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2102セイバールート序章「襲撃前」 2021/09/25 (土) 04:41:19

「ビンゴ、だな」
とあるビルの屋上、双眼鏡で教会から出てくる二組を見ながらラモラックは呟いた。
「もう一組釣れるのは予想外だけどな、僥倖って奴か」
マスター、マレフィキウムは上機嫌そうにその様子を強化された視力で見ている。
随分上機嫌だな、等とは言わない。ここ数日でラモラックはマレフィキウムとの付き合い方を分かってきていた。
恐らく次は……
「早速潰しに行くぞ」
「どちらからだ?」
予想通りだ。とは言え、彼女は無謀ではない分断してどちらかから潰す筈だ。
無謀ではないか?などと言ったら蹴られるかゴミを見るような目で見られただろう。
顔面蹴られたり魔術を使ってこない分可愛いものだが。
「おい、なんだその生温かい視線は。取り敢えず男と騎士っぽい方からだ」
「理由は?」
結局脛を蹴られた。脛当てに足が当たった金属音が小さく響く。
「勘」
ふむ、と頷く。魔術において勘という物は案外バカに出来ない。ならここはマスターの勘に任せよう。
「では、マスターは、もう一組を?」
「ああ、あの女の面が気に入らない」
その答えに好きにすればいいさ、とでも言わんばかりに肩を竦める。
今度は金槌で兜を叩かれた。流石に頭が揺れ、少し大きな金属音が響く。
音が出ないように金槌にタオルを巻いていたようだ。
この程度可愛いものだ、という言葉は訂正しよう『マレフィキウム』の名に相応しい。
「1分半だ、プラマイアルファはアンタの勘に任せる。コテコテ同盟が連携を組むならそれ位が妥当なタイムだろ? んだから、1分半でキッチリ殺す。魔力回すぞ …ブッ潰せ!!バーサーカー!!」
マスターの表情、と言っても見えないが。その気配が変わった、遊びは終わりだ。
「承知した。……離れてくれマスター」
魔力を全身に回すと黒炎が全身を包む。
手摺に足を掛け、そこを踏み抜くように跳躍。
今日は月が随分と明るい。
月光を遮るように宙返りして、逆立ちのような姿勢になるとターゲットの二組を視界に入れる。
見覚えがあるような気もするが、直接見れば分かるだろう。
黒炎を噴出させ、加速。二組の間に向けて槍を投げる。
さぁ、決闘と行こうじゃないか。ルールは『マレフィキウム』流だがな。

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2102サイドエピソード「魔女と騎士」 2021/09/25 (土) 04:38:06

「何やってんだ、オマエ」
土夏海浜公園、ペスト医師のような仮面を付けた少女は目の前の男に問い掛けた。男は手に持ったパンをちぎり鳩に与えている。
「日光浴、と言う、奴だが」
手持ちのパンがなくなり、鳩がパンを食い終えた事を確認するとラモラックはパン!と手を叩いた。驚いた鳩は一斉に飛び上がり、人目は鳩に集中する。
「マジで言ってんのか?頭湧いてんのか?」
少女、『マレフィキウム』は顔こそみえないが、ラモラックを正気と思えないとでも言わんばかりの態度を見せる。
「俺じゃ、ない、こいつだ」
ラモラックが指差したのはギターケース状の半透明のケースだった。
「そいつは……」
「俺の、正確に言えば、俺のでは、ないが、今は、俺の、武器だ」
マレフィキウムとラモラックは人目を気にしながら、言葉を選びながら話を続ける。
「『こいつ』は日に3時間は日を当てなきゃ真価を発揮できない」
「マジかよ、それ」
「言った奴が、ディナダンと言う、適当な、ホラ吹きで、有名な、奴だが、それを、しないで負けるより、ホラを、信じた方がマシだ」
「……そうかよ」
「……ああ、少なくとも、俺は負けるつもりはない」

え?ラモラックあの話マジで信じたの?
俺ガウェイン卿とすげぇ仲良くないしガラティーン持ったこともないのにそんなの分かるわけないじゃん
太陽の聖剣だし3時間3倍になれるから3時間位日に当てるのかもねって言っただけだよ俺は
あー…ごめんウソ。ノリでガウェイン卿はガラティーン3時間日干しするらしいぜ!!って言った気がするわ

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2102サイドエピソード「お洒落のアドバイスなら服だけじゃなくて相手も選べ」2 2021/09/25 (土) 04:32:55

「お兄さん、ちょっと良いですか?」
急に掛けられた声にラモラックの思考が中断される。
「……なにか?」
声の主は青年だった。
爪先から頭の先まで、値踏みするように視線を走らせる。
ヘッドフォンを首に掛け、パーカーとスキニージーンズによる活発的な印象を与える服装。
見掛けだけなら聖杯に与えられた知識と《TSUCHIKA》で購入した本を読んだ情報を総括して考えれば限り今時の若者、と言った所か。
高度に土夏を再現された《TSUCHIKA》では相手がNPCか人なのか、サーヴァントなのか判別をつけるのは難しい。
魔力は然程感じない。……両手は、手袋を付けていて見えない。
「いえ、数日前からここに座っているのを見掛けまして」
「ああ、近くの、ライブハウスで、夜に、ライブを、やらせて貰ってるんだ」
少なくとも敵意を向けている訳ではないようだ。
用意していたカバーストーリーを口にする。
NPC相手に何度も同じことを話していた。
「ライブですか?」
意外そうな顔を見せる青年。
「ああ、ベースを、やっていてね」
近くに置かれたケースを指差す。
無論、虚偽である。内部にはガラティーンが入っている。
「元々は、イギリスに住んでたんだが、日本の友人に、誘われて、此方に来たんだ」
ゆっくりと、相手に警戒されないように立ち上がった。
「土夏は良いところだ、ロンドンに比べて飯が安くて、旨いのが、最高だ」
歩きながら言葉を続ける。
サーヴァントではない。サーヴァント独特の戦慣れや修羅場慣れした雰囲気が彼にはないからだ。
NPCかマスターかこの場で確かめるか?
マスターであるか判別するのは難しくはない。
この場で襲い掛かり首の一つでも締め上げれば良い。
昼間は襲撃や戦闘が制限されている《TSUCHIKA》であれば、俺はその場で動きが止まるか停止する。
マスターであることが分かれば、昼間に活動していれば格好の獲物だ。
昼間の内に後を付けねぐらやアジトを探しだし22時になった時点で強襲をかけられるだろう。
(……まぁ、マスター抜きでやるにはリスクがありすぎるな)
NPCだった場合は犯罪者として通報され、昼間に動きづらくなり、他のマスターやサーヴァントに面が割れる可能性がある。
独断専行でやるべきではない。ラモラックはそう判断した。
「まだ、此方に来て、日が浅いもので、言葉が、たどたどしくて、聞きづらいだろう?」
青年に笑みを見せる。
「いえ、お上手ですよ!…僕はてっきり、ヤの字の人かと」
あはは、と青年は頬を掻きながらはにかむ。
「ふむ(ヤ? マフィアか) 昔から、服装には、無頓着でね、ライブの衣装は、友人が用意したもので、良いんだが」
「そうだ、良ければ、私に似合う、服を見繕って、くれないか」
「ええ、僕で良ければ!」

─────────────────────────

「と、言うわけで、その青年に、服装を選んで貰った」
仏頂面のまま経緯を語るラモラック。
はぁーっと大きなため息を吐くと、マレフィキウムは大きく深呼吸をする。
「………今すぐ着替えて来やがれ!」
怒鳴った。マレフィキウムは今までにない怒りを込めて自身のサーヴァントを怒鳴り付けたのだった。

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2102サイドエピソード「お洒落のアドバイスなら服だけじゃなくて相手も選べ」1 2021/09/25 (土) 04:32:28

「ラモラック、今から来れるか?」
土夏旧市街の路地裏でマレフィキウムは自身のサーヴァントであるラモラックへと召集を掛けていた。
聖杯戦争参加者に支給された携帯電話を土夏の都市伝説であるレッドコートを模した赤いコートのポケットへと仕舞う。
高度に再現された土夏の夏は暑い。
日陰でもコートの中が汗ばみ、蒸発した汗がマレフィキウム…楊小路水貴の華奢な体をじっとりと蒸しあげる。
気のせいか、背中にある令呪の部分が余計に暑く感じるのは不思議だ。
(人の事を待たせやがって…)
マレフィキウムのイラつきが頂点に達し掛けた頃、漸く八つ当たり先は現れた。
「待たせたな、マスター」
「遅ぇ……待てテメェ!いや、なんなのその格好は!?」
何時もの仏頂面と灰色のジャケットを想像していたマレフィキウムは思わず唖然とした。振り上げた拳の行き先すら分からなくなるほどに困惑する
一方ラモラックはマレフィキウムの反応に首を傾げた。
ラモラックは何時ものジャケットではなく明朝体で大きく魔女愛!と書かれたTシャツを着ていたのだ。
「……街中で、出会った青年に、勧められたのだが」

────────────────────────
数時間前、土夏新市街のとある公園。
「…………」
何時も通りラモラックは公園のベンチに座り鳩に餌をやっていた。
何時も通りと言っても召喚されて数日行っているに過ぎないことだが。
夜になれば悪逆無道を尽くすマスターに支える自分が昼間はこんな事をやってると知れば笑う者もいるだろう。
だが、これは矛盾ではない。とラモラックは思っている。
悪逆の限りを尽くす人間が家に帰れば優しい父親になる。というのは珍しくはないだろう。
人は誰しも複数の顔を持っている。太陽の騎士と呼ばれたガウェインが父の仇や母親の情夫を複数で暗殺した暗い一面を持っているように。
或いは、それは我がマスターたるマレフィキウムも同じ……下らん、俺はマスターに仕える剣。余計な思考は……

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英霊伝承異聞ラモラック―最期の時― 2021/09/25 (土) 04:26:17

サールースで行われた槍試合の後、ラモラックは騎士王アーサーに呼ばれ、会話を交わしていた。
「良く戻ってくれました、ラモラック」
玉座へと腰掛けた騎士王は気のせいか口調が軽い。
姿を消した古馴染みの騎士が戻ってきた事に僅かに気が緩んでいるのか。
「…許可も得ず姿を消した件は申し訳ありません。此度は王が嘆かれていると風の噂で耳にしましたので」
膝を着けたラモラックは僅かに顔を上げ、気まずそうに言葉を発する。
正しく顔向けが出来ない、といった所か。
「嘆く?何故私が騎士たちの奮闘を見て嘆くのですか?」
騎士王の珍しく困惑した表情にラモラックの眉がピクリと動いた。

──────嗚呼、哀れで忠誠厚く愚かなラモラック。
──────あの優しいアルトリアが騎士達の奮闘を見て嘆く訳がないのに。
──────察しが悪い貴方でも分かるだろう?貴方は嵌められた。

脳裏に響く愛しくも、二度と聞きたくなかった声にラモラックは全てを悟った。

「王よ、褒美は要りません。 代わりに暇をいただきたい」
ラモラックは顔を上げ、騎士王を直視する。
彼が騎士になった直後と変わらず若い姿のまま、見慣れた筈の姿がやけに眩しく思えて、少し目を細める。
「……そうですか」
「御恩に報いられず、申し訳ありません」
少々の合間の後、騎士王はただ頷く。
騎士王の何時もより更に感情の乗っていない声にラモラックは頭を下げる事しか出来なかった。

──────アルトリアは、もう貴方が帰って来ないと分かっているようですね。

騎士王は去り行く者を引き留めない。自分の元にいることはその者に取って不幸だと言わんばかりに。

「いきなり帰ってきて暇とはどう言うことだ?」
騎士王の玉座を後にしたラモラックの前に現れたのはベディヴィエールとルーカンだった。
ベディヴィエールはラモラックに詰め寄るとその顔を見上げ、睨みつける。
「……ベディヴィエール、ルーカン。後は、頼む」
ラモラックはベディヴィエールを押し退けるとルーカンに軽く頭を下げ、その場を立ち去る。

「分かった、任せたまえ」
「姉さん、どう言うことだ?」
ルーカンはそれに頷き、ベディヴィエールは不服そうにラモラックの背を見た。
「無頼漢を気取っている癖に、最後の最後で確執や血の因果に囚われるとはね。『彼女』が生きていれば、そんなものはブッ壊せば良いって言い切る女性に出会えれば違ったのかね…」
「姉さん?」
大きく溜め息を付くとルーカンはラモラックとは逆方向に足早に去っていく。
困惑が隠せないベディヴィエールはラモラックの背を今一度見ると、ルーカンの後を追った。

キャメロットの城門前で鎧を纏い、槍と盾を持ったままでラモラックは祈る。

「母上。親父殿に続き、早逝する馬鹿息子を御許し下さい。パーシヴァル、お前は騎士になどなるな。……騎士ラモラックこれより、死地に参ります」
祈りを終えたラモラックは城門を押し開け、外へと足を踏み出す。

──────本当に馬鹿な人。全てを捨て去ってしまえば長生き出来たのに。

「それは君との愛さえも否定することになる」
脳内に流れ込んでくる声に一言返したラモラックは振り返りもせずにキャメロットを後にした。

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英霊伝承異聞ラモラック―息子と母と妹と― 2021/09/25 (土) 04:24:14

「母上、産後の肥立ちは如何ですか?」
巡察の最中、実家であるペリノア王の居城に立ち寄ったラモラックは久方ぶりに顔を会わせようと母を訪ねていた。
アーサー王と王の即位を認めない11人の王との戦も一段落となり、ブリテン内戦の終息は間近に迫っている。
それは、卑王ヴォーディガーンとの決戦を意味していた。
こんな時期に末の弟が産まれたと聞いたラモラックは最期になるかも知れないと母に会い来たのだ。
「まぁ、ラモラック! ……どうして男の人は、騎士と言う生き物は戦に夢中になると家の事をすっかり忘れてしまうのかしら。 ねぇ、パーシヴァル?」
ラモラックの顔を見るなり母は大袈裟に驚いて見せると、腕に抱いた赤子の頬を軽く突いた。
パーシヴァルは眠いのか、母の指を小さい手で軽く握る。
「……パー(槍)とデュア(硬い鋼)。良い騎士になりそうですね」
母の軽い揶揄に気まずそうにその長身を縮ませて、ラモラックは何とか言葉を絞り出した。
「パース(貫く)とヴァル(谷)よ。全く女の子にしては随分物騒過ぎるわ」
うつらうつらと首を揺らすパーシヴァルを揺りかごへと乗せると、母はため息を付く。

「妹? ふむ、確かに。妹でしたか」
揺りかごを覗き込む、名前で思い込んでいたが、言われてみれば女の子かもしれない。
「貴方のそう言うところは本当に良くないわ、戦と領地経営以外に興味を持ちなさい」
体全体でラモラックを押し退けパーシヴァルから遠ざける母。
ちょっかいを出されて起こされたくないらしい。
「機会があれば、何か趣味を探すとし   ます」
お小言が多くなってきた。と言わんばかりに顔を反らすラモラック。
その足は出口へと向いていた。
「もう行くのラモラック? 落ち着きがないこと。 あの人に宜しくね」
もう少しいたらどう?などと騎士の奥方は言わない。
名残を残す前にさっさと行きなさいとでも言わんばかりに母はラモラックを追い出し手を振っていた。
母上はパーシヴァルを騎士にはしたくないようだが、母上に似ても中々の騎士になるのではないか?
もし、嫁を探すならもう少し気性の控えめな女子が良いな。
口には出さずに様々な事を考えながらラモラックは部屋の扉をゆっくりと閉めた。

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 葉っぱを使うことで手を汚さない工夫にもなっているとはなんとも合理的だとセイバーは感心する。
 そして、始めての柏餅を葉っぱごと頬張り、カシワの苦味と餅と餡の甘味の入り交じるその独特な風味を味わったあと、サクヤに疑問を投げかけた。
「サクヤは食べないのですか」
「うん。セイバーが食べていいよ。あと葉っぱは食べないものだよ」
 サクヤは餡が嫌いだった。
 小豆を潰した食感がなんとなく嫌だったし、喉が渇くことがとにかく苦手だった。
 その後飲むお茶が美味しく思えるのは良かったが、和菓子ならばだいたいそうだったので、やっぱり好きになる事はなかった。
「好き嫌いは駄目ですよ」
「好き嫌いという個性がなければ人類はこれほど豊かに食文化を発展させる事など出来なかったと思うのだがね。はいお茶」
「どうも。お茶と合って美味しいです」
 本当に幸せそうな愛くるしい笑顔を見せるセイバーを見て、サクヤはやっぱり考え直して、ひとつ食べてみることにした。
 思ってた通りの味だったが、なんだか今日は美味しく感じられた。
 なぜだろうと疑問に思い、すぐに目の前の少女がその答えだと気づいて、サクヤはもう一口頬張った。
 
そういえば、柏餅で一つ思い出したことがあった。
「なんでセイバーは甘いものが好きなんだ?」
「む?」
リスのように両頬を柏餅で膨らましてこちらを向くセイバー。可愛いやつめ。
そして回答するためにもきゅもきゅと口内の柏餅を食していった。可愛いやつめ。
「はいお茶」
「どうも。……ふう。なぜ私が甘いものが好きなのか、ですか」
セイバーは少し考えた後、何かを懐かしむように、そうですね、と語った。
「当世における甘いもの、特にデザートはある種『幸福の象徴』のようなものといった印象でした。
 それも高貴な人のみの嗜好品ではなく、街の人々、特に年頃の女性が好んで食べるものだと。
 現界したばかりの私は、人の心を理解するにあたって、まず形から倣おうと考えたのです。そして」
「そして食べてみて、心を奪われたと」
「はい。それはもう一目惚れでした。あむ」
一通り話し尽くし、柏餅を美味しそうに食べるセイバー。可愛いやつめと思いながら、自分も新しく柏餅を1つ頬張った。

>柏餅から葉っぱ剥がすのってなんだかエッチですよね
 水無月サクヤに天啓が舞い降りた。
「セイバー、君は人の気持ちを理解するために甘いものを食べてみたとさっき言ったね」
「いいましたが……」
 サクヤがこういう輝く目をしている時はまた変なことを思いついた時だ。セイバーは目を細め警戒する。
「いっそ甘いものの気持ちを理解してみるというのはどうだろう!? そう君は、これから僕の手で柏餅になるのだ!!」
「は?」
「つまりだね。柏餅を覆う葉っぱのように君の体を何かで覆う!そして、それを僕が剥がして中身を食べるのだよ!そして君は柏餅の気持ちを完全に理解する!このロジックはパーフェクトでチャレンジはドリームだ!」
 何を突然言いだしたのかわからないというセイバーをサクヤはそのどこからくるのかわからない熱意で無理やり押し切り、ふたりの城へと連れ込んだ。
 しばらくすると、セイバーはまさしく葉っぱが体に張り付いただけというような奇抜な格好にさせられていた。
「セイバー!今君はだいぶ柏餅だよ!かなり柏餅だ!」
 これは褒め言葉なのだろうか? 自分は一体何をしているのだろうかとセイバーは悩んだ。

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20XX/○○/○○ 樽の人
センセイがまた変なことをしていた。樽の中に入った少年と会った、と話したら、その次の日にはその人のところに行っていた。リコさんの絵をもう一度見に行った時に、たまたま見かけた。
どうも、センセイはその人と口論……というより、議論をしているようだった。ソクラテスがどうの、って言ってたっけ。
ソクラテスがどんな人か、くらいなら少しは知ってるけど、それが話題になるということは、ギリシャ系の人なのだろうか。
終始少年らしいその人はそっけない態度をしていたけど、議論を中断する様子はなく、私が絵を見て帰るまでの10分か15分くらいの間、延々と話をし続けていた。
センセイがあんなに話し込むんだから、きっと学問とかで有名な人なんだろう。そういうところが、センセイにはある。
私は……あまり勉強が得意と胸を張って言えるわけでもないし、口が回るというわけでもない。だから、あんな風に延々議論をするのは、ちょっとゴメンかな。

P.S.後で都市情報網を見てたら、ずっと議論してる変な人がいるってセンセイ達の写真がSNSにあがってた。どれだけ話してたんだろう……。

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追伸。後から調べたら、あの女の人が描いた絵は、エスクローと呼ばれる集団の作品の一つだということがわかった。
作品としては良かったと思うから、できればもう一度見たいけど……彼らの作品は、しばしば建物などの管理人に取り壊されてしまうので、あまり長く残らないのだとか。残念。

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20XX/○○/○○ エスクロー
今日は……何だろう。犯罪といえば犯罪で、芸術といえば芸術。そんなものを見た。
私が遠出をしている間に、難波の方で落書き事件が多発していたらしい。
たまたま今日は、その落書きをしている場所の近くを通りかかったんだけど。何というか、とても……アーティスティックな格好の女性と出会った。
ストリートアート、というらしい。センセイが文化の一端として、苦笑と一緒に紹介してくれた、街中の落書き。っぽい絵。
法律に照らすと、あれは明確な違反行為らしいけど、それに芸術的価値を見出す人もいると。今日会った人は、まさしくそういうタイプの人だったと思う。
リコと、その女性は名乗った。何でも、普段から、時間になっていた落書きのようなアートを描いているのだとか。
たまたまその現場を目撃してしまった一般市民としては、多分都市情報網で通報した方が良かったんだろうけど。私自身後ろ暗いものもあるし、他に見ている人も通報した様子がない。
そもそも、本当に絶対ダメだというなら、カレンシリーズは間違いなく行動を起こす前に止めている。少なくとも、都市にとって致命的なことではない、ということ。
それならいいか、と思って、彼女のアートを見ていたけど、本当に凄かった。スプレーだけであんな絵が描けるんだ! と、びっくりしっぱなしだった。私はあんまり絵は得意ではないから、なおさら。
最終的に書き上がったのは、都市戦争にも出ているナンバくんを、面白おかしくデフォルメしたもので、思わず笑ってしまった。皆も笑いながら、拍手を送っていた。
でも、そのすぐ後に警邏隊が来て、あっという間にその集まりも解散しちゃったんだけど。まだ絵を見てみたくなっていたから、ちょっと残念だった。
そういえば、後でもう一度同じ場所を通ってみたら、サーヴァントらしい少年が樽に収まって何故か寝ていた。あれはなんだったんだろうか。

102

ヤクザみてーな顔してんな…

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「」ゲミヤ 2021/09/22 (水) 01:46:06 修正

東京聖杯戦争がほぼ全員揃ってるのにキャスターが完成せず、申し訳ないのでキャスターのイメージ画像を載せておきます
今週中に頑張って完成させるので何卒お待ち下さい
画像1

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そういえばスレ復活してない?

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T/ROでも鉄道奪還クエストみたいなの用意されてたな…

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鉄道なら推理モノの舞台にも良い

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レクイエム世界だとドローンがばら蒔かれててモザイク都市外だと無人の荒野が広がってるって設定だから結界を最小限にして点と点を繋ぐ線として使える大量輸送手段としての鉄道はかなり有効かもしれない

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泥モザイク市限定だけどかなり初期からある設定だね
離れた都市を結ぶ移動手段の一つだって

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新世界でも新幹線はあるんだ…

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ジャングル完結編を首を長くして待っていますので…

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日記帳更新しました
良ければどうぞ

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20XX/○○/○○ 顛末
何があったかというと……うん。予想通りというか、ドローンがいた。わんさか。
しかもどういうわけか、新幹線のルート上を蠢く、サーヴァント・レムナントの群れが一緒にくっついてた。
ドローンの方については予想してたし、動体センサーや赤外線レーダーなんかをかわすための準備はしてたけど、流石にレムナントは別だ。
魔力の源を嗅ぎつけたのか、折角隠形でやり過ごせそうだった私の姿がバレてしまった。
依頼人の船に引き寄せられて集まっていたドローンの数は、ちょっとやそっとのレベルではなかった。そこにレムナントもいて、それが私を襲ってきたものだから、本当に死ぬかと思った。
一番解せなかったのは、当の依頼人本人は、追われながらも何食わぬ顔で船を操縦して、ドローンの誘導なんかもこなしつつしれっと追撃をかわしていたこと。
あの人のせいで大勢集まった相手をやり過ごさなくちゃならなくなったけど、あの人がいなかったら、多分私は死んでたと思う。だから、こう、罵倒するには偲びないけど、ありがとうとも言いたくない複雑な気持ちだった。
結局、ドローンを依頼人が引きつけている間に、レムナントをいくらか私が減らして、魔術で姿を誤魔化すような格好で何とか逃げ延びることができた。……2度と同じ仕事はやりたくない。本当に死んじゃう。
結局、その後依頼人は大阪に来て、梅田の最下層で裏の商いをしている人から補給を受けた後、そのまま旅立っていった。「ドローンさえ何とかしてくれたら後はいい」、って。……そのドローンをどうにかするのが、本当に命懸けなんだけど。
何というか。最近、体良く私を便利屋扱いしている人も多い気がする。そういう意味で、今後は依頼も選ばないといけないと思った。センセイが依頼人を仲介してた頃が懐かしい。

ともかく、こういうわけで、私は何日にも渡って依頼人と酷い目に遭い続けて、何とか逃げ延びてきたのがつい昨日。こうして日記に起こすのも大変なくらいの、大仕事だった。
病み上がりにこんなハードなことしなきゃ良かったと、ちょっと後悔はしてる。……これで依頼人から酷い扱いを受けてたら、私は泣いてたかも。そうじゃなかったから、良かったけど。

今日からは、また毎日日記をつけようと思う。こんな酷いことが何度もないといいんだけど。

91

うっみんなやるべきものを仕上げていく…
ジャングル完結編もうちょっと…もうちょっと待ってね…

90

そういえば登場人物一覧のどこに置けばいいんだろう

89

先にオルタを練ったのもありますが、そのまま普通に練ると公式の劣化になるかもと思って
オルタだと英雄という役割に対する向き合い方を捻ったので、じゃあこっちはいっそ性別を捻ろうかと
あとはこれは2102年Afterを見てうみちゃんがマスターなら女性の方がいいかなーという打算もありました

88

テセウス噛ませ6人衆、色々な意味で因果を感じさせて好き
にしてもセイバーのテセウスは女性だったか

87

残虐な方法で人を殺していた者たちがしっかりリンク貼られててダメだった

85
「」ゲミヤ 2021/09/22 (水) 00:27:13 修正

確か後で編集できたはずだし置いてみよう
2102Afterの梅村警察のセイバーのテセウスです
明日か明後日には出せるって言ったのに1日オーバーしてごめんね!

リンク

画像1

84

ノンボは変なババアと縁がありすぎる…

83

ツクシちゃん日記をちょっとずつ更新中なう
あと一回分投稿しますね……

82

いいですよ〜 既に推し泥スレとかもありますし
topに書いてあるように鎖マークからリンク作成で飛ばすのをおすすめします

20

20XX/○○/○○ 「札幌」
厳密に言うと、依頼メールは、札幌に私が行くことを求める内容ではなかった。向こうから逃げてくる人が一人いる。その人を出雲の方へ送ってくれ、というような内容。
たまに、ではあるけど、そういうこともある。ある程度お金に余裕があれば、新幹線で札幌から東北地方を縦断できる。でも、お金がない人は、ドローン避けの効かないエリアをなんとか船で渡るとか、そんな無茶をすることもある。
……依頼文によれば、その人は郡山を越えて、新潟方面経由でこちらに向かっているらしい。郡山を越えられたなら、多分それなりに腕に自信のある人だ。私に求められる役割は、都市近くを移動する時の水先案内人だろう。
でも、それにしたって無茶苦茶だ。新幹線がダメでも、藤咲造船の定期便に乗るとか、もう少しマシな方法はある。なのに無理矢理自前の船で来ようとするなんて、余程の急ぎか、それとも定期便の利用さえ憚られるのか。
私自身、仲介のない依頼はあまり良いことがないから、悩んだ。でも、断るに足る理由は文面からは見つけられない。結局、受諾の返事をすることにした。
それからは、予定の日まで準備準備で、学校もお休みせざるを得ないくらいあちこちに行った。海底新地の良さそうなお店で廃棄物漁りをしたり、あまり上手くはないけど、万が一のための簡易礼装を作っておいたり。
あと、情報網のディープウェブで、こっそり都市外の様子を確認したり。こういう時にシーランド=佐賀のサービスはありがたい。
そうこうしてるうちに何日も経って、予定日に間に合うように、私は梅田の新幹線用線路をこっそり辿って合流地点に行った。
で、ここからしばらく日記には触れられなくて、今こうして書いてる日付まで、ちょっと大変なことばかりが起こっていた。

80

おーけー
まあURLはたまに仕様で横線で消されてたりするが

79

ここってwikiのアドレス貼ってもいいんだったっけ

78

ノンボと殺し合って生きてるババ…塾長が凄いのか
塾長と殺し合って生きてるノンボが凄いのか…

19

20XX/○○/○○ てんやわんや
しばらく書いてなかったから、いくらか、掻い摘んで書く。流石に全部の日付分は書けないから、何日か分に分けて。

寝込んだ日の翌日、いつの間にか、センセイが来てた。上着は脱いでたけど、いつも通りのスーツ姿で。気付いて起き上がろうとしたら、無理はするなって寝床に押し戻された。
わざわざ携帯用のガスコンロとかまで持ってきて。ぼんやり頭で私がじっとしてる間に、おかゆとか作ってた。刻みネギはともかく、塩の入れ過ぎでしょっぱかったし、なぜか入ってた生姜の風味も強くて、味の癖が凄かった。食べたけど。
新品のタオルとか、スポーツドリンクとか、他にも色々買ってきてくれてた。スポーツ選手用の冷感シートが、熱の時におでこに貼ると気持ちいいだなんて、初めて知ったかもしれない。脇に貼れって言われたのはちょっと引いたけど。そっちの方が早く熱が逃げる、とか。
その後は……特に、何もなかった。流石にこれ以上のことをしてもらうとなると、色々見られそうでイヤだったし。無理を言って帰ってもらった。
でも、あんな風に面倒を見てもらうのは、多分私にとってすごく久しぶりだったから。嬉しいのは、嬉しかった。
それで、まぁ、なんというか。そんなことでも元気づけられたのか、翌日にはすっかり熱も引いて、歩けるくらいにはなってた。
ここまで来て面倒を見てくれるのは、センセイくらい。だから本当に感謝はしてるんだけど、何というか、気恥ずかしい。このところ顔を合わせないようにしてたから、尚のこと気まずい。
熱が下がってからしばらくそんな風にうーうー唸ってたんだけど、そんなことを言ってられないようになった。

端末に届いていた、仲介抜きの依頼メール。依頼元は……札幌だった。

77

ノンボ!ノンボじゃないか!!

75

いい忘れてた
口調チェックを手伝っていただいた塾長「」ありがとうございました!