軍事部だった何か
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2025/06/23 (月) 22:10:44
殺した実感は、なかった。
ただ、引き金を引いただけだ。
撃て、と命令された。
だから、撃った。
銃声が耳に残っているわけでもない。
血が飛んだ感覚すら曖昧で、
「え、これで終わり?」って。
人間って、こんなに簡単に止まるのかって、
それが最初の感想だった。
罪悪感?
あの時は、なかった。
「殺した」という概念よりも先に、
“任務を完了した”という報告の言葉が喉の奥にあった。
その夜だけは、鎮痛剤はいらなかった。
どこも痛くなかった。
でも…次の日、笑えなかった。
朝、雪といつも通り飯を食った。
ふざけた声で話しかけられても、
僕はどこか遠いところから自分を眺めてた。
“ああ、僕、いま「いい人」やってるふりしてるな”
それが、能天気の始まりだった。
──偽りの「いつもの僕」をかぶって、今日まで来てる。
あれから何人を撃ったか、もう数えていない。
ただ一つ、あの日の感触だけは、どこにも残っていない。
そういう意味で、
あの日が──いちばん怖い。
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