「そうですか…。まぁ、早くできるなら楽しめる時間も増えますしいいでしょう。」
予備動作もなしにシナノの周りの空間が揺らぎ、電気のほとばしる音がわずかに響いている。
これに驚くことなく、同時にルェンも型を整え格闘戦の構えを見せる。
「手加減は期待しないでくださいよ?」
『当然だ』
武器がない以上遠距離戦は不利、そもそも生半可な飛び道具ではバリアにはじかれてしまうだろう。
どちらも考えたことは同じだった。ほぼ同時に地面をけり、相手の方へと接近する。互いに突き出した技をいなしながら次から次へと打撃を撃ちこむ。
なつかしさを感じつつシナノは繰り出される打撃を流したり、回避するなどして対応するが突然、足をすくわれた感覚と共に視界が180°回転した。咄嗟に右手を床に伸ばし逆立ちのような態勢から立ちなおそうとするがそれをルェンは見逃さず素早い足蹴りが唯一地面についていた右手を捉えていた。
腕をばねのように、軽く曲げミシミシと骨をきしむ音を響かせながら右腕が全身を空へと打ち上げ、寸前で足蹴りを回避し少し離れた場所に着地した。
「いやはや、なかなか見切りずらくなりました。年にはかないませんね」
『嘘つけ、対応してるじゃねぇか』
シナノは左腕をルェンへ向け、手の前方の空間の歪みが大きくなる。その行動を既にみたことのあるルェンはすぐに理解し握りこぶしを前へ、地面をけり上げ一気にシナノとの距離を詰める。ルェンとシナノの間に展開されたバリアの壁はルェンの接近を止めることはなく、壁にこぶしが触れたときにバチッと電撃を鳴らしただけであった。突破してきたルェンに驚くことなく、彼女はテレビで見るような柔らかな笑顔を崩さない。シナノの片手が形を崩し、複数本の黒いうごめきが砲身を形成する。これまでシナノの周囲を覆っていた電気の壁が砲身の先端へと収束したかと思えば、一瞬の光と共に衝撃波が放たれる。
光は一瞬のうちにルェンの頬をかすめ皮膚が切り裂かれる。
『ぃって…、やっぱ出してくるよな。それ』
「これが私の能力で出せる最大火力みたいなものですから」
"砲身"から煙を吹かし、シナノはニコニコと笑っている。
これが最も警戒していた彼女の武装、小片を何であれ電気で加速して射出する飛び道具、いうなれば「レールガン」である。
特にはないです()
途中シナノが180°回転しますが、これは格闘戦に気を反らされてルェンの尾の薙ぎ払いに気づかず足をすくわれた結果です