かとかの記憶

富野由悠季 周回 / 126

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katka_yg 2025/04/14 (月) 23:02:04 修正

ダンサーのアベニール

17章のダンサーの話は面白い。ここでは、上のヘイヤーガンの記事で一回まとめたけど『Vガンダム』と『アベニール』は続きで読み合わせてみるといいな。

その、当のダンサーの人物素性がまた読者には全然わからず、出会った当初はテレパシー的感応のことは覚えがないと言っていたのに、何故か一行に付いてきて後には当り前のように人の心を透視している。何でも知っているようだが…? 分かっていることは、オノレやアケモよりは歳上だけどフール・ケアよりは下、北欧系、かわいい。

ダンサーのキャラを作中で一言で表しているのは「へらず口」。饒舌多弁かつ支離滅裂で誰にでも食ってかかって負けん気でいたフール・ケアを切り刻んで退散させてしまう。わたしはこのたび通読で、宇宙世紀のへらず口ヒロインにセシリーを挙げてもいたけど(まだ言うか!!)、ストリップダンサーとセシリーを較べようとはこれまで思わなかった。セシリーにはそれに「聞き上手」という美徳があった。

ダンサーの経歴はオノレが少しだけ推測するが、わかることは、恐ろしく感受性が鋭い。その場にインティパ効果がなくても、フール・ケアの痛い所は彼女を観察するだけで暴いたのだろうと思う。そのうえで人の気持ちに斟酌しないのか……というよりは、ダンサー自身の裏表のない生きぶりからか、心の弱みを隠そうとしているやつが嫌い、弱いやつには容赦しない。フール・ケアの人格はこれまで散々分析されてきてしまった。具体的な過去は決して語ろうとしないが、これらは終章に響いていくんだろうと思う。

ダンサーは見た目と裏腹にあまりに教養的なキャラで、巡礼小説の人物みたいに思える。――そもそも『アベニールをさがして』というタイトルから天路歴程みたいな響きだ――こういうところが一部のガノタ読者には「つまらない」と書かれる所以だろう。わたしは今の話であらためてこの娘に興味がわいた。30年前の絶版だし、誰もいらないならダンサーはわたしがもらっておく。えっちだし。

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