ニュータイプの子ども
スペースコロニーに住む夫婦に子供が生まれた。この子は生まれつきニュータイプだった。両親ははじめ子供の秀れた才能をよろこんだが、世間でニュータイプは個人的には不幸と言われていることを聞き知ると、子どもの将来を思い、悲しんだり憐れんだりしていた。
子供が四歳頃になり少しでも勘の良いことを口走れば、ニュータイプではないかと思い戦々恐々としていた。両親も普段できるだけ平凡な技師と科学者のように装った。だが、そんなコロニーにもやがて宇宙戦争の足音が近づいてくるのを止めようもなかった。
コロニーに軍艦が入ってくると、軍艦からは大勢のモビルスーツが降りてきてコロニーの中でビームを発砲した〔無法行為の典型〕。コロニーの人々は夫婦の家に来てニュータイプ待望論を語ったが、夫婦は子どもを一室に閉じ込めて表に出さなかった。
それでも夜になると子どもは窓から抜け出して軍艦に行き、モビルスーツによじ登って入り込むと、めちゃめちゃに操作して壊してしまった。翌朝には軍艦もコロニーも大騒ぎになったが、子どもは素知らぬふうでベッドで眠っていた。
夜にはまた子どもは抜け出した。地下室に隠してあったガンダムに乗って軍艦を襲撃し、軍の被害は甚大に及んだ。ほうほうの体で軍艦が撤退し、やがて宇宙戦争もすぎ去ると、コロニーの人々はようやく胸を撫で下ろした。その後、子どもは十歳になる頃には当時のことはみんな忘れていた。(サイド二。宇宙世紀〇一五〇年頃)
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