「参政党の裏の顔」がどうのこうのとか、このサイトの責任者氏をはじめ、いろいろと言い募る向きが多いようだ。でもね、率直に言って、そんな参政党を(表面的に)ディスるような方向性でいくら話を進めても、物事の本質には到達しないよ。
確かに、参政党ってのは実に怪しいシロモノだ。あの党がデッチあげた「憲法草案」なんてのは、何かの冗談としか思えないほどの駄文だし、党首の「小麦粉の文化は全部戦後。そんなもの守る必要はない」とかいうセリフもアホらしくてコメントする気にもならない。
でもな、そんな「怪しい政党」が先の参院選で多くの票を集め、少なからぬ数の議員を輩出することに成功したんだよ。これが「事実」であり「現実」だ。それをどう考える?
単に「参政党に投票した奴は考えが足りないんだ!」みたいに切って捨てるか? まあ、そうした方が楽だよな。しかし、そんなのは思考停止だ。
参政党躍進の背景を探らないと、話が前に進まないのだよ。ましてや日本共産党や社民党などの再評価に繋げようという論調など、お門違いだ。共産党などは、すでに「終わった」過去の政治勢力であり、だからこそ票を集められず退潮する一方なのだ。
参政党が持て囃された理由、それはあの党が打ち出した「日本人ファースト」というキャッチフレーズがある程度は物語っている。
本当は、人間にファーストもセカンドもないのだから、あのキャッチフレーズ自体がナンセンスなのだが、それでも大いに持て囃された。なぜか分かるか?
それはだな、多くの有権者が「政治は我々国民を大事に(ファースト、つまり最優先的に)扱っていない」と感じているからだ。そして実際、今の政府は国民の利益・福祉を毫も優先していない。
長引く不況や物価高、年金制度への不安、貧困率の上昇などの問題に対しては現政府はほぼ無策だ。それが有権者の間に「自分たちの生活が脅かされている」という感覚を蔓延させている。この状態に、対外支援の促進などの「外国優遇」という構図(らしきもの)が提示されてしまうと、呆れるほど単純な「日本人vs.外国人」といった敵味方の図式が認知されてしまうんだな。
もちろんこれは、望ましい状況ではない。ナショナリズムの過度な高まりは排外主義に繋がる。参政党の神谷党首自ら「日本人ファーストってのは、差別主義を助長するものでは、決して無い」と言っているにも関わらず、多くの頭の中がナイーブな有権者たちは、日本人ファーストという惹句を目にしただけで「日本人はエラいのだ」「外国人は差別して当然なのだ」と短絡した考えに行き着いてしまうんだろうな(言うまでもなく、これはネトウヨの思考ルーティンだろう)。
こういう傾向を「差別はやめましょう」「排外主義はいけないことです」といった、ヒューマニズムの方面から諫めることは、道徳論では正しいが実際には上手くいかない。とにかく「参政党が支持されてしまう社会的状況」を是正しないことには、事態は決して好転することはない。
前述の通り、「日本人vs.外国人」というトレントが形成されてしまった背景には、不景気などのマクロ的な経済状態の悪化がある。で、参政党は先の参院選で何を訴えていたか、覚えているか? それはだな、積極財政だよ。消費税減税などの財政政策を推し進めて、経済成長を促すってこと。
これは、経済原則から言って正しいことなのだ。現時点では自公はもちろん、立憲民主党や日本維新の会、そして日本共産党に至るまで、既存の多くの政党が打ち出している経済政策は、揃いも揃って緊縮財政だ。緊縮モードでは国民生活は絶対に上向かないし、日本の社会は少しも良くならない。だから、選挙では不調だった。対して、積極財政を打ち出した参政党は票を伸ばした。これは当然のことだ。
参政党と同様に積極財政を公約にした日本保守党も票を集めたし、「手取りを増やす」という単純明快な姿勢を前面に出した国民民主党も好調だった。消費税廃止を訴えたれいわ新選組だって、議員数は大して増えなかったが決して退潮傾向にはない。
参政党の躍進ってのは、結局この「反・緊縮財政」というトレンドの中での一現象と言っても良いんじゃないか。
ここの常連たちが参政党を蛇蝎のように嫌うのは、まあ勝手だ。私だってあの党は信用していない。しかし、「参政党ってヤバいよね。無くなった方が良いな」という、単なる好悪による低い次元での当てこすりであのチンピラ政党を叩いても、何もならないのだ。それは自慰行為に過ぎない。
参政党は新参者の政党であるから、スポットライトを浴びたのは今回限りかもしれない。一発屋という可能性もある。だが、たとえ参政党が消滅しても、この党が支持された背景を是正しない限り、「参政党のエピゴーネン」みたいな政治勢力は雨後の筍のごとく次々と出てくるだろう。
本当に参政党の存在を嫌うのであれば、多くの有権者を参政党支持に向かわせた、この社会的構図を打破することを考えろよ。
まずは不況や物価高を放置した自公や既存の野党、裏で糸を引いている財務省、そして賃金上昇なんて眼中にない財界(経団連)を糾弾しろ。特に「緊縮財政(増税)こそ愛国の証」と言わんばかりのスタンスの財務省とその追随勢力こそが、このサイトが敵視する「愛国カルト」の最たるものではないか。