『言葉使い師』から「愛娘」SFマガジン82年3月号初出
話の落とし所のジョークは弱くて拍子抜けな気分で終わるが、それはあまり重要でない。女性についての話で、男はもういらないのかい、という幾分コミカルな苦笑的な男性目線をまじえる。
この短編の見どころはやはり、妻の姿形が急激に変化してからの、変容、変態というか脱皮するように生まれ変わるグロテスクな、妖しく魅惑的でもある経過の描き方だろう。
宇宙や、遺伝子のことを除けば、わたしは最近もリーのHunting the White Witch(1978)中でも「老女の若返り奇跡」シーンを読んだ。それは魔術だが、その場の人々はやはり畏怖に打たれながら、「やめてくれ、冒涜だ」と叫ぶ博士もいる。2020年代から読み返して、こういう「老女の全身が角質化し、ひび割れて、中から羽化するように美少女が現れる」イメージってそれほど冒涜的だろうか、おぞましさや驚きをまだ感じなければならないだろうか……のような連想で、思い出した。今は見慣れているようだ。
それとべつに、作中、宇宙で生まれた子はより宇宙に適応するだろう、との続きに「空間位置関係を把握する能力にすぐれているとかね」と触れているのは、1982年頃だとガンダムだろうか。わたしはその当時事情が確かめられなくて、この作品集を読み返すたび思っている気がする。神林作品にあんまりガンダムへの示唆言及は見当たらないと思うがアニメ文化にはちょくちょくある。
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