かとかの記憶

富野由悠季 周回 / 186

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katka_yg 2025/05/07 (水) 22:14:25 修正

ガーゼィの翼4読了。なんだかわたしの記憶ほどその印象のところが見当たらないが、

「……(前略)そうだ、ローマ時代の戦車をつくってみたけど、このていどの技術なら本格的に利用させてもいいよな?」
『いいんじゃないかな? 醤油と味噌の作り方は、勉強してみる』

――こういうところかな。両世界の二人のクリスが交信している。本当は、ここはストーリー中で切実な場面なのだけど、このすぐ前には、心身も参っているバイストン・ウェルのクリスから、

「そっちのものを、こちらに運ぶ方法だ。鉄砲でも機関銃でも送って欲しい」
『……!? 生き死にの問題だからって、次元のちがいを無視して、物を送り込むのは、良くないだろう?』

地上界日本のクリスがどうしてそういうモラル(規範)を持っているのかの理由は、ガーゼィの作中エピソードにはとくにない。生きるか死ぬかだから何でもやってやれだ!とはクリスは考えず、むやみに世界の境界を侵してはだめなんじゃないか、だめだろう、とはこの世界に来て最初の巻から考えている。『ガーゼィ』では地上人はクリス一人だし、そのクリスが地上文明の導入にあらかじめ自制的なせいで、物語中ではマシン増殖もオーラ壊乱も起こらない。

わたしは読み返すと、『あらかじめバイストン・ウェル攻略法を読んでいて完封しにきている』みたいな感触をおぼえるんだ。

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    katka_yg 2025/05/07 (水) 22:32:34 修正 >> 186

    これはクリスが、コンピュータゲームや映画や、アニメや漫画に触れて1990年代の少年少女はあたりまえにそういうシチュエーションに馴染んでいるから、だろう。80年代のジョクにも、当時の映画やSF小説くらいの情報源はあり、戦国自衛隊くらいはもともと知ってただろうけど、ジョクやショットがオーラマシンと世界の関係に気づくのは彼らの長い考察を経ての結果。

    迫水当時、迫水がコモン界で機関砲を目にして「こんなことは許されん」と悲憤慷慨するのは、間近に血みどろの惨劇を味わった結果だった。

    こういう話題ではル・グインが恰好の例なので文化制限法の話題を昨夜立てていた。『ガーゼィ』のこの巻では、ザギゾアがゲルゴーグ・アジの態度をみて、アシガバの武者の考え方も変化している、ガーゼィの騎士の影響で変わった、とか、ガーゼィの軍に対応するために騎兵隊に新しい戦い方をさせている。クリスにその自覚はないだろうがハイン人のモラルだったらすでに許されない。
    富野由悠季がル・グインの熱心なフォロワーなんかだったとはわたしは思わないし、富野由悠季は自作のバイストン・ウェルの続きで書いているから多分こうだ。

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    katka_yg 2025/05/07 (水) 23:17:35 修正 >> 187

    katkaさんの感想・レビュー
    katkaさんの富野由悠季『バイストン・ウェル物語 ガーゼィの翼 4 (ログアウト冒険文庫)』についてのレビュー:現代...
    Booklog

    前の巻では抗生物質についても、バイストン・ウェルで抗生物質を求めることに躊躇している。耐性菌の問題とか今いっとる場合か、のような場合でもあるが、便利だからってこっちのものを何でも持ちこむのはやっぱりやばいよ……という、環境保護思想というより、文化的な合意というのかな、世代としてそれがすでにクリスにはある。

    かんがえてみれば、先日の『勇魚』のレビューにそれを書いたばかりだったし、今週の読書は案外たしになっていたのか。

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    katka_yg (@ygasea.bsky.social)
    二人のクリス同士で会話しているんだから「二重人格」はいうまでもない。それにさらに、ガーゼィの翼か、日本武尊か、メトメウス族の総意のような意思がはたらくんだから「ぼくは何なんだろう??」と心が破裂しないクリスはむしろ強靭な精神かもしれなかった。 結果としてアフランシよりは強靭なんだけど……やはり人間離れしたところが多い
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