『はじめての中国茶とおやつ 旅するように知り、楽しむ』
甘露著
誠文堂新光社
レビュー
喫茶文化に通じたキャラは「文化人」の香りがする。その参考になる一冊。
【良い点】
・近年少ない中国茶本として、また本屋の料理本コーナーでもほとんど見かけない中華菓子本(しかも一部レシピ付き)として、貴重な一冊。中華菓子のレシピは、1冊にまとめられていることは少なく、中華料理のレシピ本に数ページ載っているだけのことも多い。中国茶6割、おやつ4割といった感じ。
・中国茶の歴史、茶葉の種類、淹れ方、茶器について、一通り解説されている。
・カラー写真主体で、茶館の様子がよく分かる。
・中華菓子は、杏仁豆腐、あんまん、月餅、餡入り胡麻付き揚げ団子以外、ほとんどイメージがわかないが、日本で知られていないものも多く紹介されている。お茶も含めて、おおむね地域に偏りなく取り上げられている。
【残念な点】
・お茶の写真は、茶葉のほか、淹れた水色の写真も添えてほしかった。
・蓋椀は、直飲み用と、急須代わり用とで、微妙に向き・不向きがあるとのこと。そこについて、触れても良かったのでは?
・中国に比べて、台湾の扱いが薄い感じがする。もう少し、台湾にもページを割いても良かったのでは?
・ごく簡単ではあるが、陝西省など西北地域のお茶も取り上げらえていた(もう少し、扱いが大きくても良かった気もする)。それなら、内モンゴル自治区やチベット自治区も取り上げてほしかった。
・「このお茶には、このお菓子が合う」との感じで、お茶とお菓子の繋がりが感じられる解説を期待していた。だが、別々の「お茶の本」と「中華菓子の本」が、「一冊になった」との感じもする。
・おやつは、おおむね地域の片寄りもなく取り上げられていた。ただ、大唐の都・長安であり、シルクロードの玄関口、日本人にも人気が高い古都、西安が取り上げられずに残念。
・写真が豊富なのが良い。ただ、一部のおやつには写真がなかったり、あっても写真が小さくて、形がよく分からなかったりするものがある。名前と説明だけではイメージがわかぬ(例・「豌豆黄」「蜜麻花」)。
・見た目や材料、作り方からすると、「緑豆のケーキ」「なつめ入りクワイの蒸しケーキ」は、【ケーキ】ではなく、【蒸しようかん】と表現したほうが、分かりやすいのでは?
・北京の乳製品菓子「ナイジュエン」「ナイボーボー」の「酸で固めた牛乳」というのがよく分からなかった。「酸 牛乳 固める」のキーワードでネット検索をかけた結果、これをモッツァレラチーズの類と想像している。もしそうだとすれば、「チーズであんこを包んだ」との表現が、イメージしやすかったのではないか? また、日本の一般家庭では作りにくいのかもしれないが、レシピも載せておいてほしかった。
※購入店「楽天ブックス」へ「購入者07519859」名義で投稿したレビューの転載(若干修正済み)。
(参考動画)YouTubeチャンネル『あるきちの中国茶日記』
『はじめての中国茶とおやつ』の監修者の一人でもある、あるきち氏の中国茶チャンネル。『はじめての中国茶とおやつ』と併せてみると、特に蓋椀(蓋付き茶碗)などの茶器の扱い方、お茶の入れ方が分かりやすい。





