普通の倫理観
ふつうの人
ヘルメット同士がぶつかって邪魔だった。
セシリーは自分の腰がシーブックに密着している感覚を問題にするより、ヘルメットのことを解決しなければならないと感じて、両手を首にまわしてパイロット・スーツの首まわりのファスナーを外して、ヘルメットを脱いだ。
ふつうじゃない人
彼女の頭と首筋が揺れれば、それが、オノレの股間に遠慮なく伝わってくるのだが、彼女はそんなことはまったく気にしていなかった。
〈この人、ふつうじゃないんだ……〉
そうでなければ、唇にピアスをしたような女が、この日本でアウトサイダーなどやっていられるはずはないのだ。
『ピアスくらいいいだろ』という感想はアベニールではこの後くどいくらい続くので、忘れる。
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『ごく一般的なニュータイプ』『五万人ほどのサイキッカー』などが平然と語られる場所でサイキックとニュータイプがどう違うのか等、初歩的な疑問すぎて訊けそうにない。近未来SFや遠未来のテクノロジー万能社会に微弱なプレコグやPK能力者が普通に認知されていていまだ説明がついていないことは普通のことだ。
ニュータイプは同時代に対して普通じゃないタイプをいうが、サイキック自体はサイガ・ババ級の能力者もきっと民間にいる。フールケアに常識や慎みのないのはいずれにしても問題だ。小型核融合炉やEMOがあってなんでピアスがだめだ。
『どういう男とだっ!』と鉄仮面がひとり叫ぶとき、もし聞こえていたらそこを指摘されるのはセシリーにはこの瞬間にもいささか不本意だろう。シーブックには本懐と思える。
『シーブックならいいのよ!』とは胸を張って言えないと思うな。『機械ごときに!(つべこべ言われることじゃないわ!)』と押し切ってしまうか……弁論部。
ニュータイプなどは一山幾らで扱うフォンセ・カガチが個性としてもっとも優れている・偉大だわ……のように思うやつは一定いると思う。ありふれてると思うが、木製帰りにしてもカガチを「ニュータイプ」と認めて語られることはない。その場合は、宇宙人になりきって異質の倫理観を振りかざすようになった人々、などいう。