茶番に使ってください!!
px
#
埋め込み先の背景色と馴染まない場合に指定して下さい。通常は埋め込み先の背景色をそのまま利用します。
px
wikiwikiスタイルでは文字サイズやフォントが自動的に調整されます。
次のコードをWIKIWIKIのページに埋め込むと最新のコメントがその場に表示されます。
// generating...
最新トピック
6012
22 秒前
兵器紹介 22 秒前
769
55 分前
個人の設定スレ 55 分前
2608
1 時間前
茶番スレ 1 時間前
3138
3 時間前
外交用 3 時間前
14116
4 時間前
談話室 4 時間前
2037
5 時間前
質問部屋 5 時間前
3055
5 時間前
NEWS コーナー 5 時間前
1444
5 時間前
輸出物紹介・取引コーナー 5 時間前
2191
5 時間前
架空設定コーナー 5 時間前
2262
5 時間前
領土拡大、新規建国コーナー 5 時間前
4991
7 時間前
画像コーナー 7 時間前
1158
13 時間前
会議場 13 時間前
805
4 日前
国の詳細設定 4 日前
75
4 日前
各国保有戦力スレ 4 日前
667
5 日前
茶番協議スレ 5 日前
332
5 日前
入った人はココに個々に名前を入れてね 5 日前
153
6 日前
人外関連設定スレ 6 日前
229
6 日前
架空兵器スレ 6 日前
21
8 日前
領土記載スレ 8 日前
561
12 日前
条約コーナー・機構コーナー 12 日前
42
1 ヶ月前
戦争史スレ 1 ヶ月前
77
1 ヶ月前
兵器資料スレ 1 ヶ月前
24
1 ヶ月前
この鯖の決まりごと(法律のようなもの) 1 ヶ月前
10
2 ヶ月前
世界情勢コーナー 2 ヶ月前
27
3 ヶ月前
中央アフリカ戦争スレ 3 ヶ月前
67
4 ヶ月前
南米カルテル紛争スレ 4 ヶ月前
7
7 ヶ月前
初心者さん案内スレ 7 ヶ月前
「改めまして、ミーナ・フェアリュクトと申します」
その名を告げる口調は、やけに滑らかで、無駄に丁寧だった。
「都合上、具体的な所属までは申し上げることができませんが、第三帝国のとある研究機関に所属しています」
‘‘ミーナ・フェアリュクト‘‘資料自体は少ないが、聞いたことがある。
目撃事例は極端に少なく、手元にある情報の多くは真偽の確認すら難しい。
単なる科学者にしては異様すぎる立ち振る舞い、そして妙に飾り気のある外見。その不自然な組合せがこちらの警戒心を煽る。
ましてや、わざわざこんな時期に、こんな場所まで足を運ぶ理由が見当たらない。
考えれば考えるほど、胸の奥で不快なざわめきが広がっていく。
(あー。これは嫌な予感しかしない)
まさか、こちらの網をすり抜けて、堂々と単身で入国してくるとは。
(正直、頭のネジが何本か抜けているとは聞いていましたけど...)
「まさか単身ノコノコと入国してくるとは思いもしませんでした」
こちらの牽制を受けているはずなのに、彼女はまったく気にした様子もなく、むしろ歓迎されるべき来
賓かのような笑みを浮かべていた。
「ご心配ありがとうございます。しかし今の私は観測装置。ことが済めばこの肉体は処分していただい
て構いませんよ」
──────処分? は?
私は思わず彼女を見た。というか、二度見してしまった。
いや、どこからどう見ても生身だ。表情も皮膚の質感も、瞳の潤みも。どこを取っても''生きている''。
しかも、結構整ってるし。
「処分...。どう見ても作り物には見えないのですが」
そう問いかけると、彼女は微笑んだままどこ吹く風といった様子で答えてきた。
「えぇ。この身体は私の運営する更生施設に通っていた娘のものです。エオローネという娘でしてね。
父親は酒浸り、母親は無関心、荒れた家庭環境で育ったようでして。問題行動を起こし、いくつかの施設
を出入りしていたのですが──────最終的に、私の元へやって来ました」
「"今まで人に迷惑をかけてきた分、人の役に立つ仕事をしたい"と仰っておりました。とても良い娘で
したよ」
(うわ。悪い意味で''マジ''だ)
いや、さらっと何を言ってるんです?
たぶんこの人、良いことをしたと思ってる。心底、善意で行動してる顔をしてる。それが一番ヤバい。
怖いとかグロテスクだとか、そういうんじゃないんです。ただこう...、思考の仕組みが根本的に違うと
いうか。
「...。」
脳がフリーズするってこういうことを言うんでしょうね。何か言わなきゃと思っても、口の中に砂利を
詰められたみたいにうまく言葉にならない。
そんな私を見て彼女、ミーナ・フェアリュクトは何気ない調子で問いかけてきた。
「如何なさいました?」
その声音には、からかいも挑発もなかった。
ただ興味。まるで私の反応を観察してデータを取っているような実験者の目。
(あー、もうやだなこれ...)
わりと真面目に人の話を聞こうと思ってましたけど前言撤回。
「いや出会って間もないですが、私あなたのことが結構苦手です」
口から出た瞬間、我ながら思った。
──────あ、また失礼なこと言っちゃったって──────
でもそのくらい言っていいと思う。
(だってこの人、本気で気持ち悪いんですから)
■ ■ ■ ■ ■ ■
ミーナ・フェアリュクトは、まるで何事もなかったかのように歩き出した。
街灯に照らされた路地を、夜風に髪を揺らしながら、まっすぐに。
後ろをついて歩く私はというと、不機嫌そうに口角を下げたまま無言だった。
(はぁ...、なんで自分から来たんだろ。せめて...、せめて予告するべきでしょ...)
何を考えてるのか...。いや、何かを''考えている''のかさえも疑わしい。思考回路が人間と根本的にズレ
ているというか、会話はできるのに、話がまるで通じていない感覚。
(こっちは人間のフリした化け物とか、モロまんまの化け物とか、そういうの慣れてる方ですけど。あ
そこまで善意に見せかけて真顔で狂気を語られると、正直引くっていうか...)
たぶんさっきの''苦手です''ってやつ。
私の人生でもトップレベルに、心からの言葉だったと思う。
けれどミーナはまるで気にする素振りもなかった。
「この先に紹介されたお店があります。落ち着いて話ができるとのことでした」
「へぇ...。どうせ協定のパイプでしょ?国の監視下で食事するとか、変なプレイですね」
「監視下の方が安心できるのは、私はもちろんのこと、おそらくあなたも同じですから」
(私も同じって...)
言葉の意味を理解した瞬間、背筋に冷たいものが走る。
それに手の内を指摘されようと、どこ吹く風。まるで意に介した様子がない。
歩調は落ち着いている。服装も奇抜ではないし、動作ひとつひとつが静かで丁寧。
だからこそ、違和感が際立つ。表面上は''普通''なのに脳が拒絶反応を起こす。
そして──思い出して、また口の中が苦くなる。
(更生施設にいた子の身体を「観測装置」として使ってるって、サラッと言ってたような...。しかも「処
分していただいて構いませんよ」とも)
ほんの冗談みたいな口調で。
("人の役に立ちたい''とか言ってたって話...)
あの話をミーナは善意のつもりで語っていたように思えた。供養のように、誇らしげに。
それがもうどうしようもなく気持ち悪かった。
「どうして、そういう独善的な態度でしかモノを見れないのですか?」
唐突に漏れた言葉だった。本人を前に、というか真横に並んでいる相手に言うには相当無礼な台詞。
けどミーナは少しだけ立ち止まって、こちらを振り返った。
「感謝はしていますよ。ただ、''言葉にして繰り返す''という行為が、必ずしも誠実とは限らないでしょ
う?」
「...は?」
「消費するからには最大限活用すること。それこそが最も確実な''感謝''であり''供養''だと思っていま
す」
なんとなくわかった気がする
この人。いや、この存在に対しては、''共感''という選択肢が最初から消えてる。
(...、やっぱ無理)
■ ■ ■ ■ ■ ■
やがて灯りの差す小さなレストランの前にたどり着いた。
古びた酒場をイメージしたありふれたチェーン店。
瀟洒な造りの木製の扉。掲げられたプレートには品の良い筆記体。
街の喧騒から離れた静かな場所。本来ならデートにでも使いそうな穏やかな店だ。
私はもう一度だけ深くため息を吐き、それから重たい足取りで扉を押し開けた。
カランと、ドアベルの乾いた音が鳴った。
レストランの中は、思っていたよりずっと落ち着いた空間だった。木製のインテリアにオレンジがかっ
た間接照明、ジャズピアノの旋律が流れ、いかにもな感じといった趣だ。
私は一歩遅れて入店し、そそくさとミーナの背後に続いた。店員が案内するテーブル席に無言で着席す
る。
ミーナは変わらず静かに微笑みながら椅子を引き、滑らかな動作で腰を下ろした。
その一連の所作は、洗練されているというより...。訓練された機械のように''無駄''がなかった。
やがて、注文した料理が運ばれてきた。
私はナポリタン。本場イタリーではなくJapanese パスタが発祥らしいが、そんなことは関係ない。チ
ーズとミートソースの匂いに思わず目が細くなる。ピーマンが控えめなのも好感触だ。
一方のミーナは、スープ、サラダ、グリルチキン、ワインのセットを前に、淡々と食事を始める。
まずスープを一口。ごく自然に唇がスプーンに触れる。ごくりと音もなく飲む。
そこまではまぁいい。
問題は次だ。
無言のまま、彼女はナイフを手に取った。
サラダの上に乗った鶏肉の切り身を、流れるような動きで切り分けていく。
切る。フォークで刺す。持ち上げる。
食事というよりは解剖に近かった。ミスもブレもない。けれど、どこか食事の風景としては違和感が残
る。
そして、彼女は鶏肉の一切れを口に運んだ。
小さく口を開け、フォークを咥えゆっくりと引く。まるで絵画のように整った所作だった。
が...、しかし。
咀嚼音がない。
私はピタリとフォークに巻きつけていたナポリタンの手を止めた。
喉が上下するのが見えた。
(...え?)
「...今、噛みませんでしたよね?」
ミーナは一瞬だけ首をかしげると、当然のように答えた。
「ええ。それが何か?」
「何かって...」
なんかもうこっちが間違ってるみたいな言い方だ。
「丸呑みするには結構大きめの塊でしたけど?丸ごといくの危なくないですか?」
「特にそういったことを意識したことはありませんね。この20年ほどの間、ほとんど食事を摂ること
がなかったので、咀嚼の方法自体既に忘れてしまったということも要因として挙げられますが...」
「いや、やめてくださいそういう情報」
私はナポリタンを皿に置いたまま、軽く額を押さえた。
(無理。ほんとうに無理)
生理的嫌悪とか、倫理的問題とか、そういう以前の問題でこの人?の思考回路が理解できない。
「あなた...、やっぱりちょっとおかしいですよ」
口角を下げたまま、私はぼそりと悪態をついた。
「ですが美味しいですよ。エオローネが''最後に食べたい''と選んだ味です。ありがたいことです」
(そういうことを、満面の笑顔で言うのが一番怖いって気づいてほしい)
「私は''理解されたい''とは思っておりません。しかし情報の交換においては、信頼があった方が都合が
良いでしょう」
ミーナ・フェアリュクトはそう言って、ナプキンで口元を拭いながら、まるで軽口でも叩くようにさら
っと続けた。
「少し、自己紹介をしましょうか。私という個体は現在で四代目です」
(...、四代?)
思わず眉が寄ってしまった。どこの家元の話だよと言いたい気分を抑えて口に出す。
「代?」
ミーナはうなずいた。
「ええ。元々は一人の女性科学者でした。時代は...、そうですね。あなた方の歴史書で言えば20世紀
初頭頃。最初の私が生まれたのはその頃でしょうか。それ以降、死を避けるため自らの人格と記憶をデー
タ化し、義体に移植することを繰り返してきました」
は?いや、何言ってんのこの人。いや人?
「不老不死ってやつですか?」
そう返すと、ミーナはわずかに笑った。けどその笑いに温度はなかった。
「どうでしょう。ここにいるのが''私''とは限りません。そもそも過去の自分と今の自分が同一だと、確
証を持って言える人がいるのでしょうか?」
と、言いながら手に取ったグラスをコトンと静かにテーブルに戻す。その音が妙に響いた。
「細胞の代謝速度を考慮すれば、ほとんどの人間は 1 年後には別人です。記憶と連続性それすらも、
いずれは曖昧になる」
──なんなんだコイツ。
生きてるのか、死んでるのか、それとも...。なんかの“データの塊”なのか。いちいち言い回しが回りく
どいというか、哲学じみてて余計怖い。やっぱり思考回路からして人間じゃない。
「人という存在の進化、適応、逸脱。または、人という存在を模倣した、全く別のヒトという、理を外
れた存在...。いわゆる''人外''がどう生まれ、どう生き、どう滅ぶのか...。私はその行く末を、観測し、記
録し、見届けたく思います」
ミーナの目がまるで実験動物を見るようにまっすぐ私を捉えるが、その視線に臆することなく切り返
す。
「自分のことを''観測者''とか言ってますが」
ナポリタンのフォークを止めて、わざとらしく鼻で笑ってみる。
「自分がその''理を外れた存在''じゃないと、なんで言い切れるのですか?」
こうして、少し揺さぶりを入れてみたものの...。
「私は理から逸れてなお、自身の立ち位置を理解しているつもりです。自分が''何者でもなくなった''こ
とも含めて」
(まるで動じた様子がない...)
普通、今の台詞くらいでムッとするとか、感情の揺れといったものが、多少は出るものでしょう。なの
にこいつ温度ゼロ。なんか逆に冷たい。
「あぁ、ですが...」
ミーナがそう続けて、ほんの少し口角を上げた。微笑んでいる...。つもりなのだろうけど、その笑い方は恐ろしい程に冷たく温度がない。
「私に''付き合ってくれる方々''もいます。今も一緒に行動している同僚たちが」
(同僚...?)
こんなイカレマッドに好き好んで付き合うような人間がいるのだろうか?
「その、付き合っている同僚とはどのような?」
「そうですね...。1 人目はぜーべスティアといいます。彼女とはアルゴンの工科大学で出会いました。
入学時は首席。もっとも卒業はしていません。教授を刺殺したので」
私はさすがに一瞬フォークを持つ手が止まった。
「はい?」
「被害者は当時の物理学担当の教授でした。ゼーベスティア本人曰く''感性の違いに我慢できなかった
''とのことです。結果として処理は...。そうですね、国の意向で表沙汰にはなりませんでした」
(サラッと言っていい内容じゃない...。そもそも感性の違いで教授を刺するなよ...)
「それ以降も、日常的に癇癪を起こしては研究員を...。そうですね、1人2人ほど殺害することもあり
ます」
あまりにも落ち着いた口調で語られるその言葉に逆に寒気がした。しかも''あります''って...。
「いや、殺人ってそんなコンビニ行くみたいなノリで許されるものではないでしょう...」
苦笑い気味に突っ込んでみたものの、ミーナの反応は穏やかなものだった。
「彼女の貢献度は非常に高い。制御しようと抑えつけて潰すより、ある程度枠を与えて自由にさせた方
が、総合的には有益です。もちろん度が過ぎた場合には咎めますが」
(なるほど。つまり''人間1人2人くらいなら誤差''ってことか)
やっぱりコイツ、どこかで歯車が外れてる。しかもそのズレたまま、精密機械みたいに正確に回り続け
てる。
「で、そのゼーベスティアという人物とはうまくやれてるんですか?」
気休め程度に聞いたつもりだったが、ミーナは少しだけ目を伏せて、ほんのわずかに間を置いて言っ
た。
「彼女は''私のことだけは否定できない''とそう言っています。ですので、命令は通ります。ある程度は
という言葉がつきますが」
(なるほど。制御じゃなくて、“妥協”か)
「2人目ははプリシナパテス。本名は...。まあ、意味のない話でしょうね。科学を信奉する者です。彼
女は私を''神''として扱います。信仰の対象として」
神?
「神...って。いわゆる''神様''ですか?」
「えぇ。神とは創造の象徴である、と彼女は言います。''万物を科学の法則により解き明かす者''として、
私を崇めているようです。彼女なりの思考の結果です」
(創造というよりコイツの話を聞く限り、総合的に見たら破壊の方が近いだろうに...)
口には出さずとも、喉元まで来た苦笑いが止まらなかった。それ実質...。
「...それ。宗教じゃないですか」
「私もそう思います。ですが、彼女にとって''科学''とは神であり、そして私はその体現者。本人にとっ
ては、極めて論理的な帰結だそうです」
"論理的''。大変便利な言葉だと思う。特にこの手のヤバい奴は、大抵''自分の中では筋が通ってる''と思
っている。だから余計に厄介だ。
「普段は、磁性体を操作する能力を用いて戦闘に従事しています。前衛も後衛も務まる万能型ですが、
特筆すべきは忠誠心です。私の言葉を、躊躇なく現実に変える」
「とどのつまり''信徒''ですね?」
「そう表現しても、誤りではありません」
やっぱり宗教じゃん...。
「さて...。」
やつ...。ミーナ・フェアリュクトはやけに芝居じみた動作でワイングラスの縁をなぞった。
「そろそろあなたのお話をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
補足諸々:
・お出かけミーナさん。
いつも通り?バッチリした変装をして侵入()
・あなたも安心でしょう?
監視の目があるから、無闇矢鱈にミーナさんに拉致される心配がない。
・被検体に対するスタンス
ミーナさんをキャラクターとしてデザインする際に、人間という存在を凝縮したキャラクターとして創作しました。目的のためなら、残虐行為も厭わず、あまつさえ有効的に活用することを供養として免罪符にするのが人間でしょう()
・お手軽オサレチェーン店。
06たそにはナポリタンを食べてもらいます。
・まるのミーナさん
食事自体、あまり取らないので咀嚼方法を忘れ、挙句丸呑みです()
・茶番協議の際に、武装、能力の類を見せて欲しいとの事でしたので、今回、あーねむさんとの茶番で初めてミーナさんの根幹に関わるシステムについて触れました(ミーナさんの状態を分かりやすくイメージするのであれば、ネイキッド・スネーク(初代ミーナ)、ヴェノム・スネーク(それ以降のミーナ)とイメージしていただければ分かりやすいかと)
・ミーナさんの同僚
仲間について何人か紹介して欲しいとの事でしたので、7人居るうちの2人を紹介しました。
ゼーべスティア・グレイヒト:被害妄想が激しすぎて、論文を褒めてきた大学教授を叩き割ったガラス器具で刺殺したロックすぎる女()
プリシナパテス:宗教キライ、科学万歳な科学教信奉者。ミーナは神()
総合的に:協議の段階で、06からのミーナへ対する印象について、「何コイツ、怖。近寄らんとこ」ぐらいにしてほしいとの事だったので、その印象に釣り合うように色々盛り込んでおきました()
ほんっつつつとうにすいませんっ!!
いろいろ凝ってたらひと月単位で時間がかかってしまいました()
疑問点、解釈違い等ございましたら遠慮なくお申し付けください。
(問題)ないです
長い!とても長い!なんとか見合ったものを書けるよう頑張るます…
2025年8月9日、海南島特別行政区議会。
海難における最高の権力を有するこの建物の中で、
ある一人の男がはるか下へと転落しようとしていた。
「…よって、我々は満場一致でアントニン行政区長の退任を決定しました」
「おい。何だこれは?」
「言ったでしょう、退任要求です。
要は貴方がしくじったんですよ。」
「ば… 馬鹿を言うな、行政区長は俺だぞ!
この投票は違法だ!」
そう冷や汗を浮かべながら
この哀れな男はしきりにわめいていたが、
そんなことは知ったこっちゃない。
「こちらに理由を説明する義務はありません。
拒否します、アントニン行政区長― いや、アントニン氏」
「なぜだ… なぜなんだ…」
自分が退任した事を残酷なまでに
きっぱりと言われた結果、
アントニンはそう力なく呟き続けていた。
「記者会見を開け。
解任事態を公表する… 明日の朝7時でいい」
一方が一つの出来事を終わらせようとした瞬間―
もう片方では、もう一つの出来事がすでに始まっていた。
「…もしもし、私だ。
時刻は明日の朝7時、始めろ」
2025年8月10日。
海南政府の建物の一室では、
見事にクーデターを成功させた重役たちが一列に並んで
報道各社のフラッシュをしきりに浴びていた。
「前行政区長が退任したというのは本当ですか!?」
「今回の出来事に関して海南武警は一切の反応を示していませんが、
それについてはどのように思っているんでしょうか!」
「チェコ政府からの介入があったんですか?」
「それについては私が説明します」
そのただ一言だけを強く言い、
真っすぐ立ち上がった。
記者の視線がこちらへと一斉に向けられる。
それもそうだろう。現に私― レグロ・カンティロは、
新たに行政区長に就任しているのだから。
私の姿が世界中に報道される…
ああ、華々しい成功のスタートにぴったりだ。
そう思いながら返答を行う。
「元行政区長― アントニン・フラビオ氏は
重大な不手際により、我々から退任という処分を
受けることになりました。
これは正しい選択だと思っています」
「その『重大な不手際』とは、いったい何なんですか!?」
「それについては後々説明します」
そう言い捨てたが、記者たちはしきりに説明を求めてくる。
「今回の出来事は、処分ではなくクーデターなのですか!?」
「チェコ政府と行政区政府には説明責任があるぞ!」
「そうだそうだ!」
「静粛に!」
そう言うと、記者たちが一斉に静まり返った。
「ですから、後々説明する―… と、言っているんです。
説明責任の放棄は行っていません」
一斉に会場がざわめき始めた。
まあ、放っておけばどうせすぐに興味をなくすだろう。
記者連中なんてたかが知れて…
「何故言わないんだ!
どうせチェコ人どもと組んで罠にはめたんだろう!」
そう一人のコートを着た男が立ち上がっていった。
あまりの荒唐無稽さに、思わず立ち尽くしてしまう。
「…は?」
「国民の気持ちなど知らない物に何が分かるんだ!」
男は訳の分からぬことに言い続けているが、
奇妙なことに半分真実でもある。
早々に退場してもらおう。
「おい! このバカ野郎を早く追い出せ!」
「黙れ売国奴!」
そう言うと、男はこちらに向かってバッグを投げてきた。
何をするつもりだ、コイツは―
直後、男がコートの中から爆薬の起爆スイッチを取り出した。
「レグロ区長、退避を!」
護衛が拳銃を取りして発砲するが、
その時にはすでに遅かった。
大爆発が起こり、目の前が閃光に包まれる。
…裏切りやがったな。
それが海南の頂点に一日だけ上り詰めた男―
レグロ・カンティロが、最後に思った事だった。
一方その頃、チェコ政府内部は混乱の渦に巻き込まれていた。
情報が錯綜し、職員が走り回り、ありとあらゆる通信が飛び交う。
実に混沌とした状況だった。
「BISから報告!
記者会見の会場で爆発が起こりました!」
「現場はどうなってるんだ! 状況を報告しろ!」
「主要メンバーは全員死亡。
それから、記者の方も数名が死傷したようです」
「畜生… 海南武警は何をしてたんだ!?」
「それが―」
「早く言え!」
「…その海南武警が、どうやらクーデターを起こしたらしく」
「そんな馬鹿なことがあるか!
おい、テレビはどうなってるんだ!?」
「見れませんよ」
「…何?」
「先ほど、全ての海南向けテレビが
一斉に戒厳令を発しました。
ずっと静止画のままです」
「畜生!」
話を15分前に戻そう。
その時、テレビ局に向けて海南武警所属の
二両の装甲兵員輸送車と
一両の歩兵戦闘車が前進していた。
「何だありゃ?」
「さあ? テレビの撮影じゃねぇのか」
その異質な光景に市民達は驚いていたが、
それは各々に勝手な解釈をさせて
無理矢理納得させる時間を作り出したに過ぎなかった。
「急げ! ここの制圧に失敗すれば、任務に多大な影響が出るぞ!」李 志強 は、
部隊を率いていた海南武警の
何としてでもこの任務を成功させようと意気込んでいた。
なにせここの確保に失敗すれば
まず一つ目にあの忌々しいカンティロ暗殺の瞬間を
全世界に発信することになるからである。
無論それは一時的な時間稼ぎに過ぎないが、
あくまで副次的な目標でしかなかった。
「総員下車しろ、目標は全ての階層だ!行け!」
車両をテレビ局の前に止めた後、
乗り込んでいた武警達を片っ端からテレビ局の中に送り込む。
「お、おい!
お前ら何しにここに―」
「海南武警だ、特殊任務で来てる!
速く道を開けろ!」
「え!?」
「いいから道を開けろと言ってるんだ!
速くそこをどけ!」
「りょ、了解しました!」
もちろん止めてくる局員たちもいたが、
全員が武装警察であることが分かると即座に道を譲った。
何せ、相手は短機関銃で武装している一群なのだ。
「我々は海南武警だ! 今すぐに放送を止めろ!」
そう言いながらニュースを放送しているスタジオへと突入する。
全員の視線がこちらに向いたが、
誰一人動こうとはしていない。
「で、ですが記者会見の生放送が―」
「優先命令だ! 戒厳令を今すぐ流せ!」
そう言いながら、兵士の一人が
アサルトライフルを天井に向かってぶっ放す。
「…急げ! 急ぐんだ!」
それを見て、殺されまいと
テレビクルーたちがあわただしく動く始めた。
一方その頃、在海南チェコ軍の総司令部へと
日本製の小型ドローンが単機で移動していた。
当然チェコ側のレーダーに引っかかり、
自走対空砲が標準を定める。
「なんだありゃ?」
「偵察機だろ」
下で兵士たちがそう話している中、
ドローンは空中で不気味に静止していた。
「おい、対空部隊! 速くあのハエを叩き落と―」
…それは日本製の砲撃誘導ドローンだった。
在海南チェコ軍の総司令部に向け、
どこかから発射された一発の155mm榴弾が正確無比に着弾する。
ものの数秒で指揮系統はマヒした。
続いて動いたのは、
海南島のあちこちにある民間空港だった。
バンカーから次々と省旗のマークを
描かれた軍用機が滑走路上へと展開を始める。
戦闘機、輸送機、ヘリコプター…
旅行客は戒厳令の布告により、
すでに全員が外国人居住区のホテルの中に退避している。
いるのは海南武警とわずかな空港職員だけだった。
「中佐、全機離陸しました。
これより海南島上空の制空権を確保します」
そう報告する武警の後ろでは、
連合王国製の自走対空砲が警戒を始めていた。
さらにその後ろに見える湾岸施設では
武装した小型ボートやウルグアイ製のマラカナン級コルベット、
そして魚雷工房のイグザム級攻撃潜水艦が展開していた。
それ以外の船舶は一切動くことは無く、
無論緊急避難を始めようとしていた旅行客も
当然のように港の中に閉じ込められている。
海南島は、一夜にして前面封鎖されたのである。
…部下が言ったとおり、
テレビ画面は先程から延々と戒厳令の布告を流し続けていた。
画面が変わる気配は一向にない。
「クソ、どうなってんだ」
「この光景と部下の報告を見るに、
恐らく放送局、議会、空港が全て占拠されました。
最悪の事態ですよ」
「カウンター・クーデタ―か?」
「ええ」
「チェコ政府に何か連絡は?」
「臨時救国政府と名乗る勢力から先ほど連絡が。
ただ一言、海南島の独立を全面承認せよとだけ」
「駐屯軍は何をしてるんだ!?
今すぐにあのバカ野郎を制圧しろ!」
「た… たった今、海南駐屯軍と連絡が取れなくなりました」
「…畜生!」
悲惨なことに、チェコ政府は
全てにおいて先手を取られていた。
『クーデターは成功に終わり、海南島の平和は保たれた。』
そのたった一つの思い込みによって、
準列強とまで言われたチェコ・インドシナ連邦は
緒戦において完膚なきまでの失敗をしたのである。
全てが混乱の中に落ちつつあった。
クーデター軍、チェコ軍、警察、市民、議会…
2025年8月10日。海南島にとって最も暑く、
そして最も長い夏は今や最高潮に達していた。
後に「海南三週間戦争」と呼ばれる大規模騒乱の始まりである。
しかし、彼はただうろたえるだけではなかった。
BISは混乱の中でどうにか連絡網を再編し、
チェコ軍は事前に策定されていた作戦計画に従って
少しずつ行動を始めていき、
そして政府は生き残った親チェコメンバーと
既に接触を始めていたのである。
2025年8月12日、「フォルティッシモ・プレリュード」作戦。
在海南チェコ軍が必死に遅滞戦闘を行って
全力で市民が非難する時間を稼ぐ中、
それを掩護するためのチェコ海空軍による
壮大な前奏曲が始まろうとしていた。
→Black Tuesday/暗黒の火曜日
八月十日 午前十一時
ズタズタズタ ガチャッ
秘書「そ、総理‼︎大変です‼︎」
一人の秘書らしき男が言う。
西ヶ原「ノックしてから入ってくれないか?」
秘書「す、すいません…」
西ヶ原総理、東州連邦共和国の第一代目総理大臣だ。
東州を滅亡の危機から救ってきた男。なんとなくこの知らせの内容には予想がついた。
西ヶ原「それで、なんの用かな?」
秘書「海南でクーデターが起きました‼︎」
…やはり、海南での不穏な動きに関することだった。少し前から西ヶ原にはこうなるだろうと予測がついた。
秘書「たった1時間前、記者会見中の海南区長であるレグロ氏が爆殺されました」
西ヶ原「そうか…現地邦人の保護を急がせろ。あと、必要に応じて軍を動かせる体制を作ってくれ。今出れる部隊に対して通達してくれ」
秘書「わかりました」
スタッスタッスタ
「失礼しました」
…秘書が部屋から出たあと西ヶ原は
「…チェコに負けはない。今はそう信じて最善を尽すだけだ」
西ヶ原:総理大臣。いいやつ
久しぶりに茶番書いた()オチがなくパッとしないですが許して
Ouroboros
これは…現在行っているコンゴ戦争の水面下で動き出した物語
〜〜〜
「ハァ…ハァ…クソ…クソッ!!」
熱帯雨林を駆ける1人の武装した男、服装からして何処かの正規の軍人のようなしっかりとした装備でもゲリラのような貧弱そうな装備でも無い…PMCだ。
「何なんだよ!クソッ!!何が起きてんだよ!!」
ゲリラの掃討、今までに受けていた中で比較的簡単な任務のはずだった。
目論見通り、自分達のWBF財団の部隊は対した被害も無く任務を完遂…するはずが突如として謎の部隊の襲撃を受けたのだ。待ちわびていたかのような最悪のタイミングで。
「い、嫌だ…死にたくねぇ!! そんなの嫌だ!!」
迫りくるは死の恐怖、吹きかけられるは死神の吐息。
“パシュ”
消音器によりくぐもった銃声。放たれた銃弾が男の左太腿に突き刺さる。
「ぐぅううううう…ああ あ"あ"あ”あ”!!…いっでえ…」
急激に襲う左足の痛みに耐えきれず地面を転がる。叫ばなかっただけ及第点と言えようか。
しかし、距離を稼がねばいけない。這いずりながら必死に必死に逃れ…
“ゾクリ”と急な悪寒を覚えて彼は振り返る…50〜100m辺りだろうか、5〜6人の人影が立っていたのが見えた。
「う…ああ…畜生、ぢくしょぉ….」
逃げる事は不可能に近い。もう補足されている。逃げる事が出来ないなら…
右手を腰のホルスターに伸ばし、ハンドガンを引き抜く。せめて、あの中の1人だけでも殺して…!?
“パシュ” ”パシュ" “パシュ"
放たれたのは先程と同じ音色の三重奏。右手、左手そして右太腿に着弾し、肉と戦闘意欲を抉る。
「ぎいやぁぁああ”あ”あ”あ”!?!?」
こればかりは、声を出すことによる痛みを逃がす他なく、一瞬で四肢を動かせなくなってしまった。
これを機に人影がだんだんと迫ってくる。彼らは全員黒いアーマーを身にまとったのっぺらぼうのような姿をしている。
そんな奴らに…取り囲まれてしまった。
「何者なんだ…お前ら…?」
掠れた声で呼びかける。黒いのっぺらぼう集団は先頭にいた1人に向けて視線を集中させる…コイツがリーダーのようだ。
「…話す必要性は無い。」
冷淡にそう彼ら答える。
「数十分泳がせたが、特に近くに財団関連の部隊は無さそうだ…用済みだな。」
"スッ"と銃口が向けられる。
「ちょっと待ってくれ!!何が目的だ!?財団が狙いならもう既に解体されて構成員は解体済みだ!」
もう既に待つのは死のみ、命乞いをするしか男に選択肢は無い。
「知りたい情報があるなら教えてくれ!何でも答えるから!!だから命ばかりは助けt」
“パシュ”
5度目の銃声は男の眉間を撃ち抜き、彼の生涯に幕を閉ざす。
「言ったはずだ、話す必要は無いと。」
〜〜〜
部隊は死体の処理を終え、要請したヘリが来るのを待っている所である。
「死ぬのが分かっているのなら多少話しても良かったのでは無いのか?”ウロボロス1"」
ウロボロス1と呼ばれた男は隊員に振り返って答える。
ウロボロス1「それは出来かねる。奴の通信機を介して情報が漏れる危険性もあったのだからな。」
情報漏洩が1番駄目なパターンだ。なぜなら我々は「メアリー・スーの怪物」…対人外用に用意された部隊なのだから。
ウロボロス1「今の我々の任務は”メアリー・スーの怪物”を有する財団の構成員の排除。それに今の我々の情報は隠蔽されている。分かるだろ?”ウロボロス2”」
ウロボロス2「…そうだな…軽率だった。」
ウロボロス1「分かれば良い。しかし…ようやく”お鉢”が回ってきた。」
ウロボロス2「ああ、そうだな。しかし、WBF財団が解体されたのに関わらず勝ち目は無いな。」
ウロボロス1「奴は別次元から何かしらの干渉を受けている。ちょっとやそっとじゃ倒せないからこそまずは地道に周りから削って行くしか無い。」
“メアリー・スーの怪物"、これはファントムの人外レッドリストに該当する人物につけられる名前である。
元ネタはSCP日本支部が有するあるScipに付けられた名前であり、この名前自体、付けられた人外に対する皮肉と蔑称を兼ねている。
ウロボロス1「かつての台湾事変では、少数ながらもほぼ個人で複数の国家と戦いながら引き分けに持ち込んだ者だ。強運というよりも何かしらの”運”が作用しているとしか言えない。」
ウロボロス2「それに別人格を有し、平和を謳う組織にいながら殺人を楽しむ多重人格破綻者。力は強いが精神的に未熟で中身が伴ってない故、なおさら野放しにしてはおけない。」
ウロボロス1「そうだ。制御出来ないからこそ彼の外堀を埋めて追い込み、いずれ排除する。」
そう言う彼らにローター音が近づいて来る。
「ヘリが来たぞ」
他の隊員に促され、ヘリに続々と乗り込み始める。
ウロボロス1「さて…今まで散々好き放題してきたツケを払って貰おうか?」
こうして彼らは水面下で財団を狩り続ける。
保守党穏健派、オリバー・モードリングが率いるこの派閥は、この数十年間もの間、一度も政権を握ったことがない。モードリングの夢はシンプルなものだ。それはこの国を世界で最も自由な国家へ昇格させ、貧困と貪欲をこの世から排除すること。
彼の目の前には今自由民主党のリック・ガーベイがいる。この自由民主党本部にモードリングのような保守党員がいるのは本来場違いである。彼は交渉しに来ていた。
「ガーベイ、君への最後の願いだ」
「君の望むポストをやる。君のやりたい政策をすることができる。代わりに私と協力してくれ」
「あのテイラーが崩れ落ちる時に、私は彼女の犯した間違いを修正する。そのためには君の力が必要なんだ、ガーベイ。その手腕と思想と力が」
モードリングが酒を飲んでいないにも関わらずこのように感情的になるのをガーベイは初めて見た。財務大臣という夢をおわれた男はまたその夢を諦めてはいなかったが、彼はいつのまにか手段を選ばなくなっていた。この関係が公になれば彼の政治生命は終了する。だがそれでも彼は選択した。
『これが明らかになった時のリスクをお考えで?モードリング』
「あの党を改革できる者はもういない。この国を自由にするためには内側から変えていくしかないんだ。そのために消えるなら、私は酒を飲んで堂々と去ってやる」
一瞬、モードリングは彼が頷くかで緊張したが、彼が息を呑む間もなく、ガーベイは彼の手を掴み、硬く握手した。
「ありがとう。ガーベイ」
モードリングの脳内に一瞬だけ、迷いの感情が現れたが、彼はそれをすぐ除外した。大丈夫、後は進むだけ。この国を自由にするために、テイラーからこの国を解放するために、大英帝国の妄想を払拭するために前進するのみだ。
賢者の思考か、狂人の妄想か。
イングランドの鉄の女
ついにアルビオンが一つになった。ウェールズ人、スコットランド人、アイルランド人、そのすべてが連合王国に本来の居場所を取り戻した。ユニオンジャックはまで掲揚されている。「ルール・ブリタニア」がロンドンからダブリンまでまで鳴り響く。我が祖国全体が、再びひとりの君主に跪いてるのだ。
それはすべて、マギーの賢明なリーダーシップのおかげである。 彼女は連合王国を再びヴィクトリア朝の栄光まで再興させ、あらゆる売国奴たちを追放した。最も重要なことは、彼女が栄光のアジェンダを背景に議会を団結させたことだ。 彼女は新たに復活した大英帝国の偉大な舵取り役であり、その未来がどうなるかは彼女だけが知っている。
そうだろう?
「…よぉ」
「…久しぶりだな」
「仕事は?」
「順調だよ」
「運、悪かったみたいだな」
「どうだかな」
「そろそろ戻れよ」
「そうするかな」
「あまり早く会いに来んなよ」
「当分こねぇよ」
「そうか」
差し込んだ日で目が覚める。乾いた汗が肌に不快な感覚をもたらし、思わず顔面を拭う。
瞬間、視界にあるものが飛び込んできた。
銃。カスタムされたAR-14。
「あぁクソ、家みたいにゆっくりしてらんねぇな」
ひび割れたアスファルトから体を起こし、ヘルメットで重量が増した頭を叩く。銃を手に取り、よろめきながら走り出す。
「うわっと」
真横のビルの土手っ腹が爆発し、爆音と共に側へ瓦礫と鉄筋が落ちる。特徴的な音からして迫撃砲。どこ製だかは、この島じゃもう判別つかなくなっていた。痛む全身に鞭を打って走る先は、味方が築いたバリケード。スヴァーリMGSが外の何かへ発砲するのが見えた。
ここは海南島海口市。
世界有数の地獄である。
---]
鉄の女と呼ばれたマーガレット・テイラーはロンドンを見下ろしていた。彼女が見たものは、彼女の成功の縮図にすぎず、首都は彼女が国家のために刈り取った富で輝いていた。彼女は自分自身と祖国のために多くのことを成し遂げ、寸分の隙もなく戦ってきた。ファシストの悪魔、哀れな革命家たちから、戦争終結後に現れたライバルまで、彼女はすべてを打ち負かした。すべての敵を出し抜き、言葉でも行動でもねじ伏せ、議会でも街頭でも打ち負かした。彼女は権力を掌握し、人が到達しうる最高の役職を掌握し、首相となった。
単なる腕前と完璧さに頭を下げて、そこで立ち止まる者もいるだろう。テイラーは違った。 党は彼女のもの、国民は彼女のもの、そして彼女は突き進んだ。経済は誰も想像しえなかったような高みに到達し、連合王国は国際政治の最前線に立ち、国内での地位も確保された。 彼女は「鉄の女」であり、欲しいものは躊躇なく手に入れる。彼女はあらゆる面で成功を収め、この連勝はこれからも続くと確信していた。
それでも。
しかし、彼女はロンドンを見過ごすと、胸が痛むのを感じた。 成功の一方で、彼女にはコントロールできない要因もあった。 太平洋でも大西洋でも、緊張の波が満ち引きしている。欧州の混乱は、彼女が築き上げてきたものすべてにとって最も危険なものであり、彼女は「トランプの家」を築いてしまったことを自覚していた。 最も丈夫な家、最も優美な建築物、しかし、たった一度の大災害で崩壊してしまう「トランプの家」
彼女は個々の危機に集中することもできたし、それは必要だっただろうが、彼女の治世の壮大な成功に酔いしれることもできた。だが彼女には使命がある。かつてと違っても今度こそはこの大英帝国を永遠のものにする。それは不可能に近いかもしれないが彼女はやり遂げる。大英帝国は彼女を必要としているのだから。
神よ、大英帝国を護り賜え。

これで連合王国テイラー√のお話は大体終わり
広東や中華民国に移りませう
パリ市内の住宅街、少し先に凱旋門を望む町にて
「ルイーシャ、どこへ行くつもりだ?」
男の声が彼女を引き止めた。
「どこって、、、それ言う必要ある?ルーカスさん」
いつも通りの妖艶な声、しかし、その中には確かな殺気が籠っていた。
「アーサーのことで怒り心頭なのは理解している。だがアーサーは無事だし、我々としてはこれ以上の事態の悪化は避けたい.....言いたいことはわかるか?」
ルーカスはルイーシャをなだめるように、押しとどめる様にルイーシャを説得しようと試みる。
「だから何?結果論でしょ?それ。アーサーを殺そうとした事実は変わらない。」
かぶせるようにしてルイーシャは言葉を浴びせる。”止めたって意味はない”そう暗に突き付ける。
「結果論だからだ。それに、アーサーがやられた相手だ。君には勝てない。それに事態が悪化すれば、君だけでなくアーサーの経歴にも傷がつく。それに、相手は他国の”来客”だ。下手なことをすればこの国のすべての人間が危険に晒される。それくらい、君ならわかるだろう?」
しばらくの沈黙の後、呆れた様にルイーシャが言葉を紡ぐ
「はぁ.....わかったわよ。殺さなきゃいいんでしょう?話を聞くだけなら、許してくれる?」
”しょうがないな”と言いたげな、不愉快さを一切隠さない視線がルーカスに向けられる。
「ああ、話すだけなら構わん.....だがなぜ.....」
「あなた達に聞いてもどうせ話してくれないでしょ?何でアーサーが傷付いたのか.....」
見透かされている。そう感じた。
「当たり前だ。それに、アーサー自身も言わないだろう。」
「だから聞きに行くの。安心して、ルーカスさん。約束は守るわ」
そう言って彼女は踵を返し、軽い足取りで走って行く。彼女なりの真実を求めて。
リバティニアさんEDFさん、遅れて申し訳ない()
「降りるぞ。200m先で銃撃戦だ。俺たちは警察に加勢する」
暗い車内に響く分隊長の声に背筋を正す。グリップを握る手に力が入り、数年ぶりの『戦闘』に向けて脳がアドレナリンを放出しだした。
揺られること数十秒。時は来た。
「下車!下車!」
声と共に後部ハッチが開き、眩い陽光に思わず目を細める。銃声と装甲が銃弾を弾く音が断続的に響き渡る。先に降りていく隊員に続き足を踏み出すと、後ろから一際大きな銃声が唸る。
12.7mmRWS。スヴァーリ装甲兵員輸送車に設置された車載の遠隔操作式機銃だ。
「APCに随伴しろ!7mmじゃ貫通するわけねぇ!」
周囲の警官が建物に向けてパトカーから射撃する中、自分たちPMCはAPCを盾に進んでいく。
相手が籠っているのは2階建て、コンクリート製の建物。3つある窓からは小火器による射撃が続き、すでに複数の警官が倒れていた。車体後部の両側からコントラクターが銃撃を繰り広げる。自分は右側にいた。
「タンゴダウン。グレネーダー!右から3つ目に窓にグレネードを撃て!」
肩を叩かれる。射撃を中止し後ろに下がると、交代でもう1人が前に出る。車体を使った委託射撃。車の動きをもろともしない正確な射撃が、相手に顔を出すことも許さない。
突然、注視していた窓が爆散する。煙が窓全てを覆い、こちらに向いていた銃火が途絶えた。左から射撃をしていたグレネーダーが撃ったようだ。これで大きく前進できる。
「行くぞ!仕事の始末だ」
スピードを上げたAPCに走って着いていく。後方にいる警官たちが、PMCを支援するためにすべての火力を投射していた。
右から3つ目の窓はもう一番左の窓なんよ
8月12日、海南島。
北米のPMCやアンデシアの国家憲兵隊が徹底抗戦を続ける中、
チェコ陸軍も壮絶な戦闘に巻き込まれていた。
「海口市の状況は?」
「航空優勢まで取られてますよ。
このままじゃ負け戦です」
「対応してる部隊は?」
「第19独立自動車歩兵旅団と第8憲兵大隊が
避難ルートを確保する為に突破攻撃を行ってます」
「そうか。航空支援を優先で回せ」
在海南チェコ軍― チェコ第8軍の指揮系統は、
司令官のリチャード・ラッスカが生存しているために
どうにかその役目を保っていた。
「こちら第15独立空中機動大隊、
既にG225国道は維持不能です!
撤退命令を!」
「第7憲兵大隊本部からの連絡が途絶えました!」
「第9独立戦車旅団だ!
損耗率が5%を超えつつある、増援を回してくれ!」
各地からは悲惨な声の無線通信が入ってくる一方で、
それを嘲笑うように市街地からは
海南臨時政府のプロパガンダ通信が聞こえてくる。
しかしそんな中でも、まだ希望を失うものはいなかった。
第8軍に課せられた唯一にして最大の目標―
避難民の安全確保及びその脱出。
そのたった一つの目的の為、
チェコ軍は戦い続けていたのである。
午前7時20分、海口市美蘭区。
海南の政治・経済・文化の
中心となっているこの場所においても、
それは全く同じだった。
「左翼の部隊が押されてます。
このままだと敵に逆侵攻されますよ」
「そんなことは分かってる。
それよりも敵の重点は右翼だ、
予備兵力をすべて投入して時間を稼げ」
「了解しました。第8憲兵大隊を回します」
ビル街の一角を、チェコ製の旧式歩兵戦闘車を先頭に
海南武警― 今の名称は海南臨時政府軍だったが― の部隊が進んでいく。
車両が交差点に差し掛かろうとした次の瞬間、
前方のビルから発射された対戦車ミサイルが
歩兵戦闘車の車体を内部から粉砕した。
それと同時に同じ建物の窓から阻止砲火が放たれ始め、
射程物に隠れようとする武警達を次々と射殺していく。
「いいか、このビルから奴らを進ませるな!
ここを墓だと思って戦え!」
チェコ軍はありとあらゆる建物を要塞化していた。
そこに踏みとどまってひたすら抵抗していくが、
それでも少しづつ敵軍に突破されていく。
「前方に敵戦車一両!」
「対戦車ミサイルの再装填急げ!
早くしないとこちらが殺られるぞ!」
敵の120mm滑腔砲が火を噴いたのと
チェコ軍の対戦車ミサイルが発射されたのは同時だった。
立てこもっていた対戦車兵が爆風で吹き飛び、
誘導を失ったミサイルが突き出し看板に命中する。
そのまま看板は地面に向かって落下していき、
下にいた何人かの兵士を押し潰した。
「おい、大丈夫か!?」
吹き飛ばされた兵士を見たが、
右足が丸ごと無くなっていた。
兵士は声にならない悲鳴を上げている。
「畜生! 衛生兵は負傷した兵士を後送、
それから他の対戦車兵がいたらこっちに回せ!」
戦車が次の榴弾を叩きこむ。
小さな商店が一つ、音を立てて崩れ去っていった。
「避難ルートの確保はどうなってる」
「機械化一個小隊を充ててますが、
それでも苦戦してます」
「クソ…
もう一個小隊投入しろ。
戦力の各自投入は悪手だがやるしかない」
「分かりました」
「このままだと総崩れだぞ、
こっちのヘリ部隊は何をやってるんだ。
上空支援を要請したんじゃないのか」
「地上からの無線報告によると、
先ほど空戦に巻き込まれました。
もはや到着は絶望的です」
「そうか… もしもの時に備えてMANPADSをかき集めておけ。
それで、港を防衛してる部隊は何をしてるんだ」
「避難民を順調に東州方面に向け脱出させてますが、
依然として多くの市民が取り残されてます」
「そうか。ほかの国の部隊とも協力する手はずを整えておけ」
「了解です。本国にそう連絡しておきます」
「アールピィージィ!」
そう誰かが叫んだ瞬間、
目の前にいた歩兵戦闘車が爆発した。
砲塔が空高く吹き飛んでいき、
横に合った一軒家の屋根に激突する。
「11時方向に敵兵!撃て!」
周りにいた兵士たちが阻止砲火を貼りはじめたが、
建物の中にいる敵兵にはあまり効果が無く
逆に数人が撃たれた。衛生兵が飛び出していく。
「こちらタンゴ23、負傷兵多数!
航空支援はまだなのか!?」
「スモークを展開しろ! このままじゃ全滅だぞ!」
後方に展開していた車両が煙幕を投射したが、
それは脅威を除去するまで
その場所にくぎ付けにされることを意味する。
「2時の方向に狙撃兵!」
「くたばれぇ畜生!」
一人の兵士が携行式対戦車ロケットをぶっ放した。
ロケット弾が窓の中に飛び込み、
中にいた敵兵を外に吹き飛ばす。
「第2分隊は敵の火点を制圧するぞ!行け!」
銃声と機関砲の音が響く中、
一個歩兵が前方の建物を制圧するために
駆け出していく。
「支援しろ! 撃て!」
「クソ、クソ、クソ…」
分隊支援火器のマカジンを再装填し、
突入部隊の支援の為にひたすら撃ちまくる。
地面には大量の薬莢が転がっていた。
「橋を爆破すれば時間を稼げると
工兵部隊から連絡が入ってきてますが、
どうしましょうか?」
「冗談だとしたら酷いものだな。
市民の避難が先だ、それよりも障害物の撤去を急がせろ」
「了解しました。それから本部から伝達が」
「何だ、いいニュースか」
「チェコ海軍が作戦行動をまもなく開始します。
こちらに航空支援を優先で回してくれると」
「そうか。口約束だけで終わらんといいが…
ところで市民の退避はどれほど進んでいるんだ?」
「避難民を乗せた車列は現在ポイントウイスキーを通過中です。
順調に道を切り開ければ、目標まではあと10分ほどで到着するかと…」
海南島南方20カイリ地点。
チェコ海軍の空母「トマーシュ・マサリク」を
主力とした一個空母打撃軍は既に戦闘態勢に付いており、
空母を囲むように2隻のイージス巡洋艦や3隻のイージス駆逐艦、
他にもそれをさらに支援する6隻の艦艇軍が周りを固めている。
既に海南へと地獄を送り込む準備は整っていた。
「旗艦『フラデツ・クラーロヴェー』より全艦、
5分後に巡航ミサイルを一斉発射する。
支援の為に空母航空隊は全機発艦せよ」
全てのハードポイントに爆弾と空対地ミサイルを満載し、
轟音と共に次々とS/A-39戦闘攻撃機が発艦していく。
南シナ海の空がチェコ軍機に埋め尽くされていった。
目標は海口、三亜、儋州、万寧…
この島の混乱を物語るように、
海南に存在するほぼ全ての主要な都市が
攻撃目標に指定されていた。
「各艦、巡航ミサイル連続発射!」
20ヶ所もの防空・通信施設を標的にして、
全艦のVLSが一斉にミサイルを空に向かって打ち上げていく。
ミサイルはある程度まで上昇した後、
目的地に向かって一気に展開していった。
「大量の高速飛行体が急速接近中!」
「チェコ軍か!?クソ、とにかく対空戦闘を―」
「ダメです! 2秒後に命中し―」
海南島にあるいくつかのレーダーサイトは
それを捉えることに成功したが、残念ながらそこまでだった。
巡航ミサイルがありとあらゆる目標へと命中していき、
一瞬にして海南武警が築き上げた防空網が突き破られていく。
「回避軌道を取りながら低空侵入するぞ! 行け!」
そしてその隙間からは、まるで洪水のような勢いで
次々とチェコ軍機が侵入していった。
8月12日9時40分。
戦いはまだ始まったばかりである。
現在戦闘が行われている海南島の排他的経済水域からさらに59kmの地点。フリゲート艦カーミンの艦長室では、オルドーニェス大統領とオケット第二任務部隊司令兼カーミン艦長が通信していた。艦長室には参謀長以下幕僚の姿はなかった、オルドーニェスは幕僚が通信に介在することを高度に政治的な話があると許さなかったからである。
「オケット司令、命令書は読んだか?現地での戦術的見解としてはどうだ」
ウルグアイ国防軍統合作戦本部が取りまとめた第二任務部隊への任務を軽く見ながらオルドーニェスはオケットに質問する。任務の大まかな内容は、局外中立、同盟国の要請があり次第の参戦、戦後のウルグアイによる人道支援の用意の3つである。オケットは少し考えた後、短く答えた。
「現在の情勢を考えると、我が艦隊の戦力はこの任務内容を遂行するには圧倒的に不足しています」
「では、司令が必要だと考える戦力はどれほどだ?」
オルドーニェスは、デバイスに映されたウルグアイ海軍の艦艇についてまとめた資料に目を移した。そこには、ドックの中の軽空母ウルグアイ、習熟中の2隻のミニイージス、6隻の本土防衛任務中のコルベット、海南島に展開中の2隻、コンゴ沖に停泊する一隻、本土に停泊する1隻、計4隻のフリゲートが表示されていた。
「現状、介入するならば。虎の子の2隻のイージスを海南島に派遣してください。チェコは海南島に反攻を仕掛ける為に空母打撃群を展開しました。イージス艦を4隻以上有するこの艦隊から最低限艦隊を守るにも最低限二隻のイージス艦が必要です」
オケットは厳しい顔をしながら報告したが、オルドーニェスの顔はより厳しかった。
「本国の方針は変わらない。基本局外中立を維持しつつISTO同盟国からの救援要請が来たらすぐにでも巡航ミサイルを敵に打ち込む。命令は私が下そう。もしそのような事態になったら、全火器使用許可だ、国際法を守る限りは自由に行動して構わん」
そしてオルドーニェス少し迷った。イージス艦を派遣するか、という問題についてだ。彼は秘書と数分ほど話したのちもう一度オケットの方に向き直った。
「明日、統合作戦本部でイージス艦2隻の派遣を決定する。政治的な問題から配備は海南島から1000km離れた地点になるが戦闘にはいつでも参戦可能なように整えておけ」
オケットは少しながらほおが緩んだようだった。カーミンを含む5型フリゲートはイージス艦との共同運用を前提とした艦である。これをもってようやく第二任務部隊は戦闘可能になったのだ。
「分かりました大統領。このオケット、最善を尽くします」
オルドーニェスはオケットの敬礼を見送った。彼をもう一度見る日は来るのだろうか。
8月14日、海南島。
クーデタ―から四日が経ち、
指揮系統や連絡網はすでに復旧しきっていた。
しかしその一方で、それを担う人物たちが
立ち直っていたとは限らなかったのである。
「…ですから、我々はもう行動不能です。
海難を独立させ、平和的な手段をとるしかありません」
そう無線機に力ない声を届けているこの男―
陳政院は、幸運にも生き残った数少ない親チェコ派の一人だった。
話相手のBIS局員の説得にも応じず、
今やほとんど生きる気力を失っているが。
「だが今の海南は凄惨な状態だぞ。
誰かがまとめ役にならなければ、
混乱は増大する一方だ」
「ですが、私はもう表には出たくないのです」
「チェコ政府は海南における正統政府の復活を望んでいる。
それに必要な人員で残っているのは君ぐらいだ」
「その人員の大半を殺した責任は君らにもあるんじゃないのか」
「あれは完全に我々の予想外だった、
今となってはもう仕方が無いことだ。
とにかく、今は出来ることをやるしかないんだよ」
「…もう放っておいてくれ。
仲間を弔う時間すら僕にはないのか?」
「………分かりました。
ひとまずまた明日連絡しますが―
貴方がそのように迷っている間にも、
無数の海南市民が今回の出来事によって
被害に遭っている事を忘れないでくださいよ」
「…はい」
そう言って彼は無線を切った。
窓の外では、クーデター軍のヘリコプターが
雑多なプロパガンダを叫びながら飛んでいる。
海難が沈静化する目途は
依然として立っていなかった。
一切の気力を失ったものがいる一方で、
さらにやる気を出している者もいた。
「今や海南は落ちぶれた、労働者は虐げられる一方だ!
このような状況を我々は許容できるだろうか!?」
「ダメだ!」「ありえない!」
「そうだ! 今こそ我々共産主義者は立ち上がり、
労働者による労働者の為の政府を取り戻すべきである!」
「革命万歳!」「ブルジョワに鉄槌を!」
「海南臨時政府は独裁政権を樹立しようとし、
チェコ政府は我々を押さえつけ、
そして憎きブルジョワ達は平然と
我々を見捨て、我々よりも先に脱出していった!
もはやこの状況下において、
我々が行動を起こすほかない!
海口に赤旗を立て、我々だけの政府を作るのだ!」
そう演説をしているこの陳大釗と言う男は
海南共産党の党首であり、
現在は武装闘争に明け暮れる典型的な
過激派のコミュニストであった。
「そこでだ!
ここに― 我々はソビエト・海南共和国の樹立を宣言する!
この知らせは各地で耐え抜いている人民に勇気をもたらし、
そしてそれは必ず我々に対する勝利を後押ししてくれるだろう!
海南共産党万歳! ソビエト・海南共和国万歳!」
それを聞いて、薄暗い倉庫の中の各機は最高潮に達した。
万歳三唱をする者、叫ぶように喜んでいる物、赤旗を振りかざす者―
この革命が成功すると全員が信じていた。
その後の武装闘争が、どれだけ過酷なものになるかも知らずに。
その武装闘争の間接的な原因―
海南島政府の「元」長官であったアントニンは、
今や海南島における大首相を名乗って議会に返り咲いていた。
「アントニン大首相万歳!」
「海南島救国政府万歳!」
数日前とは打って変わり、議会のどの席も狂ったように彼を褒め称えていた。
ひたすら、延々と、変わりなく。
しかしその一方で、彼は全く嬉しくはなかった。
海南救国政府の指導者になる事すら、
全ては彼の合意なしに行われた。
…あくまで奴らの歓声は表面上だけだ。
戦局が悪化すればすぐに責任を取らされる。
そう彼は思っていたが、そんなことを言える気にはなれなかった。
奴らの傀儡になるほど愚かではないが、
躊躇なくそれを言えるほど勇敢でもないのである。
彼は砂上の楼閣の上に立ち尽くしていた。
その光景を中継で見ていたもうひとりの長官である
海南武警総司令官の林春寧は、
アントニンを笑うのでも哀れむのでもなく、
ただこの男を眺めながら酒を飲んでいた。
「戦況はどうだ」
彼がそう冷たい声で言うと、
一人の部下が震える声で報告した。
「依然としてチェコの奴らは追い出せていませんが、
こちらの優勢は保てています。
あと数日もあれば追い出せるかと」
「そうか」
そのたった一言の言葉を聞いて周りにいた部下は安堵し―
「数日前から同じ内容を聞いているのに、
なぜ一向に海口は一向に陥落しないのだ?」
次に発されたその先程よりもはるかに冷たい声を聞き、
空気もろとも一斉に凍り付いた。
「早く勝たなければチェコ軍の援軍が到着するが…
諸君らはそれに勝てるというのだね?」
「か、海上に展開している艦艇と航空攻撃により阻止します」
一人の指揮官がそう言ったが、
相変わらず総司令官閣下は冷たく、そして正確に返答し続ける。
「ならば、海上部隊と航空部隊を率いていた者が
昨日からいなくなっているのはどういう事だ?」
「最前線で戦闘指揮を執っております。
恐らく3日間ほどここに来れな―」
「それは勇敢だな。あの臆病者たちが、
まさかチェコ空軍の激しい攻撃で
あらゆる軍港と空港が攻撃されている下に出向いていくとは」
「私は戦果を求めているんだ。
諸君らの働きに期待しているのだぞ」
「…明日の報告を楽しみに待っている。
勿論、報告できればの話だが」
彼がそう言うと、周りにいた部下は一言も発することなく
下を向いて部屋から出ていった。
悲惨な目に合う海南武警もいれば、
ますます悲惨な目に合う者たちもいた。
8月15日、海南省。楽東リー族自治県。
この県の湾岸部にある高速道路は
人道回廊として非武装地帯に指定されていたが、
全ての勢力がそれに従うとは限らなかった。
しかし海南救国政府もチェコ政府もそれに従っていたため、
誰もがここは安全だと信じ切っていたのである。
過去に命がけの逃走劇を演じた倉田朝羽もまた、
その不幸な人々の中の一人だった。
「サンヤー・ハイウェイ・ギャングだ! 逃げろ!」
その方向を見ると、バイクやサイドカーに乗った集団が
銃火器を振りかざして迫ってきていた。
「ここは人道回廊じゃなかったのか!?」
「殺されるぞ! 逃げろ!」
悲惨なことに回廊は大渋滞を起こして
機能不全に陥りかけていたため、
とても車で逃げられる状態ではなかった。
何人かがパニックに陥り、
ドアを開けて外へと逃げていく。
「は、早く車なんか捨てて逃げようよ!
このままじゃ殺されちゃう!」
そう両親と兄に必死に提案したが、
帰ってきた返答は絶望的な物だった。
「駄目だ… バイク相手じゃとても逃げられない」
現にギャング達は、車を捨てて逃げ出そうとした者や
無理矢理車両を押しのけて逃げ出すものを片っ端から撃ちまくっていた。
時折その流れ弾が別の車両へと飛んでいき、さらにパニックが伝染する。
「でも父さん!」
ギャングの一人が空に向かって拳銃をぶっ放した。
さらに悲鳴が大きくなっていく。
「全員止まれ!動くんじゃないぞ!」
それを聞いてなお一人の男が車から飛び出したが、
すぐさま撃たれて地面に倒れた。
背中から血が流れており、苦しそうにせき込んでいる。
「お前らもこうなりたくなかったら、
今すぐに金目の物をかき集めろ!
差し出さない奴はぶっ殺してやる!」
ギャングのリーダーらしき男がそう言ったが、
私たちはそんなものを一切持っていない。
「金目の物なんかないのに…
ああ、一体どうすればいいのよ!?」
「車内にあるものを全部かき集めろ!
そうすれば許してくれるかもしれない…」
そんなことを両親が言っている間にも、
ギャングの一人がこちらにやってきた。
片手にリボルバー銃を持ち、腰に短刀をぶら下げている。
(ま、まだ死にたくないよ…)
そんな事を思った時だった。
突然遠くから音楽とヘリの轟音が鳴り響いてきた。
ギャングがその方向を見て何かしきりにわめいているが、
何を言っているのかあまり聞き取れない。
ドアにピースマークを描いた一機の汎用ヘリは、
音楽に負けないぐらいの音量で両側面に載せている機関銃から
ギャングに向かって弾丸をばら撒き始めた。
遠くでバイクに乗って待機していたギャングが必死に逃げ惑うが、
たちまち大量の銃弾を浴びて地面に崩れ落ちていく。
そう大音量で音楽を流しながら、
翼を広げ獲物を狙う猛禽類のようにヘリコプターは攻撃を続けていた。
その遠くでは、一個小隊ほどの武装した人員が
簡易的な装甲を施したトラックの周りに集まっていた。
各々が来ている防弾チョッキやヘルメットに
チェコ国旗をあしらっており、まるで正規軍人のようである。
「全く… 退役軍人会って、ほんとに戦力になるんですよね?」
「でも私たちの先輩なんですよ? 私は強いと思いますけど」
その中に二人、我々が見慣れている顔があった。
…ライラ・ニーニコスキとミレナ・レヴァー、
チェコ空挺軍の第601独立特殊任務旅団から派遣された精鋭二人組である。
→Bag and Drag/大捕物
「ほぉ?それで私を呼んだと…」
凱旋門から少し歩いた先、白色の歴史的な風景に並ぶ小さなカフェのテラスに2人の女性がいた。一方はワンピースにガーターベルト。感情を抑えているような不自然な様子に対比して向かい側には白衣とチューブトップを身につけた女が足を組んで座っている。
『そう、だからとぼけたって無駄よ。証拠は証言も含め全てあるわ』
「そりゃご苦労なこと…この国の政府関係者か、それとも探偵かなんかか?まぁいい、それで私に何のようだ?」
女の偉そうな態度に一瞬腹が立ったが、彼女は感情を抑えることにした。いくらアーサーの仇とはいえここで殴りかかりでもすれば間違いなく不利になるのはこちら、少なくとも相手が一体何なのかくらいは特定しないと話にならない。
『あなたが殺そうとした女性の話よ。何故彼女を傷つけたの?理由もなく…』
『こちらは相応の責任を負わせることだってできるのよ?貴女の身元は特定してある』
「友人か仕事仲間か?どんな理由かは知らんが、少なくとも私は殺そうとなんかしてないぜ」
身元が特定してあるだなんて嘘だ。ルーカスさんが調査中だけれどもまだ結果が来ない。アーサーの知る内容を医師から部分的に聞いたのみで、誰がやったのかも詳細は不明。刃物で何箇所も刺突した跡があるというだけで、外見的特徴しかまともに知らないし名前すらわからない。
『じゃああの怪我は一体どう説明するつもり?もう1人ペストマスクを被った女性がいたと言うけどそっちの方が全てやったと?』
「だから言ってんだろ?私はただずーっと見守ってただけ。全部アイツの方がやっただけだ」
『…その証拠は?嘘かもしれないことを信じろと?』
「生憎ないね。強いて言えば…傷跡とかじゃないか?私は刺突武器とか持ってないもんでねぇ…」
随分と難解になってきたのを感じる、まるで探偵みたい。ではこの女は一体何のためにあの場に居たの?そもそもの正体すら掴めていない以上、いくら考察しても意味がない。何かしらの手段を使ってそれを導き出さないと、早く情報を…電話?
《ルイーシャ、頼まれていたことがあらかた済んだ》
『本当?早速教えて』
《ソイツの名前は閏。率直に言ってしまえばコイツも人間じゃない、明らかになっているだけでも100年は生きている異教徒だ…現在の中華民国広東省出身で年齢、経歴も不明な部分だらけで話にならん》
『それでもいいから続けて』
《わかった…国共内戦後香港を通じ英国に亡命。英国王立陸軍に70年従軍し中将まで昇格後イベリアに移住し、情報によればマドリード隠居しているか何かしらの仕事に…いや今回の件から考える限りその可能性の方が高そうだな》
このまんま適当に欲しい情報引き出していってくだされ()
参加部隊 空母アトラス所属 第15戦闘攻撃飛行隊(デビルドッグス)
FA23Jパイロット 1番機(ダガー) 2番機(スティング) 3番機(ホーネット) 4番機(ナイフ) 5番機(ホテル)
マタディの西方の空ににて.....
スティング「定期連絡.....異常なし。」
ホテル「ここまで何もいないと、逆に不安になるな.....何もないといいが、そもそも何で他国のやってる戦争の片棒を俺らが担がなきゃならねーんだ?はやく帰りてーよ」
ダガー「ホテル、作戦行動中だ、私語は慎め」
ホテル 「っと、すまない。了解だ”隊長”」
何もないいつも通りの空中哨戒、そう、今日も何もないはずだった。
無機質な電子音と共に、遥か高空を飛ぶ無人偵察機”シェーレア”からデータが送られる。
ホーネット「レーダーコンタクト、距離250㎞、ボギーの数は3、いや5。速度518ノット、、、ヘッドオン」
ダガー「回避する。各機続け。」
5機は左方向に30ど程機首を変え、不明機に相対する。
ダガー「レーダー波は、、、北米機の物だな」
スティング「どうしますか?ここはばれる前に撤退した方が、、、燃料も残りが厳しいですし」
ダガー「いや、ここで叩く。背中を撃たれたらたまったもんじゃない。全機、マスターアームON、迎撃行動に移る。」
各機「I copy」
ありがとうございます!別視点で繋げますね…
オーガスレリアが絶対君主制への移行を発表してから数日後。国はこの決定により祝賀ムードで沸く中、ただ1人、ため息を漏らす男がいた。それはこの国の君主、エーリッヒ張本人だった。1800年頃に建てられた風情ある宮殿の執務室の中、彼は初めて感じる重責にうなだれていた。
「国王に即位したかと思えば、今度は絶対君主制へ移行だなんて…全く先が思いやられるよ。」
『エーリッヒ様がご不安になられるのも無理はございません。しかし、この国の指導者として、毅然とした態度で臨まれないといけませんよ。』
「はは…頭の中ではわかってはいるんだけどね。」
弱音を吐くエーリッヒをなだめるのは、他の王族からも支持が厚く、若くして彼の世話役に抜擢された侍女のアンネリーゼだった。エーリッヒも彼女を信頼し、心の不安を心置きなく吐露できた。
「僕が心配なことは政治だけではないんだ。ザビーネさんとの結婚のことも少し。」
『それについては、これからしばらくの間、エーリッヒ様には結婚生活や食事に関してのマナーや礼儀作法を学んでいただきます。ですので結婚生活の心配はいりません。』
「アンネ、僕の心配事はそういう礼儀作法の問題ではないんだよ。彼女がどんな人なのか、どんなことが好きなのかも僕は知らないんだ。相手の事を知らないのに結構なんて、変だろ?」
『そういう事でしたら、相手方に会わずに結婚をするという事は、歴史上統計的に見ても珍しい事ではありません。ですので、今回の婚姻もおかしいことでは決してありませんよ。』
エーリッヒはアンネリーゼの理屈っぽい性格に苦笑するとともに、同じように理屈っぽくも、兄と自分には優しかった父を思い出し、
「僕には、父や死んだ兄のような決断力や行動力がない。あのテロで死ぬのは兄ではなく僕なら、兄が生きていたのならこの国はもっと良くなっていたかもしれない…」
と思わず口にしてしまった。はっとしてアンネリーゼの方を見ると彼女は困った顔をしていた。慌ててエーリッヒは「すまない。」と謝ったが、「いえ。」と素っ気のない返事が返ってきた。少しの沈黙のあと、アンネリーゼは言葉を選びつつも、自分の考えを少しうつむいていた彼に話していった。
『もし仮に、エーリッヒ様に行動力や決断力がなかったとしても、あなた様には国民を思いやる事ができる優しさがあると思います。ですので、父上様や兄上様とご自身を比べるのはお辞めになってください。あなた様…エーリッヒ様なりの統治をなさればよいと思います…少なくとも、私はそう思います…』
その言葉にエーリッヒは曇っていた自分の心に明るい光が差したような気がした。
「そうだね…ありがとう、アンネ、君の言葉で少し明るい気持ちになれた気がするよ。」
そう言うと彼はうなだれていた顔をあげ、今日執り行われる予定の宰相との会談のため、身支度を始めた。アンネリーゼは良かったです、と言うと、エーリッヒに今日の予定について説明を始めた
『今日はこの後宮殿内でシュルツ宰相との会談、その後各省庁の長官の選定作業がございます。』
「分かった。ところで今日のティータイムは?」
エーリッヒは返事もそこそこに1日の楽しみであるティータイムについてアンネリーゼに聞いた。彼女は少々呆れながらも答えた。
『紅茶はチェコクリパニア連邦、スリランカ産のディンブラ、お茶菓子としてスコーンをご用意する予定です。』
「うーん、こんな晴れた日にはバスクチーズケーキが食べたいな。用意してくれ!」
『突然言われましても、材料もあるかも分かりませんし…』
アンネリーゼの反論にもエーリッヒは「頼んだ!」とだけ答え宰相との会談会場へと足早に向かって行ってしまった。そんな主人の後ろ姿を見て彼女は『全く困ったお方です。』と呟いて顔を少しだけほころばせた。
夜中、孤児院の一室の窓にはカーテンが敷かれつつも明かりが漏れていた。
電気による明かりではなく、ランタンによる柔らかかつ温かみのある光が部屋の暗闇を照らしていた。多数の書物を重ね、紙の資料へと"目"を通す。孤児達の健康状態、活動記録、出費など。それは凹凸のある紙で、盲目の彼女は一文字ずつ手でなぞり感触から文章を読み解いていった。
彼女の仕事を見つめる男の表情と心境は、けしていいものではない。
「母さん、もう寝た方がいい。…」
『…ピッ…"仕事が残っている。アズナールも早く寝ろ。仕事早いんだろう"…ッー』
耳元の機械から発される女性の音声に、アズナールは難しい表情を浮かべる。彼女には見えないが、雰囲気で察したのか彼が言葉を発するよりも先に言葉を続けた。
『ピッ"これが終わったら寝る"…ッー』
「…あぁ、わかったよ…」
彼は何か言いたげであったものの、積み上げられた本を粗方片付け終えると孤児院の子供たちを起こさないように部屋から静かに出ていった。
そして部屋の中は再び静けさが支配する。最後に寝たのは5日前だったがこの身体になってからはもう慣れてしまった。
時にこう思う。
子供たちや孤児達はこうして難なく暮らしているが、もし彼らに両親がいればもっと豊かな暮らしを得られたはず。私が行動しなければもっといい未来があったのかもしれない。"人"としてもっと長生きできていたかもしれいない…と。
望まずに得たこの歪な命。死によって停止した心臓と弄り回され外へと漏れ出していたはずの脳は、今も自分の中で動き、思考を続けていた。
『…』
声にならない思考、苦しい心臓の鼓動。彼女の口は音を発することはない。破壊された脳は、彼女に嫌な記憶を思い出させる。自分の"死んだ"日。兵士たちが都市を焼き、這い出てきた民衆を撃ち殺し、生き残った人を引き摺り弄ぶ。狂気に駆られた兵士は散々弄んだあとに私の喉、両目、頭を順番に銃で撃ち、苦しみの絶叫と狂気の笑いの中でじっくりと殺された。
自分が"生き返った"日、脳がまるで目のように周囲を鮮明かつ白黒に映し出した。憎しみの赴くまま、殺すと願えば周囲の人は勝手に殺し合って勝手に亡くなった。そんな最中に武装した人に拘束された。
その日のあとから、何も思わなくなってしまった。両親が砲撃で死んだ時に覚えた復讐心も、故郷の地位向上を願う野心も、仲間がいたことの嬉しさも。…故郷がどうなったのか、戦いの行く末は出所した時に古い戦友から聞いた。
…それすらも全て無駄と思えてしまう。
だが、これはやり遂げなければならない。
命ある限り、一人でも多くを救ってみせよう。
これが私にできる罪滅ぼし、課せられた責任なのだから…と。
…こうして何度も同じような繰り返しをする。
ーそしてその度、海から私を招く声が聞こえる。
「おいで」と。
リューディア
おなじみ(?)帝国の人外の一人。色々経歴の設定が変更された。
アズナール
リューディアの長男。エレナ・ニーナ系列企業に入職している。
卒業式にふさわしい快晴のキャンバスだった。睎は人ごみの端に立ち、卒業生たちを眺めていた。いつか自分もそうなるのだ。中庭のすべての角にはカメラがずらりと並び、他でもない井深均の言葉に静かに耳を傾けている。
井深は会場の前方にある一段高い台に立ち、卒業生への期待を口にした。
「広東国の若者たちは」
「この国の将来を背負って立つ存在です。そして嬉しいことに、今回の卒業生の3分の1が華人です。時代の流れです!」
これにはいろいろな反応があったが、井深が話している間に敢えて言葉を発する者はいなかった。
「実は」
井深は続けた。
「私が広東国の将末に期待することのすべてを体現している一人の学生を紹介したいのです。今日の卒業生ではありませんが、彼の活躍が目立っています。彼の名は……李睎君です」
井深が振り返り、睎を直視した。すべての頭とカメラがその若者の方に向いていた。全国が彼に注目しているのだ。
井深がステージから降りて自分の方へはきたとき、睎は思わず顔をしかめた。冗説だろう?今? みんなの前で?その場で穴に入りたくなったが、井深に手を差し伸べられると、晞はとっさにそれに応えてしまった。
「君は同級生と広東国市民の模範となる学生だ」
井深はにこり笑って言った。
「私は今、あなたのキャリアに強い関心を寄せています」
拍手唱来に囲まれた睎は、ただただ笑顔でうなずき、かつて抱えていた不安や恐れはどこかへ行ってしまった。自分の手で勝ち取ったスポットライトを、恥ずかしかるべき理由は何もない。いいや。彼は名誉を与えられるべく与えられたのだ。この瞬間に雷に打たれても、彼は幸福な人間として死ねるだろう。
これもすべて目の前に立っている男のおかげなのだ。
「ダメです!湾岸詰所への連絡がつかなくなりました」
海南島における紛争が発生した当日、ユニオンが入る企業ブロックのセキュリティ本部では慌ただしく人間が走り回っていた。正規軍ではないため衛星や偵察機による正確な情報は入っておらず、外部と連絡を取ろうする通信オペレーターの怒号が飛び交う。
「私たちは…残念ながら取り残されていると形容できます」
大洋を挟んで本土から遠く離れたこの地は、主力戦車や戦闘機、攻撃ヘリコプターもない契約警護員の集団にとって絶望的な死地と言えた。
望みであるチェコ正規軍は既に撤退を始め、壁とバリケードで覆われたここにも、時期に武警の激しい火力が向けられるだろう。
そんな中、PMC「プロトコル・モナーク」海南島派遣契約者であるアルバート・ジョンストンは90人の武装警護員、8両のAPC・IFV、3両の機動砲システムをどう指揮するか考えていた。当初は軽いパトロール、警備程度に思っていたこの仕事も、今や砂上の楼閣を全力で守る籠城戦へと変貌しつつある。
「武警の装備をまとめておけ。それから周辺の動きを逐次報告しろ。ドラグーンとスヴァーリ、MGSはゲートの封鎖を実施、どうにかして死守するぞ」
着用したラグビーシャツの背中は汗によって色が変わっていた。ISAFにいた時の常識は、この場において通用しない。じっとりとしたアジアの空気が不快感を煽る。
ここをあてにした市民が避難受け入れを求めるということもあるかもしれない。報告では人道回廊は機能していないとされていた。アルバート・ジョンストンはあらゆる可能性を考える男だった。ただ、彼にも予測できなかったことがある。
特徴的な音。不可視の場所から安全に相手を攻撃でき、即時展開、撤退が可能な火器。
すなわち、
ーーーーーーーーーーーーーーーー
聞き覚えのある音が聞こえた。空気を切り裂き、特徴的な音を発する、
次いで来る爆音。全身が震えた。染みついた癖が自分を伏せさせる。ヘルメットを何かが掠めた気がした。後ろを見ると小さなクレーターが作られており、と土埃が上がっている。アスファルトの破片の横に横たわった人影が見えた。
「…なんだってんだ」
8月15日、海南省。楽東リー族自治県。
この県の湾岸部にある高速道路は
人道回廊として非武装地帯に指定されていたが、
全ての勢力がそれに従うとは限らなかった。
しかし海南救国政府もチェコ政府もそれに従っていたため、
誰もがここは安全だと信じ切っていたのである。
だが現実は悲惨だった。
この非武装地帯はギャングにとって都合のいい狩場であり、
襲撃や略奪がすぐに相次ぐことになったのである。
しかし、チェコ政府はすぐに対処した。
作戦名「スフォルツァンド・インテルメッツォ」―
退役軍人を中心とする自警団のニュー・ナズタル軍団を
戦力の中心として人道回廊の安全を確保する作戦は
何よりも迅速に計画され、そして実行されたのである。
…双眼鏡で遠くを偵察すると、
海岸線に延々と続いているだけの
実に不毛な景色のハイウェイと
容赦なくギャング集団をなぎ倒している
汎用ヘリコプターの姿が見えた。
一方で逃げ惑っている避難民たちは全く見えず、
どうやら車の中に立てこもっているらしい。
その光景を見て、
自警団員達が口々に話し合っている。
「何が人道回廊だ…
こんなの、ただの略奪街道じゃないか」
「だから我々で奪還するんだよ。
自警団なら自警団らしく、
きっちり安全を確保しなきゃならない」
「なぁ、この作戦に給料は出るんだろうな?」
「ノヴォトニー首相の金払いは良かったぜ。
今も同じじゃねぇのか」
「また戦争かよ。
これで終わりだといいんだがな」
「終わり? 指導者すらぶっ殺してないのにか?」
そんな風に話し合う退役軍人の集団に混ざって―
「やっぱりヘリって強いんだね。
おばあちゃんから聞いた話とは大違いだよ」
「それ、第二次インドシナの話でしょ?
今は2025年だし… そりゃ強くなってますよ」
…この場に似つかわしくない二人の乙女が、
そんなふうに談笑していた。
しかしその一方でその恰好は特殊部隊と大差ないものであり、
おまけに装備は全て最新鋭の物で固められていた。
片方はライラ・ニーニコスキ。
チェコ空挺軍スペツナズ所属の精鋭兵で、
こう見えても最高クラスの狙撃手の一人。
その横にいるミレナ・レヴァーも同じく
スペツナズ所属の空挺で、チェコ軍唯一の人外である。
「お前ら、見とれてないでとっとと車両に乗り込め!
そんな所でチンタラ話してると戦争が終わっちまうぞ!」
そう全員に大声で命令したのは、この自警団の一部隊を指揮する
ルボミール・プロヴァズニークだった。
彼は第五次中東戦争などに従軍したベテラン兵で、
ライラが入営時代の時に知り合った古い友人でもある。
「ねえ、私はどの車両に乗り込めばいいんですか?
まさか年頃の女の子を徒歩で歩かせるわけじゃないでしょうね」
そうライラが聞くと、ルボミールはすぐに回答した。
「安心しろよ、俺の車に乗せてやるさ。
何事もスピードが肝心だしな」
「はぁーい!」
…そうミレナ・レヴァーがやけに元気な声を出した。
展開準備を終え、既に車両に乗り込んでいた
自警団員たちが一斉にこちらに振り向く。
ああ、全くこの後輩は…
ライラ・ニーニコスキは、半分呆れながら思っていた。
「30秒後に前進する。準備しろ」
「あい」
そう返事をしながらライラが
アサルトライフルを装填しているとき、
ルボミールは車の椅子の下から
携行式の対戦車ロケットを取り出していた。
「…何に使うんですか、それ?」
「なに、単なる景気づけだよ。
コイツで奴らの度肝を抜いてやるのさ」
「民間人に命中したら不味いことになりますよ」
ライラが呆れながらそう言ったが、
ルボミールはそんなこと気にしていないらしい。
「これでも戦争中は対戦車特技兵だったんだぜ?
確実に当ててやるさ」
「ま、形は違えど当たるでしょうね…」
「車両隊は突撃しろ!ハデに行くぞ!」
そう言って、ルボミールは勢いよく
対戦車ロケットをぶっ放した。
ロケット弾はハイウェイの少し手前に止まっていた
ギャング集団車両の中めがけて
吸い込まれるような弾道で綺麗に着弾し、
ガソリンか何かに誘爆したのか大爆発を起こした。
吹き飛んだタイヤが四方へと飛び去って行く。
それを皮切りに、自警団が乗り込んでいる
半装機式バイクや民間車両を改修して作った
即興の歩兵機動車に乗り込んだ車両群も一斉に移動を開始した。
全員が各々に持っている火器をフルオートで撃ちまくり、
中には分隊支援火器を狙いも付けずにぶっ放す者もいる。
薬莢をその辺にバラまきながら、
車両は急速にギャングの元へと突っ込んでいった。
「撃て、撃て!あの車両どもを止めろ!」
敵もすかさず撃ち返してくるが、
銃弾は車列の後方へと着弾する。
…ただ、反対にこちらの銃弾もあまり当たっていなかったが。
「あの、どこまで行くんですか!?
間違えれば民間車に突っ込みますよ!?」
「ドライバーに期待しな!」
「帰ったら訴えてやる!」
ライラのその叫びむなしく
車はスピードを落とさずに突入していき、
敵の一人を思い切り跳ね飛ばしてようやく止まった。
フロントガラスが割れてはいないが、
血痕が付いて前が見えにくくなっている。
「あーあ、どうするんですか?
私は掃除しませんよ」
「言っただろ、ドライバーの責任だよ。
…総員降車! 残存している奴らを掃討するぞ!」
そう悪びれずに言うと、
ルボミールはVz.68短機関銃を持って外へと出ていった。
ライラとミレナ、それから車両のドライバーも同じく銃を持って降車する。
「おいライラ!お前何持ってきたんだ!?
「私はCz807アサルト、ミレナはVz.92散弾!」
「そうか!やってやろうぜ!」
かくして戦闘は始まった。
銃撃戦はほぼ一方的に展開された。
なにせギャング側はバイクを乗り回す必要があるからか
ソードオフの散弾銃やリボルバー銃などの火器しかないのに対し、
自警団員は軍用のバトルライフルや
対物ライフルまで装備しているのである。
しかもただの犯罪者と退役軍人の集まりなのだから、
練度にも天と地の差が存在していた。
相手の射程外から、一方的に単発やバースト撃ちで
片っ端からギャングを掃討していく。
正直この戦闘を書き起こしてもあまり面白そうにないため、
ここに派遣されている自警団所属もといルボミールの部下である
7名について紹介することにしよう…
「擲弾手ですか?今頃珍しいですね、貴方も」
「何ぃ!?よく聞こえねぇよ!」
ライラ・ニーニコスキのその発言を、
どうやら元独立戦車旅団所属のアルビーン・ジガは
全くと言うほど聞こえていなかったらしい。
現にこの男は、先ほどから続けざまに
銃身下装着式のグレネードランチャーを
ギャング団の車両めがけて撃ち込み続けているのだ。
着弾するたびにバイクやSUWが吹っ飛び、
逃げようとしている車両も乗員もろとも
次々に鉄屑へと戻していく。
「ライラおねーちゃーん、耳が痛いよぉー」
奥ではミレナ・レヴァーが小さく悲鳴を上げていた。
「えーい、うるさい!黙って戦え!」
ライラもそう叫びながら銃弾をぶっ放す。
奥では、炎上する車両からギャングが
こちらに目もくれずに逃げ出していた。
「奴ら逃げてよ、どうするの!? 追う!?」
「後方に狙撃手が展開してる!
ここは一旦彼らに任せて個々の安全確保を続けて!」
「了解!」
そう言いながらミレナがスラッグ弾をギャングめがけて撃ち込む。
それと同時に、遠距離からの狙撃によって遠くにいた
別のギャングの一人が射殺された。
「命中。いい腕だ、ヴァスィル」
「ありがとうございます」
そんな風に相棒を褒めながら
対物ライフルのスコープを除いていたトリスタン・モルコは、
この分隊の中で唯一のフランス系チェコ人だった。
彼は元山岳部隊の強硬偵察班所属で、
東州内戦において従軍した経験がある。
その横にいたヴァスィル・ストリーチェクは
彼のスポッターだったが、モルコとは違って
所属は独立自動車狙撃旅団で従軍経験も無い男である。
「距離900m、風速北西1m」
「了解」
再びトリスタンは引き金を引いた。
14.5mmは目標に向かって正確に飛んでいき、
敵の一人の胴体を正確に撃ちぬく。
弾丸はそこに大穴を空け、
その衝撃でギャングを地面に押し倒していった。
「一人やった。次の目標指示を」
「了解… ん?」
その時、ヴァスィルは双眼鏡の片隅に何か動くものを見つけた。
最初は倒れているギャングの一人かと思ったが、
よく見ると匍匐前進で少しずつ動いている。
「トリスタン、9時方向だ!
不意打ちしようとしてる奴がいるぞ!」
「距離と風速は!?」
「距離820m、風速―」
そう言い終わらないうちにギャングは素早く立ち上がり、
素早く拳銃を構える。
…間に合わない。そう思った次の瞬間だった。
「畜生が!」
ギャングの一人が近くにいた自警団員―
この中ではルボミールに次ぐ古参兵である
元独立旅団所属のエヴシェン・ルニャークめがけて
拳銃をぶっ放し、その銃弾は彼の右耳を掠めて飛んでいった。
…その直後、ルニャークもすぐさま持っていた火器で反撃した。
バトルライフルから放たれた3発の7.62x54mmR弾は、
容赦なく目の前にいたギャングを真っ二つにする。
哀れなギャングの下半身はその場に崩れ降ち、
上半身も這いずりながら逃げようとしたがすぐに動かなくなった。
エヴシェンはそれに対して容赦なく無言で
ギャングの頭に再び7.62mmを撃ち込み、
スイカのように首から上を丸ごと吹っ飛ばす。
「こん畜生…」
彼は耳を抑えながら、
治療の為に後方へと下がっていった。
「おい、ロベルト!早く来てくれ!」
彼が呼んだロベルト・ジェムリチュカは、
自警団の中でも貴重な過去に衛生兵をやっていた兵士だった。
その言葉を聞き、彼はすぐさまマークスマンライフルを持って
こちらに一直線で駆けつけてくる。
「どうした、どっか撃たれたのか」
「右耳から出血してる! コイツを早くどうにかしてくれ!」
「おいおい、それぐらいで死ぬわけないだろ?
んなもん馬鹿げてる」
「何ぃ!? これで死んだら責任取ってくれるんだろうな!?」
「とにかく、
ここはスヴァトスラフとシュチェチナに任せて交代するぞ。
移動開始!」
「けが人になんて事させやがんだ、テメェ!」
…海兵隊所属のスヴァトスラフ・カウツキーと
空挺軍所属のイゴル・シュチェチナは、
遮蔽物に隠れながら先ほどと同じぐらい不毛な会話を行っていた。
「見ろよ、コイツは俺のCz.92セミオートショットガンだ。
しかも銃下部と上部に自前でマウントを乗っけてるやつで、
上に倍率2倍のアメリカ製テレスコピックサイトと
可視光と赤外線のモード切替が可能な
複合レーザーサイトを取り付けてあって、
下には軽量化されたフォアグリップをくっつけてあるし
しかもマズルブレーキだって装備させてあるんだぜ。」
「だから何なんだよ、スヴァトラフ?
撃てて殺せりゃそれで十分だろ」
「何? じゃあお前はどんな銃を使うんだよ?」
「ZK-383短機関銃。40年代の奴だが、
その分信頼性はお墨付きのいい銃だよ」
「そんな古い銃を使うのか?」
「故障しないからぶっ壊れも捨てられもせず、
こうやって古い銃になったんだよ。
逆にお前はそんな自分でカスタムしたような銃で、
問題も無く戦い続けられるのか?」
「安心しろ、この銃には対人用に特化した
高級な12ゲージホローポイント弾をフル装填してる。
この弾を食らってマトモに動ける奴はいないさ」
「そうか。お前が粗悪品を
掴まされてないといいんだがな」
「民間人に舐められるんじゃねぇ、お前ら!
サンヤー・ハイウェイ・ギャングの誇りはどうした!?」
そんなことを言っていると、
2人のリーダー格らしいギャングが突っ込んできた。
一人は大口径のリボルバー銃を、
もう一人は両手にマシンピストルを持っている。
それを見て、スヴァトスラフは素早く
もう一丁の短機関銃を取り出した。
「チッ、何がギャングの誇りだよ。
おいスヴァトラフ、早く撃て」
「ああ、わかってる。
こういう時にはこの銃を使うんだ、Cz.02短機関銃!
コイツには4倍サイトを乗せて、
さらに精度が高いPBP弾を装填してある。
しかも下には切り替え式レーザーサイトを―」
「そんな事はいいから、とっとと、早く撃て!」
「了解!」
短機関銃が2回だけ短く閃光を放ち、
敵の両方が地面に崩れ落ちて動かなくなる。
それを見て、残っていた僅かなギャング達も逃げ出して言った。
「逃げてくぞ。終わったか?」
「…まだ終わっちゃいないさ。
内戦はまだ続いてるんだからな」
急に後ろから話しかけられる。
…声のした方を見ると、
耳に包帯を巻いているルニャークが立っていた。
「生きてたのかルニャーク。
てっきりショック死したのかと思ってたぜ」
「ああ。もしそうじゃなかったら、
心霊体験としてテレビ局にでも話とくんだな。
…ところで、アイツまだ雑学を言いふらしてんのか?
俺には全く理解できんぞ」
「ま、銃ってのは自分の命を預けるためのものだ。
あながちアイツの言動も理にかなってるかもな…」
一方その頃、ロベルトとルカーシュ・プロコペツ―
元国家憲兵大隊所属の熟練兵― は流れ弾などで
負傷した市民がいないか辺りを走り回っていた。
「君たち、大丈夫かい?」
プロコペツが車をのぞき込むと、
そこには4人の日本人家族が乗り込んでいた。
「は、はい…」
その中の一人が回答する。
見た感じ、歳は女子高生ぐらいだろうか?
「ルカーシュ・プロコペツ、自警団所属だ。
もう安心してもいいよ」
「あ、えーと… 倉田朝羽です」
「…そうか、名前を教えてくれてありがとう。
じゃあ、僕は負傷者がいないか探してくるね」
「あ、ありがとうございます…」
そう言って、プロコペツはまた駆け出していった。
それと同じとき、ライラ・ニーニコスキは
ルボミール・プロヴァズニークとあーだこーだ話し合っていた。
「救出したはいいものの、本当にとんでもない量の避難民ですね。
…これ、どうやって送り届けるつもりなんですか?」
「後で海軍にでも頼んで脱出させるさ。
無線の周波数はチェコ政府に教えてもらってるし、
LCACとかを揚陸させりゃどうにかなるだろ」
「そうですか。ありがとうございます」
「それで、お前はこの後どうするんだ?」
「東方市近郊への深部偵察に。
それと、場合によっては現地部隊への連絡も。
昨日から無線が不通になってるんです」
「そうか… 俺たちも協力するか?」
「協力? なんか貸してくれるんですか?」
「いくら隣の市とはいえ、こっからじゃ遠いだろ?
こっちの車両に乗せてってやろうか?」
「そりゃ乗せてって欲しいですけど…
あなたの上司は快諾するんですか、それ?」
「こっちの任務に協力してくれたんだ。
向こうも同じように協力させてくれるだろ、多分」
「…あらかじめ言っておきますけど、
私は貴方の責任について弁解しませんからね……」
8月20日、海南省東方市。午後9時きっかり。
チェコ軍の抗戦むなしく包囲下に置かれているこの場所を、
ライラ・ニーニコスキ達は遠くから眺めていた。
市街地からは黒煙や対空砲火が立ち上っており
時折爆発によってビル街のシルエットが
逆光によって照らされている。
「おい… マジでこんなところに突入するのかよ?
こんな無茶は中東以来だぜ」
エヴシェン・ルニャークがそう言ったが、
誰も返答するものはいなかった。
「…分かったよ、やればいいんだろやれば。
こん畜生…」
それを聞いて、ライラがハンドサインで指示を出す。
部隊はゆっくりと前進していき、
そのまま暗闇の中に消えていった。
→Semper Fi/常に忠誠を
「そう.....」
スマホから電子音が一定のリズムで流れる。
スマホのキーをタップし、カバンにしまい込み、再び彼女は目の前の”容疑者”へと視線を向ける。
「貴方、軍人さんだったんだ?」
『そうだが?それがどうしたってんだ.....わたしゃ速くこっから抜け出して帰りたいんだがねぇ.....』
少し間をおいてルイーシャは再び話す。
「いや、貴方が頑なに口を割らないのも、軍人さんなら納得が行くから。」
『なんだ、やっと信用する気になったか?』
女の様子はやれやれといった感じ、一度は殴りかかってやろうかとも思ったが、これも長い人生?を歩んできた中で学んできた”処世術”なのではと、妙に納得しかけてしまった。
「まだ貴方を完全に信用したわけじゃないわ。」
『んだよ、まだ続くのか..いい加減にしてくれ.....』
「しょうがないじゃない、貴方の言うペスト医師の女性がやったってそのペスト医師の情報が全くないんだもの。」
女は明らかに苛立っている。机を指でつつき、足を組みながらこちらに鋭い視線を向ける。
「お前、そろそろいい加減にしろよ?それともなんだ?この国にはプライベートの侵害が許容される憲法でもあんのか?」
圧が強くなる。眉間にもしわが若干見えてきた事からも何が起きてもおかしくない状況だった。
??{なあ、あんたら、注文がないなら出てってくれるか?}
張り詰めた空気を断ち切ったのは白髪の中年男性.....この店のオーナーだ。
「あ..え~と..ごめんなさい。じゃあコーヒーを頂ける?」
{個数は?}
「貴方は飲める?」
『..っ、ああ、飲めるよ』
「じゃあ二つ、お願い」
{あいよ..まいどあり}
数分後、なだらかな湯気をまとったカップが二人に届けられ、一時的に心地良い香りで辺りが満たされる。
「じゃあ気を取り直して.....」
『っ』
女の顔からも”うわっまたかよ”と音も無いのに聞こえてくるようだった。そんな彼女をなだめるようにして話し始める
「安心して。あなたの事はもう詮索しないわ。最後に聞きたいのは、そのペスト医師についてよ。名前と、何処にいるのか話してくれる?」
『ハイハイ.....だが、それを話したとして、お前が私にちょっかいかけない確証が欲しいねぇ』
「そうねぇ.....」
「もし貴方が今後、”私が原因”で被害を受けたら、私の命を差し出す.....なんてどうかしら?」
一瞬ぽかんとしたような表情を見せた後.....
『.....は?お前正気か?こんなことの為に。』
「ええ、勿論正気よ。でないとこんなこと言わないわ。貴方に信用させようとしたら、これくらいしないとダメみたいだし。」
『わかった。でもよ、話すのは名前といる場所だけだ。あとは自分で探せ』
「ええ、、十分」
数分の後、そのペスト医師がカッルという名前である事、そして隣国の帝国にいることをやっと聞き出せた。
「ありがとう.....協力してくれて。感謝してるわ。これで、”犯人”を殺せる」
『私は早く帰りたいだけだ.....だがよ、おめーじゃあいつにゃ勝てねーぞ。一応の忠告だ。アーサーを泣かせたくないならやめとけ。』
親切心なのか、厄介ごとを増やさないための釘なのか、どちらとも似つかない言葉がルイーシャに刺さる。
「ええ、確かに”私一人じゃ”勝てないわね。」
怪しく微笑むルイーシャ。そこで違和感に気付く、余りにも静かだ。街中の人の声も店内からの話し声も何もかも、、聞こえない
『なんだ?こりゃ』
辺りを見渡すと全員が”こっちを見ていた”瞬きも呼吸をしているかも怪しい。
『これで勝ったとしても、おめーの周りは地獄だぞ?』
「どうかしら.....やってみないと分からないわ」
ルイーシャが指を鳴らすと、何事もなかったかのように街が動き出す。静けさは人々の声の濁流に飲まれていった。
「じゃあそろそろお暇させていただくわ。長時間拘束して悪かったわね、今後、貴方に余計な詮索はしないわ。何かない限りは。」
『全くだ.....』
ルイーシャは席を立ち、踵を返して会計を済ませ、店を出ていった。何重にも交差する人の流れが、彼女の後ろ姿をかき消していった。
ため息をつきながら、ルェンは机に目を伏せる。目の前にはコーヒーの入ったカップが一つ。
『結局飲んでねぇじゃねーかよ、ったく』
将来的にカッルとの茶番が始まりそうだぁ…()どんとこい()
8月20日、海南省東方市。午後9時。
包囲網のど真ん中にあるこの街には、
チェコ空挺軍と海南武警の離反勢力が
延々と立て籠もり続けていた。
そんな中、チェコ空挺軍は
彼らとどうにか連絡を取るために
ライラ・ニーニコスキと自警団の一個分隊を
先発隊として派遣したのである。
「…こちらブラボー・ノーベンバーより本部、
これより潜入を開始する。オーバー」
「こちら本部了解、
誤爆防止の為に現時点より30分間の間空爆及び
そちらに対する全ての無線を停止する。アウト」
分隊が少しずつ市街内へと前進していくと、
徐々に道路がひどい有様になっていった。
民間車が路肩で炎上しており、
さらにアスファルトを破壊しながら
突き進んでいたであろう戦車が砲塔を吹き飛ばして
道のど真ん中に擱座している。
地面には大量の空薬莢や
捨てられた小火器がいくつか散らばっていた。
…そんな風に周りの景色を見ながら前進していくと、
遠くから自動車のエンジン音が近づいてきた。
「停止」
ライラがそう命令し、分隊が一斉に立ち止まる。
こっそりとビルの物陰から音のする方向を見ると、
海南軍の哨戒部隊らしき荷台の軽トラックが走ってきていた。
一台は荷台に対空標準付きの軽機関銃を乗せ、
もう一台は武装した一個分隊を満載している。
哨戒部隊はこちらに気づくことなく、
そのまま通り過ぎていった。
「…おいニーニコスキ、どうするんだ?
道はどこもかしこも敵だらけだぞ」
しばらくした後、ルボミールがライラにそう聞いた。
「下水道を使って移動します。
使い古された手ですが、まあ役には立つでしょう」
「え、そんな所に行くの?」
「敵の大部隊と戦いたいなら行かなくてもいいですよ。
ほら、そこの早くマンホール開けてください」
ミレナ・レヴァーがそう言ったが、
ライラにそう言われてしぶしぶ了承する。
「籠城地点は分かるのか?」
続いて、トリスタン・モルコが
マンホールの蓋を開けながらそう言った。
「場所は事前に頭の中に叩き込んでます。
見なくても大体の場所はわかりますよ」
マンホールを開け、
一人づつ下水道へと下がっていく。
電気が途絶えているせいで通路は薄暗い。
「うわ、目の前が全然見えないね。
自警団のみんなから暗視装置を借りておいてよかったよ」
「ええ。
…分隊、前進!」
そう命令を下した瞬間、
全員が薄暗い下水道を一斉に駆け出した。
下水道内には全くと言っていいほど敵がいないらしく、
こちらが走る音と水の音以外は何も聞こえない。
「…停止して。
そのまま水路内に退避」
しばらく走っていると、ライラが静かにそう言った。
暗かったことが幸いし、
奥から懐中電灯を持ってやって来る敵が
はっきりと見える。
「前方から敵兵2名。殺るか?」
「不許可。バレると面倒ですし、
水路の中で動かずやり過ごします」
「了解」
懐中電灯の強力な明かりは
照らしたところを非常に見やすくするものの、
その代償として暗い場所はますます暗く見える。
敵兵はこちらに気づくこともなく、
そのまま下水道を歩き去っていった。
さらにもうしばらく待って、
分隊は再び前進し始める。
作戦開始から既に15分を過ぎていた。
「…この上が籠城地点のはずです」
「じゃ、あそこにいる奴らは一体何者なんだ?」
ライラ・ニーニコスキが目標地点にのほぼ真下に到着したとき、
そこには夜間迷彩に身を包んだ兵士たちがいた。
規模は三個分隊ほどで、さらに全員が
消音機付きの火器を装備している。
「…味方か?」
そうルボミールがライラに言った。
「私たちの他に潜入している部隊はいませんし、
籠城してる部隊ならわざわざこんなことをする意味がありませんよ」
「だとすると、ありゃ見た目から察するに特殊部隊だな。
敵さんも同じ事を考えてたって訳か」
「でしょうね」
「撃つか?」
「こっちが始めるまで待機して。」
そう言いながらライラは
近くに流れていたレジ袋を拾い上げて
その中に手榴弾を入れ、
敵兵の背後めがけて放り投げる。
レジ袋はコンクリートに叩きつけられ、
そのままぐちゃぐちゃになって着地した。
「レジ袋? なんでこんなものが―」
敵兵が不思議に思いながらレジ袋を拾い上げようとした次の瞬間、
ベストタイミングで手榴弾が爆発した。
それと同時に一斉に分隊員が一斉に射撃を開始する。
サプレッサーの特徴的な発砲音が
短く下水道に響き渡った後、
海南武警の全員が地面に倒れていた。
それと同時に戦闘音を聞きつけたのか、
上から人声と走り回る音が聞こえてきた。
ライラはマンホールを銃で叩き、
そして大声でこう言った。
「ライラ・ニーニコスキ、チェコ空挺軍の先遣隊!
只今到着しました!」
一人の空挺兵がやってきてマンホールを開ける。
周りの友軍達がその光景を驚きながら見ていた。
…海南市の一角は、
今や一大防衛線に作り替えられていた。
空挺軍が持ち込んだ重火器、
海南武警の装備している歩兵用火器、
そして市民が持ち込んできた各種消耗品―
その全てがこの場所にかき集められた結果、
今やこの場所は一種の要塞のような
様相を醸し出していた。
窓からは機関銃や自動擲弾銃の銃口が覗いており、
屋上にも迫撃砲が備え付けられている。
入り口に至っては戦車が門番代わりに配置されていた。
「奥でシェンケジーク中将がお待ちです。
こちらへ」
案内役らしき兵士がそう言って
ライラとミレナを建物の中へと誘導していった。
ルボミール達も付いていこうとするが、
その寸前で別の兵士に止められる。
「おい、俺達もこの二人の護衛で来てるんだぞ。
どうして入れないんだ」
「事前に上からそう連絡されてる。
外で仲良く待ってるんだな」
「…ああ、分かったよ!」
そう言って、ルボミール達は引き返していった。
ライラ・ニーニコスキとミレナ・レヴァーは、
建物の地下にあった司令部へと案内された。
士官たちが無線機で指令を送っている中、
唯一1人の男だけが椅子に座って地図を眺めている。
その男はこちらを見るなり、
すぐさま立ち上がり敬礼してこう言った。
「チェコ極東方面軍隷下第9軍司令官、
ヨゼフ・シェンケジーク中将です。
戦況はどうなっているのでありますか」
「南方においてチェコ空挺軍及び海兵隊、
それから日本軍の一個海兵大隊と
二個機械化歩兵大隊が全面攻勢を開始しました。
もちろん、この場所においても海兵隊一個旅団による
奇襲的な奪還攻撃が計画されています」
ライラがそう言うと、シェンケジーク中将はその場にいた全員に
展開している部隊を後方に戻すよう命令した。
「我々は誤爆防止の為に防衛戦に留まると
本部に伝えることは可能でしょうか?」
「了解しました、後でそう伝えておきます。
…では、こちらからも質問を。
消耗品の備蓄はどのぐらいありますか?」
「一週間は持ちますが、
それ以上はどう頑張っても不可能です。
それよりも医療品が圧倒的に足りません」
「戦力は?」
「二個自動車歩兵旅団と一個憲兵大隊、
それと海南武警が三個中隊。
ですがどの部隊も医薬品不足で損耗が酷く、
このままでは弾薬が尽きるよりも
早く戦闘不能状態に陥るでしょう」
「そうですか。
もしも海兵隊が攻勢に失敗したら、
空挺軍のヘリ部隊を回して
増援の派遣及び負傷者の後送、
あと大規模な空輸を行うように言っておきます」
「感謝します。
ところで、海兵隊はどこから攻勢を行うんでしょうか?
そちらが要請すれば、それに合わせてこちらも支援攻撃を行いますが…」
「ああ、それは…」
その時、地上では突然小さな爆発音のような音が響き渡った。
周りにいた全員が条件反射で地面に伏せる。
「迫撃砲ー いや、違う!」
なかなか着弾音が聞こえてこないことに気づいた
エヴシェン・ルニャークがそう叫びながら空を見ると、
甲高い音を立てて飛んでくるはずのそれは
辺りを照らしながらゆっくりと落ちてきていた。
「…畜生、照明弾だ! 来るぞ!」
その声が辺りに響き渡るのと同時に、
遠くでは海南軍による攻撃が始まっていた。
照明弾が発射されたとき、
海南武警の離反派に所属するクリストファー・トンプソンと
ミラネッティ・サーラの二人組は他の離反派と共に
塹壕に立てこもっていた。
今やサーラが乗っている多脚戦車は
大量の土嚢やらヘスコ防壁やらで固められており、
高性能戦車から簡易トーチカへと成り下がっていたのである。
「おい、奴ら来たぞ。
…聞こえてるか、サーラ?」
「うん。聞こえてる…」
数日間にわたりぶっ続けで続いた塹壕戦は、
短時間での犯罪者制圧を目的として編成されていた
海南武警の精鋭部隊を肉体面でも
精神面でもすっかり疲弊されていた。
しかも敵は犯罪者などではなく、
(ほぼ全員が顔も知らないような奴だったが)
かつての同僚なのである。
こうしてこの部隊の士気や充足は急速に低下していき、
僅かな空挺軍の精鋭兵とかき集められた民兵の増援によって
どうにか戦線を維持するまでに
この地点での戦況は悪化していたのである。
「ここを突破させるな!
意地でも奴らをここで食い止めろ!」
ここの部隊を指揮している
チェコ空挺軍の小隊長がそう命令した。
大量の敵兵が奥からやって来るが、
友軍による支援砲撃や機関銃の掃射により
たちまちのうちになぎ倒されていく。
どうにか防衛線の近くまで到達した敵兵たちも、
ワイヤーや手榴弾によって作られた簡易的な地雷によって
次々と周りを巻き込みながら吹き飛んでいく。
「畜生、奴ら平気で突っ込んでくるぞ!」
「とにかく撃ち続けろ!」
「右から敵車両部隊!」
「サーラ!撃て!」
テクニカルに乗った一団がやって来たが、
12.7mmと40㎜擲弾の掃射に合って一瞬でなぎ倒された。
コントロールを失った車両が建物に衝突し、
さらにガソリンか何かに延焼したのかそのまま爆発する。
「もう一台来たぞ! ああクソ、なんだよありゃ!?」
さらに前面に装甲版を車両が猛スピードで突っ込んできた。
7.62mmを弾きながらすぐ近くまで達してきたが、
流石に12.7mmを防御することはできずに
エンジンを撃ち抜かれて停車する。
ドライバーがドアを開けて逃げ出していった後、
車は大爆発を起こして木端微塵になった。
「自爆車両!?」
「相手の事情なんて知った事か! 撃ち続けろ!」
「さらに2時方向から敵歩兵!」
続いて来たのは民兵群だった。
全員がガムテープやら何やらで
銃火器に着剣しており、
叫びながら一斉に突っ込んでくる。
「ステファーヌが撃たれた!
衛生兵を頼む!」
「こちらE中隊より司令部、
増援を要請する!早くしてくれ!」
「狂信者どもを撃ち殺せ!」
辺りに大量の銃弾と手榴弾が飛び交い、
さらに接近した兵同士の白兵戦までもが起こっていく。
今や戦闘は最高潮に達していた。
その時。
「10時方向から対戦車―」
直後、辺りへと銃弾をばら撒いていた
多脚戦車に向けて1発の対戦車ロケット弾が命中した。
車両前部が激しく黒煙を吹き出しながら炎上し、
搭載している各種弾薬が音を立てて暴発していく。
「サーラぁ!」
トンプソンがそう叫んだが、
それと同時にその声をかき消すように
敵からの迫撃砲攻撃が始まった。
「馬鹿野郎! お前も死ぬぞ!」
彼女を助けに塹壕から飛び出そうとしたトンプソンを
一人の民兵が掴んで止める。
「何言ってんだ、同僚がやられてるんだぞ!?」
「飛び出しても迫撃砲で死ぬだけだ!
それよりも敵を食い止めろ!」
そう言いながら民兵は振り返り、
イベリア製の古いボルトアクションライフルをぶっ放した。
「ああ、畜生…」
そう言いながらリボルバー銃を装填する。
「くたばれぇ売国奴!」
3発まで装填を終えたところで、
そう絶叫しながら民兵が突っ込んできた。
手には短機関銃を槍のように構えており
フレームにはテープを使って
サバイバルナイフがくっつけられている。
「クソ!」
こちらもリボルバーをぶっ放した。
弾丸は相手の眉間へと性格に命中し、
脳味噌を後ろに向かって吹き飛ばす。
続いて、その後ろからさらにもう二人が
拳銃を乱射しながら突撃してきた。
すかさず先ほど射殺した一人を片手で引き寄せて盾にして防ぎ、
そのままもう片方の手でリボルバー弾を胸に二発ぶち込んで一人を射殺する。
さらに奥にいる最後の兵士にも銃弾を発射しようとしたが、
その前に銃弾がとっくに切れていることに気づいた。
(…弾切れか!)
そう思いながら、素早く腰からナイフを引き抜いて
三人目の敵兵めがけて放り投げる。
ナイフは敵の首に深々と突き刺さり、
そのままよろめいて地面に倒れた。
「いくらでも来やがれ、こん畜生が!殺してやる!」
そう叫びながら再びリボルバー銃を装填する。
迫撃砲弾の雨は未だに止んでいなかった。
「ひでぇ状況だな」
ルボミール・プロヴァズニークが増援と共にやって来た時、
戦況は壊滅的な状態に陥っていた。
塹壕内の至る所で大規模な白兵戦が発生し、
その外には散発的にに迫撃砲弾が着弾している。
「どうするんだ、分隊長?
下手に突っ込んだら全滅するぞ」
ルニャークのその質問に対し、
当の分隊長はこの男が最も聞きたくない回答を返した。
「ああ。突っ込むさ」
「…おい、何だって?」
「向こうもだいぶ人数が減ってるんだ、
とにかく増援が来る前に撤退させればいい。
おいアルビーン、好きなだけ手榴弾をぶん投げていいぞ。
奴らに地獄を見せてやれ」
「了解」
それから一呼吸おいて、
ルボミールは全員に大声で命令した。
「総員着剣しろ!
警官くずれどもに本当の戦い方を見せてやれ!」
それを聞いて全員がためらうことなく着剣し、
同じく着剣している敵兵めがけて全力で突っ込んでいく。
「売国奴どもめ!撃て、撃てぇ!」
そう言いながら敵兵が急いで射撃を始めたが、
既に後の祭りだった。
「愛国者どもを殺せ!」
「愛国者どもをぶち殺せェ!」
兵士達が口々にそうわめきながら、
一糸乱れぬ隊形で一斉にこちらにむかって突っ込んでくる。
その光景を見て逃げ出す敵たちに対し、
容赦なく背中から銃弾と銃剣をぶち込んでいった。
「だ、駄目だぁ!
ここに留まってると皆殺しにされるぞ!」
…戦局は一瞬で逆転した。
文字通り死ぬ気で突っ込んでくるチェコ空挺兵の前に、
ろくな訓練も受けていなかった民兵たちは
総崩れで無茶苦茶に撤退を始めたのである。
「躊躇はいらん!奴らを国の為に死なせてやれ!」
それに対し、先ほどまで劣勢だった友軍達も一斉に支援射撃を始める。
逃げ出していく敵兵たちは、攻勢開始時のように
再び片っ端からなぎ倒されていった。
「追撃は無用だ、
とっとと残像兵を片付けて塹壕を奪還しろ!
もちろん、奴らが増援を引き連れて帰ってくる前にだ!」
ルボミールが再び命令を下した時、辺りはすっかり静かになっていた。
周りには大量の薬莢と死体が転がっている。
「サーラ!サーラぁ!」
そう叫びながら、その中を一人の男が走っていった。
「おい、大丈夫か!?
今助けてやるからな!」
そう言いながら、前部が大破した多脚戦車のハッチを
どうにかこじ開けようとしている。
それを見て、ルボミールが一言命令した。
「スヴァトスラフ、シュチェチナ…
あ、それとロベルト。
そこで足掻いてるジェントルマンを助けてやれ」
「了解」
「…おい兄ちゃん、どいてろ。
俺たちがコイツをどうにかしてやる。
いいかロベルト、
いち、にの、さんで開けるぞ。」
「それで開けられるのか?」
そう言いながら二人でハッチを掴む。
「開けられなかったら別の手を試すだけさ。
行くぞ… 一、二、今ぁ!」
そう言ってハッチを全力で持ち上げる。
「おい、サーラは大丈夫なのか!?」
そう言う男とロベルトがすかさず中を覗くと、
そこには一人の女性が眠るように気を失っていた。
ロベルトと男とで急いでその女性を引っ張り上げる。
「おい、彼女は大丈夫なのか!?」
「えーと、まあ、無傷だと思うぜ。
見たところ特に外傷も無いし、
多分被弾のショックで気絶してるだけだ」
「あんたが何をそんなに心配してたが知らんが…
コイツは乗員保護用の装甲カプセルを装備してるんだよ。
この中に居さえすれば、戦車砲でも喰らわない限り
砲撃でもなんでも守ってくれるって寸法だ。
それに装甲が耐えれないほどの衝撃はできる限り
前部で吸収できる構造になってるし、
それからHEAT弾対策だってー」
シュチェチナがそんな風にしゃべり続けていたが、
誰一人としてそれを聞いている者はいなかった。
「んが… あれ、トンプソン、
なぁんでそんなに泣いてるのぉ…」
「全く、お前って奴は、
人をこんなに心配させやがって…」
「ロベルト、もうお前の出番は必要なさそうだぞ。
別の負傷兵救助に回っとけ」
「おいおい、じゃあなんで俺はわざわざ呼ばれたんだよ?
ま、無事なことに越したことは無いがなぁ…」
そんな事を話していると、
空爆停止時間が終わったのか
上空を数十機の軍用機が飛び去って行った。
翼にはチェコ空軍の国籍マークを付け、
パイロンにありとあらゆる地対地兵装を満載して。
「…見ろよ、ついにドンパチし始めたぜ。
いよいよ始まったか」
「ええ。どうやらそのようですね」
海兵偵察部隊所属のデニス・シュルツと
ラドヴァン・シュチェルバは、
空爆に寄って吹き飛んでいく海南軍の陣地を遠くから眺めていた。
先ほどまで気配すらなかった対空陣地は打って変わって
一斉にその砲火を開いており、
深夜だというのに空は爆発と曳光弾によって
明るく照らされている。
8月25日、月曜日。午後11時20分。
作戦名「プレスト・ノクターン」。
チェコ海兵隊による東方市の開放作戦は、
大量の攻撃機による大規模な空爆支援を
開始の合図を告げるゴング代わりにして始まったのであった。
→憂鬱な月曜/Blue Monday
ウルグアイ合衆国国防海軍第二任務部隊が海南島の監視任務についてから13日。海南島での戦闘は現在も激しく続けられており、幾つかの傍受できた暗号化されていない通信は銃弾と銃剣の向かい合う戦場を示していた。出港前に制作された海南島のミニチュアには、数々の戦況のピンと構造物が破壊された印がつけられていた。それを、陸軍士官が分析し本国に報告書を送る。そのような仕事が続けられていた。戦闘経験が内戦しかないウルグアイは実戦の情報を収集しようと躍起になっていた。
「東方市にチェコ軍のものと思われる軍用機多数。近接航空支援任務かと」
レーダーと睨めっこを続けている兵士が、多数あるチェコ軍機から必死に照合を行う。すると、チェク軍の空爆予想範囲に空爆済とのピンがつけられる。後は、その爆撃の結果の測定である。被害は衛星写真から、決定する。
「やはり、空ではチェコが圧倒的か。」
艦長であるオケットは独白する。戦闘をこの目で見るような地点ではないが、戦闘に参加しているかのような緊張感が彼にはあった。ミニチュア上ではあるが、海南島が壊され、人が死んでゆく。戦闘慣れしていない彼にとっては想像するだけで心に圧迫感があった。
「慣れてしまえば、楽になるのだろうか」
長い議論を終えようやく広い議会が静かになった。
何人かは変えられたいくつかの法案に納得がいかず不服な表情を浮かべているがそれらは些細な問題ではない。日本政府からの「要望」も変更点に加えられているのを確認した日本人顧問たちも納得した以上、これらにさらなる議論を持ち込むのは無駄だろう。
少しの沈黙の後、議長は宣言した。
「現在をもって国名をウラジオストク連合とする」
ウラジオストク連合:ウラジオストク共和国から変更。今まで警備軍として編成されていた軍を大規模に再編しなんかいろいろ変更する。
[クソクソクソっ!!なんでばれたのよ!クソ!!]
パリ郊外の倉庫群で、熾烈な”鬼ごっこ”が行なわれていた。勝てば理想を掲げて戦える。負ければ.....死ぬ。そんな追いかけっこが静かに行なわれていた。
{ターゲット、右に逸れた。}
「了解、じゃあこの倉庫突っ切って近道する」
{分かった。倉庫に入ったらそのまま直進}
「了っ解!」
倉庫のドア轟音を立てて蹴破り、その中を突っ切る。この鬼ごっこの鬼はまさに”猟犬”一度見つかれば逃げるすべは無い。
{倉庫を出たな、その先40mの位置にいるはずだ。}
「分かった。さっさとひっとらえて帰りましょ!」
もう少しで仕事が終わる。そう思った時だった。ヒュンっと顔を掠める感覚とすぐ背後で鳴った金属同士のぶつかる音。
「あいつ撃ってきた!!銃持ってるなんて聞いてないわよ?!」
全力で追いかけながらも無線に向かって抗議する。無線からはため息交じりに
{情報外のことはよくあることだ。それに話してる場合か?逃げられるぞ。}
相手の足は存外速い。これ以上はじり貧と踏んだ”アーサーは”ある決断をする
「もういい。一応、正当防衛ってことで片付くわよね?」
{ああ、だが、、、、はぁ.....もう何も言うまい。}
無線の向うの同僚は諦めた様にため息をついた。
それと時を同じくするころ、一発の銃声が倉庫群に響く。
[っグ.....あ”あ”あ”!!..!!]
「やっと、”止まった”」
銃弾で貫かれた足を引きずり、這いながらも逃げようとするターゲットにアーサーはゆっくりと近づく。
[クッソぉ....]
ターゲットは落した銃に手を伸ばすが、、、、また一発の銃声が響く。
{ターゲットの無力化を確認。}
銃を破壊され、足を撃たれたターゲットに、もう戦う力も逃げる力も残されていなかった。
「さて..とアンジー・シャルロット中尉....いや元か、クーデター実行並びに国家反逆罪で拘束する。」
イベリアでの混乱に乗じた国家の転覆。これを未だに実行しようとするものは少なくない。そんな”危険分子”をとらえるのが、退院したばかりの彼女の日課のようになっていた。
[あんたらは分かってない!!!今のこの国がどんな状況か!!このままではこの国は他国の傀儡に成り下がる!!この国の無能な首脳を粛清し、自立した国体を取り戻す!そんな簡単なことがなぜわからない?!]
弁明とも絶叫とも似つかない声が倉庫群を満たす。
「この国は民主主義の国よ。それがしたいなら選挙に出るなりしなさい。少なくとも国民の民意で決められていないことをあなたたちは押し通そうとして、3000人以上の死傷者を出した。これは法裁かれてしかりよ。」
そう返すとあざ笑うようにアンジーは答える。
[そう....ならそうすればいいじゃない。この国は絶対によくない方向へ突き進む。今のこの国の政治も、軍も、何一つとしてこの国の国民を守ることはできない!そう....貴方の家族も何もかも、貴方は守れない!!]
その言葉にアーサーは激昂した。守れない”あの日”いやというほど味わった無力感がアーサーを飲み込もうとした。それを振り払うようにアーサーはアンジーに馬乗りになる。
[ちょっ....ま]
拘束する。その言葉から今すぐは殺されないと高をくくっていた彼女の予想は虚しくも崩れ去った。
「黙れ!黙れ!黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!」
あの日の記憶をかき消そうとするように殴打する音は、やがては水音交じりになり、相手の懺悔も聞こえなくなていた。それでも、無力感から逃れる様に何度も何度も何度も何度も何度も....
{アーサー、もうよせ。....死んでる}
気がつけばそこにはアンジー”だったもの”があった。
「あ、、、、噓....」
自分のやったことが未だに理解出来ない。血まみれになった下腹部と両手。やっと状況を理解すると同時に思考が真っ白に溶けていった。
{この件については上にこちらから報告しておく。処理班を手配するから....}
そこから先はあまり覚えていない。ただ気が付くと出勤時の服を着た”自分”が自分の家の前にいた。ぎこちない手つきで鍵を開け、玄関に入る
「....ただいま」
まるで抜け殻の様な声でそうつぶやく。
部屋の奥から小走りで近づいてくる人影が一つ
『おかえりなさい!アーサー!』
満面の笑みと抱擁でアーサーを出迎えるのは
「ルイーシャ、、ただいま」
少し笑みを返して抱擁し返そうとすると....思い出してしまった。両手にこびりついた肉片と血、下腹部にまとわりつく血だまり。どうしようもない無力感。
視界が狭くなり、呼吸が早くなる
「はっ....はぁっ!!はぁっ!!カヒュ!!」
抱擁し返すことができない。肩で息をしながら膝をつく。
『アーサー?!大丈夫?!何が....』
自分にかけられる心配の言葉も、届かない。そして芋ずる式に思い出して辿り着いた。”敗北の記憶”
「っ....!!!!」
アーサーは直ぐに手洗いに駆け込みそのこみあげてきたモノを吐き出した。
「う”…あ”え”....あ”あ”」
もう空っぽなのに延々とで続ける。ルイーシャはそんな彼女を見ながら、ただ背中をさするしかできなかった。