特にAZ・MZの話が長くなったので
ちなみに上記の労働集約性はT-72がまだ最適化の余地残る量産初年度だったのに対して、T-64Aは量産開始より6年以上が経過しており、生産工程はほぼ慣熟状態であったことも考慮しなければならない。もちろん生産高が上がれば上がるほど労働集約性の差も比例して膨れていく。これらを踏まえた上で本当に大量生産に向いた車輌はどちらであったか。底部脆弱性については繰り返しになるが、タギルで改良加工されたT-72の底部を8mm撓ませるには、底部や装填装置にとどまらない、車輌の構造自体に甚大な被害を与えるレベルの爆薬量が必要であり、これにT-64とMZであれば抗堪できるというのはかなり無理のある話に思える。装填装置としての完成度について、確かにMZはAZに比べ装弾数で6発、装填時間で約13%ほど優れている。これは確かに対戦車戦闘で有利な点であるが、戦争では対戦車戦闘のみが生起するわけではないので、欠点も挙げてみなければMZが装填装置としての完成度でAZを完全に凌駕していたかの判断は尚早。なのでまず分かりやすいところで言えば前面及び即背面への弾薬投影面積がAZに比べ約2倍大きい欠点。次に砲身が操縦手ハッチ上に存在する状態で砲塔が駆動油圧を喪失した際や、河川、泥濘等に突っ込む等、何らかの理由で操縦席ハッチが使用不可能な際、AZでは特に大きな制約なくドライバーは戦闘室への移動ができるのに対して、MZではカルーセル内から連続した2発分の装薬を抜き取らなければ戦闘室への移動が不可能であるという、予備弾へのアクセス性とも関連性の高い欠点。AZが完全な電気駆動なのに対してMZは電気油圧駆動なのも欠点。AZが破片程度なら防護できる天板を有するのに対してMZでは装薬に何ら保護が施されていないのも欠点。そして比較した際の最大の欠点とも言えるのが装填装置への再装填にAZに比べて最小でも2倍(T-64=13分、T-72=6分30秒)、最大では4.5倍(T-64A=18分、T-72A=4分)の時間を要する事。これは持続的な火力投射を行う際、大きく影響する。これらを踏まえればMZはAZに比べ主に乗員の利便性、被弾時の被害抑制、持続的な火力投射力で大きく劣後していることがわかると思う。最後に…、西側戦車の自動装填装置がどのような設計・構造を持ち、どのような利点や欠点があったとしても、ソ連にとってはそもそも無関係で管轄外の話であり、AZ・MZとの比較はナンセンス
この話の元ともなったBTVTライブジャーナルはタラセンコというウクライナ人のブログなんだが、この人はT-72を「戦車類似品」と貶し、ソ連によるT-72の採用を「国家的犯罪」「タギルによる野心と愛国心を満たすためだけの国家資金の犯罪的浪費」などと評したんだがその動機は単純で、彼はウクライナ国有の兵器輸出企業であるウクルスペッツエクスポート社の広報担当で、在庫という名の保管車両を山ほど抱えている割にさっぱり売れないT-64を売りたいがためというもの。