3年前後に米国の債務危機」
米大手ヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオ氏は、2026年8月21日に自身のSubstackで、米国の財政と国債市場に警鐘を鳴らしました。
問題の中心にあるのは、毎年の財政赤字だけではありません。過去に発行した国債が次々と満期を迎え、その借り換えのためにも巨額の資金を集め続けなければならないことです。
赤字の穴埋めと国債の借り換え
ダリオ氏の概算では、米政府の年間収入は約5.5兆ドル、支出は約7.5兆ドルです。支出のうち約1兆ドルは国債の利払いで、収入との差額である約2兆ドルを新たな借り入れなどで賄う必要があります。これとは別に、満期を迎える国債の元本が約10兆ドルに上るとしています。
満期を迎えた国債は、政府が保有者に元本を返さなければなりません。その資金を用意する一般的な方法が、新しい国債を発行して得たお金で古い国債を返す「借り換え」です。
米政府は、新たな国債を発行して約2兆ドルの財政赤字を埋めるだけでなく、満期を迎える約10兆ドルの国債も借り換えなければなりません。ダリオ氏が懸念しているのは、これほど多くの国債を、投資家が今後も買い続けてくれるかどうかです。
国債の買い手が足りなくなると
国債の発行額に対して買い手が不足すれば、政府は投資家を集めるために、より高い金利を提示する必要が生じます。すると、借り換え後の国債の利払いが増え、財政をさらに圧迫しかねません。
ダリオ氏が警戒するもう一つの経路は、金利上昇や国債市場の混乱を抑えるため、中央銀行が大量の国債を買い入れることです。そうなれば通貨の価値が下がり、国債が額面どおり返済されても、受け取るお金の購買力が落ちる可能性があると論じています。
ダリオ氏は、日本をその具体例に挙げています。同氏の試算では、2013年から日本国債を保有した場合の投資成果は、同じ期間に金を保有した場合と比べて76%低く、金を基準にすると約24%にとどまります。国債の額面が76%減ったわけではありません。国債が円建てで元本どおり返済されても、金と比べれば資産価値が大きく目減りし得る、という指摘です。
「3年程度」は条件付きの予想
ダリオ氏は、現在の進路を変えなければ、債務危機が「3年程度、前後2年」で起こり得ると予想しています。「今後3年以内に必ず危機が来る」という意味ではありません。政策や景気、戦争などによって時期は前後し、適切に対処すれば危機を避けられる可能性にも触れています。
対策として挙げているのは、歳出削減、税収増、金利低下を組み合わせ、財政赤字を国内総生産(GDP)の約3%まで縮めることです。ただし、中央銀行に無理に金利を下げさせるべきだとは述べていません。財政運営を改善し、国債への信頼を保つことが重要だという考えです。
金と少額のビットコインを勧める理由
投資家に対してダリオ氏は、債券をすべて売るのではなく、債券などの債務資産の比率を低めにし、資産の種類や投資先の国を分散するよう勧めています。
そのうえで、金を資産の10~15%程度保有することは、ポートフォリオのリスクを抑える助けになるとの見方を示しました。ビットコインについても少額の保有に言及していますが、具体的な比率は示していません。
ダリオ氏は、債務と財政赤字の問題は米国に限らず、日本、英国、EU、中国にもあるとみています。特定の国の通貨や国債だけに資産を集中させない――これが投資に関する助言の要点です。
今回の文章は、危機が起きる日を予言したものではありません。財政赤字を埋める資金と、満期を迎える国債を借り換える資金。その両方を、今後も誰が、どの金利で提供するのか。ダリオ氏はそこに米国の債務問題の核心を見ています。