かとかの記憶

リー作品の受容と連想 / 1

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katka_yg 2025/10/06 (月) 10:47:36 修正

概況

2025年現在、日本のファンタジー文芸一般・創作文化全般について英国の小説家タニス・リー(1947-2015)の遺した影響を知ることは、特にそれほど必要ではない。今現在、本邦の流行ではないし、教養としてもそれほど多くの若い読者に読まれているわけではない。作家の名は知られていようが、日本の読者からの需要は絶対的に少なく、邦訳書は概ね絶版で近所の図書館がきっちり揃えているかも怪しいことだ。

リー作品のスタイル(文体)、リーの終生の関心(テーマ)は日本人読者の関心を絶えず惹きつけているようでは、べつになく、現在和製のファンタジー小説・漫画・アニメを閲覧するにはリーを読んでなければ話がわからんということはない。かえって本人が古典趣味なだけに、その文学趣味が合えば数十年の時代を超えても古くならない。常に新鮮な感想で味読できると思う。

どういう人に合うかというと、ダークファンタジーに興味のある人。「ダークファンタジーとは何か」を知りたければその女王格であるリーをイメージに描けば間違っていない。ダークを除いて、ファンタジーは何をするものか、または「どうありたいか」を思い描くときには指針を得られる。残虐や不健全な場面もたびたびあるが気兼ねなく心酔してよい。カリスマ。チャーミングで愛せる姉貴

小説家タニス・リーの1975年にデビュー以来、日本のFT界隈での影響、歴史的意味では、日本のこのジャンルの現在の流行に至る端緒、おもに1990年代頃にリーのリスペクトを表明している一群の人々がいて、それは80年代に邦訳で作品に触れた人たち。ライトノベル草創の時期と合い、その頃に海外FTを読んで育ち、中にはそのまま自分が物書きになってしまい、リーは自分のルーツだと公言する人もいる。古参のFT女子の憧れの的ではあったし、その感情は今も変わらないだろう。

ただし、きわめて多作なリーの邦訳は現在に至るも甚だ不完全な範囲に留まっており、一覧すればかなりの訳書が出版されているにもかかわらず、それで作品目録の約半分弱だと思う。全貌が知れない上、その内でもリーの重要作品・重要シリーズが選んで紹介されているわけでもない。重要作品もスルーされているので、タニス・リーの作風についてのイメージもまだまだあやふやなところ。

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    katka_yg 2025/10/06 (月) 11:39:22 修正 >> 1

    作業的試論

    わたしはタニス・リー作品自体は二十年以上前から触れていると思うが、折々に開いて読む趣味があっただけで、それ専門に海外ファンタジーを蒐めたり漁ったことはない。近頃になり、身の回りに膨大に溢れ返る小説・漫画・邦画洋画やアニメ・ゲームの数にふと途方に暮れたとき、自分の蔵書整理と、ついでに今まで気にしながら掘り下げずに通った作家を「通読」として追い直してみようと思った。

    わりと最近のことで、その関心に「現在日本のファンタジー」という括りの文学史的な興味はもともとあったが、タニス・リーと富野由悠季は通読しておかねばと思ったくらいの、わたしの個人的な思い入れ・思い残しがそこにあるからによる。他の人ならまた他の名前を挙げるだろう。

    邦訳から読み始める。既訳作品は手元にないものはあらためて求め、2022年頃から2024年まで、原著の執筆順に追った。後の方は邦訳を読み返しながら電子書籍で購入して日英併読している。その間、読メにレビューを書き足しつつ、リーを読みながらわたしの連想する邦人作家の作品も開いてみることで、三十年分ほどのこのテーマの印象を捉え直したが、上に書いた通りリーの既訳状況は元が穴だらけで、これで得た印象も心もとない。

    未訳の原書を読み始めると「The Birthgrave」を読み終えただけでショックを覚える。これを読んでいる・いないだけで、作家リーの印象も根本的に随分変わってしまうのだけど、作品の具体的な内容に触れることはものすごくデリケートで難しい三部作で、現状、ほぼ何も言えない。

    Hunting the White Witch (The Birthgrave Trilogy Book 3) - 読書メーター
    Hunting the White Witch (The Birthgrave Trilogy Book 3)。三部作読了。二部結末でようやく曙光のごとく示された目的に向かい、新たな旅は怒涛というか…濁流みたいな凄まじい物語で、わたしは読み進めがたびたび滞りがちになりながら地獄のような読書体験になりました。この水準のダーク・ファンタジーは後にも先にも出会うことは稀だろうとは書いておきます。タニス・リーの大作ではこの後「平た...
    読書メーター

    そういうわけで、このことの意味はわたしなりに痛感したが、今まだ読んでいる続きは70年代作品にいて、下に書くのはここまで作業経過の感想と、今後の作業進捗の目当て(狙い)を洗い出してみるための、わたしにとっての作業的試論になる。今後、読み進んでいくうちにここに書き足すことも増える。