「絶望の谷間でもがくことをやめよう。友よ、今日私は皆さんに言っておきたい。われわれは今日も明日も困離に直面するが、それでも私には夢がある。それは、この国の夢に深く根ごした夢である。
私には夢がある。それは、いつの日か、この国が立ち上がり、『すべての人間は平等に作られているということは、自明の真実であると考える』というこの国の信条を、真の意味で実現させるという夢である。
私には夢がある。それは、いつの日か、イングランドの丘で、かつての台湾で戦ったアジア人の息子たちと、かつての台湾で戦った白人の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつくという夢である。
私には夢がある。それは、いつの日か、不正と抑圧の炎熱で焼けつかんばかりのペンザンスでさえ、自由と正義のオアシスに変身するという夢である。
私には夢がある。それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である。
今日、私には夢がある」
トラファルガー広場で、改正公民権運動の指導者であるカーチス・デイヴィッド・キシが、25万人を超える大観衆を前に演説を行った。彼の言業は、アジア人も白人も、男性も女性も、新しいスローガンを広めるために、すでに野火のようにこの国中に広がっている。
「私には夢がある」
そして、その篝火はいつしか現実となる。
・改正公民権運動
連合王国の場合だと、60年代の黒人差別禁止をめぐる公民権運動、スペイン系住民差別禁止をめぐる公民権運動が他にもあるが、今回の場合は台湾事変をきっかけに2年以上続いているアジア人差別禁止をめぐる改正公民権の制定を求める運動。
・カーチス・デイヴィッド・キシ
まんまキング牧師。
・ペンザンス
国民党所属の人種隔離主義者、ジョージ・ウォリック議員の出身地。現在だとネオナチをはじめとする白人至上主義者らの聖地となりつつある。