カオスドラマX

Gray Traveller / 741

741
わったん 2026/10/11 (日) 21:46:14 >> 739

「こっちの世界の『枠』が空いたんだ」
「なら、他の世界の何かを、こっちに持ち込む」
「そうすれば次元事の変数は可変して」
「何かが変わるかもしれない」

「……その変数ってのが」
「『俺』の事なのか」

「そうだね」
「ただ、私は次元の先で強い干渉を齎すことは出来ない」
「だから、補助輪が必要だったのさ」

「その補助輪が、硝子技術」

「次元を超えた先、本当に無作為に選んだ一つの命」
「ちょうど硝子技術の亀裂に映し出されたアンタを」
「私が奪い取った」

紫の涙が手元を開いて、四角い何かを見せつける。
恐らく、どっかの特異点だか技術だかの代物なんだろう。
どす黒い犠牲の末に出来た、都市の技術が小さく転がっていた。

「『魂転送技術』」
「他の次元からちょいと借りたものさ」
「アンタが生地に反映された時、コイツに入れて」
「抜け殻である透明の小僧の身体に取り入れた」
「大変だったよ」
「適当に選んでしまったアンタの元へ飛び」
「次にはユンフの傍にまで唐突に飛ぶ羽目になったんだから」

「……」

「項垂れていた透明の小僧にお前を取り入れることは苦労しなかったね」
「あの麦の香りがするビルの中で、彼はただ抜け殻となっていただけだった」
「魂が抜けたように、がらんどうになった心」
「肉体だけで繋ぎ止めた命の中に、アンタを入れる事で」
「きっと世界の平行線に乱れが生じて」
「何か、何かが変わってくれたらと願った」
「息子と会えると願ったさ」

「……」

紫の涙の個人的な欲求から発せられた現時点での事象。
俺という精神体が、ユンフという肉体に宿った出来事。
あぁ、だが、結局はそれだけの事。
規模の小さな、僅かな都市の循環。
なんてことない、なんてことのない流れ。
俺は、本来の俺は、その小さな小さな流れに付き合わされただけ。

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