いあゆる過去編になります。
参加を想定した物ではありませんが予めご容赦ください。
作成:
2024/06/29 (土) 23:39:54
最終更新:
2024/06/29 (土) 23:41:38
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むかしむかしあるところに
Once upon a time, there lived.
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一つの世界を収める王子様と、一つの世界に誘われたお姫様がおりました。
その世界にただ一つの汚れはなく、ただ一つの悪も許されませんでした。
ただ一つの正しいこと、"愛すること"の元に世界は平穏だったのです。
その世界にお城はありません、一つの例外もなく平等が保証された世界に、民草を見下ろす玉座は不要だからです。
その世界に国境も城塞も、ましてや武器も必要ありません。外敵など、はじまりはじまりよりも前から存在しないのです。
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不義を働く魔王もなければ、闇を切り裂く光の剣だとかもありません。
人間は存在しないのだから。
だってこの世界には……罪なき者しか存在しなかったのだから。
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だからこのお話は、はじめからめでたしめでたし……いつまでもいつまでも。 そのはずだったのです。
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黎明と黄昏、日の出と日没、星明かりに月に太陽。
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全ての時間がそこに集約されているかのような空の下、地平まで続く虹の花園の中心で、他所から来たお姫様は王子様に問いかけました。
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「あなたは幸福ではないの」
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問いかけに対し、王子様は少し困ったように首を傾げはにかみます。
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「いいえ、私は幸福ですよ。あなたにそう思わせてしまったのであれば、謝りましょう」
事実
「謝らなくていいの。これはそう、ネタバレだから。 だってあなたの笑顔、悲しそうだもの」
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「そうでしょうか。もしそう見えたなら、何か"そう見えるだけの"理由があるのでは?」
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「意地悪ね。ああでも、そう。意地悪で当たり前ね……よく似ているもの、喜ばしくない事に。
ここにはあなたの民はいない、ここにはあなたの望むものはいない、ここには……藍があって、愛がないから」
「そんなはずはありません。あなたが"そうあれ"と思い描いたのだから、この世界に望むものしかないはずです」
「そう、だから存在しないの。
だって――――――――――――」
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「 私はルナではなくて
あなたはヴィナミスじゃないのだから。 」
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世界のどこかで誰かが想えば、巡り巡ってその想いが叶うようになっているのです、この世界は。
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「 あはは ペテンなんだから 」
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世界は滅びました。.
悪 もなく、災い もなく、不義 もなく
王子様のお人形とお姫様のお人形と、きれいに飾り付けられたお花 が、

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滅びる要因はありません、しかし存続する理由もありません。
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だからこれで"おしまい"なのです。
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世界がひっくり返された後には何が残ったでしょうか。
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何も? そう、何も。
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床に転がって、砕けて、まるで花弁は血と涙を混ぜ合わせて感情の種蒔きをしたかのよう。
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何よりくだらない私は、今日も膝を抱えて閉じた扉の向こうを見る。
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当然、何も見えない。そこに景色はないし、好みで用意したオーク材のドア板が私の望んだ沈黙を守っている。
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「世界のどこかで誰かが想えば、巡り巡ってその想いが叶うようになっているのです、この世界は。」
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「なにもないよ。だってここは……あなたのいる世界じゃない。」
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◆
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ヴィナミスが死んだ。
この事実に驚きはなかった。
仮に彼女が、多次元同一体としてあらゆる可能性の未来に存在しながら、意識を同一人物として共有しているような特異存在でなかったとしても、
人間に本来備わっている直感、予感めいたものとしてその未来は容易に想像できた。
一つ、この世界を愛しているということ。
二つ、この世界が "人の世界" ということ。
それだけで彼が人の悪意によって死ぬ事は、起こるべくして起こったのだろうと。
だから、彼女にとってヴィナミス・ティルクとは『質量のある陽炎』という理解だった。
その時、その場所で生きていて、愛した温かな微笑みを向けてくれたとしても、
それは目覚め、天井から窓の外を見やれば朝露と共に消え失せて然るべきなのだ。
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「そうだ、ヴィナミスがいた古き良き時代にかーえろっと!」
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故に、『実在ヴィナミス』も『非実在ヴィナミス』も存在の規定に線引を必要としない。
重要なのは、彼自身の意思決定によって見せる表情と言葉であること、自分が脚本を書きその通りに喋らせた人力ヴィナミスでなければいい。
そう開き直ると彼女は早速『異空間を跨ぐテレビ』を発明した。
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正確には、彼女が作り上げた箱庭の中で、数千億という数のナノミリサイズの小人の科学者達が尊い犠牲の元作り上げた。
1秒の中で、一斉に死生し、一斉に研究に身を捧げ、そして一斉にまた死生というサイクルを
数百回繰り返す。
これを1時間、箱庭の中で輪廻し、無限に等しい"可能性"を紡ぐ。そして望むものを発明した時点で輪廻を止め、成果を回収し目的を果たした世界は晴れてようやく解脱<滅亡>を迎えたのだ。
ビー玉サイズの世界とそこに住まう小人を生み出せても、設計は別分野だ。今回は世界ガチャが神引きをしたので運が良かった。
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「 うわ、でもこの開発者アメーバみたい。きっもーいっ いーらないっと 」
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ビー玉サイズの世界は、暖炉という太陽に抱かれて永眠した。
小人達が存在証明であるテレビを部屋の中央に設置し、適当にコンセントを誇りをかぶった穴にねじ込んで電源ボタンに蹴りを入れる。
背をソファに預け、身の丈ほどあるうさぎのぬいぐるみを抱き画面を覗き込んだ。
チャンネルは"人の目線"の数だけある。暫くは退屈せずに済むだろう。
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「お元気で、レインド ―――――― 」
「―――――― またな、ヴィナミス。」
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――――――――気に入らなぁ~~~~~~~~~~~~~~。
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最初に映ったチャンネルに対して思うことは開口一番それだった。
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もしこれが局が運営している番組なら鬼電鬼FAXのテロで紙の束の下敷きにしてやるところだと悪態をつく。
丁度、彼との『別れ』にヒットしたらしく、恐らくはもう"彼"と画面越しに相対することはないだろうと、安心し胸をなでおろすのもつかの間だった。
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ああっ!そんな顔するのねあなた! キライ!!
死んで!! 私のために死んで!! 死んだ今だから言うけど!!
.
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レイ・ローゼの去り際に見せた王子の顔が脳裏にチラつく。
うさぎのぬいぐるみをそっとソファーに畳んでから、どの言語にも該当しない言語の枠に収まらない呪詛を敷き詰めた金切り声を上げた。
血が吹き出すほどにぐしゃぐしゃに髪をかきむしり、皮膚は容易く千切れ顔の半分が"メッキが剥がれ黒一色の中身"が露出する。
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「うううううウウウウウウウウウウゥゥッゥゥゥ……レイローゼレイローゼレイローゼレイローゼレイローゼ
キライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライ
キライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライ
キライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ」
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瞼を失い眼球が露になった左目からは体内の水分をそこへ全て注ぎ込んだかのような野球ボール大の水滴が、ピッチングマシンのような速度で床へ水の豪速球を連投し続けた。
上体を振り回し、壁や床、狙いすましたようにテーブルやレンジの角へ側頭部を叩きつけ、赤に限らず、ピンクやシアンなど色彩豊かな体液を傷口からぶちまける。
文字通り"身を切る"ような思いの丈をぶつけられる場所全てへぶつけ終えると、
ソファへうつ伏せに突っ伏し、それからまた"人並み"に泣きじゃくった。
裁縫用に携帯している鋏をクッションへ何度も突きたて、虹色の液体が溢れて萎んでは膨らみ、萎んでは膨らみを繰り返すそれを力尽きるまで殺人ごっこしていた。
.
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そうしてきっちりコンマ数秒のズレなく24時間経過すると、寝返りを打ち、天井を仰ぎ見る。
半壊していた顔は何事もなかったように元のビスクドールのような浮世離れした美少女像に戻り、ポッカリと空いた穴のような瞳が無気力に天井を見上げていた。
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「あーあっ でもヴィナミスの友達なのよね。 よーし惑星アメーバ滅ぼしてあーそぼ」
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そうして彼女は再びうつ伏せになり、サイドテーブルから携帯ゲーム端末程度のサイズ感の"箱庭"を手繰り寄せる。
頭に思い描いたものなのか、仮想の砂場には仮想の文明、仮想の世界が、しかしてそこにある生命は本物の世界を生み出し。
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「お前たちは死ぬためだけに生まれたのよ、えいえい」
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などと意識はそぞろにうわ言めいた何かを呟きながら、エアパックを潰すようにして一人一人丁寧に"プチプチ"し始めた。
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「うわー……すっっっごいつまんな~い…………」
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