Prince on a White Horse (Tanith Lee, 1982 白馬の王子)について。
わたしの読んでいる電子書籍ではこの作品はThe Castle of Darkと一緒で一冊になっている。
わたしは前回Anackireを読了後、予定通りにこちらを開いたのだけどその日にStoryteller: A Tanith Lee Tribute Anthologyも読み始めてしまい、こちらは開いたきり一文字もみずに数日がすぎた。その間、久美沙織『あけめやみ とじめやみ』を半分ほど読んでみたりしている。
そんなわけで、ル・グイン、∀ガンダム、古川日出男、その他と併読を一巡して本作The Castle of Darkをあらためて読み始めると、読んで最初の一段落目でもうほのぼのしてくるというか、ここに帰ってきた感じ。
タニス・リーの文章だが、この第一文であっという間に読者を掴んでしまうのはなんだろうな? いつもそういうわけではないが、ここは一見して、――though who? ――though whose? ――though why? とくり返し、軽いジョークで切り上げてしまうユーモア、とは言える。ユーモアは可笑しさ、笑い、ではなく、ひとまず心地よくないか。
本作はわたしは邦訳(訳:井辻朱美)で二回読んでいる。前回は二年前。今は英語だが、原文と訳文の対照などはこの際あまり気にせずに読みたい。すると進まないから。
"Then you can talk!" cried the Prince delightedly. "Of course I can't," said the horse. "Whoever heard of a horse talking?" "Oh," said the Prince.
不誠実な語りだ。昨夜もその話をしていたばかりだった(1 / 2)。和歌を作るとき等は近頃はいつもそれを考えている、とも。それはわたしの興味事情で、あまり他人に流布するようなことではないが。この小説の中では妄想で進むのだっけ。
しばらく中断していた。いま3。中断というか、時々開いて数行読んでまた閉じるくり返しで、キッチンでパスタを茹でながら二、三段落読み、火を止めたらまた翌日まで本も閉じるような軽い気分。もっとも、これでは読み進まない。
Among the maidens walked the most beautiful girl the Prince had ever seen. At least, the most beautiful he could ever remember seeing.
どういう意味だろうとふと思った。この時には王子の念頭に誰かのことはすっかり消えてなかったような言い方かな。王子には過去の記憶がないし、他に女の子に会っていないが、ゲメルの容姿についてはここまで美しいともなんとも書いてない。
邦訳があるので見たが『乙女たちの中には、王子が見たこともないほど美しい娘が一人いた』とだけで続く文は訳されずに飛ばしてある。前回の闇の城、幻魔の虜囚もだが、既訳が気になって求めるとその箇所飛ばしてあることがわりとたびたびある……が、それはリー作品にかぎることではない。
「美少女」ととくに文中で書かなければ実は美少女でなかったわけではない、という小説の書き方をタニス・リーはしょっちゅうするので注意が必要かもしれない。ここはそこまではどうかな……。この電子書籍にカップリングのThe Castle of Darkがまずそれという指摘はできる。
"You were special." "Oh, was I?" asked the Prince, thawing slightly. "Yes," said Gemeael, "though I don't know why." And so saying, she disappeared.
今読み返すと「冬物語」のオアイーヴみたいでもある。
タニス・リー作品の、とくにジュブナイルによくするツンデレ的表現には要注意だとは思っていたけど。 Shon the Taken(死霊の都)は今回飛ばして次へ行こうと思っていたけど、あの作中の少女(サイッダ)の書かれ方も再び気になってきたかな。女の子の気持ちが素直になれない…ではなくて、小説の語り手が素直に「可愛い」と書いてくれない。いじわるな作者。
本当は美少女なこと(私は綺麗?)と、それとまた少女の自意識、「真の名前」とか「顔」(仮面)にまつわるファンタジーの要素は切り離せないし、ジュブナイルにかぎらずバースグレイブからもそう。わかりやすく名前や顔と言わないだけではないのか。
少なくとも、作者がその語りを熱烈に楽しんでしていることは分かる。
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わたしの読んでいる電子書籍ではこの作品はThe Castle of Darkと一緒で一冊になっている。
わたしは前回Anackireを読了後、予定通りにこちらを開いたのだけどその日にStoryteller: A Tanith Lee Tribute Anthologyも読み始めてしまい、こちらは開いたきり一文字もみずに数日がすぎた。その間、久美沙織『あけめやみ とじめやみ』を半分ほど読んでみたりしている。
そんなわけで、ル・グイン、∀ガンダム、古川日出男、その他と併読を一巡して本作The Castle of Darkをあらためて読み始めると、読んで最初の一段落目でもうほのぼのしてくるというか、ここに帰ってきた感じ。
タニス・リーの文章だが、この第一文であっという間に読者を掴んでしまうのはなんだろうな? いつもそういうわけではないが、ここは一見して、――though who? ――though whose? ――though why? とくり返し、軽いジョークで切り上げてしまうユーモア、とは言える。ユーモアは可笑しさ、笑い、ではなく、ひとまず心地よくないか。
本作はわたしは邦訳(訳:井辻朱美)で二回読んでいる。前回は二年前。今は英語だが、原文と訳文の対照などはこの際あまり気にせずに読みたい。すると進まないから。
不誠実な語りだ。昨夜もその話をしていたばかりだった(1 / 2)。和歌を作るとき等は近頃はいつもそれを考えている、とも。それはわたしの興味事情で、あまり他人に流布するようなことではないが。この小説の中では妄想で進むのだっけ。
しばらく中断していた。いま3。中断というか、時々開いて数行読んでまた閉じるくり返しで、キッチンでパスタを茹でながら二、三段落読み、火を止めたらまた翌日まで本も閉じるような軽い気分。もっとも、これでは読み進まない。
どういう意味だろうとふと思った。この時には王子の念頭に誰かのことはすっかり消えてなかったような言い方かな。王子には過去の記憶がないし、他に女の子に会っていないが、ゲメルの容姿についてはここまで美しいともなんとも書いてない。
邦訳があるので見たが『乙女たちの中には、王子が見たこともないほど美しい娘が一人いた』とだけで続く文は訳されずに飛ばしてある。前回の闇の城、幻魔の虜囚もだが、既訳が気になって求めるとその箇所飛ばしてあることがわりとたびたびある……が、それはリー作品にかぎることではない。
「美少女」ととくに文中で書かなければ実は美少女でなかったわけではない、という小説の書き方をタニス・リーはしょっちゅうするので注意が必要かもしれない。ここはそこまではどうかな……。この電子書籍にカップリングのThe Castle of Darkがまずそれという指摘はできる。
今読み返すと「冬物語」のオアイーヴみたいでもある。
タニス・リー作品の、とくにジュブナイルによくするツンデレ的表現には要注意だとは思っていたけど。
Shon the Taken(死霊の都)は今回飛ばして次へ行こうと思っていたけど、あの作中の少女(サイッダ)の書かれ方も再び気になってきたかな。女の子の気持ちが素直になれない…ではなくて、小説の語り手が素直に「可愛い」と書いてくれない。いじわるな作者。
本当は美少女なこと(私は綺麗?)と、それとまた少女の自意識、「真の名前」とか「顔」(仮面)にまつわるファンタジーの要素は切り離せないし、ジュブナイルにかぎらずバースグレイブからもそう。わかりやすく名前や顔と言わないだけではないのか。
少なくとも、作者がその語りを熱烈に楽しんでしていることは分かる。