特攻人形のことは、この1巻の序盤でまだ書くことではないけど、ここまでも迫水は日本軍の当時の姿勢態度等がバイストン・ウェルに来て客観的に見えてしまったために、やがて故国である日本との精神的な繋がりが切れがちになっていく。自覚的に、なんとか日本人としての意識を保とうとするが。
のちに続々とバイストン・ウェルに落ちてくる地上人と情報交換するようになれば、ますますその時代認識を補強でき、あの戦争はなんだったか、自分はなぜ死地にやられなければならなかったのかと自問すれば今は異邦の流謫者として正確に説明できてしまう。特攻人形の印象は後にはほとんど忘れるが、微かに微かに留めていて、そういうものを最近ここでは風土と呼んでみていた。ここの通読している間にもわたしは風土なる言葉を全然思い出さなかったので、それはそれで意外だった。
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