西洋ファンタジーの基礎である古代ギリシャの本を二冊ご紹介。著者は二冊とも、2024年9月放送で古代ギリシャが舞台の『ドラえもん誕生日スペシャル』の監修者藤村シシン氏。
古代ギリシャのリアル
藤村シシン著
実業之日本社
レビュー
全体の2/3が、ギリシャ神話の神の履歴書(履歴書形式なので、神名、エピソードが箇条書きになっていて調べやすい)、神話で、西洋ファンタジーの基礎のうち、ギリシャ神話について要領よくまとめられている(現在知られているギリシャ神話は、二次創作、三次創作で原典からは大きく変容していることにも触れられている)。また、ページ数は少ないものの古代ギリシャの人々の生活もポイントが押さえられている。
特に「第1章」を読むと、現在のギリシャ共和国の前身、ギリシャ王国は「白くて清廉で偉大な古代ギリシャ」を再現するために、西欧列強によって「人工的に」つくられたのでは? との印象を持った。このことからも、古代ギリシャの「青い海、白亜の神殿!」の「爽やかなイメージ」は実態と異なり、「後世の願望」であるこが分かる。創作では、イメージを優先するか、実態を優先するは創作者次第。
ただ、「古代ギリシャの神殿は極彩色に彩られていた」と強調しているわりに、カラー図版は表紙と帯にわずかあるのみで、カラーページが1ページもない。これではインパクトに欠ける。現代のパルテノン神殿のカラー写真と、古代ギリシャのパルテノン神殿のカラーの想像画を載せておいてほしかった。
『秘密の古代ギリシャ、あるいは古代魔術史』
藤村シシン著
KADOKAWA
レビュー
本書で最も特筆すべきは、「魔術のやり方が具体的に書いてある」こと。
「はじめに」に、こう書いてあるほどの本である。
そこには日本語の訳書もほとんどなく、多くの方が一度も見たことがない物にあふれた場所――「古代魔術史」の世界です。
魔術関係の本は、何冊か読んだことがある。ただ、他の本では魔術師のエピソードには詳しくとも、「魔術のやり方」には具体性が乏しいことが多い(秘伝で「口伝」なので無理もないが)。本書は、唱える呪文、護符、召喚の儀式など「魔術のやり方」を具体的に記してある。また、天体術、錬金術と関係して、「魔術」と「科学」の関係にも詳述されている。さらには、あいまいではあるが「魔術」と「呪術」の違いにも触れられている。
図版多数で、一部がカラーな点も良い。
なお、本書の前著『古代ギリシャのリアル』を読んでギリシャ神話や古代ギリシャの知識を得ておいたほうが、理解しやすいのでは?






