『アラブの住居 間取りや図解でわかるアラブ地域の住まいの仕組み』
フリードリヒ・ラゲット著
深見奈緒子訳
マール社
総評
北緯30度線に沿って、東はイラン、西はモロッコまでのアラブの住居を総覧した本。気候、建材、宗教はじめ文化的側面、風呂・トイレを含めた水利の基本がまとめられた上で、目玉は第11章の各国住居の詳細な間取り図。
白黒の線画ならば、室内の模様がよく分かる美麗な挿絵もある。
上記リンク先で、出版社のサイトをご確認いただきたい。内容の一部が公開されている。
残念な点
・第11章の間取り図が詳細なのは良い。ただ、何の部屋かは番号で示されていて、いちいち対応表と突き合わせないといけないのが不便(対応表を暗記できれば別だが)。訳者や編集部も不便さには気付いていて、カバー袖に簡易版番号対応表を載せてくれてはいた。間取り図上に人物や家具のイラストを描くか、せめて何の部屋か分かるように「客間」「台所」と文字で示してほしかった。また、アラブ世界に詳しい人なら良いが、無知な者には一見では各国どれも同じに見える。建築図面を読みなれていれば良いが、素人がパッと見るには専門的すぎる。類似書だと、先に紹介した『建築知識 2025年7月号』(本書のほうが取り上げられた住宅数は圧倒的に多いが)のほうが、パッと見でも楽しい。
・建物外観が分かる全体図、村・街の全体図が少ない。部分部分の解説は細かいが、全体像がよく分からない。
・カラーページが全くなく、色の想像がつかない。
・それなりの数はあったが、もっと室内の模様が分かる挿絵がほしかった。また、家具の配置など「室内のしつらえ」も詳細に描いてほしかった(室内のしつらえは「建築書」よりも「インテリア本」の範疇だろうが)
・本書はあくまでも「住居」の専門書。住居以外は完全に対象外。市場、宮殿、モスクなどは取り上げていない。





