かとかの記憶

Prince on a White Horse

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Prince on a White Horse (Tanith Lee, 1982 白馬の王子)について。

katka_yg
作成: 2025/12/22 (月) 00:30:41
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わたしの読んでいる電子書籍ではこの作品はThe Castle of Darkと一緒で一冊になっている。

わたしは前回Anackireを読了後、予定通りにこちらを開いたのだけどその日にStoryteller: A Tanith Lee Tribute Anthologyも読み始めてしまい、こちらは開いたきり一文字もみずに数日がすぎた。その間、久美沙織『あけめやみ とじめやみ』を半分ほど読んでみたりしている。

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katka_yg 2025/12/24 (水) 21:22:35 修正 >> 1

そんなわけで、ル・グイン∀ガンダム、古川日出男、その他と併読を一巡して本作The Castle of Darkをあらためて読み始めると、読んで最初の一段落目でもうほのぼのしてくるというか、ここに帰ってきた感じ。

タニス・リーの文章だが、この第一文であっという間に読者を掴んでしまうのはなんだろうな? いつもそういうわけではないが、ここは一見して、――though who? ――though whose? ――though why? とくり返し、軽いジョークで切り上げてしまうユーモア、とは言える。ユーモアは可笑しさ、笑い、ではなく、ひとまず心地よくないか。

本作はわたしは邦訳(訳:井辻朱美)で二回読んでいる。前回は二年前。今は英語だが、原文と訳文の対照などはこの際あまり気にせずに読みたい。すると進まないから。

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katka_yg 2025/12/24 (水) 22:23:11 修正

"Then you can talk!" cried the Prince delightedly.
"Of course I can't," said the horse. "Whoever heard of a horse talking?"
"Oh," said the Prince.

不誠実な語りだ。昨夜もその話をしていたばかりだった(1 / 2)。和歌を作るとき等は近頃はいつもそれを考えている、とも。それはわたしの興味事情で、あまり他人に流布するようなことではないが。この小説の中では妄想で進むのだっけ。

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しばらく中断していた。いま3。中断というか、時々開いて数行読んでまた閉じるくり返しで、キッチンでパスタを茹でながら二、三段落読み、火を止めたらまた翌日まで本も閉じるような軽い気分。もっとも、これでは読み進まない。

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katka_yg 2026/01/02 (金) 22:02:06 修正 >> 4

Among the maidens walked the most beautiful girl the Prince had ever seen. At least, the most beautiful he could ever remember seeing.

どういう意味だろうとふと思った。この時には王子の念頭に誰かのことはすっかり消えてなかったような言い方かな。王子には過去の記憶がないし、他に女の子に会っていないが、ゲメルの容姿についてはここまで美しいともなんとも書いてない。

邦訳があるので見たが『乙女たちの中には、王子が見たこともないほど美しい娘が一人いた』とだけで続く文は訳されずに飛ばしてある。前回の闇の城、幻魔の虜囚もだが、既訳が気になって求めるとその箇所飛ばしてあることがわりとたびたびある……が、それはリー作品にかぎることではない。

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katka_yg 2026/01/02 (金) 22:06:02 修正 >> 5

「美少女」ととくに文中で書かなければ実は美少女でなかったわけではない、という小説の書き方をタニス・リーはしょっちゅうするので注意が必要かもしれない。ここはそこまではどうかな……。この電子書籍にカップリングのThe Castle of Darkがまずそれという指摘はできる。

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katka_yg 2026/01/08 (木) 16:51:05 修正 >> 5

"You were special."
"Oh, was I?" asked the Prince, thawing slightly.
"Yes," said Gemeael, "though I don't know why."
And so saying, she disappeared.

今読み返すと「冬物語」のオアイーヴみたいでもある。

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katka_yg 2026/01/08 (木) 17:42:07 修正

タニス・リー作品の、とくにジュブナイルによくするツンデレ的表現には要注意だとは思っていたけど。
Shon the Taken(死霊の都)は今回飛ばして次へ行こうと思っていたけど、あの作中の少女(サイッダ)の書かれ方も再び気になってきたかな。女の子の気持ちが素直になれない…ではなくて、小説の語り手が素直に「可愛い」と書いてくれない。いじわるな作者。

本当は美少女なこと(私は綺麗?)と、それとまた少女の自意識、「真の名前」とか「顔」(仮面)にまつわるファンタジーの要素は切り離せないし、ジュブナイルにかぎらずバースグレイブからもそう。わかりやすく名前や顔と言わないだけではないのか。

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少なくとも、作者がその語りを熱烈に楽しんでしていることは分かる。

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katka_yg 2026/01/14 (水) 18:17:35 修正

言いを含める

廃墟に二匹のdrumbilだけが残り佇んでいるところ、そこに姿隠しの魔法のかかった一行が通る間、

They snarled and rolled their eyes at the sky, but didn't seem to see the Prince and his companions, which was no doubt just as well.

which was 以下のニュアンスは訳していないみたい。井辻訳を全文対照しているわけではなくて、日本語だとどういうの……と少し気になっただけ。上の「美少女かどうか」なども連想したけど、タニス・リーの「魔法の書き方」の一法なんじゃないか。

「ストーリーの語りと魔法の発動」が全く切り離せないことが一点。物語と無関係に魔法は存在しない。プラグマティックな魔法というその言い方かもしれない。あとは、Volkhavaarのときに、もしかしたら底本の版の違いかもしれない箇所もあったけど、ここはそうではないとは思う。

物語上でそんなに重要な箇所とは思わないが、「言い方」をどう含ませるか表現を想像すると今は気になる。同様のツッコミを作中で王子がいちいち入れているので、それもはっきり訳すとくどいのかもしれない。

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katka_yg 2026/01/14 (水) 18:29:32 修正 >> 10

この直前にもある "Boiling-oil, vats of venom," のような言葉遊びというか、呪詛めいた韻を訳せないことはわかる。それも、短い文ならダジャレのような訳語を作ってもいいと思うけど、原文がそのつもりでもないのにかえって諧謔っぽさか、可笑しさを押してしまうとは思うので、あえて音韻まで訳さないでいいという判断は翻訳の際にあると思う。

井辻先生は翻訳以外に「ファンタジー作品の魔法の使い方の歴史」をテーマに研究されているから、こういう場合どうかと逐一訊ねてみたい気がする。それはまだ井辻著書を近年のものまで追えていないけど、本の案内の目次だけは予習していたりして、……何かありそうだ。

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katka_yg 2026/01/14 (水) 18:45:58 修正 >> 10

魔法が効いたのだ」とその瞬間にいう場合に加え、「効かなければ大変なことになっていた」と追って言い含める場合でも魔法が成立する。それを知っているとスリリングじゃないか。

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9まで。

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この間、イデオンからの一連ですぎやまこういち/ドラゴンクエストの音楽を聴き返しているうち、「ドラゴンクエストⅥ」はこの「白馬の王子」と似ている、共通する要素があるような話をした。

イデオン~ドラゴンクエスト 交響英雄詩
すぎやまこういちリスニングから
posfie

Ⅵの作中でも記憶喪失の主人公は「白馬の王子」と言われていないことはないし。あと未来の卵、とか。それは、ファンタジーの範型をなぞれば何にでも何だって言えるかもしれないが、久美沙織作品については直接関係がなくもなく思える。

小説作品を読みながら音楽作品の連想を捜していることでもあり、「タニス・リー→すぎやまこういち(ドラクエⅥ)」は今回、ちょっとありかも。

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ゲメルとゲマントには幼い頃からテレパシー的な絆がある。親密な兄妹や子供達のその関係はちょうどこの間までのVisシリーズでも重要な要素でAnackireとは本作は執筆年も一年前後だ。

その幼少時のエピソードを語った上、今そのゲメルの危機を感じるようだ、どうしたらいい…?と言ってるのに、

"Think about something else?" suggested the Prince.

とはまた身も蓋もない。KesarhとVal Nardiaにそれいうのか。

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katka_yg 2026/01/15 (木) 15:24:52 修正

11まで。なんだか猫っぽい木=蛇について。

かとかの記憶
katka_yg 2026/02/09 (月) 15:18:30 修正

白馬の王子 (Prince on a White Horse)』(1982) 沼地の魔女のところで切り倒した木々が合体して発生してしまった巨大な蛇のようなクリーチャーは、撫でてやるとごろごろ喉を鳴らして(purr)喜び、人にじゃれつく様子はどうも猫みたいである。

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魔女のしきりに口走る狂語は、もともと狂ってるものを「どういう意味か」と考えることに意味がない。英語の言葉遊びは日本語にするなら自由訳になるだろうと思う。

そもそも作者のリーが書いた時点で、作者以外にわかりそうにない身近にあるものの他愛のない連想で書いてると思う。引用元、など分かりようがない。面白いのは、身動きできなくなった王子の両眼を覗きこんで、

"Your eyes seem all right to me young man. Two ounces of Rend-fangs at the double!!"

2オンスというのはこの前の「ウナギの唾」と同じように、魔女が蒐めている謎の魔法薬の材料としてのイメージだろうと思い、王子の両目のことをそれも二倍量/おおいそがし!と呼んでいて、Rend-fangsは魔女が何を呼んでいるのかよくわからないが、きょろきょろする青い眼玉を「山猫」と訳す理由はわからなくもない。それが2オンスなのは、目分量だろう。

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Grey Magic

Grey Magicの使い方について驚くほどざっくばらんに語ってある。読者は普通ありふれたメルヘンの設定として読み飛ばすんじゃないか。

"All of us who learn spells know how to work Grey Magic. It's the magic you call up when you stop wanting ever to do anything for anyone else―because you care only for yourself and what you can getfor yourself, and it helps you."

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ここのポイントは、こんな良いことを言っているゲメル本人はやたら横柄で辛辣な態度で、彼女自身がそれほど模範的な魔法使いには見えない、という点だな。もしも、見るからに善意に満ちて聖少女みたいな娘がこんな話を説いたら鼻持ちならなくて聞くに耐えないだろう。

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katka_yg 2026/01/15 (木) 20:12:45 修正

わたしは上のような魔術観(文学観)を読み返すにつけ、古典では『カレワラ』を思い出す。岩波文庫の邦訳でしか知らないが。トールキンなどを思い出したりはしない。ところが、トールキンはカレワラ研究もしているので、そのうちあらためてトールキンも読み返さないと……と思っているようなところ。本は積んでる。

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カレワラはその原型がいつ頃のものかの色々と説があっても、普及したのはおおむね19世紀半ばの作品だと思ってる。古代からの神話・宗教については、そのトピックでもあらためて追う。

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イソームの広間のシャンデリアは前章では緑色のコガネムシを光源にしていたが、14章ではツチボタルで光っているらしい。

ファンタジーに登場する「土ぼたるランプ」について、または昆虫光源について、最近では読んだときに逐一手許にメモしている。今は読書が決まった作者に偏っているから出例がそんなに豊富でもないが、折角ファンタジーを読んでいるから。

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katka_yg 2026/01/16 (金) 00:20:12 修正

Gemaelはゲメルと訳されているけど「ジェマイル」のように発音するんじゃないだろうか。今更か。

そもそも異世界なので、アルファベットで表記しているからといって現実世界の習慣に合わせなくてもよいのはどの作品についても同じ、英字綴りに「音写」はしているつもり。正しいところは分かりはしないのだけど、カタカナにするなら最初の訳者に決定権があるのも通例。

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「ズュ」みたいな表記をされるのは、わたしは長い目で見ればあまり好ましいとは思ってないのは、海外翻訳作品の同様の例で昔からだが、今や事実上それに倣わなければ日本人のファンに通じないからね。前回も、Ashne'eとかKesarhなどでも無数に思ったのだけど。

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katkaさんの感想・レビュー
katkaさんのTanithLee『Dark Castle, White Horse (English Edition) [電子書籍]』についてのレビュー:この電子版...
Booklog

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katka_yg 2026/01/22 (木) 11:26:26 修正

イソームのどこが魅力なのか

このまえ読み始めるまえは「ゲメル萌え以外ない」と書いており、こないだ読み終えてもそう思ったが、一週間くらい経ったあとにふと、この話は結局、「イソーム萌え」の話だったのではないかと思い始める。エピローグでは最後にイソームで終わるのはたしかだ。

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katka_yg 2026/01/22 (木) 11:43:31 修正 >> 27

この電子版の二篇「The Castle of Dark」「Prince on a White Horse」は、ヒロインを文中の現実でなかなか美しいとか愛しいと呼ばないという、ラブコメとファンタジーを混ぜた方法について書いた。型通りのツンデレよりは、もう少し高度だ。

リルーンは最後の一行で美しさ(と歓喜)が明かされる。なので、「最後からニ番目の文が良い」という感想だった。ゲメルは、けっこう早くから好感を隠さなくなり、エピローグで会話しているときには「気持ちを隠したことはない」と言っている。読み返してみると、実のところ最初から嘘は言ってない。テレパス戦みたいな心のゲーム的要素があった。

イソームは物語中、彼女の良いところがなにひとつ書かれず、読了後も結局良いところはない。ゲマントだけが彼女に惚れ込んでいるけど、イソームのどこが魅力なのか読者によくわからないし、ゲマント自身も時々うんざりした様子がある。にもかかわらずエピローグはイソームのまた懲りなさと、彼女を連れ去るゲマントの姿で終える。「美女の美しさを語らない」ことではイソームの方が中心話題だったかもしれない。

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katka_yg 2026/01/22 (木) 11:53:56 修正 >> 28

昨夜「クレルヴォ」を聴きながらカレワラの話を書いており、その連想がまだある。

作中で有害なことしかしておらず、この世界の誰にとっても嫌われていいはずの魔女がなぜ彼一人にとって魅力的な乙女なのか。そういう愛の語り方に気づいたときはそれは強い印象だろうと思う。

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この世の誰からも等しく愛される王子様や姫などは結局、それだけのことではないのか。公に認められた美少女路線を大幅に逸脱しても、世界で一人だけ変わらずに追ってくる貴公子……奇公子というか魔女フェチ……もカバーしておく、と言ったらいいか。

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katka_yg 2026/01/22 (木) 12:17:46 修正 >> 27

フェミニズム・ファンタジー面

この間に読んだり観たりしているものが『アリーテ姫』なので、それもまたどういうこと?の連想ではある。アリーテ姫は、ごく大雑把にいうと男はいらない話ではないのか。

ただ、この中でも原作とアニメ映画の間の「アリーテ姫は美しかったか」に話が行きついている。フェミニズム作品の諸相といえばそうだが、わたしは最近の通読上タニス姉貴の方に寄る……。タニス作品で、「男はいらない」かのような結末になるのは『Volkhavaar』(幻魔の虜囚)があっただろう。一連の関心でまた振り返ってもよい。