Series: Wars of Vis (Tanith Lee, 1976-88)について。
The Storm Lord - Book One: The Amber Witch はじめ、Chapter 1まで。さっそく、人名や地名や用語が押し並んできたが、今、ここにglossaryを作るか迷う。手元にメモは書き留めておかないと混乱しそうなファンタジーなのだが。日本語ネット上に、翻訳しない翻訳メモのように置いていても、どうせ誰も日本人読者はいないのにエア読ネタバレを促す以外に意味なさそうだしな。
よく翻訳ファンタジーに用語集ついているけど、初読でそれを首っ引きで読むものではないとわたしは最近も余所で思った。それは再読するか、読後に数か月も経てばやはり細かいことは忘れるので、既読者の参考ノートにはなる。その際、必ずしも読者各々が自分で書き込んだノートにかぎらず、それに手慣れた編集者が作成した用語集の方が利用するには役に立つんだ。Wikiなんかだととくに、その編纂に慣れてるちがいはある。
先日までVolkhavaar(1976)だったが、わたしは今読んでいて例の猫→蛇のところをまた思い出していた。今度は蛇か。
まだ1章しか読んでないけど、今回は散文寄りの文章みたいに思える。あまり放置しない程度に進めよう。Ashne'eってカタカナだとなんて書けばいいんだ……。
「glossaryをつくる」ということについては、この本に限らず用語が多いファンタジー本のときはつらっと読み飛ばすよりは手元にこまごま書き控えて読むほうが面白いのだけど、今のように電子書籍なら、そのメモ機能で書き込んでいってもいいしその機能で一覧もできる。
わたしは書籍を閉じて読後に参照したり、外部に引用することがあるから電子書籍のメモだけでは間に合わない。前回のヴォルクのように「ここは誤植」という箇所は、書き込み。
Chapter 2まで読んだところでやはり人物名の表記についてかんがえる。かなり長く悩む。発音より、翻訳してカタカナ表記にしたら何と書くか。ここのメモも日本語で概ね書いているし。
発音自体は、Ashne'eよりAmnorhに悩む。rhってなんて書くんだ。「ル」でも「フ」でもない。アシュネーよりはアシュネエ、発音はエよりアシュネイ、アシュネーイのようになると思うが、カタカナ表記に長音を入れると全文にわたってそれが目立つ。原文の名が「 ' 」で全文目立ってるんだが?……創作設定で異質な音感なんて作らなければならないんだろうか……まあ1970年代の読み物だし。 ラブクラフトやCAスミスの訳者には煩わしいほどのこだわりの人もいる。タニス・リーは作者が深い考えでやっているポリシーでは絶対ないぞ。発音だけにこだわるならrhは「ゥ」でもいいか。
アシュネーイと書くと見映えが悪いが、アナキーア(ァ)との関係を示唆しそうな気がする。アナキアではわからないが、カタカナになるなら、どうせそんなところだろう。次作では小説のタイトルだろうが……Anackireとthe anckiraはどう区別するのか、まだほんの2章なのでよくわからない。
Chapter 3まで。
ヴィスの神聖王の横死により、権力の座は智謀の宰相アムノー公の手に渡るかと見えていた。次代の王となるべき王子は異教の巫女アシュネエに妊まれ、王妃ヴァル・マラは狂乱する。いまや摂政位を掌中にしながら、アムノーの心をかすめる奇妙な厭世は彼を蛇女神アナキアとの邂逅に導く。謀略が崩れ去った時、宮殿は一睡の夢と燃えて、地位を追われるアムノーの戦車は押し寄せる暴徒の中に突入した――飛び散る血飛沫!群衆の叫喚!そしてよみがえる蛇女神の幻影!
……のように、わりと頭の悪い異世界が始まるのだけど、タイトルのThe Storm Lordをもしも訳すならなんと言おうか、まだ思いつかない。率直に「嵐の王」でもよさそうだが、べつに天候を司る意味はなくて、竜を紋章にする神聖王位のタイトル(称号)。「天覇皇帝」みたいに、壮大な帝都とか王朝文化というほど絢爛華麗でもなくて、The Birthgraveと同じ程度に野蛮で未開な世界の国家だ。ヴィスは惑星の名でもあって、この星の全土を統べる神与の王権と唱えているが、それほど威勢があるような気はせず、辺境の民などは聖王の権威をそれほど理解していない気配で、兵に脅されて消極的にもてなしていたようだった。
上のアオリは今ぶっつけで書いたが、ブクログのレビューには今度そのまま使っていいな。文体はこんなではないけど、それほど間違ってもいないよ。
Chapter 4 / Book 1まで。人死にまくる。
富野通読の方をしばらく没頭していてすぐ放置ぎみになる。The Birthgraveから続きこのゴア程度だけど、たとえば『リーンの翼』のようなそれと全然違うのは、容赦なく凄惨だけど露悪ではなくて、惨酷のうちに暗いユーモア調子……比較対象がよくないか。 LomandraとLiunのところあっという間なのにやはり上手い。tirrとかbanalik、hiddraxという動物の名は文中で早くから点々と挙げていて、リーのことだから撒いたネタは全部回収するのかな……と思う。
ジークアクスみたいなもの観ながら同時にこういうもの読めない、わたしは。というかタニス・リー作品は他作家の誰とも併読が、気持ちが両立しにくい。全く違うジャンルの読書を時間割で転々と切り替えることはあるけど、リーは全面的な傾倒というか、入り込みが必要みたい。
音楽作品のイメージもない。憶えているのは、『影に歌えば』の訳者あとがきで井辻さんがダラダラ書いているけどわたしはそれらの印象も全然なかった。作者の写真を見てクラシックを当てたいとも思わないけど。 昨年、The Birthgraveシリーズの間に和田薫劇伴のリスニングを入れていて、その連想で「キャシャーンSins」とバースグレイブのキャラクターイメージが結びついて抜けなかった。二部以降ヴァズカーにしても性格はかなり悪童っぽいけど、風貌や生き方はあれに見える。バースグレイブの実写映像化のようなことは作中の理由でまず考えにくいけど、アニメならあるなあ……と思った。そもそもリー作品の映像なんかは実質的にない。
犬夜叉ではない。 『私に近づくな。死ぬぞ』というヒロインのほう。自分の名前を告げるにも、くッと一瞬躊躇い、傷のある表情になってから話すというそれ。
The Birthgraveの余談続きで、あの主人公(語り手)の「私」って、作中に名前はあるんだが、物語のあいだに他人に呼ばれる名のうちどれも、真の名もあるけど、読者にはどれも言及しにくい。「語り手」「私」しか呼びたくない、だろう。
二部ヴァズカーはヴァズカーでいい。もともとトゥベクと呼ばれていたがどうせヴァズカーなのは分かっているから読者も躊躇しない。一部範囲では「私」の名を明かしたくないのに、三部になるとわりとあっけらかんと書かれていたりするが、それも仕掛けになっているような経緯で、とにかく言いにくい。彼女の年齢設定についても、描写から幾つくらいと目に浮かぶけど、はっきり言いにくい理由もあり、とにかく語りにくい作品だった。邦訳されないかぎりすごいフラストレーションに残っている。
身を切るような心の痛み、みたいで、章ごとにいったん息つきたくなる。そしてしばらく戻ってこない。
バースグレイブ三部作はまたいつか、いずれ再読したいね。それに比べると「The Storm Lord」今回はまだ気楽なようか。
Chapter 5まで。この間、サイコミュの精神性愛の話をずっとしてしまい、今こちらもまたそれに深入りしていく気持ち。
Chapter 6まで。
7まで。ラルドナーの皮肉ぶり、毒調子がすでに懐かしい。
彼の育った境遇、サイキックへの経緯はトゥヴェクとは順序がちぐはぐだが面影は見紛いようがない。あと、「狼」タグをやはり振っておく。
Chapter 8 / Book 2 おわり。ここに書き込んでいる日しか最近読めていない。 アスタリスの風貌、キャラクターはわたしは好きみたいだな。あまりに美しい殻の中の貝か。coiledというから巻き貝のイメージらしい。
9まで。
このストーリー凄いな。どうもこのシリーズはリーの作品中ではそれほど人気は高くないみたいだが、それはThe Birthgraveの印象が鮮烈すぎて、それに似た趣があるせいで埋もれているだろうと思える。
いま、途切れ途切れに読み続けてはまだ半分ほどだったか。Raldnorの衝動的な行動ぶりは凄い。それも、その場その場ではいつもその動機になる憂悶・葛藤がありながら偶然、咄嗟にする嵐のような暴力として現れ、自分でも想像しなかったような状況に転がっていく、そのいつも、一歩間違えば死んでいただけだから後悔しようがない。前章では真底の憎悪対象だった王に奇妙すぎる友情を感じるまで。この凄まじい無軌道ぶりは逆にたどれば、いつも彼を駆り立てている憎悪感は彼の生まれに発し、もともとは部族の集落での疎外感に戻るが、その頃の少年の孤独さはむしろ幼稚なくらい、とりとめない気分だ。
だが読者にはむろん彼の出生の謎は知れているので、Visとしての彼の衝動――Lowlanderと意思疎通できないことも、性衝動を抑えられないこともその出生前の血に遡る。遡れは物語の発端になった、先代Storm Lordの発作的衝動に遡り、それはZastisに帰する。わたしは最初の頃の章を読みながら、メモに…「Zastisの設定いる?」と書き込んでいたりしてたが、ずっとZastisから来ていた。作者がどうしたらこんな刹那的で衝動的な書き方ができるのか、ちょっとわからないことだが、本人はいつもまるで無計画のように書いているというし……。
「凄い」とは漠然と思いながら、とりとめなさで、緻密に書き込まれた社会制度でもないし、惑星と衛星の天体論SFでもないし、小説の掴みどころがわからなかったみたいだった。リー作品のキャラの面白さと小説の勘所は掴み直したみたいだから、これから好きになれる。
今書いたとおり、自暴自棄で行き当たりばったりすぎるので、読者も「わけのわからない主人公」というか「キレる若者」みたいな認識で大方振り落とされるんだろう。わかりにくさの事情もわかった。
衝動的に走った結果が、やることなすこと裏目に出る、不条理ではなくて、星の象徴する運命に支配されている――というと、なにか原型のようなものを連想もするな。「不条理劇ではない」と今書いた。デビュー間もないリーの基礎というと、自分で書いているワイルドとシェイクスピアくらいしか知らない。それでいうとシェイクスピアのほう。マクベスか……マクベスではないかもしれないが、シェイクスピアではありそうだ。それもたった今まで想像しなかった。
10まで。
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はじめ、Chapter 1まで。さっそく、人名や地名や用語が押し並んできたが、今、ここにglossaryを作るか迷う。手元にメモは書き留めておかないと混乱しそうなファンタジーなのだが。日本語ネット上に、翻訳しない翻訳メモのように置いていても、どうせ誰も日本人読者はいないのにエア読ネタバレを促す以外に意味なさそうだしな。
よく翻訳ファンタジーに用語集ついているけど、初読でそれを首っ引きで読むものではないとわたしは最近も余所で思った。それは再読するか、読後に数か月も経てばやはり細かいことは忘れるので、既読者の参考ノートにはなる。その際、必ずしも読者各々が自分で書き込んだノートにかぎらず、それに手慣れた編集者が作成した用語集の方が利用するには役に立つんだ。Wikiなんかだととくに、その編纂に慣れてるちがいはある。
先日までVolkhavaar(1976)だったが、わたしは今読んでいて例の猫→蛇のところをまた思い出していた。今度は蛇か。
まだ1章しか読んでないけど、今回は散文寄りの文章みたいに思える。あまり放置しない程度に進めよう。Ashne'eってカタカナだとなんて書けばいいんだ……。
「glossaryをつくる」ということについては、この本に限らず用語が多いファンタジー本のときはつらっと読み飛ばすよりは手元にこまごま書き控えて読むほうが面白いのだけど、今のように電子書籍なら、そのメモ機能で書き込んでいってもいいしその機能で一覧もできる。
わたしは書籍を閉じて読後に参照したり、外部に引用することがあるから電子書籍のメモだけでは間に合わない。前回のヴォルクのように「ここは誤植」という箇所は、書き込み。
Chapter 2まで読んだところでやはり人物名の表記についてかんがえる。かなり長く悩む。発音より、翻訳してカタカナ表記にしたら何と書くか。ここのメモも日本語で概ね書いているし。
発音自体は、Ashne'eよりAmnorhに悩む。rhってなんて書くんだ。「ル」でも「フ」でもない。アシュネーよりはアシュネエ、発音はエよりアシュネイ、アシュネーイのようになると思うが、カタカナ表記に長音を入れると全文にわたってそれが目立つ。原文の名が「 ' 」で全文目立ってるんだが?……創作設定で異質な音感なんて作らなければならないんだろうか……まあ1970年代の読み物だし。
ラブクラフトやCAスミスの訳者には煩わしいほどのこだわりの人もいる。タニス・リーは作者が深い考えでやっているポリシーでは絶対ないぞ。発音だけにこだわるならrhは「ゥ」でもいいか。
アシュネーイと書くと見映えが悪いが、アナキーア(ァ)との関係を示唆しそうな気がする。アナキアではわからないが、カタカナになるなら、どうせそんなところだろう。次作では小説のタイトルだろうが……Anackireとthe anckiraはどう区別するのか、まだほんの2章なのでよくわからない。
Chapter 3まで。
ヴィスの神聖王の横死により、権力の座は智謀の宰相アムノー公の手に渡るかと見えていた。次代の王となるべき王子は異教の巫女アシュネエに妊まれ、王妃ヴァル・マラは狂乱する。いまや摂政位を掌中にしながら、アムノーの心をかすめる奇妙な厭世は彼を蛇女神アナキアとの邂逅に導く。謀略が崩れ去った時、宮殿は一睡の夢と燃えて、地位を追われるアムノーの戦車は押し寄せる暴徒の中に突入した――飛び散る血飛沫!群衆の叫喚!そしてよみがえる蛇女神の幻影!
……のように、わりと頭の悪い異世界が始まるのだけど、タイトルのThe Storm Lordをもしも訳すならなんと言おうか、まだ思いつかない。率直に「嵐の王」でもよさそうだが、べつに天候を司る意味はなくて、竜を紋章にする神聖王位のタイトル(称号)。「天覇皇帝」みたいに、壮大な帝都とか王朝文化というほど絢爛華麗でもなくて、The Birthgraveと同じ程度に野蛮で未開な世界の国家だ。ヴィスは惑星の名でもあって、この星の全土を統べる神与の王権と唱えているが、それほど威勢があるような気はせず、辺境の民などは聖王の権威をそれほど理解していない気配で、兵に脅されて消極的にもてなしていたようだった。
上のアオリは今ぶっつけで書いたが、ブクログのレビューには今度そのまま使っていいな。文体はこんなではないけど、それほど間違ってもいないよ。
Chapter 4 / Book 1まで。人死にまくる。
富野通読の方をしばらく没頭していてすぐ放置ぎみになる。The Birthgraveから続きこのゴア程度だけど、たとえば『リーンの翼』のようなそれと全然違うのは、容赦なく凄惨だけど露悪ではなくて、惨酷のうちに暗いユーモア調子……比較対象がよくないか。
LomandraとLiunのところあっという間なのにやはり上手い。tirrとかbanalik、hiddraxという動物の名は文中で早くから点々と挙げていて、リーのことだから撒いたネタは全部回収するのかな……と思う。
ジークアクスみたいなもの観ながら同時にこういうもの読めない、わたしは。というかタニス・リー作品は他作家の誰とも併読が、気持ちが両立しにくい。全く違うジャンルの読書を時間割で転々と切り替えることはあるけど、リーは全面的な傾倒というか、入り込みが必要みたい。
音楽作品のイメージもない。憶えているのは、『影に歌えば』の訳者あとがきで井辻さんがダラダラ書いているけどわたしはそれらの印象も全然なかった。作者の写真を見てクラシックを当てたいとも思わないけど。
昨年、The Birthgraveシリーズの間に和田薫劇伴のリスニングを入れていて、その連想で「キャシャーンSins」とバースグレイブのキャラクターイメージが結びついて抜けなかった。二部以降ヴァズカーにしても性格はかなり悪童っぽいけど、風貌や生き方はあれに見える。バースグレイブの実写映像化のようなことは作中の理由でまず考えにくいけど、アニメならあるなあ……と思った。そもそもリー作品の映像なんかは実質的にない。
犬夜叉ではない。
『私に近づくな。死ぬぞ』というヒロインのほう。自分の名前を告げるにも、くッと一瞬躊躇い、傷のある表情になってから話すというそれ。
The Birthgraveの余談続きで、あの主人公(語り手)の「私」って、作中に名前はあるんだが、物語のあいだに他人に呼ばれる名のうちどれも、真の名もあるけど、読者にはどれも言及しにくい。「語り手」「私」しか呼びたくない、だろう。
二部ヴァズカーはヴァズカーでいい。もともとトゥベクと呼ばれていたがどうせヴァズカーなのは分かっているから読者も躊躇しない。一部範囲では「私」の名を明かしたくないのに、三部になるとわりとあっけらかんと書かれていたりするが、それも仕掛けになっているような経緯で、とにかく言いにくい。彼女の年齢設定についても、描写から幾つくらいと目に浮かぶけど、はっきり言いにくい理由もあり、とにかく語りにくい作品だった。邦訳されないかぎりすごいフラストレーションに残っている。
これを「ダークファンタジー」と呼んでいるのはThe Birthgraveのイメージがそのときあったのだった。これも井辻さんの訳書で『銀色の恋人』のことをキカイダーとも言っていたっけ。OVAだからものが違うが。
身を切るような心の痛み、みたいで、章ごとにいったん息つきたくなる。そしてしばらく戻ってこない。
バースグレイブ三部作はまたいつか、いずれ再読したいね。それに比べると「The Storm Lord」今回はまだ気楽なようか。
Chapter 5まで。この間、サイコミュの精神性愛の話をずっとしてしまい、今こちらもまたそれに深入りしていく気持ち。
Chapter 6まで。
7まで。ラルドナーの皮肉ぶり、毒調子がすでに懐かしい。
彼の育った境遇、サイキックへの経緯はトゥヴェクとは順序がちぐはぐだが面影は見紛いようがない。あと、「狼」タグをやはり振っておく。
Chapter 8 / Book 2 おわり。ここに書き込んでいる日しか最近読めていない。
アスタリスの風貌、キャラクターはわたしは好きみたいだな。あまりに美しい殻の中の貝か。coiledというから巻き貝のイメージらしい。
9まで。
このストーリー凄いな。どうもこのシリーズはリーの作品中ではそれほど人気は高くないみたいだが、それはThe Birthgraveの印象が鮮烈すぎて、それに似た趣があるせいで埋もれているだろうと思える。
いま、途切れ途切れに読み続けてはまだ半分ほどだったか。Raldnorの衝動的な行動ぶりは凄い。それも、その場その場ではいつもその動機になる憂悶・葛藤がありながら偶然、咄嗟にする嵐のような暴力として現れ、自分でも想像しなかったような状況に転がっていく、そのいつも、一歩間違えば死んでいただけだから後悔しようがない。前章では真底の憎悪対象だった王に奇妙すぎる友情を感じるまで。この凄まじい無軌道ぶりは逆にたどれば、いつも彼を駆り立てている憎悪感は彼の生まれに発し、もともとは部族の集落での疎外感に戻るが、その頃の少年の孤独さはむしろ幼稚なくらい、とりとめない気分だ。
だが読者にはむろん彼の出生の謎は知れているので、Visとしての彼の衝動――Lowlanderと意思疎通できないことも、性衝動を抑えられないこともその出生前の血に遡る。遡れは物語の発端になった、先代Storm Lordの発作的衝動に遡り、それはZastisに帰する。わたしは最初の頃の章を読みながら、メモに…「Zastisの設定いる?」と書き込んでいたりしてたが、ずっとZastisから来ていた。作者がどうしたらこんな刹那的で衝動的な書き方ができるのか、ちょっとわからないことだが、本人はいつもまるで無計画のように書いているというし……。
「凄い」とは漠然と思いながら、とりとめなさで、緻密に書き込まれた社会制度でもないし、惑星と衛星の天体論SFでもないし、小説の掴みどころがわからなかったみたいだった。リー作品のキャラの面白さと小説の勘所は掴み直したみたいだから、これから好きになれる。
今書いたとおり、自暴自棄で行き当たりばったりすぎるので、読者も「わけのわからない主人公」というか「キレる若者」みたいな認識で大方振り落とされるんだろう。わかりにくさの事情もわかった。
衝動的に走った結果が、やることなすこと裏目に出る、不条理ではなくて、星の象徴する運命に支配されている――というと、なにか原型のようなものを連想もするな。「不条理劇ではない」と今書いた。デビュー間もないリーの基礎というと、自分で書いているワイルドとシェイクスピアくらいしか知らない。それでいうとシェイクスピアのほう。マクベスか……マクベスではないかもしれないが、シェイクスピアではありそうだ。それもたった今まで想像しなかった。
10まで。