カオスドラマX

Gray Traveller / 530

530
わったん 2026/03/08 (日) 20:12:57 >> 529

「ミルド=デリス兄ちゃん!僕にも槍術教えてよ!」

薄明かりの縁、陽気なクラヴァットの子供達に囲まれたミルド=デリス。

「俺様の槍を覚えるにはもうちょい背丈が必要だなぁおまえら」

「えー!?僕たちの方が背高いよ?」

「あんな、人を立てる時は真実ってもんを脇に置いといてくれやしねぇかな」

アイツの周りには、自然と子供たちの無垢な輪ができていたもんだ。
近所のガキ共は、黄金畑で農作を教えた俺なんかよりも、ミルド=デリスを「英雄たる兄」として熱烈に慕っていた。
それに対して嫌悪なんざ抱かなかった。俺も、アイツを慕っていたから。

「いいか小僧共。真に強い奴になるには腕前じゃねぇ。仲間が必要だ」
「お前らが今から出来る事は、仲のいい奴らと大きくなり、育ち、実っていく事」
「いつまでも生き続けていき、そして護りたいと思える奴がいる事」
「そうすりゃ自然と腕前ってのは付いてくんだよ」

「かっけー!」
「ミルド=デリス兄ちゃんの護りたい人って誰なの?」

「あ~?そりゃお前――」

「……」

その先を聞くのは無粋だろ。
幾重にも訪れた命の危機。俺だけじゃない。
キャラバンとは、奈落の上に繋がれた一本橋を渡っていく一隊。
誰かが足を踏み外せば、即座にその腕を掴む者がいる。
ミルド=デリスは決して揺らぐことのない支柱だった。
そして、俺達を引っ張り上げる事もなかった。
ただ、落ちそうな誰かを、引っ張ろうとする誰か。
その空間を護る、武勇伝を語る以上の大きな男だった。
小柄な身形の癖して、アイツはずっと大きな存在だった。
だからこそ、誇らしかったんだ。俺の仲間が焚火の中で語る武勇伝を、俺は好きである事を。

通報 ...