北ウイングさん
※1の続き
これを読み終えた上で、他の知識と合わせた私論を述べますと、
【憲法9条の「幣原発案説」は「証拠」に乏しいが、この条文は日本にとっても「渡りに船」であった】、と言えると思います。
つまり
①当時、ソ連や中華民国(中国共産党ではないほうの中国)をはじめ、複数の戦勝国が昭和天皇の処罰を求めており、
またGHQの権力を裏付ける米国においても、その世論は、昭和天皇に対する処罰感情を抱いていた。
②しかしGHQと米国政府/ペンタゴン・国務省はいずれも、昭和天皇を処罰したり天皇制を廃止などすれば、
その「反動」で日本国内に共産主義が拡がったり、もしくは、最初は平和的な改革運動でも「過激化」しやすくなるであろうことを予測し、恐れた。
なぜなら当時の日本国民の多くにとり、天皇の存在感は大きく、価値観(若しくは価値観の形成)の中で大きな位置を占めており、精神的支柱でもあったことを、マッカーサーや米国本国の知日派は知悉していたため。
③そこで、GHQは他の戦勝国に「昭和天皇を訴追しないこと」を飲ませるため、また米国で天皇処罰を求める世論を鎮静化させるため、
「昭和天皇を訴追せず」と引き換えに
「天皇から一切の政治権力を剥奪すること」と「戦争放棄」の二つを憲法に明記させ、
それをもって
「もはや日本は、米国をはじめとする諸外国にとり危険な存在ではなくなった」、
「そして天皇による政治も、天皇の政治利用も、今後は何れも行われない」
ことの最も強力な説得事由として活用した。
この「二つはセット」で機能し、
日本から危険を取り除き、尚且つ
戦勝国を説得するためにも必須なものであった。
(しかしながら朝鮮戦争勃発を契機として、日本国憲法に縛られず、それよりも上位に位置したGHQの指令によって警察予備隊(→後の自衛隊)が設立され、その後ほぼ一貫して米国は、日本に対しその増強を要求してきたことからも、
米国本国の政府もGHQも共に、
「(米国に協力的な)日本の再武装」を当初から念頭に置いていたと考えられる。)
④「天皇から政治権力を剥奪すること」は、
到底日本の政治家側からは言い出せないようなアンタッチャブルで繊細な項目であったし、そもそもその発想すら元々なかったため、GHQから言い出してもらう必要があった。
⑤一方の「戦争放棄」については、当時の日本は戦争や軍隊の再建どころではなく、都市インフラ・産業インフラ・民生の再建こそが最優先であったため、
すんなりと受け入れることが出来た。