かとかの記憶

リーンの翼 / 51

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さざめき

しかし、そんなかすかな想念も、遠く聞えてくる迫水の気合に砕かれてしまう。
 迫水の気合が耳に届くたびに、ハロウの体の中の空気がほんのりと動き、沈潜する。
 これは、ハロウに空になれと呼びかけるフェラリオの国の長老ジャコバ・アオンの言葉に似た響きがあった。
〝なぜだろう……〟
 ハロウは、漠然と思う。(旧)

そんな想いは、とおく聞こえてくる迫水の気合いに砕かれて、さざめけば、その波立ちが、空になれと呼びかけるフェラリオの国の長老ジャコバ・アオンの言葉に似た響きに感じられて、〝なぜだろう……〟と、漠然と思うのだった。(新)

水の妖精のようなエ・フェラリオの体内の感応を、さざめき、波立ち、とリライトする手慣れた気分は好き。
ハロウ・ロイは、自分は迫水に触れて浄化されはじめたのではないか……(ないかしら)と思えるようになっていたが、それがわずかの後に彼女の命取りになるのだろう。

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    katka_yg 2025/07/27 (日) 22:12:38 修正 >> 51

    そういうとこ読むことを精読として今度の通読は始めたの。おそらく、両版を持っていて読んでいる人でも、その一々に仮に目を留めはしても、書き留めてはいないだろう。

    富野由悠季の文体はどういうものか、という解説が、主流の文芸評とか雑多な読書レビューに任せて永久に明かされないような不審感ってある。

    ここなどは、見るからに複数の文章にわたる描写の内容を「――て、」「――ば、」「――が、」「――て、」と繋げて一文にしてしまう。上では「だらしない文章」とも書いてしまったけれど、やわらかく弾力的に口述をつづけていく独特のリズムを作っているのは90年代以降に好きそうで取り入れているらしい。当時に何がきっかけでそうなのかは、わたしはわからない。たとえば、そういう例にはなる。ほかにも見たいところはあるはず。

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    そうだな、「口述」だよ。この文体。そういうイメージ。