商人とウッソ・エヴィン
あるところに裕福な商人がいて、その娘は美人だった。娘は学校がおわると店先に立って商売を手伝い、街ではなかなかの評判だった。そこにウッソ・エヴィンが通りかかった。娘は不法居住者にも隔てなく接したので、ウッソもこの看板娘のことが好きになった。
そうこうするうちに街にベスパのモビルスーツがやってきて、街を焼き払いはじめた。街の者は皆なすすべなく逃げ惑っていた。そこでウッソは自分がベスパを追い払い、お礼には例の娘をお嫁にくれるよう人々に申し出た。父親の商人はリガ・ミリティアでもないウッソを信用しなかった。
ウッソは昼の間はカサレリアに身を潜め、夜になるとモビルスーツに乗って現れ、ベスパを散々に追い散らした。夜が明けてウッソは人々の前に姿を現し、約束の履行を求めたが、人々はウッソの乗っていたのが白いガンダムでなくシャッコーなのを見て罵った。
美人の看板娘も、年端もいかないウッソ相手に今度はそっぽを向いた。ウッソは憤慨しながらカサレリアに帰っていき、その前に、街の広場に大変な量の糞を残していった。そののち戻ってきたベスパは広場を清掃しながらギロチンを設置しなければならず、街の者とベスパをともに閉口させた。(地球。〇一七〇年頃)
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【ウッソ・エヴィン伝説】
ジン・ジャハナムに複数の影武者が存在したように、ビクトリー・ガンダムのパイロットであるウッソ・エヴィンにも複数人説・年齢や性別の諸説・虚構説などある。ウッソのプロフィールにかかわる正確な情報が乏しい理由は、一にはリガ・ミリティアの組織内に行われた極端な秘密主義がある。同組織のリーダー=真なるジン・ジャハナムさえ、ガンダムのパイロットを示す暗号名「UE」がウッソ・エヴィンを表すことを知らされなかった。
ザンスカール戦争後にリガ・ミリティアの組織は崩壊し、ウッソ・エヴィンの消息も途絶えた。間近にウッソに接した僅かな人々の証言と、厖大にのぼった噂による以外、後の時代にウッソの正確な人物像は掴めなくなっている。戦後さほどを経ない宇宙戦国期にはすでに無数の異説を生んでいた。
北ヨーロッパ地域に残るウッソ伝説はおおむね、ウッソを小柄で敏捷な子どもとして語る。ガンダムを駆ってベスパを翻弄する痛快冒険譚の少年ヒーローであるとともに、悪口毒舌を叩き、悪戯をくり返すティル・オイレンシュピーゲル型の主人公である。