かとかの記憶

神林長平 周回 / 24

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『プリズム』読了。つぎ、『宇宙探査機 迷惑一番』。

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    脳天気と正義

    神林作品では「脳天気」(能天気)は一つの大きなキーワードだったのだけど、脳天気という語それ自体が近年は死語……ともいわないがそんなに使われなくなった。同じ意味でべつの言い方はされようが。

    神林作品ではこの『宇宙探査機 迷惑一番』が脳天気の語の初出。『過負荷都市』(1988)『親切がいっぱい』(1990)などに脳天気さを展開しつつ、『天国にそっくりな星』(1993)で脳天気なことが主人公の最強の武器、作品の主題にまでなる。この脳天気話題については『敵は海賊・不敵な休暇』の解説に山岸真による少し追跡がされていて、もちろん「敵は海賊」シリーズのアプロが脳天気の代名詞みたいなものだ。が、90年代より後にそれが消えたわけでもない。

    『ライトジーンの遺産』(1997)とか『だれの息子でもない』(2014)とか……もはや神林長平のユーモア作品の「ユーモア」という中に脳天気も解消されているような気もする。だけど、神林独特の、という特徴でいえば「脳天気と正義」という他の著者では見られにくい観念の結合がある。それは前回も少し触れたが、また追々見ていこう。