね。

マンモックスですが一応人間全てに偏見を持っていないという事になってますが
デルタに与えられた謝った認識により武射眼を「良い人間」と見なしてしまっております。
これに対しロックマン達が怒りを覚えるのもデルタの策の内です。
今作では元ネタにはないオリジナルの技も追加しました。

デーモン黄場ですがモチーフはイエローデビルですが裏モチーフは複数のタフキャラです。
彼の身長体重はTOUGHのとあるトーナメントの出場者の最高身長と最大体重に因んで260cm、250kgです。
しかし後者のキャラは「長身」ではないと思われるためそのキャラに比べると黄場はやはり「痩せている」という事になってしまいます。

輝裂ですがモチーフはタイガードであるものの外見やらしょっちゅう失恋するところやら動物を性的な意味でも好きになる事やらで色々裏モチーフがあります。
顔のモデルはとある実在した俳優さんですがこうした「有名人愚弄」もタフネタです。

宏樹ですがモチーフはエックスで劾同様2Pカラーと相成りました。

佐渡看ですがモチーフはカマキールであり言動、行動はこれまたタフネタです。
下の名前がエグゼ、流星のネームドキャラと被ってしまいましたがこれは偶然の産物です。
ちなみに彼には「そういう趣味」は無く熊害から男性への興味を無くせば彼になります。

次回は最後の8ボス戦、グレッゲージ回です。