ダーマ上人
金星のスペース・コロニー群とフォトン・バッテリーの列を遡ってその源流に、太陽電池パネルの出力を塞いで堰き止めてしまっているダーマ上人という者がいた。ダーマ上人はその昔、ラライヤ・マンディ事件の時代にレコンギスタしたマン・マシーンの一柱であったが、騒乱の世の鎮定に功あったにもかかわらず、そののちはアステロイド帯の守護に任ぜられ、辺境宇宙に逼塞すること幾世紀にわたった。強大なパワーと知性を有する高徳の
底なしにエネルギーを吸い取るダーマ上人の偉大力はヘルメス文書を知る
褐色の肌の彼女は、歴史上の人類女性の誰よりも美しい。優しくしなやかな、並外れた
祠にむっつりと座り込む上人に美女は言葉巧みに近づいていって、モビルアーマーの装甲ハッチをするすると撫でさすった。彼の頑なな身の守りもユニバーサル・コードで紐解き、解放された内部に這い込むと、操縦座に就いて、あれこれと戯れ始めた。
ハンプティ・ダンプティみたいな形をしたもののことをスペースノイドの間で俗にダルマサンという。こうした、戯れかかる魅力の快さに上人がたまらずに腰を浮かせたときに、フォトン・バッテリーの電源を堰き止めて鎮座しているところから転げてしまったので、太陽系の全エネルギーは再開した。
ダーマ上人は美女の手管に欺かれたことを知り愕然となったが、そのときには遅く、道心も堅い装甲も破れかぶれになってしまっていた。あたら千年の
美女は逃れていった。
ダーマ上人の身は卵殻のように割れて、上人の身の内より這い出ずるダッハーク王の上体が別れて六臂となり、阿修羅となった半身の、肩から生えだす四本の紫色の稲光はたちまち荒れ狂う四頭の大蛇と化し、大蛇は逃れゆく美女の跡を追って
今や正体を現した黒歴史の怪物の凄まじさ、恐怖は筆舌に尽くせぬ。美女(雲の絶間姫)は、天界のロザリオ・テンに嘆願の手を伸べ、天人達に救いを求め祈ったであろう、泣いたでもあろうが、この任務においてはもとよりその成否にかかわらず、生きて帰ることは決してあるまい。かわいそうな美女でもあった。