とりゆっけ
補助龍 6641dc4fb6
2025/05/13 (火) 21:55:02
「……榊貞一君です」
55分。それは榊が広東国の次期行政長官に選ばれるまでにかかった時間である。もし時が違えば榊はこの時間の浪費を引き起こした者に辛辣な言葉を浴びせていたかもしれないが、この時ばかりは嬉しさのあまり文句の一つも言わなかった。紛れもなく自分の名前が空間に鳴り響くと、彼はその場に立ち上がり、ルコラ議員たちの無言の承認と他の集団からのコンプレックスの混じった唖然とした視線の中、列席者の間をすり抜けていったが、すでに彼の頭は最適な能力で稼働し始めていた。
彼の喜びは、現れたその瞬間から急遠に消えていった。彼が通路に出るまでに14秒、演壇に上がるまでに10秒かかった。どちらもこの施設の設計上の欠陥であることが明らかだ。座席が混み合っていて、足元が狭く、移動するための余裕がない。通路の長さももう少し短くできないものだろうか、せっかくの優秀な時脳が気の利かないラバ野邸どもに囲まれて足踏みさせられているようでは、 自分の意見を伝えることはできない。
彼が99人の議員を視界に収めてこの施設の頂点に立った今、ますます日に余る誤りがあ ることを感じ始めた。 ルコラ議員たちは遠すぎる。旧式の白熱灯は電気の無駄使いであり、図を用 いたプレゼンテーションには不利益である。この席の配置はまったくの茶番だ。まるで翁敬黎のような虫けらが近くにいることは奇跡のよ…
翁。彼はようやく気づいた。彼は瞼を震わせ、顔を紙のように白くしながら、5列目に座っていた。
敬黎、お前がもっとよく物事を理解していたらな。榊はそう思いなからマイクを握った。その手のひらには金属の冷たい感触ではなく、広東の鼓動が感じられた。
「皆さん、新しい時代が…」
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