丘の上の死体
長い宇宙の歴史の中で、ある時、アケローンの丘が処刑場になったことがあった。その頃の宇宙にはゴート機構も八ノ地教もなく、丘のふもとには小さな寂れた町だけがあって、その町で罪を犯した者は丘の上の絞首台に吊るされる決まりだった。
絞首台にかかった罪人の死体は腐敗し、惑星に降る日に焼かれてやがて風化し、夜には丘をわたる風に揺れてロープをぎしぎし鳴らした。夜更けに、町外れの酒場で呑んだくれた労働者が通るときには決まってその音が聴こえる。ちっ。嫌な音を立てやがるぜ……。その途端、破鐘のような哄笑がとどろいた。
この丘にぶら下がっていると宇宙が見えるんだ。俺が発見したオクタビーの秘密を教えてやろう!
宇宙の深淵から届くようなその声があまりにも陰惨で不気味なので、どんな男も肝を潰してほうほうの体で逃げ出した。その後から、髑髏の顎を鳴らしてカタカタ笑う音が追ってきた。こんなことが重なって噂になり、町に住む大人達も絞首台のある丘にだけは避けて近寄らなくなっていたが、そんなころ、一人の学生が夜中に丘を昇ってきた。
首吊りのおじさん。ここがアケローンで、オクタビーの秘密を見つけたというのは本当なの?
アア……? 嘘と思うなら俺の足元を掘ってみるがいい。地球の芯まで届くほど、深くな……
学生はスコップで絞首台の足元を掘ってみた。それほど掘るまでもなく、スコップの先に当たるものがあったので拾い上げてみた。昔のドルバン人の遺物のように見えたが、ためつすがめつしてみると、どうもパイプのようだった。
アア! ここにあったのか! さあそれで俺を星にしてくれ、頼む!
そこで学生は手にしたパイプで絞首台の死体を星に返し、星士になった。天馬ひとみの最初の偉業だといわれている。
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