夜の海は、ひたすらに静かだった。
『輸送船べレナ』は、五隻からなる小さな船団のひとつとして、闇の中を進んでいた。薄暗い闇の中にぼんやりとした光と船影はかろうじて見えるか見えないか。互いの存在を確かめるのは、無線と経験に頼るしかなかった。
ちょっとした小国の海軍上がりのヨナスは経験を積んだ中堅船乗りとして輸送船団の一角を担う、輸送船「べレナ」を指揮していた。
ここ最近コンゴの方がきな臭くなってきたとはいえ、海の上はまだまだ平和で静かなものだ。
昼間、通り過ぎていく他国の軍艦に手を振ったことを思い出しながらヨナスは双眼鏡を手に、前方の暗闇を睨んでいた。船団の先頭を行く『リューゲン号』の微かな輪郭が、波間にかすれながら見え隠れしている。
突然、その『リューゲン号』の船影が大きく揺れた。
「何だ...ッ!?」
その一声に操舵室にいた船員たちが一斉に顔を上げる。
背筋に薄ら寒いものを感じつつ、『リューゲン号』へ無線を繋げる。
(今日の波はそこまで高くないはずだ...。それにあの揺れ方は明らかに普通では無いッ!)
「『リューゲン号』『リューゲン号』こちら『輸送船べレナ』状況を確認したい」
『こちらリューゲン号。何か大きなものにぶつかったようだ。そこまで水深の浅い海域では無いし、恐らくクジラか何かかとは思うのだが。今、状況を確認中だ...。海賊の襲撃であることも考えられる以上、サーチライトを使って探し出し、放水の用意を...。何ッ?!』
無線機から突如聞こえてきた怒声に操舵室内は静まり返る。
『今、被害状況を確認させたのだが...。大規模な浸水が起きている。このままだと沈むかもしれない』
即座に放棄を決定せざるを得ない程の浸水被害...。となると悠長に待っていては、『リューゲン号』の船員はあっという間に海の下だろう。
「こちら『輸送船べレナ』。了解した。これより『リューゲン号』の救助活動を...」
「なんだ...、アレは」
操舵室のすぐ横側にあるデッキに備え付けられたサーチライトを操作していたその船員のつぶやきは、消えそうな程小さかったのにも関わらず、やけに大きく操舵室内へと響き渡った。
その声に窓際へと駆け寄っていった船員達は、そのありえない光景に驚愕することとなる。
「サメ...か?それにしては大きすぎるし、早すぎるッ!!」
サーチライトの照らす先。そこには輸送船の船体程の高さのある''背ビレ''を持った巨大なナニかが悠々と泳いでいた。
「『セントルイス号』の方に突っ込んでいくぞ!!」
『輸送船べレナ』から見て左側を航行する『セントルイス号』も回避行動を取ってはいるものの、それを遥かに凌駕する速度で接近するソレに対応しきれずにいた。
「ぶつかる!!」
誰かがそう叫んだ瞬間。
ガーンッ!!ギギギィイイイイイイ...ッ!!
金属同士が衝突したような凄まじい破砕音とともに『セントルイス号』の船体が引き裂かれていく。
その光景を見たヨナスの中で疑念は核心へと変わる。
「潜水艦だ...」
「えっ...?」
「潜水艦の攻撃だッ!!我々は潜水艦に襲われている!!」
鋼鉄で出来た船体をいとも容易く引き裂く存在が生き物のはずかない。そして年中貧乏な海賊共に輸送船に対して一発で致命傷を与えられる武器が買えるかといえば怪しいところだ。第一海賊共であれば沈めずにこちらの船を拿捕しようとするはず。
(であれば、敵はそれをする必要のない相手ということに...)
誰かが叫んだ。
「何かがこっちに向かってくる!!」
ヨナスがその声に反応し、海面を確認した途端。
背筋に冷たいものが走った。
「魚雷だッ?!」
潜水艦で衝角攻撃!?
一次大戦の時にドレッドノートが体当たりでUボートを沈めたけど、
まさかその逆やるとは思ってなかった()
爆縮不可避()区画が壊れて意味なしてなさそう。
??? 「敵の潜水艦を発見!」
ふっふっふ…。

そのためにショックアブソーバー付きのご立派な衝角がついているのですッ!!バァアアアン
ジュール・ベルヌ?知らない人ですね()ラムアタック、ガトリング、ミサイル。男の子の好きそうなものをめいっぱい詰め込んでみました()