フェラリオのような少年
サイド七にある連邦軍の基地に、十七歳くらいの男の子が連れられてきた。カミーユ・ビダンという名まえがフェラリオに似ていたので逮捕されたのである。少年の住む地区では美貌で知られ、学校でも優秀な有名な子だった。尋問のあいだ、上品に大人しく座っているだけで人を胸騒ぐような気持ちにさせるカミーユの物腰に憲兵も落ち着かず、容疑は不問にして早く帰してしまおうと思っていた。
そこに、基地で研究中のガンダムが酔った足取りで倒れ込んできた。軍の人々は、大型のガンダムがまるで飼い主にじゃれつく猫のようにカミーユのまえにひざまずき、自分からコクピットを開くのを見た。少年を懐に抱き入れたガンダムは官能におののくようしばらく震え、立ち上がると、
ジオン軍のアーガマに着くと、カミーユを迎え入れたその船の船長や、砲手や、甲板の水夫たちも次第に不思議な気分をおぼえるようになった。そこにカミーユがぼうっと立っているだけで男女の士官達の関係も乱れていくかのような、軍事作戦中に士気への影響を察したのはもと連邦軍のエマ・シーン中尉だけだった。中尉はカミーユを船内の人けのない通路に連れていき、壁際に押しやって厳しく問い詰めようとした。そんなにされても、少年はきらりと濡れる目で中尉を見、微笑んでいた。
(このこは危険だ)
思っても、その笑顔を向けられるともう駄目な自分を、自覚して、反射的に引っぱたく。
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