■決算説明
本決算説明資料の構成は、大きく3つのパートに分かれています。構成は前回同様、会社概要、決算概要、通期業績予想等の順に構成されています。
1点目は、会社・事業の概要です。こちらのパートは、基本的に前回と同じ内容を開示していますが、一部数値などは最新の情報に更新しています。当社は上場して間もないため、基本的な会社説明として、これらの内容を引き続き掲載しています。
2点目は、進行中の2025年6月期第3四半期の決算概要です。2024年12月中旬から、新型コロナとインフルエンザが同時に流行し、特にインフルエンザの感染が年末年始に急拡大した中で、当社の第3四半期累計期間の業績がどのように着地したかをご説明しています。
3点目は、2025年6月期の通期業績予想等についてです。第3四半期を終えた時点では通期績予想に対して順調に推移していますが、現時点では通期業績を正確に見通すことが難しく、2024年8月13日に開示した業績予想から変更していません。業績予想関連の他、株主還元方針から直近のトピックスまでを掲載しています。特に直近のトピックスとしては、今後のタウンズの成長に資するスタートアップ3社と資本業務提携を締結した旨を記載しております。
なお、中期経営計画につきましては、足元の事業環境を正確に見極めた上で、様々な取り組みを一貫した戦略としてまとめ上げ、2025年8月の本決算発表のタイミングに合わせて開示させていただきたいと考えております。
まず、会社・事業の概要をご説明します。
当社の創業は1987年で、創業者は現CEOの野中の父です。
本社兼工場の所在地は、静岡県の伊豆の国市です。その他の拠点として、静岡県清水町にR&Dセンター、日本橋に東京オフィスがあります。
当社は経営理念として、「体外診断用医薬品(IVD)により、人々の生活に、安心と潤いを届けること」を掲げています。IVD(In Vitro Diagnostics)とは、尿や血液など、人体から採取した検体を用いて、疾患の検査をする製品です。当社はそのIVDの中でも、POCT(Point of Care Testing)という「患者のそばで検査され、すぐに結果が出る製品」を主に扱っています。いわゆる抗原検査は、典型的なPOCTの一つです。
当社の沿革ですが、2001年に感染症抗原検査事業に参入したのち、お客様のニーズにお応えしながら、順次製品ラインナップを拡充して成長を続けてきました。
当社の主要製品は、新型コロナやインフルエンザ等の、感染症の抗原検査キットです。
こちらにお示ししているように、幅広い感染症項目をカバーしています。
当社の製品が、医療機関から幅広くご支持をいただいている背景として、「製品競争力」「開発体制」「販売体制」の3つの視点から、当社の競争優位性についてご説明します。
まず、当社の主力製品である抗原検査についてご説明します。
左側の図は、抗原検査キットの基本原理を示しています。
図(1)のパッド部には、抗体と、目印になる標識物とを結合した「標識抗体」が浸み込ませてあります。鼻や喉から採取した検体を、図(1)の「パット部」に滴下すると、検体中に含まれるウイルスなどの「抗原」が、パット部の「標識抗体」と、いわゆる抗原抗体反応により結合します。
よって、たとえばインフルエンザ検査キットであれば、インフルエンザウイルスという抗原に対してのみに、高い感度で結合する「抗体」に関する技術が、まずは重要となります。抗原も抗体も、極めて小さいミクロの世界ですが、標識抗体には目印となる「標識物」があらかじめ結合されています。この「標識物」により、ミクロの世界の抗原抗体反応が、「目視」できるようになります。
よってこの「標識物」も、抗原検査キットにおいて非常に重要な技術となります。滴下された検体は、毛細管現象により、図の右から左へと流れていきますが、もし検体中に標的の抗原が含まれていれば、図の(1)から(2)にかけて、「抗原-抗体-標識物」という3つが結合した状態が形成され、検体は図(3)の「判定ライン」へと流れていきます。
図(3)の「判定ライン」には、更に別の抗体が、ライン上に多数、固定されています。抗原を含む検体が図(3)に達すると、検体中の抗原がライン上に固定された抗体と結合し、「(固定された)抗体-抗原-抗体-標識物」という状態で、ライン上に数多くの標識物が集積します。一定時間経過後に、多数の標識物がライン上に集積することで判定ラインが目視で確認出来れば陽性、判定ラインが見えなければ陰性、と判断することができます。
これが抗原検査キットの原理です。
さて当社は、このような抗原検査キットのコア技術である、「抗体」と「標識物」に関して、それぞれ独自の強固な技術基盤を確立しています。
抗体に関しては、自社開発に加えて、資本提携先との共同開発を行い、感度と特異性を高い水準で両立した優れた抗体ライブラリーを確立しています。本年においては、抗原検査キットに広く使われているマウス由来の抗体に替えて、独自開発のウサギ由来の抗体を活用し、より高い感度を実現した新型コロナ検査キット「イムノエース(R) SARS-CoV-2 III」を、新たにローンチしています。
抗原検査キットの標識物としては、一般的には「金コロイド」という金の微粒子が使用されており、「金コロイド」は赤色の判定ラインを形成します。これに対し、当社が独自に開発した「白金-金コロイド」は、より視認性の高い黒色の判定ラインを形成し、当社キットの高い感度を支えています。当社はこのような技術基盤を活用して、品質の高い製品を供給しています。
続いて、当社の開発体制についてご説明します。当社はこれまで30年以上にわたり、抗原検査の研究開発に取り組んできました。長年の研究開発で蓄積された各種ノウハウと、様々な専門分野のベテラン研究員、更には社外の知見豊富な研究者との協力体制が、当社の高い技術力の源泉です。これらにより、抗体関連技術や「白金-金コロイド」技術などのコア技術の開発をしている他、結核などの抗酸菌検査の分野においては、「世界初」となる製品の開発実績を複数有しています。
次に、当社の販売体制についてご説明します。
当社の営業員は、10年以上の業界経験を有するベテランが中心です。少人数体制でありながら、主力製品で国内トップの市場シェアを獲得しており、営業チームの生産性は非常に高い水準といえます。
当社は、スズケン様をはじめとした卸業者を通して医療機関へキットを販売するため、卸業者との協力関係が販促のポイントになります。また当社は2022年より、塩野義製薬様と、当社製品の販売に関する協働を行っています。
ワクチンと治療薬を有する塩野義製薬様と、POCT製品を有する当社の協働により、「予防→診断→治療」まで、感染症対策を一気通貫で行うことができるようになりました。
当社は、塩野義製薬様の販売力を活用することで、国内感染症POCT市場における確固たる地位を確立したいと考えています。
2025年6月期第3四半期累計期間の業績についてご説明します。
当社の2025年6月期第3四半期累計期間の業績は、前年同期比で増収増益にて着地しました。売上高は、第1四半期終了時点では前年同期比で小幅に減収となっておりましたが、中間期間終了時点で同増収に転じ、第3四半期終了時点では増収幅を伸ばすことが出来ました。
また、粗利率の改善により各段階利益率は前年同期比で改善しています。この大きな要因はセールスミックスの変化であり、相対的に利益率の高い新型コロナ単品検査キット及びコンボ検査キットの売上高に占める割合が高まっております。新型コロナのみが流行している時期においては新型コロナ単品検査キットが主に用いられましたが、インフルエンザと新型コロナが同時流行している局面においては、医療機関においてコンボ検査キットの選択率が高まっているものと見受けられます。
減価償却費を含む販管費は、前年同期から特筆すべき大きな変化は無く、営業利益やEBITDAについても順調に進捗しております。
第3四半期累計期間における主要製品別の売上高を見ると、新型コロナ単品検査キットとコンボ検査キットにおいては前年同期比増収、インフルエンザ検査キットにおいては減収となりました。
第3四半期累計期間においては、新型コロナとインフルエンザのいずれも前年の流行規模を大きく下回りました。新型コロナについては、前年同期比で約4割流行規模が小さかったものの、当社は市場シェアを大きく伸長させることで前年同期を上回る販売数を確保しました。インフルエンザについても、第3四半期累計期間における流行規模は前年同期比で約5割小さいものとなりました。年末年始にかけて瞬間的に観測史上最大となるインフルエンザ流行が報道されたこともあり、当期はインフルエンザが大流行したとの印象があるかもしれません。
しかしながら、前期においては長期間インフルエンザが流行していたのに対して、当期は流行期間が短かったことから、累計としての流行規模は前期より小さくなったものです。かかる環境下において、当社はインフルエンザ検査キットの市場シェアを更に拡大させたものの、流行規模の縮小に加えて、検査キット需要の軸足がコンボ検査キットに移ったこともあり、補いきれずに減収となりました。コンボ検査キットについては一定のシェア向上を達成しており、医療機関においてコンボ検査キットの選択率が高まっている中で、しっかりと販売数を確保することができました。
こちらのスライドは前年同期比での売上高の増減要因を説明したものです。インフルエンザ検査キットの数量減少、各製品の単価下落によるマイナス影響がありながらも、新型コロナ単品検査キットのシェア向上による販売数量の増加、コンボ検査キットのマーケット拡大分の着実な取り込みで補って、増収となっています。
業績予想策定時においては、競争環境の変化から新型コロナ単品検査キット及びコンボ検査キットの販売単価を、前年通期実績に対して10%程度下落する想定としていましたが、当第3四半期の実績においてはそのような大きな低下は見られていません。
こちらのスライドは前年同期比で営業利益の増減要因をご説明したものです。
主要3製品の売上高増減については前述したとおりですが、前年同期と比較すると、より利益率の高い製品の売上構成比が増えたことによるセールスミックス要因も利益を下支えしました。
また新型コロナ単品検査キットにおいては、ウサギ抗体を使用した新製品の投入により、検査精度の向上と原価低減を両立させたことが、営業利益増に一定貢献しております。
こちらは四半期ごとの売上と営業利益の推移を一覧化したスライドです。季節性についてご質問いただくことが多いため、新たに設けました。
前期の第2四半期及び第3四半期においては、製品の供給制約により長期間にわたって出荷調整を余儀なくされたことから、結果として第1四半期が突出して大きな売上となりました。当期においては常に一定以上の在庫水準を維持したことから、出荷調整の期間を最小化し、第2四半期以降の需要拡大にもしっかりと対応できました。
在庫水準と四半期売上の関係性については、後述いたします。
こちらは第3四半期間における主要製品別の売上です。
コンボ検査キットの売上は前年同期比で大きく伸長し、全体の業績をけん引しました。長期間に渡る出荷調整を余儀なくされた前期と異なり、安定的な供給を維持したことが売上増に大きく寄与しております。
こちらは四半期末の在庫水準(金額ベース)と四半期売上高の関係性をお示しました。
前期においては、第1四半期の急激な需要拡大によって売上が急騰した反面、在庫水準が低下した為に第2四半期以降の需要に対応しきれずに長期間の出荷調整を余儀なくされました。これに対して、当期においては第2四半期以降も十分な在庫水準を維持しており、突発的な需要拡大にも対応できる状態を維持しております。
こちらは投資の状況です。
2025年6月期の固定資産投資額は総額で約70億円を予定しており、内訳としては前期においても計上した三島の新工場に関する設備投資に加え、ERPなどのIT投資、新工場稼働までの増産投資、神島工場の新倉庫建設、R&D関連などを想定しています。
研究開発費については、次世代POCT技術の「デジタルイムノアッセイ」の研究開発などに伴う費用の増加が主要因ですが、その他にも新抗体開発にかかる費用や、開発本部の全体的な体制強化による人件費増加などを含んでおります。
こちらは貸借対照表の前期末及び前年同期末時点との比較です。
長期借入金と有形固定資産の増加は、主に新工場への設備投資にかかるものです。
また、投資その他の資産は株式会社KINSとCraif株式会社への投資等により増加しております。
ここからは、2025年6月期の業績予想についてご説明します。
こちらの図は、新型コロナとインフルエンザの流行状況を示す、定点当たり報告数の推移です。新型コロナは、23年5月の5類移行後においても、流行規模としては拡大と縮小を繰り返しつつも、インフルエンザでいうところの「流行期入り」の目安となる、定点数1を常に上回って推移しています。
2025年6月期第3四半期においては、新型コロナとインフルエンザのいずれも流行規模が前年同期を大きく下回りました。
こちらは、国内の医療機関向けの、主要な感染症抗原検査キットの市場規模の推移です。
いわゆるコロナ禍の前は、青いボックスのインフルエンザを中心に、年間30百万テスト前後の抗原検査がなされていました。
コロナ禍を経て、オレンジの新型コロナや、薄いオレンジの新型コロナとインフルエンザのコンボ検査キットが加わったことで、足元の市場規模は年間75百万テストと、コロナ前と比べて大きく成長しています。
特に、新型コロナとインフルエンザのコンボ検査キットの市場規模が急成長しています。
これらを踏まえ、期初に策定した当社の2025年6月期業績予想の前提として、抗原検査キットの市場規模について、基本的には2024年6月期と同等程度を想定しています。
そのうえで、2024年6月期における長期間の出荷調整への反省を踏まえ、需要の旺盛なコンボ検査キットを中心に供給体制を更に強化し、市場シェアを拡大することを目指しています。
こちらは、当社主要製品の、足元の国内市場シェアです。
当社はこれまで継続的に市場シェアを拡大しており、2024年6月期においては、新型コロナ単品検査キット、インフルエンザ単品検査キット、アデノウイルス検査キット等の主要製品において、国内トップのシェアを有していました。足元においても、それらの主要製品が国内トップのシェアを維持しており、新型コロナ単品検査キット、インフルエンザ単品検査キットについてはさらにシェアを伸ばすことができました。
当社の短期的な成長ドライバーの一つとして、相対的にシェアの低いコンボ検査キットのシェア拡大を掲げておりますが、未だ途上にあります。今後はウサギ抗体を使用した改良製品の投入や、ロシュ・ダイアグノスティックス社とのコ・マーケなどによる巻き返しを図っております。
こちらは、2025年6月期の業績予想数値ですが、2024年6月期決算説明資料で開示したものを再掲しています。
第4四半期の業績は次回の新型コロナの流行開始時期に大きく左右されるものの、現時点ではその流行開始時期や流行水準を正確に見通すことが難しいことから、業績予想を据え置きました。今後、見通しが立った際に修正が必要と判断した場合には、速やかに開示いたします。
こちらは、株主還元の方針についてご説明したものですが、2024年6月期決算説明資料から再掲したものであり、株主還元の方針は据え置いております。
当社は配当性向30%程度を目安として、安定的・継続的な利益還元を実施していく方針ですが、2025年6月期はグループ再編後の当社設立から10期目を迎えることから、記念として1株当たり10円の記念配当を実施する予定です。
これにより、2025年6月期が業績予想どおりに推移した場合には、記念配当込みで増配の形で、株主の皆様へ利益を還元できるものと考えています。
こちらは、直近のトピックスとして資本業務提携先3社について、実行順にご紹介しています。いずれもプレスリリースにて開示しているとおりですが、当社が既存の感染症領域から事業ドメインを拡大するために、戦略的に重要な投資として実行しました。
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20250514/140120250514549929.pdf