人材派遣大手のフルキャスト(東京)が、労働者派遣法で禁止されている港湾業務への派遣を行ったとして、厚生労働省から事業停止命令処分を受けた。 全事業所に一カ月、違法派遣を行った三支店は二カ月の事業停止という重い処分だ。同社はこれまでも違反を重ねている。にもかかわらず是正されていなかった。今回の厳しい処分も当然といえよう。 労働者派遣はコンピューターソフト開発や広告デザインなど専門性のある労働力を臨時的に確保する策として一九八五年に法制化された。九九年にほぼ自由化されたものの、港湾、建設、警備業務への派遣は認められていない。危険な作業や労働災害が多いためだ。 だが、同社は禁止業務への派遣を繰り返していた。神奈川県や宮城県などで建設業務や警備業務に労働者を派遣したとして、是正指導や事業改善命令を受けていたのである。 同社は九九年の自由化以降、急速に成長を遂げてきた。規制緩和で市場規模が拡大する中、利益至上で、法令順守という社会的責任を置き去りにした責任は重い。 それは同社に限らず、業界に通じる問題だ。労働者の弱い立場につけ込んだ違法行為が横行している。 フルキャスト同様、グッドウィルも日雇い派遣労働者の給料から数百円の不透明な天引きを行っていた。大阪では労働者派遣であるのに請負契約とする偽装を繰り返していた業者が事業停止命令を受けている。 バブル崩壊後、企業はリストラや派遣労働導入で人件費を抑え、業績回復につなげてきた。派遣業務拡大は経済界の要望であり、国も規制緩和の流れの中で後押ししてきた経緯がある。しかし、結局、憂き目に遭ったのは労働者ではないのか。 低賃金で日雇いの若者の増加は社会に不安を投げかける。将来に見通しが立たなければ、結婚をためらい、少子化に拍車が掛かる。保険料未納が増えれば、社会保障システムの崩壊につながりかねない。 企業にとっても非正規社員の拡大は帰属意識の観点からもデメリットのはずだ。永続的な経済活動を展望するなら、労働者の生活と権利をこれ以上軽視してはなるまい。 国も監視や処分を強めるだけでは不十分だ。規制緩和という国の政策が非正規雇用に拍車を掛けたのなら、政治の力で救済するのが筋であろう。政治課題として労働政策を抜本的に問い直す時期がきている。 (2008.1.27 高知新聞)
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