目の前の龍人から噴き出した火は燃え盛り、自在にそれを操る。
シナノが笑みを見せるとともに周りの空間の湾曲は大きくなる。電撃のほとばしる音が増し龍の炎と対峙する。左腕をかざし一瞬光り、ルェンは高速の遠距離攻撃に構える。しかし、"弾"はルェンを打ち抜くこともなく撃ちだされることもなかった。飛び出してきたのは“弾”ではなく、シナノそのものだった。
「そうですね、遊びが中途半端では面白くない。全力で楽しんでこそ」
火に焼かれ炭化したものではなく、もっと有機的かつ複数の触手のようなものが巻き付いて拳となったものが電撃を纏いルェン腹へ突き出され、ルェンを壁際へと突き飛ばす。
『…いい攻撃するじゃねぇか』
「ええ、あなたのように人外として何百年と生きていませんから、あなたのことを理解できるかはわかりません。お互い本気でやれば、わかるかも知れませんね」
ルェンはよろめきながら立ち上がる。
「かつての連邦内戦を共に戦った者たちは消え失せ、日々私の体は化け物に蝕まれていく」
「ですから、私は私でなくなる前に、人間としての私を謳歌することにしたのです。」
長期戦故にか、シナノの左腕のチャージ時間はやや増しているように感じる。ルェンはその隙を見逃さなかった。
『シナノ、いいもん見せてやるよ』
そう言葉を発した瞬間にシナノの周りから、火炎が噴き出たかと思うとそれは高く壁を形成しルェンが合図すると壁は中央へ向かって包囲を狭める。シナノは迫る火の壁に慄くこともなく、面白いものをみた子供のようにその場で笑みを浮かべる。左腕がまた形を崩し数本の黒い触手となって地面へと垂れ下がる。青白く光る電撃が触手にまとわりつき、シナノの体全体へと広がったとき、電撃が胸のあたりへと収縮し、一気に球状に電撃を拡散させる。拡散する電撃に火炎が押し出され実験室の壁のあちこちに火が飛び散り赤く燃え盛っていた。
『くっそ、どれだけ隠し玉をもってやがるんだ…』
シナノは左腕だったものを垂れ下げ、黒い触手にはところどころに火が燃え移って落ち着いた宿主とは正反対に苦しそうにくねらせのたうち回っていた。
「火の壁ですか。…やはりあなたは面白いですね」
数秒の静寂の後、実験室内のスプリンクラーが作動し部屋中に雨を降らす。部屋のあちこちで燃え盛っていた火は、ルェンが体に纏っていたものを除き水によってかき消され、部屋は水浸しになる。
<シナノさん、申し訳ないが時間になってしまったんだ。実験室には他の予約が入っていてね>
部屋の角に設置されていたスピーカーから、初老の男の声が響く。
「クラーク博士、わかった。そうですね…休憩室を貸してください」
<お安い御用だ。実験データの借りもあるからね。すぐ準備しよう>
「ルェン、今日のところはここまでにしましょう」
『楽しめたのならなによりだ』
お待たせしました(白目)
シナノの最後ですが、わかりやすくいえばアサルトアーマーもどきをしました()
スバラシィ…ありがとうございます()
とりあえずこの後は唐揚げさんとの内容に移りますか、私の番(たぶんルェンが出てくるくらい)になるまで適当に後日談みたいなのやっときます()