「16 接敵」(旧)
「11 ガダバの前哨」(新)前半部
ガダバの総帥ゴゾ・ドウ登場。わたしはこの人の話が今回の大きな興味でもあって楽しみ。ゴゾ・ドウのプロフィールと、ガダバ覇権に及ぶにあたっての文明論的な史観のようなものが語られるのだが、アレキサンダー大王、チンギス・ハーンを挙げていてシーザーの名は完全版では省略。
旧版の文でも、シーザーの擁立には高度な政治的な意思を汲むべきである(=シーザー個人の英雄性に求めるべきでない)のような曖昧な言い方で、まぎらわしいので省略されたみたい。拡大しきった文化の発祥地である中心部はもっとも爛熟・頽廃し、一方で、周辺に拡散した文化を学んだ被征服者達が勢力を強める……という運動をとくに完全版では「ドーナツ現象」というが、この例にはローマ帝国をイメージするのが容易いだろうとわたしは思う。
この論の内容は新旧でほぼ同一だけど、話の順序が細かく入れ替わっている。
チッの国の攻略にあたって奪取すべき三つの砦――金、銀、クリスタル鉱山(旧)のところに、ガス鉱脈(新)を加えて四つの宝になっている。「ガス」をここで強調しているのは何だったかな。追々、覗いてみる。
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富野監督が古代史について話すときに普段どういう本や学者を参考にしているかは、本人がたびたび喋っておられると思うが、わたしはこうして新旧で較べ、目を近づけて読むのは結構面白い。
わたしがその古代史専門のつもりではなくて、もしも二十年あまりの間にも著者の歴史観が変わっていたりしたらそこに文章の出入りがあると思うんだ。ここでは「ドーナツ現象」の語とカエサルの省略以外ほぼない。
文化、文明とは言っているけど「文化圏」という言葉は言っていない。たまたまここで使っていないだけで、ガンダム小説にもエッセイにもよく出てくるようだ。
で、この崩壊現象の起こるときがバイストン・ウェルにおいても「英雄の時代」となる、というのがここの本旨、だった。
読者として、こういう真面目に読んでいて「オタク的」とかは言われたくはないね。わたしはべつに歴オタではないが、ヘレニズムの時代等には最近よそで興味があった。