かとかの記憶

リーンの翼 / 59

162 コメント
views
59
katka_yg 2025/08/02 (土) 20:15:38 修正

「7 聖戦士」(旧)
「5 聖戦士の居場所」(新)の冒頭

迫水は前夜の戦いでガロウ・ランを六人斬った、人殺しの感覚がようやく蘇り始める。殺人体験についてはバイストン・ウェルで各シリーズにくり返すが、迫水の反芻する殺人の感覚は文章上でも生々しい(うどん粉)。

はっきりPTSDという問題になると、現在は一般書でも戦争の心理学に一ジャンルがあり、昨年までに瞥見なりとおさらいはした。そういうの読み聞き知るにつけ現代に基礎知識として知られておかれたい、不安はあるものの、わたしは富野作品の枠を出て紹介する気ない。70年代頃には小説界にテーマとして浮上しているらしいことは言ってる。1983年というのはそれでもかなり踏み込んでいると思われる。それを言えば、迫水とクリスの過程は比較するのに興味深いものだった。

その話のあと完全版は次のシーンへ移ってしまうが、旧版ではその夜、迫水は反復する殺人感覚を酒飲みに紛らしながら、アマルガンに対してこれまで聞かなかった事々を問いただす。半ば鬱憤をぶつける。

通報 ...
  • 60
    katka_yg 2025/08/02 (土) 20:26:52 修正 >> 59

    旧版7章の内容はかなり長いが、これまでのくり返しの内容も多く含むから省略になっているんだろう。部分部分はこの後の章に散らばっていくのかもしれない。再読なので、その箇所があれば気づく。

    アマルガンの素性を訊ねる。義賊アマルガン、という世間的な押し出しの裏に、アマルガンはアマルガンでまだ公開しない正体と思惑があるらしい。そのあと話が転じて、日本軍の「戦略」についての話が始まる。

    日本軍の話はこれまで、当時青年の精神的テンションを重点にしたが、ここでは、あの戦争をするにあたり戦争に勝つための戦略というものがあったかと、その責任は指導するインテリ層にあったのではないか。飛行機熱と血気に逸っても俯瞰的な視野を持てなかった青年が迫水であるは、くり返し。

    強剛な武人であるとともにその同じインテリ臭を感じさせるアマルガンという男に警戒心を抱く。また自らは生まれの素性も、インテリ的な気質も厭う節のあるアマルガンはリーンの翼を「力の象徴」として語る。旧版はここらでリーンの翼の意味が浮上してくるみたいだが、完全版では前倒しで点々とその言葉は聴いていたようだ。

    61

    酔っているところにゲリィ・ステンディが差し入れ。ゲリィが手にするカンテラは、虫籠に数十匹のホタルを詰めたもの。シリーズでこのホタルランプは、ダンバインに出ていなかったかな。またよく憶えていないけど。

    このホタルは実用品なのだが、文字で読むかぎりではなかなか風流な代物。海外ファンタジーだと、この種の生き物照明といえば「ツチボタル」(グローワーム)のほうが定番で、わたしはその出典を小説で見るごとに手元に収集していることがある。

    62
    katka_yg 2025/08/02 (土) 20:40:35 修正 >> 60

    近代までの剣客・剣豪の話にも、あたら達人でも初めて人を斬ったあとに、その夜、刺し身を食っていて嘔吐してしまい、それで再起も難しくなったのようなエピソードは点々とあり、古くから知られていないわけではない。

    それが社会問題になると認識されていなかった。古くには宗教が戦士達の心のダメージを補っていたらしいことも、それを研究テーマとして意識されているのもごく最近のようだ。