覇権への退行
外征、カロッダから外に進出して騎兵隊を出してゲリラ攻撃を敢行するというのは、前から話題になっていたグッダーザンの足がかりになっていると見られる各地のオアシスを点々と目潰しし、敵の大型飛行機械がカロッダまで到達できなくする……戦線を拡大すればグッダーザンの戦力は分散せざるをえない。
「時間稼ぎには有効なのだが、それこそ、覇権主義の増長を生むものだ」
それはしてはならないという。『外征すればカロッダのアウラ・エナジィは外にむけられて減殺する』。そうなればカロッダは重力に引かれて墜ちる。――アウラ・エナジィの真相は読者にはそのたび想像させられる以外、考えようがないが、ゴレンゴンの夢のお告げというのでは仕方ない。本当かどうかわかんないが、この小説で神秘的なメッセージが嘘はつかないだろうから確実なことだ。
『まさか夢のお告げが嘘をつく』というのは別の作家の話、富野作品とは関係ない。ニュータイプの交感で虚報を伝えてくることはないはず……それは無条件に真実。ゴレンゴンは正直。
もうひとつは覇権主義について。フローランドしつつあるカロッダが周辺一帯の力の及ぶかぎりをこの際、制圧してやれというのは覇権的になるという。一昔前に、グラン王がカロッダ・テリトリィを統一したときは覇権主義じゃないのかとは、わたしは前巻で別の意味で話してもいたので少しまぎらわしい。もともとは覇権思考だったのが、覇権が目的じゃなくフローランドそのものがが目的になった、と言えばわかりやすい。覇権の語は一貫して好ましい意味では使われていない。
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クワウンゾゥが考えているような、グリーン・テリトリィがフローランドしたら浮遊大陸のコングリヨンに乗って各地を爆撃し、グラウンド全てを制圧して略奪してやれのような、ラピュタ帝国のようなことを目論んでもアウラ・エナジィが拡散してまず墜落するということか。
フロー教の教義をひとまず、いま分かるだけまとめてもよさそうかな……。翔ぶことが何故そんなに崇高な目的なのかと少しわかりにくくないか。実際、クワウンゾゥはこの時代で「スペース・アイランドが人の夢」のようには信じていないだろう。
ゴレンゴンは正直でいいのだが、後には「ジャコバ・アオンは嘘つき」のようなこともやはり思い始めるからこんなことも書いておくんだ。
コングリヨンのフローランド構想はテリトリィ規模ではなく首都だけを浮上させようとしている。これは前から書いてあったが、話はこのあとにある。フロートするのか、しないのか?