このストーリー凄いな。どうもこのシリーズはリーの作品中ではそれほど人気は高くないみたいだが、それはThe Birthgraveの印象が鮮烈すぎて、それに似た趣があるせいで埋もれているだろうと思える。
いま、途切れ途切れに読み続けてはまだ半分ほどだったか。Raldnorの衝動的な行動ぶりは凄い。それも、その場その場ではいつもその動機になる憂悶・葛藤がありながら偶然、咄嗟にする嵐のような暴力として現れ、自分でも想像しなかったような状況に転がっていく、そのいつも、一歩間違えば死んでいただけだから後悔しようがない。前章では真底の憎悪対象だった王に奇妙すぎる友情を感じるまで。この凄まじい無軌道ぶりは逆にたどれば、いつも彼を駆り立てている憎悪感は彼の生まれに発し、もともとは部族の集落での疎外感に戻るが、その頃の少年の孤独さはむしろ幼稚なくらい、とりとめない気分だ。
だが読者にはむろん彼の出生の謎は知れているので、Visとしての彼の衝動――Lowlanderと意思疎通できないことも、性衝動を抑えられないこともその出生前の血に遡る。遡れは物語の発端になった、先代Storm Lordの発作的衝動に遡り、それはZastisに帰する。わたしは最初の頃の章を読みながら、メモに…「Zastisの設定いる?」と書き込んでいたりしてたが、ずっとZastisから来ていた。作者がどうしたらこんな刹那的で衝動的な書き方ができるのか、ちょっとわからないことだが、本人はいつもまるで無計画のように書いているというし……。
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「凄い」とは漠然と思いながら、とりとめなさで、緻密に書き込まれた社会制度でもないし、惑星と衛星の天体論SFでもないし、小説の掴みどころがわからなかったみたいだった。リー作品のキャラの面白さと小説の勘所は掴み直したみたいだから、これから好きになれる。
今書いたとおり、自暴自棄で行き当たりばったりすぎるので、読者も「わけのわからない主人公」というか「キレる若者」みたいな認識で大方振り落とされるんだろう。わかりにくさの事情もわかった。
衝動的に走った結果が、やることなすこと裏目に出る、不条理ではなくて、星の象徴する運命に支配されている――というと、なにか原型のようなものを連想もするな。「不条理劇ではない」と今書いた。デビュー間もないリーの基礎というと、自分で書いているワイルドとシェイクスピアくらいしか知らない。それでいうとシェイクスピアのほう。マクベスか……マクベスではないかもしれないが、シェイクスピアではありそうだ。それもたった今まで想像しなかった。