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2026年8月の米財務省による「長期国債買い戻し枠の倍増(20億ドルから40億ドル超へ)」と「TGA(財務省一般勘定)からの1兆ドルの放出による長期債の買い戻し」の決定に関して、伝説的なマクロ投資家スタンレー・ドラッケンミラー氏は痛烈な批判をしました
同氏がウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿などを通じて発した警告は、単なる政府批判にとどまりません。
なぜなら、米国の財政政策の舵を取るスコット・ベッセント財務長官は、かつてソロス・ファンド・マネジメントでドラッケンミラー氏の下で働いていた「愛弟子」だからです。
ベッセント財務長官は、かつてソロス・ファンド・マネジメントでドラッケンミラー氏の下で働いていた「愛弟子」だからです。
師から弟子へ突きつけられた異例の公開批判から、今回の財務省のオペレーションが抱える本質的な危うさを読み解きます。
ベッセント財務長官が主導する今回の買い戻しオペレーションは、一つは短期国債を発行して長期国債を買い支え、金利の上昇を抑える、もう一つは財務省の現金口座であるTGA(残高約9,500億ドル)を活用し、長期国債を買い支えることで金利の上昇を力技で抑え込もうとするものです。
市場の一部がこれを「疑似的なイールドカーブ・コントロール(YCC)」として好感し、一時的に金利が低下した一方で、ドラッケンミラー氏はこの政策を「決定的な誤りである」と一刀両断しました。
ドラッケンミラー氏がこれほどまでに強い危機感を示す理由は、「長期金利の持つ本来の役割」が政府によって破壊されようとしているからです。
現在、米国の累積債務は40兆ドルを突破し、歴史的な財政赤字を垂れ流しています。通常であれば、こうした放漫財政に対して債券市場(投資家)は「国債の売り(利回りの上昇)」という形で罰を与え、政府に歳出削減などの財政規律を強要します。長期金利の上昇こそが、政府の暴走を止める「市場の警報システム」なのです。
ドラッケンミラー氏は、この長期金利を人為的に押し下げる行為は、「火事が起きているのに火災報知器の電源を切るようなものだ」と指摘しています。警報を消すことで一時的な安心感(株高や金利低下)は得られても、水面下で燃え広がる財政危機という本当の火災をさらに悪化させることになります。
さらにドラッケンミラー氏は、自身が数々の歴史的な相場(ポンド危機など)を戦い抜いてきた経験から、「政府が市場の基本原則(ファンダメンタルズ)に逆らって人為的に価格を防衛しようとしても、最終的には必ず市場の力に敗北する」と断言しています。
いくら財務省が操作しても、世界の債券市場の動きを永遠に止めて置くことはできません。財務省が手持ちのカード(TGAの現金など)を使い果たした時、人工的に抑え込まれていた金利のバネは弾け飛び、より制御不能な形で跳ね上がる危険性を孕んでいます。
「借金(40兆ドルの債務)の問題を、金融工学的なごまかし(TGA放出や買い戻し)で解決することは絶対にできない」ということです。ベッセント財務長官は金融のプロなので、これらの政策が「一時しのぎ」である事はよく分かっている事でしょう。