- アケローン民話
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緑フード
ウェスタやタナティアの山地の方にも多くの妖精の種族が住んでいたが、平地に暮らしている妖精と比べると概して人間に好意的ではなく、害意のある質 の悪い者らだった。国境近くの昔の砦跡にはしばしばそうした敵対的な妖精が住み、緑フードもその中の一種である。
これは名前の通り緑色のフードでいつも顔を隠している小人族で、崩れた城壁の下に一夜の宿を求める旅人を夜中に襲撃し、得物の大鉈か包丁を人の血で塗りたくるのを至上の喜びにしている、邪悪な生き物。集落に近づくときには、農作業や家事の手伝いをしてくれることもあるが、一つ場所を片付ける端からもう一方を散らかすという手合いで、家庭に幼い子供がいるときは、いつでも痛めつけて大怪我をさせようと狙っている。あと、機械部品をすり替えたりオイルに不純物を混ぜるのは常套手段で、プログラムにバグを紛れ込ませるのもきわめて狡猾だった。
この緑フードと草虫の一団が、夜中に村外れの草地をうろついているのは誰が見てもぞっとする光景である。そんな夜更けに、寝付かれない幼児のためにどこかの家の姉が歌う歌声が、かすかに聞こえてくると、
夜ふけて 丸くまどろむ 草くらげ 夢の野原に 走る葉ぎつね
妖精と妖精虫達はざわっと身をそよがせ、降る月の光と、風の間にまに姿を消していく。他愛のない童歌でも、韻を踏んでいるものは何でもこれら邪悪な妖精にとってはおぞましい恐怖の的だ。ただし、この世にはそれとは逆に韻文を好む妖精の仲間も少なくないので、依然として注意が必要である。