「…あった」
明るい廊下と扉一枚隔てた暗い部屋の中、男が四つん這いになり、床のタイルを弄っていた。
ガチャリ、という金属音が響くと、男は立ち上がって一歩下がる。
「やっとだ。去年の5月から、ここで眠っていたわけだな」
床の隠し扉に手を伸ばし、中から真っ黒なファイルを取り出す。この後の脱出手順を思い浮かべながら、ファイルを開いた。
プロジェクト・エンフォーサー
そう題された内部の書類は、たった数枚のようだが、表紙には旧財団、解体された「ISAF」のマークが記されていた。現在ではほとんどの資料が北米連合軍や統合情報局に回収され、世間にもその組織性は知られていない。その一つをようやく手に入れられた。その事実にひどく喜びと達成感を感じ、ファイルを掴む手が震える。表紙をめくり、内容を読もうと視線を動かすと、一つの画像があった。
「…ぁ」
視界が赤、青、紫、緑と変容して歪む。あらゆる視覚情報が脳から抜け落ち、まるで地面が消えたかのような浮遊感に襲われる。数百人の人間が両耳に囁きかける。四肢がもがれる感覚と共に、脳幹が焼き切れる音がした。
◯
女が部屋に入ってくる。軽蔑にも似た笑みを浮かべながら小さく呟いた。
「早く帰れと言ったのにな」
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多分ベリーマン=ラングフォードさん