ある日の夜、警視庁本部の会議室に特災の職員が集まっていた。
議題となっていたのはつい先日起きた事件、『矢臼別演習場遭遇事件』だった。いままで対処の困難さと活動頻度の低さから死亡者の隠蔽で対処していたが、数か月ほど前から活動頻度が増加、そして今月二度目の遭遇事件が先日起きてしまった。
「1週間前は四国、3日前は北海道。距離で1500km以上離れてるんだぞ?あれはどうやって移動している?」
「今はまだ通り魔や熊害などでごまかせているがこのまま頻度が増えるなら難しいぞ」
「次の出現時期は不明、場所も不明、こんなんじゃ対策なんて不可能だ」
「現場からの鑑定結果はまだか?遺体の破損状況は?」
職員たちは事件の原因である『黒鬼』の資料を読みながらこの結論の出ない会議に疲弊していた。昼から始まった会議はすでに6時間以上続いていたが一向に解決策は出なかった。
そのとき、1人の職員が会議室に飛び込んできた。
「失礼します!ウラジオストク内務省から緊急連絡です。ナホトカ郊外で『黒鬼』の可能性がある異常存在が確認されたとのことです!」
初の日本本土外での出現と前例のないほどの短期間での活動。今すぐに対処しなければさらに被害は増え異常存在が実在することが知れ渡ってしまう危険性がある。部屋にいるすべての職員がうなり声をあげながら回らない脳を動かしているとき、老齢の男は決断を下した。
「この際あらゆる手段使って情報を集め、あれを消すべきだろう。大蛇、鬼、天狗...会話可能なすべてのものから情報を集めろ。必ず黒鬼を討伐するぞ」
なんか黒鬼の活動頻度が増えて今月3人目。今まで多くて月1だったのにこのままじゃ隠し通せなくなるかも...しかも国外で活動し始めた。
なら今ここで殺そう!
老齢の男:警視庁特災部部長 鶴本友憲。40年以上特災で勤務してきたベテラン。
天狗:山奥に住む亜人種の一つ。鴉のような黒い翼と卓越した脚力が特徴。人の来ないような高所に集落を作り住んでいる。個体数は年々減少しつづけており純血の天狗は約1000人ほど。ジャンプしてムササビみたいに滑空できる。