かとかの記憶

リーンの翼 / 111

151 コメント
views
111
katka_yg 2025/08/20 (水) 20:59:49 修正 >> 108

別宮貞雄 交響曲第1番

昨夜から気持ちに引っかかっていたのだけど、いま聴いてみてやっと腑に落ちたらしい。この交響曲第1番(1961)を『リーンの翼』のイメージと重ねたことはなかった。

別宮貞雄を聴き返しているのは前から。わたしは主に「有間皇子」からの関心の続きで、この1番にも音楽の外にその連想がもともとある。印象裡には蘇我赤兄や鯯魚の場面が浮かぶ。その凄惨で、悲惨で陰惨だが同情はしかねるような、客観的にはコミカルでさえあるストーリーの絵巻が流れ、ちょうどリーンの翼でいう『真に、惨……』というような複雑な感情になっていた。全体的にふわふわした曖昧な感じがここまで1,2巻の、わたしの印象にあったのはこれだったみたいだ。この4楽章は南極観測隊の記録映画のための音楽が元らしく、活劇めいた雰囲気もかなりある。

別宮貞雄は終戦のときにはひたすら「解放」と捉えていたという理学生で、かつての迫水のようないわゆる軍国青年とは程遠い。当時から反戦のインテリではある。交響曲では、さらに後の第4番(1989)が自身の戦時中の記憶をたどった「夏1945年」という表題になるが、それはこのあと、次回聴こう。1,2,4番かな……。今夜はここまでにする。文芸や音楽の、個人的な連想が繋がる夜は良い気分だ。

通報 ...