あまりに早すぎる展開に、しばらく全員が沈黙した。
そして1分ほど経過したところで、ミレナ・レヴァーが一言呟いた。
「…終わったの?」
「ああ… これで終わったぜ。
少なくとも、これで生き延びられる奴なんていない」
答える声のした方向を見ると、
エルヴィーン・ロハーチェクが狙撃銃を持って立っていた。
どうやら、この状況を見てこちらに向かってきていたらしい。
続いて、ライラ・ニーニコスキがようやく無線機を取った。
「こちらブラボー・ノーベンバーよりHQ。
目標を殺害、作戦終了しました。
こっちは隊員が一名負傷してます、至急救助ヘリを…」
チームの回収には、HC-60の輸送型と救難型の2機がやって来た。
輸送型の中では全員が疲れ切った様子で機体にもたれかかり、
もう片方にはライラ、ラドヴァン、ミレナの3人と
4名の衛生兵が乗り込んでいる。
「それで、ミレナちゃ…じゃなくてミレナ・レヴァー一等兵の容態は?」
「多少出血してますが、ひとまず大丈夫です。
この後一旦野戦病院に運び込んで、それから後方の病院に後送します」
ライラ・ニーニコスキは衛生兵のその言葉を聞くと、
今度はミレナ・レヴァーに話しかけた。
「どう? 大丈夫?
「最初は死ぬかと思ったけど、今は大丈夫」
「そうですか。 よかったよかった」
「あ、そうだ。 えーと、ライラさん…」
「…ん?何?」
「こんなこと言うのって、なんか変だと思いますけど…
…『お姉ちゃん』って、呼んでもいいですかね?」
「おい、冗談きついぞ。
本当に撃たれたのか怪しいぐらいだぜ」
「うるさいやい」
彼女は、ライラに向かって笑顔でそう言った。
それを聞いてラドヴァン・シュチェルバが軽口を叩き、
ミレナ・レヴァーが即座に言い返す。
「で… どうなんですか、ライラさん?
そう呼んでもいいですか?」