美音の指示を聞き、両団体はライターを手に壁へと向かう。
汰威超組構成員は美音の指示通り全ての人間の繭を焼き切ろうとする一方で
御間グループ護衛チームは真っ先に御間父娘の繭を焼き切ると撤退を始める。
「おいコラ、手伝え!!」
周囲の人々が護衛チームを非難するが…
「我々の任務は飽くまで御間家の護衛。主を救出した後はここに用はない」
護衛の一人が冷たく言い放つ。
「ささ、旦那様、お嬢様、こちらです…」
「おおお前達、助かったえ!!」
「アンタ達はせいぜい頑張りなさーい♪」
護衛に誘導されながら御間父娘は勝ち誇りながらこの場を後にする。
彼等を乗せた車はいち早く現場から離れていった。
「チクショ~、身勝手な奴等め…プッ…」
「あんな奴、犠牲になればよかったのによぉ…プクククク…!」
汰威超組構成員は御間父娘に悪態をつくと同時に何故か噴き出しそうになる。
「にくまれっこよにはばかるってやつだな!」
鉄弟も愚痴るが何故か棒読みだった。
「???」
翔は彼等の態度が理解できない。
そこに美音が耳打ちする。
「世の中には分からなくてもいい事もあるんですよ」
「は、はひ…」
翔は心臓が爆発しそうになりながら応じた。
その頃シルキーガ戦は…
「ストリングフィスト!!」
何重もの糸で覆った拳で劾に殴り掛かるシルキーガ。
「チャージサンブラスター!!」
それを劾はレディバイドの特殊武器、サンブラスターの溜め撃ちで対抗。
すると熱線がシルキーガの拳を覆う糸を焼き始め、拳の威力が削がれていくが
糸を全て焼き尽くすには至らず最終的に劾は弾き飛ばされるが
同時にシルキーガも熱線によるダメージを受ける。
「隙あり!!」
ダッ!!
一瞬怯んだシルキーガに剣が斬りかかろうとするが…
「甘いですわ、ストリングバインダー!」
シルキーガは糸で剣を拘束する。
「また切ればいいだけだ!」
これを見た劾が糸を切るべく武器エネルギーをチャージし始めるが…
「いや、切らなくていい…スパークスマッシュ!!」
ビリビリビリビリビリ…
「キャッ!」
剣の放ったスパークスマッシュの電撃が糸を伝っていき、それが一時的にシルキーガの動きを止めた。
「そこだ!!」
バシュッ!バシュッ!
この瞬間劾のバスターが、シルキーガの両翼を射抜いた。
これによりシルキーガの機動力は大幅に失われた。
「こうなったら彼等にもう一度役に立って貰いますわ、ストリングバインダー!」
シュルシュルシュル…ブンブンブン!!
次にシルキーガが取った行動は地に倒れ伏すキャタピロンの残骸に糸を巻き付け
それらを激しく振り回すというものだった。
「肉を切らせて骨を断つ…チャージショット!!」
ドウッ!!
劾は激突に耐えながらチャージショットを放ち、シルキーガに直撃させた。
「見事…ですわ…」
先程の雷のダメージも相まって劾の一撃が決定打となりシルキーガは機能停止した。
「博士、決着がついた。デルタナンバーズと一緒に戻るぞ」
剣がシェリーに通信を入れると共に劾と剣はシルキーガのボディを伴ってこの場から姿を消す。
シルキーガが撃破されるとその影響で彼女が射出された糸は消滅した。
国会議事堂は従来の姿に戻り、壁に固定されていた人々は一気に全員自由の身になった。
幸い高所に固定された人間はいなかった。
「私達…助かったのね…!?」「ワアアアアアアアアア!!!!」「ロックマン万歳!!」
この場の人々が手の平を返してロックマンを褒めたたえる。
「チッ、勝手な奴等め…しかし青兄貴の言葉には痺れたぜ!あの人もまた、任侠者だな!」
翔は呆れつつも劾に対しての敬意を示す。
「うむ!助ける人を選ばない等中々出来る事ではないからな!かく言う俺も絶対に出来ん!」
鉄弟も劾を褒めたたえると同時に自身が誰彼構わず助ける事が出来ない事を言い切る。
「自慢する事ではないと思いますよ、私にも出来ませんが…
最後に鷹山さん、今回は有難うございました。あなたの事は忘れません」
美音も困っている人がどんな人かによっては助けない場合もある事をほのめかした後翔に別れの挨拶をする。
「オデボ…バズベバベン…」
翔は顔を真っ赤にして滑舌が悪くなって応じる。
そして翔と美音はそれぞれの帰路についたが、彼等はいつかまた出会う事になる…
シェリーの基地にて…
シルキーガのボディは既に作業台に寝かせられ、修理が始まっていた。
そんな中、大小二つの包み紙に包まれた商品を手にした劾と玲がシェリーに口を開く。
「あの、博士…」「実はプレゼントがあるのですが…」
「まあ、何かしら」
シェリーは嬉しそうな表情でまずは大きい方の包み紙を開ける。
その中には女性もののバッグが入っていた。
「あら素敵なバッグ!わざわざ悪いわね…こっちは何かしら?」
シェリーは一層喜び小さい方の包み紙を開けると中にはペンギンのキャラクター、
「ギーゴくん」のぬいぐるみが入っていた。
「まあ、ギーゴくんじゃない!!どうして私がこれが好きだと分かったの?」
更に大喜びの様子のシェリーが劾に問う。
「僕も好きだし、何となくそう言う気がしたからです」
照れながら応える劾。
「有難う…有難う…本当に大事にするわね…!」
心から喜ぶシェリーを見て劾と玲は買った甲斐があったとほほ笑むのであった…
汰威超組事務所にて…
「おや、美音…どうしたんだい、顔が赤いじゃないか」
「新宿で素敵な出会いがあったのです」
裕奈の問いかけに美音が応える。
「な、ななな何ィ!!??ろくでもない男だったらワシは認めんぞ!!」
志熊は必死になる。
「美音のお眼鏡に適う男がろくでなしの訳がないじゃないか、親なら娘の恋路を応援しておやりよ」
「むむむ…」
裕奈にたしなめられる志熊であった…
赤灯会事務所にて…
「ハァ…ハァ…心臓が…苦しい…」
美音の事を思い出し悶え苦しむ翔。
「むむ、どうしたと言うのだ、鷹山!!??」
「ハァ…ハァ…まるで…俺みたいじゃ…ないか…」
五里石と火纏を始め他の構成員達も翔の身を案じる。
「心配は、無用ですぜ…これは…悪いもんじゃあ、ありやせんから…」
「??」「もしかして恋か?」
翔の言葉を聞いた赤灯会構成員達には何の事か分からない者もいれば何かを察した者もいたという…
その頃御間父娘を乗せた車は…
「おい!!どこに向かっているえ!?」
御間の怒鳴るような問いかけに護衛の一人が応える。
「旦那様方の新しい邸宅と職場でございます」
「何の事だか分からんえ!!朕の職場は都庁、家は千代田区一番町だえ!!」
「またまたぁ~、先程自分で仰ってたじゃないですかぁ、もうお忘れですかぁ?」
にやけ声で護衛の一人がスマホの映像を見せる。
そこには御間父娘が映っていた。
まずは映像の中の御間が謝罪して知事の辞任を発表する。
「この度私は今までの折り合いをつけるべく、知事を辞任する事に致しました。
私のこれまでの横暴で身勝手な言動と行動は権力の範囲を超えていると、
先日記者の方からご指摘を受けました。
思い返せば…このご指摘は以前のパワハラの告発同様、真摯に真剣に受け止めるべきものでした…」
この辺りから映像の御間は涙ぐみ始める。
「そして今回、私どもが例のロボットの標的にされた事も言ってしまえば私の日頃の至らなさが招いたもの…
この事件のロボットの主張も、それまでの記者の方のご指摘も…
真摯に真剣に受け止めて!一人の大人として何とか折り合いの付くところで折り合いを付けさせていただいて、
この東京都に新たな風を吹き込むためにも!堪えに堪えて!
東京都知事の座を後進に譲り渡す事に致しました」
映像の中の御間はこの後冒頭の記者から入手した情報にある様々な不正を自白する。
それが終わるとこの謝罪と報告を締めくくり始める。
「これまで権力の範囲を超えて威張り散らし、人を酷使し、人生を破壊し、申し訳ございませんでした!
我が御間家はこれより世間から姿を消しますので探さないでください。
最後に私の言葉が信じられないと思う方々がいる事を利用して
私を騙る者も今後現れるでしょう。
しかし!それは偽者です!過去の亡霊です。
故にそのような輩が現れた時は然るべき対処をお願いいたします」
うつむき両拳を握りしめ涙ながらに深い謝罪をする映像の中の御間。
次からは春奈の謝罪が始まる。
「私も父の財力と権力に甘え…好き放題に振る舞い…大勢の人を傷つけ…
挙句今回の騒動にご近所の方々及び学校の方々を巻き込んでしまいました。
本当に…本当に申し訳ありませんでした…!
ご近所の皆さま、学校の皆さま、私達のように権力や財力を笠に着て
驕り昂り他人を虐げるのはもうやめましょう。
人に貴賤はありません。
私達はこれから物質的な豊かさではなく精神の豊かさを追求する為にどこかに隠れ住みます。
最後に、私の偽者も現れるかもしれませんが、決して相手にしないでください」
映像を見た御間父娘は…
「何だえ、この映像はぁ!?朕が愚民に頭を下げる等有り得ないえぇ!!」
「んまぁ、何この捏造映像は!?嘘ニュース事件の真似事ですの!?
そもそも私達は車を降りてませんわぁ!!」
パニックと怒りで怒鳴り散らす。
この映像であるが、事実御間父娘に酷い目に合わされた人間の中でも彼等に体格が似た者が特殊メイクで変装し、
音声も合成された嘘ニュース並に精巧なでっち上げである。
勿論撮影と編集は汰威超組。
汰威超組はその財力と人脈を駆使して御間父娘に恨みを持つ人間や邪魔に思う人間、
組の息がかかった様々な業種の人間を「御間失脚作戦」に引き入れていたのだった。
この後映像はネットに拡散される事に…
そして喚き散らす御間父娘を護衛は軽くあしらいつつ彼等を乗せた車は目的地に到着。
「到着いたしました、こちらが新たな御間邸でございます」
「何だえ!?これは…!?」「これって、どう見ても…」
護衛が指し示す先にあったのは工事現場に佇む質素な仮設住宅だった。
「さあ!さあ!こちらです!」
「ちょ、やめるえ!!」
「さっきから何ですの!?」
車を降りた御間父娘を護衛達は強引に歩かせ仮設住宅へといざなう。
「次はお二人に反省の意を示す姿になって頂きます。さあ!ご着席お願いします!」
「何をするえ!!」「座ればいいんですの!?」
護衛達は御間父娘を仮設住宅内の椅子に半ば強引に座らせる。
次の瞬間…
「「!?」」
ヴィィィィィィィィ…
護衛が取り出したのはバリカンだった。
「ちょ、まさか…」「やめ…」
ジョリジョリジョリジョリ…
「「ギャアアアアアアアアアアア~ッ!!!!!!!!!」」
護衛は御間父娘の頭髪をと御間の髭をバリカンでそり落とし、それが終わるとその姿を彼等に見せる。
「お二人ともお似合いでございます、何とも輝かしい…」
護衛はにやけ声で御間父娘に言う。
「朕の…朕の自慢のドレッドヘアーがぁ~っ!!ツルッパゲなんてあんまりだえ!!」
「んまぁ何て事してくれましたの!?これじゃお嫁に行けませんわ!!」
髪を失った自身の姿に絶叫する御間父娘だったが…
「きさまらーっ!!オヤジ(組長)を愚弄する気かーっ!!!!!」
ジャキジャキジャキ!!!
護衛が一斉に銃を御間父娘に突きつける。
「ヒィッ!!まままさか…!?」「ハゲのオヤジって…!?」
この状況に御間父娘は何かを察する。
「ああお芝居はやめだ、俺達は汰威超組だ…本物の護衛とはとっくに入れ替わっていたんだよ!!」
護衛、改め汰威超組構成員は自らの身分を明かした。
彼等は冒頭で鉄兄に付き従っていた構成員達だったのだ。
「最初は半グレに扮したうちの組員からお前等を逃がすという筋書きだったが
このロボット騒動…ある意味あのロボット共には感謝してるぜ…」
他の構成員も更なる真実を明かす。
半グレに扮した汰威超組構成員とは、神田川まで翔を追った構成員達で史実では彼等が
御間父娘を襲撃するところを護衛に扮した構成員が助ける振りをしてここに連れていく事になっていた。
「そんな事は今となっちゃどうでもいい、これから職場に案内するが…まずは着換えだ!!
「ギャアアアアアアアアアア~何てもん着せるんだえ!?」
「変態!変態!変態!」
汰威超組構成員達は御間父娘を無理矢理着換えさせるが、彼等が着せられたのは土木作業用の作業服だった。
着替えが終わると汰威超組構成員達は御間父娘を工事現場へと連れていく。
「先輩のいう事をよぉ~く聞くんだぞ!?」
「………」
汰威超組構成員達は御間父娘の耳元で囁き御間父娘は恐怖に震える。
現場には大勢の屈強な男達が待ち構えていた。
「おうお前等!!新入りだ、しっかり面倒見てやんな!!」
汰威超組構成員達は男達に御間父娘を紹介するが…
「お、お前達は…!?」
御間は彼等の正体に気付く。
彼等は冒頭で記者を追っていた本物の護衛だった。
汰威超組構成員に服を奪われこの工事現場に連れていかれ現在に至る。
「丁度いい、朕を助けるえ!!」
御間は護衛に命じるが…
「ハア!?何言ってんだ、俺達は先輩、テメー等は後輩…今じゃ俺達の方が偉いんだよ!!」
「な、な、朕に向かって何て口の利き方だえ!!??」
御間は困惑しながらも護衛に問い詰める。
「俺達は所詮虎の威を借りる狐でコバンザメ…
今のテメー等は例えていうなら張り子の虎でくっつき甲斐もないクラゲみたいなもん…
そんな何の価値もねぇテメー等に従う理由なんてねぇんだよ!!」
「というかいつもチンチンチンチン下品なんだよ!!」
御間父娘に悪態をつく護衛達。
雷音禁愚同様、彼等の絆も脆弱だった。
「ここは厳しいが、決してトぶ(逃げる)んじゃねぇぞ!?」
「ヒッ…」
護衛は御間父娘に圧を掛け、御間父娘は絶望する。
その後父娘に待っていたのはかつての従者にこき使われる激しい肉体労働。
ある日あまりの重労働と暴力に耐えかねた御間父娘は元護衛の目を盗んで何とか脱走に成功。
しかし御間失脚作戦に関わった大勢の人間が様々な方面に圧を掛けていた為
自分達の名前を名乗っても汰威超組の名前を出しても誰も話を聞いてくれない。
そのままホームレス生活を送る父娘だったがかつての尊大な態度が出てしまい
他のホームレスからもいじめられる始末。
こうして御間は下の名前の通り漂う生活を余儀なくされ春奈と共に各所を逃避行する末路を辿る。
冒頭で御間グループの護衛に追われていた記者であるが、御間が謝罪する映像が
拡散された後各方面から称賛された。
「手柄は貴方に譲ります、我々は飽くまで裏社会の人間ですから」
といった鉄兄の言葉を思い出しながら記者は称賛に応じる。
彼は恩人である汰威超組を裏切る事は仁義外れであると己に言い聞かせ御間の謝罪映像も本物と思い込む事にした。
「これで、良いんだ…」
御間の失脚を知り記者は世の中の為に敢えて反社の手を借りた事は明かさず捏造映像の追及もしなかった。
「御間を襲う半グレ」、「彼等から御間を守る護衛」、「己の罪を悔いる御間」、
…といった数々の「偽者」が動き幕を下ろした御間失脚作戦。
しかしこの作戦とは無関係にこの後ロックマンの名を騙る腐れ外道が現れる事を、
当時の人々はもちろんシェリーですら知る由もなかった…
続く