かとかの記憶

アケローン民話 / 33

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katka_yg 2026/06/29 (月) 23:57:35 修正

魔王星のフクロウ

魔王星に一羽のフクロウが住んでいた。フクロウは年寄りで、なんでも知っていて、森の動物達から博士のように思われていた。古い昔から、アアグウアの森に住む動物達の誰も知らない頃から生きていた。フクロウはおよそ十四歳だった。人間でいえば、当時の魔王星の人間の年齢で四十九歳ほど。そのころのアアグウアの人々の暮らす町は森に近くて、森には時たま、子どもが迷いこんできた。十一歳くらいの男の子だった。優しい聖天使の子で、それまでは小鳥やねずみばかりを追い回していたが、森の奥で初めてフクロウを見たとき、子どもはフクロウに欲情した。「欲しい」と思ったのだ。

知的好奇心。好奇心にあふれる子どもはフクロウの止まり木の周りを周りはじめ、手が届かないと小石を投げ始めた。フクロウは子どもをなだめたり、叱ったり、道理を諭したりしたものの、やがて子どもの好奇心を満たすために自分から傍に降りてきてやった。近くに寄っては鳥の羽をむしったり千切ったりせぬよう、フクロウは直に教えてやらねばならなかった。老いたフクロウの記憶にある、教訓にあふれた古物語を思い出し、面白おかしい動物の喩えをまじえて寓話にしてやると、聴いている間は子どものいじめる手が止まった。

フクロウは語り、語り続けた。森に暮らす年月に聴き憶えたこと、月の降る梢で夜じゅう思案したこと。おぼろな記憶をたどっては、神話の英雄やミサイリストの伝説も教えてやった。フクロウの語る声が眠くなると、子どもも眠たくなった。夜は平和に過ぎていった。

それから、森に子どもが訪ねてくるたび、フクロウは子どものところに飛んでいって、子どものために物語をきかせるようになった。子どもは定位置の梢の下に待っていて、フクロウの語る間はいつも大人しく聴いていたが、時おりまた欲情に駆られると、フクロウのことたびたび痛めつけた。

ある日、森に来た男の子は、もう一人の女の子を連れていた。その子も、優しい聖天使の子で、フクロウは聖天使を二人も目にするのは初めてだった。女の子は十三歳くらい、男の子は十一歳くらい、フクロウは十四歳。聖天使どうしの仲よい様子を見て、フクロウの心にはそのとき何か、初めて、いい知れぬ感情が湧いた。

でも、女の子のほうもフクロウを見るやたちまち欲情し、すぐに二人してフクロウを痛め始めたので、そんなことを気にかける暇もなくなった。優しい聖天使の親達は、子どもの好奇心を抑制するようには躾けていなかった。森のフクロウは聖天使の子供らのため、懸命に物語をして続けたが、たびたびの過酷な扱いがすぎて、それからしばらくののち、儚くも十四歳にしてフクロウは死んだ。アアグウアの森のフクロウにしては長く生きたほうであった。

子ども達はフクロウを埋めた。さすがに食べたりはしなかった。時がすぎて、女の子と男の子は成長して聖天使の座に加わり、やがて死に、いつかフクロウを埋めたのと同じ森に埋められた。アアグウアの王朝は終わった。魔王星は衰退し、城と町々は滅びた。跡に森だけが残った。年月がすぎていった。再び、新たな王朝が芽生え、フクロウの眠る森のそばに城を築いた。第二魔王星となった。王朝と文明が交替し、再び滅んだ。昼と夜と星が絶えず巡った。

眠る彼らの上で、第三魔王星が事もなく終焉していき、第四魔王星の初め頃、フクロウは眠りからさめてよみがえった。若く、新しくなった星の新しい森の上、ホォー、ホォー、と鳴きながら、フクロウは飛んだ。今も誰かを探して森を飛び回るフクロウの心の中には、眠りの間に、魔王星の三千世紀の物語をため込んでいたのだ。

そして男の子を見つけると、フクロウは傍の止まり木に止まり、夜もすがら物語り、語り始めた。

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